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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041134757
作品紹介・あらすじ
歴史の闇の中であっても輝きを放つ、「敗れざる者たち」の矜恃とは――?
蟹工船の乗組員の谷は、内務省の役人・クロサキに雇われ、“プロレタリア文学の旗手”と称される小林多喜二の取材を受けることに。
だが現れた多喜二は、驚くほど気さくな青年だった。
仕事を早く終わらせたい谷は多喜二の尾行を始めるが――(「雲雀」)。
特高に監視されながらも川柳で時代と闘う鶴彬。
“消えた”記者の謎を追う満鉄社員の志木裕一郎。
稀代の哲学者・三木清。
信念を貫き続ける彼らに、クロサキの影が迫る。
累計130万部突破「ジョーカー・ゲーム」シリーズの著者が令和の世に問う、
輝ける男たちを描いた希望と感動のスパイ・ミステリ。
みんなの感想まとめ
歴史の暗い時代を背景に、人間の尊厳や信念を描く連作短編集は、特高や憲兵隊の圧力を受けながらも文学や思想の力を信じる人々の姿を鮮やかに浮かび上がらせます。小林多喜二や三木清といった実在の人物が登場し、彼...
感想・レビュー・書評
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内務省のクロサキがかかわっていく、連作短編集。
戦争にひた走り、息苦しくなっていく日本。
特高や憲兵隊が登場し、ひりひりした世界。
内務省のクロサキに追い詰められていくターゲットだが、そうまでされなければならない、危険な香りがしない。
むしろ、蟹工船での経験を真摯に取材していく小林多喜二や、裏切られた相手にも手を差し伸べる三木清など、人間的な大きさを感じる。
1925年に成立した治安維持法による歪み、止まらない狂気が、筆者らしい作品。 -
柳広司は、岩波書店の「機関誌」である『岩波』のレギュラーとしてエッセイを寄せている。それらのエッセイで激越な表現で示される彼のスタンスや内容には全く共感できないのだが、彼の小説は、敬意を払って読んでいる。ヒューマニズムと社会の束縛の桎梏に苦しむ心理を描くのがとても印象的。また、とてもクリアで平明な文体でありながら、登場人物の思考や感情がビビッドに立ち上がってくる。感銘を受ける現代日本の作家の一人だ。
本作では、小林多喜二や三木清が、語り手の視野の中に登場する。
現代の学校教育で、昭和前期の現代史をきちんと教わることは、ほぼ無い。よって、平均的な日本人は、自覚的に学ぼうとしない限り、治安維持法や憲兵の意味、そしてその時代がどのようなものだったか知る機会はほとんどない。ひょっとしたら、今の国会議員クラスでも、良く知りはしない輩が多いのではないか、と僕は疑っている。
コクミンの多くが、以下のように考えるようになる時代が、すぐそこまできているのではないだろうか。つまり、「思想の強制あるいは少なくともガイドラインの提示のようなものが望ましい」と願うようになる時代が。「理想の追求」と「相互監視と迫害の惨事」は紙一重だ。過去に学び、プラトンやカント流の理想主義が暴走するとき、強烈な副作用が発生することについても、多くの人が理解できるようにならなければならないだろう。 -
共産党員を追い詰めていく特高を描きながら、逆説的に文学や思想というものの、普遍性を感じさせる内容で、すごく良かった。
以下、ネタバレ含みます、注意。
「雲雀」では、小林多喜二が『蟹工船』を生み出す前夜が舞台となる。
蟹工船の工員二人にインタビューを行うのだが、その二人は特高の息がかかったスパイであった。
彼らは小林多喜二との会話の中で、自分たちが生きていた蟹工船という世界の異常さに気付く。
面白いのは、エンディングだろう。
『蟹工船』を読んだ工員の一人は、自分が語った体験を、語り以上の「ストーリー」に仕立て上げている小林多喜二と、小説そのものに、のめり込む。
そして、「ストーリー」がまた、人の行動に影響していくという終わりが良かった。
「赤と黒」では、時間軸が終戦直前にまで進められている。
この話で中心となるのは、三木清だ。
正直なところ、これまで断片的な情報しか知らなかったのだけど、彼の持つ才能と、人間味に惹かれた。
特高クロサキの憧れの人物であり、世俗の人間とは段の違う場所で、当時の世界を俯瞰出来ていたであろう三木清が、なぜ酷い最期を迎えることになったのか。
