悪の芽 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2024年1月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784041138748

作品紹介・あらすじ

大手銀行に勤める41歳の安達は、無差別大量殺傷事件のニュースに衝撃を受ける。40人近くを襲ってその場で焼身自殺した男が、小学校時代の同級生だったのだ。あの頃、俺はあいつに取り返しのつかない過ちを犯した。この事件は、俺の「罪」なのか――。懊悩する安達は、凶行の原点を求めて犯人の人生を辿っていく。彼の壮絶な怒りと絶望を知った安達が、最後に見た景色とは。誰の心にも兆す“悪”に鋭く切り込んだ、傑作長編ミステリ!

みんなの感想まとめ

人間の心の奥に潜む“悪”をテーマにした物語は、無差別大量殺傷事件を契機に、主人公が過去の過ちと向き合う姿を描いています。41歳の安達は、同級生の犯行を知り、自らの責任を感じながらその動機を探る旅に出ま...

感想・レビュー・書評

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  • 貫井徳郎『悪の芽』角川文庫。

    少し変わった構成の小説だ。問題となる無差別大量殺傷事件という痛ましい事件は冒頭に描かれ、その後はこれ以上の事件は起きない。主人公はこの事件の犯人が、小学校時代の同級生であることを知り、自らの贖罪のために犯人の同級生の動機を探ろうとするのだ。


    アニメコンベンション会場である男が火炎瓶で次々と来場者を無差別に襲うという事件が起きる。この男の突然の襲撃により40人近くが犠牲となり、直後に男は自身にも火を放ち、自殺する。

    大手銀行に勤める41歳の安達周は、アニメコンベンション会場で起きた無差別大量殺傷事件のニュースを見て、衝撃を受ける。犯人の男が、小学校時代の同級生の斎木均だったのだ。

    小学校時代、安達は斎木が虐めに合う切っ掛けを作っていたことを思い出し、もしかしたら斎木が犯行におよんだのは小学校時代の虐めによる躓きだったのではないかと不安になる。

    極度の不安から安達はパニック障害に陥り、出社出来なくなってしまう。安達は贖罪のために斎木の凶行の原点を見出そうと斎木の関係者にあたり、彼の苦難に満ちた人生の跡を辿る。

    安達が辿り着いた斎木の思いとは……

    本体価格860円
    ★★★★

  • 「悪の芽」は誰でも心のどこかに潜んでいるし、誰でも気付かず水を与えているかもしれない…
    とても考えさせられる物語でした。

    しかも色々な立場の視点で話が進むのも良かったです。
    読んでいる間は重く苦しい気持ちになりますが、最後はスッキリして良い終わり方だと思いました。

    安達さんはとても良い上司になると思うので、休職の事は気にせず出世すると嬉しいです。

    たくさんの人に読んで欲しい本です。

  • 斎木の言葉、人間は動物からの進化の途中って言葉ハッとさせられた。
    人間は社会を作る理性的な生き物だけど、完璧にできているわけじゃなくて感情や本能のままに仲間を傷つけたりするんだと。よくない事と分かりつつ、集団だからとか、出来心だったとか、何かと人間らしい理由をつけているけれどね。それはただの表向きの理由ってだけで、自分の中の動物的欲求を我慢できなかったという事ですよね。
    多かれ少なかれ加害者になったり、被害者になったりして社会は続いて行くんだと思います。そのバランスは人間が画一的ではない限り、偏りができるのは自然だと思います。
    本当は、加害者にも被害者にもなりたくないですが。

  • 2024年の締めは久しぶりの貫井徳郎作品!
    良作でした。
    無意識とか、無自覚とか、慣習とか、そんなつもりなく人を傷つけることって、多々あるんだよな。自分が気づいていないだけはんだよな。と改めて思った。

    想像力。

    まぁ、自分の楽しいことしてる時に、世界では苦しんでる人もいるんだ!その人のことも考えろ!って無理矢理に押し付けるのは、行き過ぎだとは思う。
    でも、あらゆる物事を自分ごととして考えられる人間ではありたい。
    そうあるためには豊富な知識や柔軟な発想力、無意識を意識する力が必要だと思う。
    養い続けていきたい。

