雨月先生は催眠術を使いたくない (角川文庫)

  • KADOKAWA (2023年3月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041135204

作品紹介・あらすじ

文学部2年の織辺玲(おりべ・れい)は、配信アプリで人気のイケメン陰謀論者・ユイリに高額投げ銭をしている友人を案じ、やめさせる方法を大学図書館で調べていたところ、
立ち入り禁止の閉架書庫の中に奇妙な空間があるのを見つける。ふかふかのラグマットに、たくさんの本、なぜか湯気を立てている肉まんも――!?
訝しんで近付くと、背後から「見た……?」と不気味な声が。振り返るとそこにいたのはボサッとした黒髪の、色白痩身の男性だった。
驚く玲に、彼は、「積んであった本のタイトルは?」など、奇妙な質問をしてくる。
なんと彼は、文学部心理学科の准教授・有島雨月(ありしま・うげつ)だった! 閉架書庫を自分のランチ場所にしていたようだ。
やたら不愛想な彼に戸惑う玲だが、心理学の准教授ならば渡りに船。
友人を助けてほしいと訳を話すと雨月は興味を示し、一緒にユイリ主催のイベントに参加することになったのだが――。

「え? 有島先生、催眠術使えるんですか!?」
「はあ? そんな非科学的なもの、この世に存在しません。催眠術なんて、この世には……」

「……なんで君だけ、全然かからないの」
「あはは! 有島せんせー、玲ちゃんに興味津々なんだってさ」

やがて玲は知ることになる。有島雨月の大きな秘密と苦悩を。そして彼が追い求めてやまない「誰か」の存在を。
自分の持つ「不思議な力」を利用しつつも憎んでいるクセ強准教授・有島雨月と、好奇心旺盛な天真爛漫女子・織辺玲。
新・凸凹コンビが科学と非科学の力で謎を解く、心理学×催眠術×現代ミステリ!

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

大学生の織辺玲は、図書館での調査中に奇妙な空間を発見し、そこで出会った心理学准教授・有島雨月と共に、催眠術を巡るミステリーに挑むことになります。雨月は催眠術の存在を否定しつつも、玲には全く効かない不思...

感想・レビュー・書評

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  • 大学生の織辺玲は、図書館で調べ物中に、閉架書庫の中に奇妙な空間を見つける。次の瞬間、背後から現れたのは、文学部心理学科の准教授・有島雨月。
    驚く玲に、雨月は意味のわからない質問を重ねる。
    実は彼は催眠術「らしきもの」が使え、玲の見たものを聞き出そうとしたのだが、何故か玲には全く効かなかったのだ。
    雨月に興味を持たれた玲だが、彼女の方にも雨月に相談したい事があり……。


    催眠術がないことを証明したい准教授と、催眠術が全く効かない女子大生の心理学ミステリ。

    タイトルや表紙などから受けるイメージよりストーリーはシリアスめですが、主人公の玲や雨月の友人の警部補さんが明るいので、そこまで暗くならずに読めます。
    雑学的な話も多く、興味深いです。とくに、日常に潜む悪意や詐欺の手口に少しだけ詳しくなれる……かも。

    まだ明らかになっていない伏線がありそうなので、続きが出るならぜひ読んでみたいです。

    作者さんのnoteでスピンオフストーリーも読めるのでそちらもぜひ(読了後推奨)。

  • 大学生の織辺玲は、図書館で心理学科の准教授・有島雨月と出会った。雨月は自分の持つ催眠術らしき能力が効かない玲に興味を抱く。そんな玲もまた雨月に相談したい悩みがあり──。凸凹コンビの心理学ミステリ!

    相手の記憶を話させる能力を持つけれど、催眠術が存在しないと証明したいひねくれ准教授・雨月と、絶対に催眠にかからない女子大生・玲が出会う三つの事件を描いた連作短編ミステリ。陰謀論、配信アプリ、引きこもりなどの現代的なテーマを扱いつつ、その奥に潜む闇を暴いていく!

    「心理学は数える学問だから。統計でも実験でも、僕は年がら年中何かを数えている」
    雨月のこの一言で心理学を誠実に書く意志が伝わる。心理学でおなじみの実験、用語などもふんだんに取り入れながら、それを悪用する者たちを追う!雨月が持つ能力への葛藤や対応、フォローする刑事の相棒・不破もいいキャラだった。

    一章『陰謀論ライブ配信事件』
    玲の友人・真紀がリア恋したライブ配信者・ユイリ。彼は配信の中で奨学金制度の裏側に潜む優生思想について持論を語っていた。真紀はその陰謀論にハマってしまい、玲はそれを助けるために雨月へと相談を持ちかけるが──。

    読んでいてもユイリの巧みな語り口につい押されてしまう恐ろしさ。配信アプリという場、重ねられた希少性、陰謀論と悪魔の証明の親和性など、なるほどと膝を打つ内容に仕上がっている。特に昨今のトレンドとも言える陰謀論についての解説はぜひ一読してほしいと思うほど。陰謀論に隠された陰謀の闇の深さにゾッとした。

