彼らは世界にはなればなれに立っている (角川文庫)

  • KADOKAWA (2023年8月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784041138625

作品紹介・あらすじ

「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子

「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!

高知市の「TSUTAYA中万々店」書店員、山中由貴さんが、お客様に「どうしても読んで欲しい」1冊に授与する賞、第4回山中賞受賞作。

みんなの感想まとめ

物語は、幻想的な雰囲気の中で展開され、過去と現在の重なりを通じて人間の本質に迫ります。読者は、主人公たちの視点を通じて、現実に潜む悲劇や人間の残虐性について考えさせられ、同時にその中で抗おうとする知性...

感想・レビュー・書評

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  • ありとあらゆる絶望がここに。
    辛すぎて何度も挫折しそうになった。
    だけど、目を背けてはいけない気がした。
    メッセージ性が強い。
    読むべき作品とは思うけど、個人的には好きとは思えなかった。

  • 社会派エンターテインメントの雄が贈る衝撃作

    「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子

    「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
    ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
    社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!

    面白かった。様々な現代の問題が組み込まれた寓話的な作品。架空の街を舞台にしてあるものの、現代に似通う思想や構造である点が良かった。
    民主主義から衆愚政治になり、全体主義的な思想が蔓延るようになるのが、今の日本のようで、この作品の終わり方に通じるものがあるのでは、と思いゾッとした。しかるべき時に声を上げないと、この世界の人たちのように自ら人権といったものを放棄し、ディストピアに陥っていますのであろう。
    また、羽虫と言われるような差別人種や伯爵といった上級階級の人がいることも今に似通っていて恐ろしかった。

  • 読み始めると、時代は?場所は?とまず気になった。
    取りあえず勝手に黒海沿岸を想像しながら読み進める。次第に「これは読み終えられないかも…」と思い始める。しかし先に進むうち不思議な魅力に変わる。
    幻想的で有りながら、過去も現在も抱えている大きなテーマがいたるところに有ることに気付かされる。空想の物語の中で私達に何かしら警鐘を鳴らしているように感じた。

  • 有り得ないほどに有り得るかのような物語
    悲しすぎて読むに耐えられない場面もあったが
    それも含めてこの世のどこかで起こりうる現実
    寓話的で引き込まれるストーリー展開は秀逸で
    読み手の視点で考えさせる手法がすごい

  • まるで寓話のような雰囲気の中、とても難しく、美しい世界に浸ることができました。
    その教訓も峻厳なもので、人間がいかに易々と流されてしまうものか、集団がいかに残虐になりうるかを説いているような気がします。また、それに抗おうとする知性がどんな目に遭うのかも。

    最後に超越した視座から俯瞰してくれるのが唯一の救い。
    改めて作者は、なぜこの作品を世に出したのか、巻末に解説もついていますが自分なりに調べてみて、みなさんの感想も読みながらもっと納得したいなと思います。


    ──人の手でなしうる奇跡は、破壊だけだ。

    見事なまでに痛烈な描写です。


    そういえば『ザリガニの泣く頃に』にも空気が似てるなー。似てないかな。

  • これまで読んだ著者の作品のイメージとは、全く異にする小説なので、戸惑いながら読むことになった。
    序章から始まり、4章で構成され、トゥーリ、マリ、葉巻屋、魔術師と、それぞれ異なる語り手が話を始める。
    彼らの名前からはどこの国とも想像が付かず、彼らの住む町も「始まりの町」と呼ばれ、SFか寓話か、なんとも捉えきれなディストピアの世界が広がる。
    この世界では、中央府の印が入った推薦本一色となり、その他の本は認められず、地下出版した秘密の印刷所は警察に急襲され逮捕されるという。逮捕者は中央府の矯正施設に送られるなんて、まるで北朝鮮か中国を思い起こされるが、この日本でもいつかはあり得るか。
    政党間の憲法改正で、緊急事態条項とかが論議されている。こういった法律の危険な側面は、松岡圭祐著『高校事変』で語られていた。
    底流にあるのは、やはり著者らしい現代への警世であり、話が進むにつれ、著者の警句というか現代及び将来を見据えた言葉が綴られる。
    「強大な力の独占は災い以外なにものも生まない。だが人間は富も力も分け合うことを嫌い、可能な限り仲間内で独占しようとする。なかでも最も恐ろしいのは、力を持った悪人ではなく、力を握った愚か者たちだ」
    「他者の尊厳のために闘わないと言うことは、自分の尊厳をも手放していくことよ。個々の尊厳は貧しく痩せたものとなり、おのずと命の単価は安くなる。それがどんな事態を招くのか、この町はいつかきっと知ることになるわ」
    著者がこれまでの書で危惧する事態が、現実となる日が来るのだろうか。