  • プロローグで語られる、アニコンでの無差別殺人事件。
    その犯人斎木と同級生だった、安達の視点で語られる。安達は小学校時代に斎木へのいじめのきっかけを作った人物だった。
    それが遠因となって、このような事件を起こしたのではないかと悩み苦しみ、パニック障害から勤め先を休職せざるを得なくなる。その打開のため、斎木の履歴を知ろうと関係者の間を訪ね歩く。
    安達の視点だけの単眼的でではなく、事件会場で動画を撮影しネットに流した大学生亀谷、同じく斎木をいじめた同級生の真壁、被害者の遺族である江成厚子らの視点を絡ませ、多層的な構成となって小説に膨らみを持たせている。
    ネット社会の光と闇を交え、現代社会の課題にも言及する。
    何気なく発した言葉や行動が他者の心に影を落とす。
    「人は原罪を抱えて生きていくもの」との文言に納得せざるを得なくなるが、、最後に救いがあり、満足な読後感となっている。

  • 夏のフェア棚に置かれていた本作。
    帯が大きく新しくなっていて、
    新聞のようなレイアウトのものでした。
    ----------------------------------
    無差別大量殺傷事件
    隠された犯人の壮絶な半生

    殺人鬼を生んだ悪意のひと言。
    この事件は、誰の「罪」なのか?
    ----------------------------------
    アニメの大型イベント、アニコン。
    そこが突如、無差別殺傷事件の現場になる。
    40人近くを襲いその場で焼身自殺した犯人。

    ニュースで報じられた犯人の名前、出身学校。
    本作の中心人物である安達は、
    小学校のかつての同級生だと気づく。

    死んでしまっているから本人の口から聞くことができない。
    なぜ、事件を起こしたのか?

    安達のなかに後ろめたさがあった。
    自分も凶行の原因となる一因だったのではないか。
    過去を辿る決意をした安達がたどり着く真実とは。

    みんな自分に都合が良いように受け取るし、
    そうじゃないと自我を保てない。
    だけど、そこからこぼれ落ちるように底へ落ちていく。

    悲観したのか、憤怒に駆られていたのか、
    諦めたのか、嘆いていたのか。

    誰の心の中にもあるような、
    自尊心、嫉妬、自分を守るために攻撃する気持ち、
    それらが注がれ続けて悪の芽が大きく育つ。

    一気読みでした。

  • 就職氷河期世代を勝ち抜き、大手銀行に就職し、幸せな家庭も手に入れた安達。しかしある日突然起こった無差別テロの犯人が小学校の同級生であることを知る。自分が彼に無分別にもボソッと下の名前が「キン」と読めることをつぶやいてしまってから、イジメの対象になっていた。イジメをしたわけではないが、それがエスカレートして彼が不登校になるまで続き、出てこなくなるとサッパリ忘れていたことも、良心の呵責を大きくした。彼が同級生であることに気づいてから、パニック障害になってしまう。

  • 日本最大のアニメコンベンションで起こった無差別殺人事件。
    主人公の安達はニュースを見て、犯人の斉木が小学校時代の同級生だと気付く。
    しかも、安達が付けたあだ名で斉木はいじめられていた。
    斉木が起こした事件の責任は、過去の自分の行いにあるなではないかと衝撃が走る。
    斉木は事件を起こした後、自らも命を絶っており、動機がわからい。
    この事件により、安達だけではなく、安達と同じように斉木をいじめていた同級生や斉木の両親、被害者の家族、斉木の事件に遭遇した参加者たちの考えが少しずつ動き出す。
    この話は、誰にでも起こりうる可能性があるものかもしれないものかもしれない。

    2025.12.3

  • 人間の想像力のなさ、無関心さ

    自分の機嫌は自分で取りましょう。と無神経に過ごし自分の機嫌だけしか取らず、
    振り回される人間をコントロール出来ない愚か者だと決めつける。
    乏しい想像力。
    なんとなく、そんな考えにも結びつけていた。