    二章『ヘグムラプタ教育塾事件』
    あきる野市の交番に駆け込んできた中学生と小学生の姉妹。彼女たちは引きこもりの学生を引き取って不登校を治すという教育塾から逃げてきたという。聞き取りをするも、姉妹で証言がなぜか食い違っていて捜査は難航する──。

    今回は雨月が自身の能力へ抱く葛藤が伝わる話に。話させることはできるが、相手は話したことを覚えている。幼い姉妹に罪悪感を抱かせないため、とあるアイテムを使うシーンが和んだ。登場する「三半規管を揺らす絵」という響きや、塾内で行われていた行為もおぞましい。教育塾の顛末はあっけなかったものの、姉妹の親子関係にページを割り振って描いたのはよかったなと。

    三章『離島集団脱出ゲーム事件』
    脱出ゲーム「天使文明からの脱出」のテストプレイに誘われた玲。有島ゼミの先輩・三井とともに、横須賀の沖合にある無人島へと向かった。しかし、到着寸前に雨月から警告メールが届いて──。心理学部生限定40人が集うこの脱出ゲームに隠された罠とは?!

    ミステリ好きとしては、やったー!離島だ!脱出ゲームだ!とウキウキしていたら、やっぱりきな臭い流れに(笑) ゲームの構成、謎のプレイヤー、協力すべきかそれとも──まさに心理が試される脱出ゲームにハラハラさせられる。隠された陰謀だけではなく、込められた思いがやるせない。ここで物語はひと段落したけど、ぜひ続編も読んでみたいなと感じられる作品だった。

    p.34
    「人は、終末論や陰謀論のように、世界が危機に陥っているような話にハマると、仕入れた知識をいますぐ誰かに話したいと思うのだよね。だって、知らないままでは、相手がかわいそうだから。この説を一刻も早く説かなければならない……と考え始めると、他者との会話が全て、キャッチボールではなく『知識の披露』になってしまう。だから、相手からの疑問も反論も、新たな知識を披露するきっかけにしか感じられなくて、受け答えにならない」

    p.36
    「悪魔が存在しないことを証明せよ、というシンプルな問題。誰にも証明できないんだ。だって悪魔はいないから、証拠なんて出しようがない。よって、第三の団体が無いという証明もできない」
    「あー……だから陰謀論にハマるひとがいるんですね」

    p.105
    有島曰く、書くことと調べることは表裏一体なのだという。良い文を書く者は、調べ方がうまい。

  • 玲ちゃんが逞しい一方で、雨月先生の口調があまり定まっておらず、今誰が喋ってるんだと混乱することもあったが、最後の解釈を聞いて納得。
    なるほどなと。
    毒舌なのに急に子供っぽい甘えた喋りになるので、玲ちゃんとどっちが大人何だかと思っていたのだが、ある意味勘違いではなかった。
    扱う事件はどれも決して子供騙しではなかったけれども。
    それぞれ最初は単独の案件だったが、最後に繋がっていくのは何だか妙な怖さがあった。
    どの事件も感覚的に現代の「闇」部分を見せられたような、そんな怖さがあったので。
    事件に明るい暗いという尺度を持ち出すのは間違いかもしれないが、この話の事件はどの内容でも陰鬱な感じがしたので。
    投げ銭やら脱出ゲームやら身近な現代ネタを持ち出していることもあり、実感しやすかったのもあるのだろう。

    雨月先生の凄まじい過去、特に行方不明になっている人の件は、実は生きていて、しかも敵方になっている……なんて王道ネタを想像していたら、予想の斜め上方向の決着を見て驚いた。
    ええ、その立ち位置は想像していなかった!
    雨月先生の精神的にはよかったのかもしれないが、個人的にはなかなか珍しいパターンだと思った。
    これはシリーズ化を見越してのこと、なのかもしれない。

  • 予想してたよりもシリアスなお話だったけど、めっちゃ好きだったのでぜひ続編を。

  • 1.陰謀論ライブ配信事件
    2.ヘグムラプタ教育塾事件
    3.離島集団脱出ゲーム事件

    催眠で思い出せられる有島雨月と催眠術にかからない玲のコンビ。
    雨月の父、術にかからない玲はまだ何かありそうなんだよなぁ。
    なんか続きそう…?

  • さらさらっと読めました。
    まだ、玲ちゃんに催眠術?がかからないのか、お父さんの事件はどうなったのか、はっきりしない事があるので、続編が出るなら読みたいです。

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著者プロフィール

3月28日生まれ、神奈川県出身。第6回角川文庫キャラクター小説大賞〈優秀賞〉を受賞した『江戸落語奇譚 寄席と死神』でデビュー。同作はシリーズ化され、全2巻。

「2023年 『雨月先生は催眠術を使いたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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