ウクライナにいたら戦争が始まった

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  • KADOKAWA (2022年8月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784041129241

作品紹介・あらすじ

単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。

みんなの感想まとめ

テーマは、戦争が突然に訪れる恐怖と、それに巻き込まれた高校生の視点から描かれる現実です。物語は、ウクライナでの生活を通じて、主人公の琉唯が直面する不安や緊張、そして戦争の恐ろしさをリアルに伝えています...

感想・レビュー・書評

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  • またさっきの叩くような騒音が鳴り響いた。男性のフードをかぶった頭部が、いきなり破裂した。文字どおり弾け飛んだ。フードが変形して潰れ、褐色に濁った液体がぶちまけられた。男性の身体は進行方向につんのめった。頭部があったあたりから、斜めに噴出する液体は、鮮血だとわかった。わたしは自分の悲鳴を耳にした。(135p)

    2022年1月、 17歳の瀬里琉唯は、高2の3学期を丸々ウクライナに短期留学することになった。妹と母親と共に、父親の住むキーウ郊外のブチャという町に住み始める。父親は戦争の危険性は楽観視していた。
    ‥‥ブチャという町の名前を知った時に、何か引っかかったのだけど、そのまま読み進めていった。

    最初のページに、「状況と日時、各事態の発生場所に関し、現在までの情報を可能な限り網羅し、また帰国者の証言などを併せ、できるだけ正確を期した」とあり、日本人ウクライナ人併せて17人の名前が記されている。そういう意味では疑似ノンフィクションではある。

    とは言っても、本書の半分以上は、瀬里家族の初めてのウクライナ訪問、離婚危機にある家族の状況、避難勧告が出て空港に向かうも妹にコロナ陽性が出てブチャに舞い戻り、という比較的小説的かつ「取材した事実は全て描写に活かしました」という文章が続いて少し退屈していた。

    〈冒頭の書写し〉135pで、4人家族のウクライナ「体験」は、突然転調する。
    ーーそうか、このように戦争は突然のように始まるのか。よりによって瀬里の父親は、「田舎町で平和なところだ」と思って住んでいたけど、1番最悪なところに居を構えていたわけだ。現在(いま)では「ブチャの虐殺」と呼ばれている、戦争開始期の何百人かの民間人が無差別に殺された悲劇の場所だった。

    私は8月に、高見順「敗戦日記」を読みながら「みんなこれを読んだらウクライナのことを想起するだろう」と書いた。訂正しなければならない。やはり現代の戦争は、特に大陸の戦争は、その技術、規模、スピード、共に全然違う。戦中日記を梃子にして想像してはいけない。瀬里家族のように、開戦後数日、テレビニュース遮断、インターネット遮断の中で家に閉じこもっていたら、町が完全にロシア軍に包囲されていても、全く気がつかない。「なんとか、遠くの戦争をやり過ごせば、あとは我々は外国人だから脱出できるだろう」と楽観的に思っていたとしても、まぁおかしくはない。

    瀬里琉偉の「地獄めぐり」は、ひとりの少女が体験するにしては、あまりにも悲惨でかつスピーディーに場面転換して、ちょっと詰め込み過ぎとは思った。ひとりの体験にせずに数人の体験にさせれはよかったのに、とは思ったが、小説の構成上仕方なかったのかもしれない。

    今年2月に起きたことを、8月に刊行した著者の努力には敬意を表したい。もちろん、完全に事実ではない。また、実際にウクライナに行ってもないのに、見てきたように書くことの「限界」もあるのに違いない。

    それでも、我々はテレビニュースでは伝わらない、「今ここにある戦争」を想像する梃子を、本書を読んで身につけると思う。繰り返すが、現実はかなりな悲劇だったようだ。(この時の)ロシア兵はやる時には殺る。子どもであろうと容赦なく殺すし、ミサイルを飛ばしてくるし、中には公然とレイプもする。

    まことさんのレビューで本書を紐解くことを決めた。ありがとうございました。

  • この小説はフィクションですが、私たち日本人の誰にでも、突然起こり得る問題としてお読みいただければ幸いであると序文に記されています。


    物語は瀬里琉唯(るい)という17歳の女子高生の視点で綴られています。

    琉唯は6歳の時2歳の妹梨央奈、父母と共に福島県南相馬市で東日本大震災の津波を経験しています。

    電力会社の父の勤めるウクライナに2022年2月に母と梨央奈と共に行くことになります。

    世界は、コロナ禍に見舞われています。
    そしてウクライナが侵略されてレベル4の避難勧告が出ますが、梨央奈がコロナ陽性の疑いで飛行機に乗れません。
    空港に立ち入れず自宅待機になります。
    戦争が始まります。
    梨央奈が外へ出て行ったので、琉唯は後を追います。
    すると平穏だったはずの住宅街の路上をニュースで観たような迷彩柄の兵士の群れが前進してきます。