  • 身分差別される移民の子が登場し、ダークなメルヘンという感じで読み始めたけど、実は今のまま目の前のことだけを見て生きていたら、こんなダークな未来がやってくるって寓話のよう。「法律や制度、教育の変更なんて自分には関係ない。偉い人達が上手くやってくれる」って思ってたらいつかそれらに縛られて、自分も大切な人も守られなくなる。今、正にそんな未来に向かっている。読み応えずっしり。

  • 面白かったけど、風刺的な要素が多分にあってちょっと幻夏や天上の葦とは違う感じな?と思った。

    地の民、羽虫とが混合する土地、世界観で選挙、習慣、因習、人種、政治制度等挙げたり、考えたりしはじめたらキリがないくらい。

    考えることが多かった。

  • 太田愛の3部作とは全く異なる、若干ファンタジーじみたドラマ。舞台は中世の海外のイメージで、主に身分差による差別や迫害が描かれる。裏には現代への警鐘が流れていて、描写が辛いのでメッセージとしても強い。とは言え相性が悪く、とても読み進め難かった。4部に分かれてそれぞれ語り手も違うが、特にカタルシスもなく、まあまあ淡々としている。作品としてはとても意義があるとは思うんだけど……。

  • 羽虫(移民)達がしいたげられる架空の街でおこったことを、4人の目線で語る。

    『レーエンデ物語』の一章かと思うようなお話。
    太田愛さんの鑓水シリーズとはガラリと違うものの、
    現状を楽な方へ選択していくとこうなっていくのだ、という『天上の葦』でのテーマを彷彿とさせた。
    最後は涙が出そうだった。

  • 犯罪者、幻夏、天上の葦、未明の砦に続き大好きな太田愛さん5作目。

    今までの社会派作品とは打って変わってファンタジー小説のようにはじまり、正直途中まで何度も挫折しそうになった…(これ本当に太田愛さんの作品?と。)かなりハマるまでに時間がかかってしまったけど、どうしても読み切りたい!と頑張って読んだ感じ。

    しかし苦節しながらも読み終えた今、やっぱり太田愛さんだった。今の日本(いや世界か?)に警鐘を鳴らすような作品。

    このままだと日本もこの作品のようになってしまう…すでになりつつあるのか。グサグサ刺さりました。このままではいかんよな、本当。そう思わせてくれる作品でした。
    強烈な風刺的作品。

    とはいえ、やはりいつもの太田愛さんの作風の方がやはり好みでした^^;

    これからも期待大!!追っかけます♪

    • shintak5555さん
      メイさま
      ご無沙汰しておりました。
      太田さん、この作品だけ毛色が違ってましたよね!
      未明の砦でいつもの感じに戻って来られたのでわがままな一読...
      メイさま
      ご無沙汰しておりました。
      太田さん、この作品だけ毛色が違ってましたよね!
      未明の砦でいつもの感じに戻って来られたのでわがままな一読者としてはホッとしております!
      次作期待ですね!
      2024/08/11
    • Mayさん
      シンタロウさん、コメントありがとうございます!お久しぶりです^ ^
      ブクログだいぶ放置してました笑 感想を書いていない本がいっぱいだ…泣
      本...
      シンタロウさん、コメントありがとうございます!お久しぶりです^ ^
      ブクログだいぶ放置してました笑 感想を書いていない本がいっぱいだ…泣
      本作、未明の砦の前だったのですね!良かったー私、先に未明を読んでしまったので太田愛さん、これからはこっちに行ってしまうのかとドキドキしました。
      はい、次も楽しみです♪
      2024/08/12
  • 久々の太田先生。
    「犯罪者」シリーズが面白かったので、こちらも読んでみました。
    作風がガラッと変わり、読み始めファンタジーのような感じだったので、ちょっと戸惑いました。
    4章で出来上がっているのですが、1章ごと、語り手がかわっていき、謎が解けていく。
    先が気になってしまって、ファンタジーなのも気になくなりました(ファンタジーが嫌いなわけではありませんが)
    人が生きていくのは幸せだけではなく、辛いこと悲しいことも当然あって、その中で誰と出会い、過ごしていくのか…改めて考えさせられました。

  • この小説の舞台となる国も時代も明らかではないが、その中央集権的な統治が進んでいくところは幾つかの実在の国を思い起こさせる。氏名や地名からは東欧のような感じも匂わせるが、いつの時代だかの日本のようなところもあるし、あるいはこれからの•••
    太田愛の痛快エンタメ作品とは趣きの異なる寓話のようなファンタジックな小説だが、独裁、腐敗、謀略、癒着といった闇の世界が見せて夢か現実がわからないような恐ろしい社会を描いた社会派空想小説といったところ。すでに発刊から数年を経ているが、今だからこそのリアリティーもあってスリリングな展開にドキドキした。政治に無関心だと今にこうなるよ、という警鐘が聞こえてくる。

