- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041128848
作品紹介・あらすじ
スウェーデン推理小説アカデミー最優秀ミステリ賞、スカンジナヴィア推理作家協会「ガラスの鍵」賞W受賞作。米TVシリーズ化決定!
23年前、凶悪事件を自白し、保護施設で育ったウーロフ。事件当時14歳だった少年が釈放され、実家に戻ったその日、事件は起きた。ウーロフの父が死体で発見されたのだ。犯人と疑われ、世間の誹りを受けるウーロフ。事件の捜査に当たる、ウーロフの幼なじみで刑事のエイラ。彼女の前に、次第に過去に起きた別の事件が浮かび上がってくる――。
あなたは覚えている。忘れたとは言わせない。
本書(『忘れたとは言わせない』)によって、アルステルダールは第一級の帰郷小説を書いたことになる。オンゲルマン地方の田園風景や小さな集落、そこに住む人々を鋭敏な感覚で捉え、たったひとつの動きでもひとりの人物のイメージを的確に描き出せることを見せてくれた。悲劇的で、人を虜にし、いまいましいほど良くできた作品だ。(「ガラスの鍵賞」受賞理由)
感想・レビュー・書評
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23年前、当時14歳の少年だったウーロフはとある少女を暴行殺人した犯人とされた。
仕事中偶然立ち寄った故郷で、ウーロフはなんと実の父親の死体を発見してしまう。
ウーロフの昔の事件を知る地元の人間は、ウーロフが犯人と信じて疑わなかったが…
その事件から始まり、次々と連鎖して明かされていく事実。
それを紐解いていく主人公で女性警部補のエイラ。
彼女は私生活では、認知症の母親と悩みながら暮らしていた。
次々と明るみにされていく過去は、現在は、柔らかい急所のようなもので、多く登場する人物たちの生い立ちと家庭の事情とやらだったりする。
事件と日常。
まるで相反するようなこれらが結びつく。
私たちの日常はいつ事件となるかもしれないし、ならないかもしれない。
そして人間というもの、人柄というものの不確かさのようなものも。
そう、仄かに思わせる物語だった。
緩やかすぎず激しすぎずの物語の起伏は、飽きがこず読み進めることができた。
シリーズものかぁ、エイラの今後が気になる気持ちがあるから、続きが出たら読んでみたいかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スウェーデン南部オンゲルマンランド地方クラムホシュ。主人公の若き女性警察官エイラ・シェディンが暮らす町である。
深い森や峻嶮な峡谷を、海に流れ出る川のうねりが削る場所。河岸の古い巨大工場の跡地には、麻薬やフリーセックスに夢中になる若者たちの痕跡が残される。
憂鬱になるほど暗く寂しい地方の片田舎で、13年前に発生した少女行方不明事件。その少女を殺害した容疑で刑務所に入れられた孤独な若者ウーロフ。彼が出所するとほぼ時を同じくして、ウーロフの父親が殺害されて発見される。ウーロフには無実の可能性があり、シェディンは13年前の記憶を彼の出所やその父親の殺人に結びつけつつ、真実を追い始める。
小さな村ゆえの複雑な人間関係。恐ろしいほどの大自然。その中で登場人物たちのそれぞれの陰影の濃い私生活も描かれてゆく。エイラの家族は、認知症の母と、家を出た切り寄りつかない自由奔放な兄。スウェーンミステリならではの生きる重さのようなものが、物語を貫く。ヘニング・マンケルの世界を思い出す。
フィヨルドを抱える北欧の国が持つ自然の美しさと、怖さ。首都ストックホルムとは離れながら、捜査人員が足りないこともあって、都市部からの警察官たちの助けが来る。この事件のためだけの臨時捜査チームのようなもの。彼ら脇役の存在感も併せて物語は立体構造の時空に奏でられてゆく。
後半部になり意外な展開を見せる本書は、川から海へ流れ出す水の流れの如く、警察小説からむしろ、冒険小説的ワイルドさを見せ始める。大自然の豊かさと、時間が与える錆や腐食。
美しくも危険な大自然の営みの中で、いかにも小さく見える人間たちの悲しくも傲慢な罪の存在が見え隠れして、後半は二転三転する真実の深みが主人公エイラを圧倒する。
スウェーデンが犯してきた重大な過ちである冤罪という真実のテーマに取り組んだ作者の意気込みが、感じられる何よりも人間とそのあるべき道を描いた社会派作品としての意義が色濃く感じられる。現実とフィクションのつなぎ目が曖昧なだけに生々しい情感が全巻に漂う。