    助けてくれた親切な人の家の中のクローゼットに隠れていましたが、そこから二人は複数の遺体を目の当たりにします。
    足元に血まみれの死体が転がっています。

    戦争の恐ろしさがダイレクトに伝わってきました。
    私だったら兵士を見ただけで、震えあがり動けなくなるだろうと思いました。

    (以下本文より)
    震災と同じだった。
    いつでも起こりうることだ。
    戦争は過去になっていない。
    ずっと地上のどこかでつづいている。
    小さかったころは津波。
    コロナ禍。
    いまはここにいる。
    (以上本文より)

    後半のすさまじい描写に恐怖映画を観ているのではないかと思いました。

    そして父母との再会。
    父母の目の前で兵士に乱暴されそうになる姉妹。

    ネットにつながっていないスマホでメールに手紙を書いている人々のところは読むのがつらかったです。

    外国人は助けてもらえる可能性はあっても地元民はどうなるのかと思いました。
    それが、戦争ということなのですね。

    ウクライナから避難する日本人はみな箝口令を敷いているというのは驚きでした。

    でも、この本によってより近い真実を知ることができました。

  • ロシアによるウクライナ侵攻から一年。
    現在もこのような戦争が、実際に繰り広げられている事を改めて実感し、恐怖を覚える。
    決して遠い場所で起きている他人事ではないのだと、目が覚める。

    「状況と日時、各事態の発生場所に関し、現在までの情報を可能な限り網羅し、また帰国者の証言などを併せ、できるだけ正確を期した。」
    と冒頭に記されています。

    ひとりの女子高生の視点で綴られる、“フィクション”ではあるが、私達誰にでも起こりうる問題であることが、しっかり伝わる物語。

    驚いたのは、ウクライナから避難する日本人たちに箝口令を敷いていること。
    何が起きたのか、帰国に至るまでの経緯を明かしてはならないという。
    恐怖しかない。

    • Manideさん
      フィクションなんですね、

      でも、ほんと、恐いですね。
      いつ、日本でも、戦争が起こるか、わからないですね。
      哀しいですね。
      フィクションなんですね、

      でも、ほんと、恐いですね。
      いつ、日本でも、戦争が起こるか、わからないですね。
      哀しいですね。
      2023/03/09
    • aoi-soraさん
      Manideさん、こんばんは

      そう、フィクションと書いてありました。
      登場人物たちは架空でしょうが、描かれている出来事は、ほぼ事実かもしれ...
      Manideさん、こんばんは

      そう、フィクションと書いてありました。
      登場人物たちは架空でしょうが、描かれている出来事は、ほぼ事実かもしれませんね。
      本当に悲しいです。
      2023/03/09
  • 高校生の琉唯が、単身赴任の父と過ごすために母と妹とやってきたウクライナ。
    そこで突然巻き込まれた戦争。

    事情のよくわからない国での孤立状態。真偽が定かでないニュースを頼りに右往左往する。
    この先どうなるのか、大人たちもまったくわからない。
    戦争ってのは、突然勃発するんじゃなく、段階的に戦争状態になっていくから、焦らなくていいですよ。
    なんて、誰が言ったのか…
    一瞬にして巻き込まれて、灰色の世界になっている。
    兵士たちが、銃を乱射し、マシンガンの掃射に建物のいくつかが瓦礫の山と化している。

    震災よりも状況はもっと悪い。
    人の手で虐殺が繰り広げられている。
    どこへ行こうとも地獄絵図しかまってない。

    物語として始まっているのだが、実際に起こっていることの一部のようで恐怖を覚える。

    過去の日本の戦争被害は、ただの知識でしかない。
    だが、いまとなれば震災と同じ、いつでも起こりうる。そう感じるのは、琉唯だけではないだろう。
    今や戦争を知らずに生きている人は多いはずだ。

    ずっと地上のどこかで続いている戦争。

    知らないだけで素通りしていいのかと思ってしまう。
    だが、何ができるだろうか。
    平和な世界で生き続けるために考えなければならない。

  • 主人公は高校生の瀬里流唯、母と妹と共に、父の赴任先であるウクライナを訪れた…。この先、数ヶ月はウクライナに留まり現地の学校で学び家族一緒に生活する予定だったが…。ロシアによるウクライナ侵攻が突如として始まり、帰国を考えるが新型コロナの影響も受け、瀬里流唯の家族を取り巻く環境は悪化の一途を辿る…日本への帰国は叶うのか…。

    後半はすごく読むのがキツかったです…。取材に基づき、忠実に描きたかった松岡圭祐さんの思いが伝わってくる作品だと思いました。でもこれは私見なんですが、松岡佳祐さん自身の気持ちや思いなども読者に届くような、ノンフィクションとして読んでみたかったかも…そう感じました。ロシアによるウクライナ侵攻は今でもっても終わりが見えない状況です…誰もが安心して生活できる世の中になりますように…!

