仮面城 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 67
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041129104

作品紹介・あらすじ

朝の尋ね人コーナーに、突然自分の名前が出てきたのを見て、文彦はびっくりした。誰が、何のために自分を探しているのだろう? 彼は、引き止める母親を説得してその人物に会いに出かけた。雑木林を抜けると、古びた洋館が目の前に現れた。「ここだ」と思った時、館の中で一人の少女が悲鳴を上げた。夢中で中へ飛び込むと、そこには頭に鮮血を滲ませ、床に倒れた老人が! ふとしたことから恐ろしい事件に巻き込まれる少年と、それを助ける金田一耕助の活躍を描いた傑作、ほか三編。

感想・レビュー・書評

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  • 朝の尋ね人コーナーで自分の名前が出てきたことに驚きつつも、勇気を持って相手を訪ねることで事件が動き出す表題作をはじめ、全4作が収録されたジュニア向け作品集。金田一耕助も由利先生も登場する贅沢な一冊。

    以下、各話の導入と感想を。

    『仮面城』
    朝の尋ね人コーナーに自分の名前が出てきたことに驚いた文彦少年。不思議に思いつつ自分を捜す人物・大野健蔵に会いに行く。健蔵が住む古びた洋館で発見したのは悲鳴を上げる少女と、頭を殴られ倒れている老人の姿だった!

    テレビの尋ね人コーナーから自分の名前が!という導入で一気に引き込まれる。怪しげな洋館!魔女のような老婆!渡された金色の箱!木の幹に五寸釘で刺されたダイヤのキング!謎が謎を呼ぶ序盤から、銀仮面と名乗る怪盗との戦いへとなだれ込んでいくストーリーに読む手が止まらない。

    ジュニア向けミステリーということで、文彦と三太という少年たちを主役に据えながら、金田一耕助も心強くサポートしてくれる。文彦の少年らしい冒険心だけではなく、やさしさがあったからこそ物語が始まったというのは感慨深い。城、仮面、宝石など、ワクワクするアイテムもたくさん登場して面白い。それにしても、テレビで自分の住所を明かしたら、そりゃ追手にも気づかれるやろ…と冷静にツッコミを入れたくなるけどそれは野暮ということで(笑)

    『悪魔の画像』
    良平とおじの清水欣三が古道具屋で発見した、悪魔を描いた真っ赤で不気味な絵。それは若くして自殺した天才画家・杉勝之助の作品だという。欣三がそれを買うも、それを狙う男が現れて──。

    金田一は登場しないものの、少年少女が鍵となるストーリー。不気味な絵を巡る因縁。泥棒がいたはずの部屋にいた縛られた少女。真実の上に塗られた謎の霧が、良平の機転や周りの大人たちによって晴れていくのが爽快。おどろおどろしいタイトルだけど、読後感が良くて好き。

    『ビーナスの星』
    深夜の電車内で少女・瀬川由美子に助けを求められた三津木俊助。彼女は同じ電車内にいる男に狙われているという。心配になった俊助は由美子を家の近くまで見送ったが、そこには怪人が待ち受けていた──。

    両親を亡くし、発明家である兄・健一とつましく暮らしていた瀬川兄妹。なぜ二人を怪人が狙うのか。その正体とは?!不気味な敵と不思議な物語が少しずつほどけていく。莫大な財産を生むプレゼントを奪われたと知っても「せっかくの心づくしを無にしてしまった」と、自分の研究よりも贈り手の気持ちを想像する健一がよかった。

    『怪盗どくろ指紋』
    巷を騒がせる怪盗!奴は現場に三つのうずまきがあるどくろ指紋を残していくという。その正体がサーカス団員・栗生道之助だという話だが──。話を聞きつけた記者・三津木俊助は名探偵・由利と出会い、事件と関わっていく。

    この一冊で金田一と由利という名探偵二人が間接的に共演しているとは!由利の相棒・三津木は『ビーナスの星』にも登場するが、そちらはK大時代の話とのこと。30ページほどの短編ながら、アクションあり!不気味なアイテムあり!謎解きあり!と魅せ場が多くて面白い。
    「世のなかには、しんせつでしたことでも、思いがけない悪いことをひき起こすこともある。」
    美穂子が道之助のことを思いやるシーンが素敵だった。悲劇のその後も引き受ける由利もカッコいい。由利シリーズもいずれ読んでいきたいなあ。

  • ジュブナイルの金田一先生は地団駄を踏んで悔しがりがち。普段頼りないけど推理だけは抜群の金田一先生、何もかもスマートな由利先生、どちらも好き。

  • 「仮面城」は銀仮面の正体は分かりやすいものの、面白い!
    「怪盗どくろ指紋」は由利先生もの。怪盗どくろ指紋ってネーミング凄すぎる…

  • 2022/09/12読了

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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