特高内の状況変化と、三木清という人物を、クロサキがずっと追ってきた対象として、それぞれ丁寧に描くことで、うまく繋がったラストとように思う。
その意味では、短編の、どこをテーマにすると良いかというボリュームの持たせ方が上手いといえるかもしれない。
とにかく最初と最後の二話に、心を持っていかれた、良い一冊だった。 -
良くも悪くもこの作者らしい作品だ。
時代や取り上げた題材はお得意のカテゴリーだと思う。
「ジョーカー・ゲーム」のシリーズより内容的に半歩踏み込んでいる感じはした。
なかなか期待値までの評価ではないが、つい読んでしまう作家だ。 -
最終話の赤と黒が良かった。
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柳作品3作目で、ジョーカーゲームが面白かったので期待していたけど、ちょっと飽きてきた感で最後まで読めなかった。スパイもので、短編集みたいな感じ。
売る -
人の尊厳に最後に出会うとは思わなんだ
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柳広司のスパイもの。
正直スパイっていう観点でこの作品みるとあんまりピンとこないんですが。
(それだけジョーカーゲームのイメージが強いのかもしれない)
単純に読み物として面白いです。
戦争前後の内務省役人・憲兵隊・特高、一般市民・アカの人間。
歴史もわかりやすく踏まえ面白い。
私に知識がなくどこまで史実が盛り込まれてるのか分かってないんですが…(問題)
@手持ち本 -
戦時中の共産主義(アカ)狩りの話。
重めの内容ですがテーマが一貫しているので比較的読みやすい。
柳氏のジョーカー·ゲームのシリーズが好きな方、戦時中の政治のゴタゴタ好きな方におすすめ。 -
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時代背景や時間の経過が上手く染み出す感じで、その中でそれぞれと立場で、必死に生き方を模索している様子が印象に残りました。
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なんだか暗くて鬱々する感じ。
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特高の冷酷さが報われるというか、あの時代、日本の誰もがどう生きるか?を意識しながら、人によってはそれすらもわからないまま生きてたんだと。現代だって大変だけど、幸せな時代に生きていられる好遇に気付かされました。
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お役人さんの失敗から成功まで
短編のためサラッと読みやすい
柳先生はやっぱり短編が楽しいかも
饗宴も良かったけどこのくらいのボリュームの方が読後感が良い感がする! -
大日本帝国が、言論統制をしてまで拡大したかった領土と権力。共産主義者を蔑視しアカ狩りを断行する。一話目は小林多喜二と蟹工船。内務省のクロサキが全編を通じて登場するが、第一話では蟹工船に乗り組んだ漁師にまんまと裏をかかれてしまう。第二話は憲兵大尉とクロサキ。本来憲兵は軍の警察として軍人を正しい方向に導く役目を負っていたのか! しかし、東条英機首相が陸軍、内務両大臣を兼ねるようになり憲兵隊は「堕落」する。小林多喜二や、最終話に登場する三木清は、良くも悪くも一途な国民性の犠牲者だった。
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小林多喜二、鶴彬、横浜事件、三木清など歴史の勉強では一行登場するかしないかの人達。でも、実際に生きていた人達の生きた証が、特高警察幹部の視点から語られるのが面白い。もうこんな時代には戻りたくないけど、そこに向かって時代が巡り始めているようにも感じてしまい少し怖くなった。『ジョーカーゲーム』シリーズも読み直そうかな。
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ペンは剣よりも強し。鶴彬と三木清の話が良かった
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本編の面白さ。あとがきの森絵都さんのコメントで更に面白さが増幅される。
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