  • 前半は両親の不仲などで若干退屈だったが、後半は同じ本とは思えなかった。
    家族の諍いのような平凡な日常が、一瞬で命懸けの逃避行に変わってしまった。

    リアリティある描写に恐怖で心臓バクバク、手には汗、でも背筋はひんやり。
    これがウクライナの、そして今日も世界のどこかで繰り広げられている戦争なのだ。
    暖房の効いた部屋で、ソファに座って読んでいる自分の方が非現実的とすら感じるほど、のめり込んで読んでしまった。のめり込むというより、恐怖のあまり抜け出せなかったのかな。

    私はただ自分の日常を送ることしかできなくて、悔しい。
    ウクライナや世界の紛争に対して、どうしたらいいんだろう。

    • aoi-soraさん
      ちゃろちゃすさん、
      コメントでは始めまして。でしょうか。
      臨場感あふれるレビューですね。
      背筋ひんやり…
      分かります。

      記録を見ると私が読...
      ちゃろちゃすさん、
      コメントでは始めまして。でしょうか。
      臨場感あふれるレビューですね。
      背筋ひんやり…
      分かります。

      記録を見ると私が読んだのは約一年前なんですが、あまりにも衝撃的な本だったので、今でもその感覚を思い出せます。
      そしてこの争いが現在も続いていることが悲しいです。
      自分にできることをは何かあるのか…
      よく分からないですね。
      せめて常に関心を持つようにしようとは思います…
      2024/02/02
    • ちゃろちゃすさん
      aoi-soraさん
      こんにちは!
      コメントありがとうございます!

      本当に衝撃的な本ですよね。
      ブチャの惨殺は現実にあったことだと知って、...
      aoi-soraさん
      こんにちは!
      コメントありがとうございます!

      本当に衝撃的な本ですよね。
      ブチャの惨殺は現実にあったことだと知って、思考が止まりました。フィクションだったらよかったのに。
      2024/02/04
  • フィクションだが、あまりにリアルなフィクション。

    ウクライナのチェルノービリ原発博物館へ日本の電力会社から派遣されている単身赴任中の元へ、3学期の間だけ母、妹ともに滞在することとなった高2の琉唯。
    日本の高校も、福島からの転校やコロナで、あまり馴染めていなかったが、ウクライナの学校では、片言の英語も通じないし、習いたてのウクライナ語も発音が難しくてちっとも通じない。
    両親は不仲で、母はこの滞在中に父と話し合うつもりなのか、空気はピリピリしている。

    そんな中、ロシアによる侵攻が間も無く開始されると情報が流れ、一家は退避を決めるが、空港で妹がコロナ陽性になり、自宅に戻されてしまう。
    一家の滞在先は、あの虐殺の舞台となったブチャ。

    安穏と暮らしていた日本の高校生に生死を賭けたあまりにも長い一日が訪れる…。


    松岡さんの本をはじめて読んだが、少女の怯える息遣いさえ聞こえてきそうなリアルさに、ただただ少女と妹の無事を祈り、ほんの数センチのズレで亡くなっていく人達の無念を思う。
    この話は、『白旗の少女』で読んだ沖縄戦のようだ。
    何が生死を分けるのか、生き残った人々にも心に大きな傷を残しているだろう。
    そしてまだ戦争の終わりは見えない。
    2023

