- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041131138
作品紹介・あらすじ
年間100 冊を読破、無類の読書好きとして知られるニシダがついに小説を執筆。
繊細な観察眼と表現力が光る珠玉の5篇。
【収録作品】
「遺影」
じゃあユウシはアミの遺影を作る担当な――。中学1年の夏休み、ユウシはクラスでいじめられている女子の遺影を作らなくてはいけなくなった。
貧しい親のもとに生まれてきたアミと僕とは同じタイプの人間なのに……。そう思いながらも、ユウシは遺影を手作りし始める。
「アクアリウム」
僕の所属する生物部の活動は、市販のシラス干しの中からシラス以外の干涸びた生物を探すだけ。
退屈で無駄な作業だと思いつつ、他にやりたいこともない。同級生の波多野を見下すことで、僕はかろうじてプライドを保っている。
だがその夏、海釣りに行った僕と波多野は衝撃的な経験をする。
「焼け石」
アルバイト先のスーパー銭湯で、男性用のサウナの清掃をすることになった。
大学の課題や就職活動で忙しいわたしを社員が気遣って、休憩時間の多いサウナ室担当にしてくれたらしいのだが、新入りのアルバイト・滝くんは、女性にやらせるのはおかしいと直訴したらしい。
裸の男性が嫌でも目に入る職場にはもう慣れた、ありがた迷惑だと思っていたわたしだったが――。
「テトロドトキシン」
生きる意義も目的も見出せないまま27歳になり、マッチングアプリで経験人数を増やすだけの日々をおくる僕は、虫歯に繁殖した細菌が脳や臓器を冒すと知って、虫歯を治さないという「消極的自死」を選んでいる。
ふと気が向いて参加した高校の同窓会に、趣味で辞書をつくっているという咲子がやってきた。
「濡れ鼠」
12歳年下の恋人・実里に、余裕を持って接していたはずの史学科准教授のわたし。
同じ大学の事務員だった彼女がバーで働き始めてから、なにかがおかしくなってしまった。
ある朝、実里が帰宅していないことに気が付いたわたしは動転してしまう。
感想・レビュー・書評
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結末を皆まで言わないスタイル。
ラランドのニシダが好きなので最初少し驚いてしまったが、焼け石や濡れ鼠、とてもよかった。
学生時代の恋を淡く思い出すような。
他の話も何か胸に引っかかる、独特な描写が多くて好みだった。
個人的には綺麗な文章というわけでも荒い文章というわけでもなく感じるが、なんだか学生時代を思い出すような、珍しい感覚になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芸人コンビ、ラランドのニシダ氏による短編集。
正直なところ、どれも好みではないのだが、人間の後ろ暗い部分を鋭く切り取って物語る力はすごいなと思った。
一見、普通に見える人たちの破綻した部分にぞわりと背中を撫でられるような...。
自分自身も普通に見せようとしているだけで、他人から見ればどこかが破綻しているのかもしれない。
2024.1 -
お笑い芸人のラランドが好きで、気になっていたので読んでみることに。さまざまな不器用な人物が登場する、5つの物語からなる短編集。
設定というか、着眼点が良い。
『遺影』『アクアリウム』は比喩表現がなかなか多めで、他の3編の方が読みやすい文章だった。
『遺影』の坂東先生の感性好きだなぁ。
個人的には『焼け石』と『濡れ鼠』が好き。
どの主人公も不器用で、それでいて人間らしくて。自分の普段見せていない部分を覗かれているような、そんな感覚。
ニシダはけっこう繊細で綺麗な表現をするなあ〜 -
まだ遺影しか読んでいないが、めちゃくちゃ良い。描写がリアルで引き込まれる。主人公の微妙な感情の肉体的な表現がすごい。昔のことをいろいろ思い出してしまった。
追記
ララチューンのパワプロ胸糞ニシダを見た後、
焼け石を読んだが、あの胸糞ニシダとこの焼け石を描いた人間が同一人物とは思えない。
