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Amazon.co.jp ・マンガ (212ページ) / ISBN・EAN: 9784041136270
作品紹介・あらすじ
神の祝福を受けた伝説の島「エデン」。
そこに一人の穢れなき少女が迷い込んだ。
島を守護する「竜」は幼い彼女を救い、娘のように慈しんで育てた。
しかし十三年後、竜殺しと呼ばれるシギベルト率いる帝国軍からの武力制圧を受け、ふたりは引き裂かれる。
竜と少女、親子以上の絆で結ばれたふたりがたどる運命とは?
電撃小説大賞《銀賞》受賞、発売即重版の本格ファンタジー完全コミカライズ!
感想・レビュー・書評
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物語が絵巻物になったなら、神の言葉だけには頼れない。
はじまりに申し上げておきます。傑作でした。
私が本作を読み進めるに至った契機については「桐嶋たける」先生のネームバリューに惹かれたことですが、クライマックスを目前として原作小説の方に走りそちらもまた傑作であることを確信しました。
よって、小説から漫画へひるがえりて結末を見届ければ、さらなる傑作へと持ち上がるというものです。
そんなわけで、コミカライズ版『竜殺しのブリュンヒルド』は全四巻構成となっています。
通常、文庫本一冊の漫画化企画は三巻が相場なだけに、四巻というのは破格の分量ですね。
媒体を変える際での演出も光っており、コミカライズとしてこれ以上は望めないほどの出来でした。
時に、私は原作小説についても、ネタバレありきでレビューを送らせていただいています。
もしよろしければ、片目をつむった上でそちらも読み進めていただければ嬉しいのですが……。
今はそちらをいったん置いておいて、本作の紹介を進めていくことにしましょう。
時に、一巻で網羅する内容としましては、第一章すべてから第二章のはじまりにかけてです。
本作は復讐譚なのですが、一巻は主人公の育ての親であり愛しき相手でもある「エデンの竜」との出会いと別れ、つまりは復讐の興りまでを丹念に描き、仇敵との対面シーンをもって――怒涛の〆と相成ります。
奇しくも原作は四章+α構成になっているので、計算して描き進めていったことがわかりますね。
なお、原作小説『竜殺しのブリュンヒルド』はシリーズ化されているのですが、二作目を連想させる要素を画面に盛り込んでいたり、書籍の設定資料を盛り込んでいたりと芸の細かさを感じさせました。
シリーズとして形を見た世界観を踏まえ、テーマに沿う上でそぐわない部分は削いでいる印象です。
それでいて、原作の舞台劇を思わせる掛け合いは冴え渡っていました。
物語の芯を捉えた上で漫画という媒体に向けて仕立て直す試みはきっちり成功させていたと感じます。
すなわち本作はファンとして深く読み込んだ上で、理解と愛に満ちていなければ描けない漫画である。
そのことを、描写の端々からしっかり感じ取ることができたのです。
ただし、全体としては原作からの肉付けも際立っている印象でした。
この場合は小説ならサラッと行間部分として流せる、深く重要ではない部分に踏み込んでいます。
もちろん余分と思わせず、むしろ漫画版独自の演出として昇華できていたのが実に面白いところでした。
具体例としては主に軍艦、航空機などの近代兵器について無慈悲に、かつ剛健に描いたことです。
本作が架空の欧州風世界であること、設定年代が帝国主義時代だということを意識させられますね。
この辺の男の子な趣味を存分に描いたことが少女の絶望と諦念の感情を高めたと考えれば見逃せません。
もちろん本作の主人公は少女であり、少女のための物語だということは誰も否定できないのですが。
ともあれ、少女の諦念と受容の程度が高まったことにより復讐の激情が、よりすさまじく吹き上がることになったわけです。「死後の世界に救いを求める」というささやかな願いをたやすく吹き飛ばせるくらいに。
視点の当て方は違うにせよ、『竜殺しのブリュンヒルド』を捉える上での最適解なのではないでしょうか。
時に、私は原作を“少女”ないしは主人公「ブリュンヒルド」の内面に踏み込みつつ、冷徹な地の文――この場合は「神の視点」と言い換えていいソレが、無慈悲に、けれど公平に糾弾する趣向を取ると思ってます。
ただし、漫画は小説と違って世界を内観でなく俯瞰で捉えないといけない部分もあります。
絶対なる真理を告げる神の言葉は、この世界の住人の口ないし心からでしか紡ぐ術がないわけです。
なのでここ一巻では人間らしい感情であがく者と、神の真理を絶対とする者の間での感情のすれ違いが、いっそう鮮明に伝わってきました。後になって読み返すたび、対比が強烈に働いていたと気づけるのです。
葛藤こそが、軋轢こそが、歪み軋む心を磨いて物語を珠にする、と言ってしまえば悪趣味でしょうか?
以上。
漫画版では、完璧なる理想を体現した「楽園エデン」という環境と、「帝国」という粗野な力の体現者、ふたつの対比が強く打ち出されています。絵情報によって容赦なく前頭葉に叩き込まれました。
うち、前者は帝国によって失われてしまい、楽園の住人だった“少女”はブリュンヒルドとして復讐に走るわけですが……、漫画においても後者の織り成す石畳の街並みがけして悪いものとは描かれていませんね。
原作小説を書いた「東崎惟子」先生と、それを元に漫画を描いた「桐嶋たける」先生。
両先生の作家性の違いとも言えますが、繁栄のためなら無辜の竜と楽園の住人たちを虐殺する人間のおぞましさが描かれると同時に、日進月歩で進化していく人間の歴史のダイナミズムを謳っているわけです。
この物語が残酷なのは、両方が公平に評されているからなのかもしれません。
さて。二巻以降では、「ブリュンヒルド」という主演女優の立ち回りを漫画ならではのビジュアライズをもってして魅力的に描いていくことになるのですが、その辺の記述については続刊に譲るとしましょう。
今回は漫画と小説の媒体の違いに終始したレビューになってしまいましたが、もしよろしければ読み比べていただけましたら幸いです。どちらも描き方は違えど傑作だと、冒頭で申し上げた通りですので。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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