  •  本書は、ロシアのウクライナ侵攻に巻き込まれた家族について、日時・事態の状況や発生場所等、厳正を期して、女子高生・瑠唯(るい)の視点で綴った「実録的」小説です。
     瑠唯は、高2の3学期のみ(妹も中1で同行)私費留学し、電力会社勤務の父の単身赴任先ウクライナへ、母・妹と共に渡航します。
     夫婦喧嘩、コロナ、ウクライナ侵攻が、国外退避(帰国)を遅らせて、壮絶な体験をすることになります。民間人を標的とした砲弾や銃撃、殺傷等の生生しい描写は、情報網羅と帰国者証言等により、限りなく事実なのだとすると、極めて恐ろしくおぞましい人災なのだと思い知らされます。(国外退避時は箝口令が敷かれたそうですが…)
     このウクライナ侵攻が未だ終息せず、どう帰着するのか不明な中、本書のもつ意味・意義は、読み手に「関心を持つこと」「情報を精査し真実を知ること」「自分事として考えること」等、大きな課題の提示なのかと思います。
     特に、終盤で瑠唯を通して語らせた「戦争は震災と同じで、いつでも起こりうること。日本では戦後77年と言われても、戦争は過去になっていない。ずっと地上のどこかで続いている。」ということを、私たちは肝に銘ずる必要がありそうです。

  • ロシアがウクライナに宣戦布告した、2022年2月、当時、現地に滞在していた家族の、過酷な状況が描かれています。両親と娘2人の4人家族です。

    家族は、ウクライナの首都キーウの北西、ブチャ、という町に住んでいました。ここは、開戦当初、ロシア軍の攻撃が激しく、多くの民間人が、多数、殺害されました。「ブチャの虐殺」とも言われています。この本にも書かれていますが、空からのミサイル攻撃、地上では、止むことのない銃撃、いくつもの奇跡が重ならないと、生き残ることは不可能ではないか、と思いました。もう、何も考えずに、ひたすら銃の音のしない方に、逃げるしかありません。それでも殺されてしまう。人間は、ここまで残酷になれるのかと、悲しさと憤りを感じました。

    この4人家族は、逃げる途中、両親と、娘2人は、離れ離れになってしまいますが、無事、ポーランドの国境まで、逃げることができます。絶体絶命の状況になっても、何らかの幸運が働いて、逃げのびることができた。これは、フィクションだからであり、最後の、ポーランド大使館の職員とのやり取りを、読者に伝えたかったのではないかと思いました。国としての立場はあるものの、優しさがあまりない対応で、言葉の端々に違和感が感じられ、嫌な気持ちになりました。

    戦争の悲惨さを伝える本は、たくさんあるけれど、現在も続いている、ロシアとウクライナの戦争、その一端を知ることが出来る一冊です。

  • 出版された時は読み損ねていたけど、やはり今読むべきかと。
    日本がコロナ禍真っ只中に、高校生と中学生の普通の姉妹が、父親の赴任先のウクライナへ母と3人で向かうところから始まる。
    この家族は東北大震災で被災したうえ、コロナでさらに生きづらさも感じているなか、かえって異国で暮らすのもいいかもと姉妹は考えた。
    もう一つの軸は両親の不和。
    離婚を考えている母の態度は家族の絆を断ち切ろうとしている。
    ところがそこにちょうどロシアによるウクライナ侵攻が始まり、戦争なんて遠い世界での出来事くらいにしか考えてなかった姉妹は、突然ホンモノの爆撃に見舞われてしまう。
    たしかに、当時のウクライナの人々もまさか本当にロシアが攻めてくるとは思っていなかった。
    これは今の日本にも当てはまるのではないか?

    姉妹は、周りの人々が無差別に銃弾に撃たれるのを目の当たりにしたり、爆撃で崩壊する瓦礫に埋もれたり、両親とははぐれ、身体中傷だらけになりながら無我夢中で逃げ回る。(ブチャ市の無差別殺戮)
    あまりに真に迫っているので、今ガザやイランで起こっている民間人への攻撃はまさにこのような悲惨な状態ではないのかと背筋が凍る思いで読んだ。

    これは小説だから、奇跡的に姉妹は両親と巡り会うことができて命からからがら隣国のポーランドへ脱出することが出来たけれど、現実には難しかっただろう。

    最後の場面、彼らと大使館員との温度差にやり切れなさを感じた。
    ぜひ読んでみて欲しい。

  • ウクライナ侵攻から、もう三年も経つのかと考えさせられる作品。松岡氏にしては、設定の割にライトな作風。

  • ウクライナに単身赴任中の父親と生活するため、高校生の瀬里琉唯(ルイ))は被災地福島を離れ、母・妹と共に渡航。キエフ郊外の外国人学校に通い始めた頃、ロシア軍侵攻近しのニュ-スが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始めるも、新型コロナウイルスの影響で足止めを余儀なくされる。戒厳令下での帰国手段がなく、頼りの日本大使館からの情報も足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯と妹は戦争の惨劇を目の当たりにする・・・。松岡圭祐サンの気魄充満ドキュメンタリ-ノベル。