ゲスの極みの川谷が不倫をして世間からヘイトを買った後、有無を言わさない才能で世評を変えたことを思い出した。
いい加減な人間 -
最近、ラランドにハマりYoutubeを漁っていたら
ニシダが小説を書いてると知り読みました。
読書歴の浅い私にとっては
人を知ってから本を読むというのは初めて。
文章からニシダを感じることが出来て
混じり気のない純文学。
「アクアリウム」「焼け石」が特に好き。
全作品の終わり方の余韻が凄く良い。
私みたいな純文学初心者にオススメ。
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オードリの東京ドームで東京に行った際に、神保町を散策し、スケザネ図書館の本棚の中から購入させていただきました。
芸人、ラランド西田さんの初めての小説。
西田さんは2歳年上で、ほぼ同世代。
クズ芸人と称されたり、遅刻グセとか色々ダメなところもあるみたいですが、本を読み解く力や物事の考え方が鋭敏で、めちゃくちゃ好きな芸人さんです。
YouTubeもよく観ています。
私自身、ニンゲンとしてクソみたいなところや欠落しているところがあるし、勝手に共鳴しているところがあります。自分よりも何倍もスゴい人なんですが。
『不器用で』は、比喩表現など多様されていて、5篇ともクセの強い、生きるのが不器用な人たちの重ための話なので読み進めていくのは少し疲れました。
ただ、登場人物たちの人生観とか、無常感とかが、最近読んだ本の中でもかなり私の気持ちに近いものを感じて、かなり気になる短編集でした。
「遺影」のp38の先生の作品をつくる理由とか、
「テトロドキシン」のp128の時間や人生の考え方。
ふとした時に、救いがないなと思う時に、読み返してなにかを慰めるの用いたい小説だと思いました。
文学的価値とか、難しいことはよくわかりませんがこの小説が好きだと思いました。 -
3.2
濡れ鼠が良かった -
お笑い芸人としてのニシダさんが好きなので読んでみた。
風景、心理、人間関係など全体的にグロテスクな描写が上手だなと思った。
それと、色々な視点からの侘び寂びを言語化するのが上手だなと思った。
どの話も、じっとりと湿っぽい空気感で展開されるのが好きだった。
手放しのハッピーエンドで終わる話は少ない印象で、少しだけ報われるとか、今後報われる方向に進みそう、という絶妙なラインの落とし方してるのも好きだった。
芸人ニシダの人間臭さも感じられる良い本でした。次回作も期待してます。 -
もしかしたら最後まで読めないかもしれないと思った。接続詞の少なさと文の短さと、不自然な比喩のせいで。
でも最後まで読めた。一番いいと思ったのは『アクアリウム』だ。
自分は駄目なヤツだと知りつつ、それより更に下の存在に安心する種類の人間がこの世にはいる。あたしもそういう卑屈な人間だから、この主人公の気持ちがよく分かった。真っ直ぐ顔を上げて人を見る度胸がないので、目玉が裏返るかと思うほどの上目遣いでキョロキョロと、自分に優越感を与えてくれる人を常に探している。
主人公にとって、同じ生物部の波多野がそれだった。
地震による停電のせいで、生物部で飼育していた巨大魚が全部死んでしまったとき、近くにいたのは波多野だった。そのとき何があったのか、主人公が後に真相を知り、今まで自分を辛うじて支えてくれた波多野の存在が実はそうではなかったと分かってしまうラストシーンの文章が忘れられない。
短編集はストーリーを忘れてしまうことが多いので、ここに簡単に記載しておくことにする。
■遺影
クラスで虐められている女の子の遺影を作る男の子の話。
■アクアリウム
生物部に所属する僕と波多野の話。
指の話と部で飼っていた巨大魚が地震による停電で死んでしまう話。
■焼け石
バイト先の銭湯で、男性用サウナの清掃を担当している女の子の話。
■テトロドトキシン
経験人数を増やすことが生きがいで歯がボロボロの男性と、趣味で辞書を作っている女性の話。
■濡れ鼠
12歳年下の恋人を持つ大学教授が、時間が過ぎても勤め先のバーから帰ってこない彼女を心配して慌てふためく話。