北欧最大のミステリー文学賞であるガラスの鍵賞受賞作品。そしてシリーズ第二作も完成されているという。そちらの翻訳もまた楽しみだ。 -
北欧ミステリーなるジャンルの存在を初めて知る。
ごく狭い地域の中で起こっている事のようでそれでいて深遠なる時代を行き来しているようで。
曇天模様の下鬱蒼とした森林が広がる田舎町を思い浮かべながら。 -
ジャケ買いでしたが、もうこの表紙の雰囲気そのまま。北欧の景色の描写も目に浮かぶようで素晴らしかったです。
薄暗い雰囲気で淡々と進みますが、後半に向けて大きなうねりが出てきてどんどんストーリーに引き込まれてしまいました。
この主人公で三部作作られる予定とのことで、次作も非常に楽しみ。 -
14歳の時、少女への暴行殺人容疑をかけられて以来、23年間寄り付かなかった生まれ故郷に、つい、立ち寄ってしまったウーロフ。
待っていたのは自宅で殺されていた父の姿。
主人公は警察官補のエイラ。
ウーロフと同郷で23年前は9歳だったが、地元をよく知るとして捜査に加わった。
当時からから変わらない世間の事件に対する目、
小さな町で起こったことはすぐに広まり、互いにその見方を同調していく。
本当は、それぞれがそれぞれの事情で家庭で抱えている問題があり、それがこの事件を暗くして、探るにつれて醜く暴かれていく。
エイラは、警察官として捜査を進めるうちに23年前の事件に疑問を感じていく。
それは、仕事としてではなく、自分を覆っている、もやもやとしてつかみとれない衣をはがしていきたいという、欲望の表れのように感じる。
二転三転する展開は、予想している暇もないほどで450ページの物語も長くは感じない。
また、北欧ミステリーの「森と湖、夏の白夜と冬の暗さ」は土台となっているものの、他にみられるような社会問題に対する主張はそれほど強くない。
どちらかといえば、小さな集団の中での同調と排他的意識での息苦しさが、この物語を暗くしている。
真相が明るみになったその時、23年前14歳だったウーロフが犯した罪とされたものは、いったいなんだったのか……この事件そのものが違った意味を帯びてくる。
読み終わった後に、ポツリと残った余韻がいい。 -
暗く寒さが這い上がるような作品。23年前の少女失踪事件の犯人が故郷に帰ってから、さらに事件が起こる、と言うもの。終わり方もえっ!と思ったが次作も出来てるらしいので読まなきゃな、と。
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スウェーデンの田舎町。廃墟のようになった古い家の中で、そこに住む老人の遺体が発見される。発見者は隣人から不審者として通報された男。
しかし、警察が調査すると彼はその老人の息子で、23年前にこの街の森で行方不明になった少女リーナを殺害したとされるウーロフだった。
この街の警察官補として働く女性エイラは、23年前の事件が起きた時はまだ幼かったが、その事件のことはぼんやりと記憶していた。
かつて殺人を犯した少年、少年であったが故に正しい裁きを受けないまま、今度は父親を殺したと街はウーロフを犯人扱いするが、エイラたちが捜査を行ううちに、今回の事件どころか、23年前もウーロフは少女を殺していないのではないかという疑惑がで始める、、、、。
北欧ミステリーは日照時間が短く、冬は氷と雪に閉ざされるという、暗さ、冷たさが特徴。そして物語が淡々と進行していく。
ただ、今ひとつこの主人公のエイラに感情移入できない。冤罪ではないかと思われるウーロフにしても、途中で意識不明になり、物語の終わりの方まで回復しないので、冤罪を晴らそうとする盛り上がりみたいなものにも欠ける。
物語の終盤、残り100ページを切ったあたりで漸くリーナは生きているのでは?という調査が始まり、どこでリーナと遭遇するのか、誰がリーナなのか?という盛り上がりが少しあるのだが、、、。
この作品が評価されてアメリカでドラマ化されるらしいのだが、そこまで面白いかなあというのは正直な疑問。 -
このなんとも煮え切らん感じが結構効いてくる。
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展開がちょっと解りにくい点も散見するが、まあ続編は出るなら、とは思う。しかし、土地の位置関係がさっぱり。
著者プロフィール
トーヴェ・アルステルダールの作品
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