  • ★★★★★+
    少年、怠け者、葉巻屋、魔術師4人の視点で綴られる、ある街に起こった悲しい出来事
    これはディストピア?歴史?現実?
    読む人によっていくつもの感じ方がある
    過去に学ぶための作品なのか?あるいは現在の我々に対する警鐘なのか?
    解き明かされる少年の母に起きた真相はとても深い

  • 「これは過去でも未来でもない、今だ。
    目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。」

    設定はファンタジーだけれど、「ファンタジー小説」でもなく「幻想文学」でもなく、現代をあてこすった、まさに「風刺文学」で、読んでいてひたすらに切実で、耳の痛い、寒々と恐ろしい内容だった。太田愛が小説を通じて投げかけてくるのは常に、「考えることを放棄してはいけない」ということ。

    「戦争は結果にしか過ぎない。夥しい死は無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または、選択と思わずに同調した結果なのだ。」

  • ファンタジーというか、中世ヨーロッパの世界観なのに、中身が分かってくると、まるで現代社会、日本への警告メッセージ。
    選挙に参加して、しっかり考える必要性を教えてくれます。

    太田さんの作品で、そうがい、って読めるようになりました。

  • 最初、現代日本が舞台じゃないのか…と敬遠していたが、読み始めると、さすが太田愛さんだ!ってなりました。オーディブルで先に『未明の砦』を聴いていて、それがちょっと合わなかったので、あまり社会派すぎるのも…と思っていたけど、多分『未明の砦』が合わなかったのは自分の問題に近すぎて、耳を塞ぎたい話題だったからかも知れない。民選が廃止されても、中央府に芸術や文化を統制されても声を上げなかった多くの人々と同じように。
    他の方のレビューに「一冊かけて道徳の授業をされた気分」という言葉があったが、確かに説教じみているところはある。しかし過去も未来にも、現在にも通じる話であり、この作品が鳴らす警鐘に耳を傾けるべきであるとも感じた。テーマは『未明の砦』とほぼ同じであるのに、こちらでは素直に受け取れたのは、ファンタジーという体裁をとっているためだと思う。ディストピアが完成するまでの「始まりの町」の歩みを4人の語り手を通して丁寧に描いている。太田愛さんの描かれる人物はどの作品でも魅力的だが、本作でも遺憾無く発揮されている。ストーリーの関係上、嫌な奴が多い本作だが、語り手たちはとても誠実で不器用だ。そんな彼ら彼女らの人生の物語として読み進めるうちに、作者の主張も自然に受け入れることができた。

  • 正直ファンタジーっぽいお話って苦手で、途中で無理かもと思ったけどこれはすごい!

    生まれがこの土地でない者を羽虫と呼ぶ
    そんな羽虫を母にもつ男の子
    褐色の肌を持つマリ
    人が吸って捨てた葉巻を集めてタバコを作り貧乏人に売る葉巻屋
    街の人に詐欺師と思われている魔術師

    この4人がそれぞれの目線で語ったとき、なぜか起こっていることが現代のリアルと共通する!

    初めてファンタジーっぽいお話でのめり込むほどおもしろいと思えました!これは好き!

  • 太田愛さんの他作品と作風こそ違えど社会への警鐘という根本は一緒だと感じました

    舞台は始まりの町、1人の流れ者が町から姿を消すことから物語は始まる
    なぜいなくなったのか、消えなければいけない理由があったのか

    「この町は根が傷んでいるんだ、もうずっと以前から。深い所から腐っているのに、みんな気づかないふりをしてそれを認めようとしない。」

  • 筋書きからはもう少しファンタジーっぽいものを想像していたけど、その想像とは全然違った。これは架空の町の物語に託されためちゃくちゃ現実の世界の話だった。

    〈はじまりの町〉の人間は、「羽虫」と呼ばれる余所者の尊厳を踏みつけることで自らの自由と誇りを保持している。その「羽虫」に属する4人の登場人物の視点から、町の人間の本質があぶり出されていく。

    全体主義や戦争に向かう道すじは、本当に些細なことから始まるのだろう。思考の放棄、貧富による差別や権力への盲従が、やがて自らの身も滅ぼすことを克明に描いている作品だ。

    著者はきっとこの物語を遠い何処かの国の話ではなく、読む者すべての人の自分ごとなのだと、警鐘を鳴らしている。

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著者プロフィール

香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。

「2020年 『彼らは世界にはなればなれに立っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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