  • 今なお続く、ロシアの侵略。慣れてはいけない、目を逸らしてはいけない。

    国境を陸で接してしない日本では、すぐには考えられないかもしれない。それでもこの作品は、ウクライナをすぐ身近にまで引き寄せてくる。断続的にミサイルが発射されている。それにも慣れてしまっている自分。どこかで大丈夫だと高を括っている自分。突然始まる戦争の日々の恐ろしさも然ることながら、自分の感覚にも恐ろしさを覚える。もちろん、情報の恐ろしさも。
    そして、日本が戦争をしていた頃からまだ100年だって経っていないということを思い知らされた。どうしてこのような凄惨なことができる思考が、人間の中には組み込まれているのだろう。それを抑えられないのだろう。周りを巻き込むのだろう。

    フィクションですと書いてはあるが、これは箝口令を敷いている状況に対する皮肉と受けとった。フィクションと敢えて書いてあるからこそ、本当にこういうことが起きているのだと。逆説的に肯定しているのだと。さらに取材した相手を守ることにもなっているのかなとなんとなく感じた。

  • フィクションとは言え、これは実際に起こっていることであり、明日の日本かもしれない。

  • 登場人物の性格が性に合わない。トーンが暗い。

  • 電力会社員で、ウクライナに単身赴任している父と3か月を過ごすため、高校2年生の瀬里琉唯は母・妹とともに現地を訪れ、ブチャにある父の借家での生活を始める。
    見知らぬ国で不安を抱え、両親も絶えず口論する状況の中、ロシアによる侵攻が近いというニュースが流れる。              一家は慌ただしく帰国の準備をして空港に着くが、妹が新型コロナ陽性の疑いがあるとされ、追い出される。家へ引き返した一家は、帰国の方法を探るが、ついに非常事態宣言が発令され、遠くから爆音や震動も伝わり、緊張と不安が高まる。
    そして、家の外に出ていた妹と彼女を追いかけた琉唯が突然の爆撃に巻き込まれる。そこから先は、ブチャの大量虐殺がこんなものだったのだろうと推測される悲惨なシーンが連続して描かれる。
    女子高生の視点から、ロシアによる残虐な侵略と、ウクライナの悲惨な実態を生々しく実録的に伝えようという小説。
    これまで読んだ松岡氏の小説は感動的などんでん返しが印象に残っているが、この作品はそれらとは明らかに違っていた。
    琉唯と妹が何度もこれまでかと思われる危機を乗りきっていく様子はドラマチック。だが、それよりも、平和な日本で、なかなか実感がわかない非人道的な侵略戦争について少しでも考えさせる機会を提供しようと、できるだけ現地の様子を忠実にわかりやすく表現したい著者の意図が強く伝わった。

  • 高校事変シリーズの著者ということもあり、戦闘シーンの迫力は流石。決定的に違うのはノンフィクションであり少女に戦闘力がない事。この家族は大雨降って地固まるとなったのか、気になる。

  • どんなニュースより、
    どんなルポルタージュより、
    緊迫感とともに身近に感じたのは何故だろう?

  • 父の勤めるウクライナへ三か月間だけ家族で移住することのなった女子高生の琉唯。穏やかで退屈な日常だったはずなのに、ある日襲い掛かった戦火のただなかに突如として放り込まれることになってしまう。彼女と家族は無事日本に帰ることができるのか。
    あくまでもフィクションではあるのですが。ハラハラドキドキが止まらずサスペンス感が満ち溢れているにも関わらず、素直に「面白かった」という感想は言えません。だってフィクションではあっても、まるきりの絵空事ではないんですものね。今まさにこの瞬間、このようなことが繰り広げられているのだと思うと、現実感をおぼえないことに罪悪感すら抱いてしまう気分になります。
    あまりに直截なタイトルですが、これしかないという気にさせられます。災厄はある日突然始まります。震災、コロナ禍、そして戦争。いつ災厄が降りかかるか分からない中、平和な日常に倦むよりもそのありがたみを感じるべきなのでしょうね。

  • いつの間にか自分はウクライナから目を逸らしていたのだと気付かされる。ウクライナだけではなく、見たくないもの全てから。でも、見たくなくても現実はそこにある。目を逸らしてはいけない。

    • 川野隆昭さん
      けむさんのご感想に大いに共感します。
      読書には、目をそむけたくなる現実に、活字の形を通して向き合わせてくれる、という役割があると思います。
      けむさんのご感想に大いに共感します。
      読書には、目をそむけたくなる現実に、活字の形を通して向き合わせてくれる、という役割があると思います。
      2022/12/29
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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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