    なんともリアルなものだった。
    登場人物が最終的に手を止める、それだけが現実と違うところか。

    エピローグの辺りを仕事終わりの電車で読んでいた。割と混み合う電車。
    次は〇〇駅です。
    私もそうだが、この駅で乗り換える人が多い。
    降りるかと思っていたら
    「下ろしましょうか?」とハキハキと話す若い男性の声。
    ドア付近の少し広くなっている所
    上の荷物置きには紙袋
    「ありがとうございます」女性は少し驚いた表情、
    嘘みたいなタイミングで
    優しさが目の前に広がった。
    若い男性というか、若いかっこいいにいちゃんだった。
    スケボーとかやってそうな、にいちゃん。

    多分、この小説を思い出すたびに
    そのにいちゃんの事も思い出す。
    そっと幸せを祈る。
    私も昔、よく道に迷ってそうな人とかに勝手に道案内をしていた。
    写真を誰かに撮ってもらいたそうな人に
    撮りましょうか?と勝手にカメラマンをしていた。
    いつの間にか、イヤフォンして
    足早に目的地に向かっていた。
    忘れてはいけないもの、どこかに忘れてたな。

    読んで良かった。
    本当に。

  • 過去のいじめに対する罪悪感・良心の呵責がテーマの一つで興味深かった。自分の小学生時代も思い出した。

    いじめのきっかけを作った安達は主人公だから描写は多いが、いじめ実行者の真壁の話はボリュームが少なくてやや消化不良。

    大量殺人の被害者が良心の呵責からむやみにネットによる復讐に走らなかったのは良かった(昨今そういう復讐系が多いだけに)。

    斎木の無差別大量殺人の理由がイマイチしっくり来なかった(私の想像力が足りないせいか・・・)。斎木が主役の章も欲しかった。

  • うぅ…考えずにはいられない。
    解説者のいう、何らかの原罪を抱える背景と、その贖罪したいと思う心理は誰しも持っていることだろう。
    特定の事件との関わりがなければ、それを贖罪しようという意識や行為にならないという人間の業のようなものを感じた。
    それにしても、様々な所得層や家庭人の視点に立った心理描写がなぜこれほど上手いのだろうか。

  • 犯人が無差別殺傷事件を犯す動機となった絶望感、その深さと救いのなさが悲しかった。私達はこんな世界に生きているんだなあ、いやこんな世界を作っているんだなと思うとやりきれないです。
    ただひとつの希望はそれに気づくことなのかも知れないと感じました。

  • 大好きな貫井徳郎さんのミステリーなのですが、正直な感想としては、「もう一押し、二押し欲しかった~」というところです。コミケの様な大規模なイベントで無差別大量殺人を行った斎木均。犯行後は焼身自殺を図り、事件の真相は闇の中となってしまったが、安達周はこの事件に大きな衝撃を受けた。というのは、斎木と安達は小学校時代の同級生であり、些細な事がきっかけに安達は、斎木が苛めの対象と成ってしまうきっかけを作ってしまった張本人であったからだ。安達は、斎木が行った無差別大量殺人が小学生時代のいじめに端を発しているのかが気になり、事件の真相を追うのだが、その真相とは・・・

  • 読書記録93.
    #悪の芽
    たくさんの人で賑わうアニメイベントで起きた、無差別大量殺人事件
    犯人は焼身自殺

    その犯人は小学生時代、自分がいじめのきっかけを作り不登校となった同級生だった

    いじめをきっかけに社会から脱落、大量殺人を起こすような人間になったのは自分が原因?

    事件の原因を究明する世論の中、成功した人生を送る自分の身に誹謗中傷が起きたら?との心配から心を病んでいく主人公
    どんな人生を送ってきたのか?を探す主人公の心の変化を追う

    悪意なき子供の一言
    人を見下す態度
    ネット社会で正義を振り翳しての誹謗中傷
    親の責任、子の親になってわかる罪の意識
    哀れみと蔑み
    自己責任、人を思いやる社会とは

    想像力
    誰かの立場に立って考える事の意味を、主人公、事件の目撃者や被害者家族、加害者家族や関係者の目線を通して共に考える作品

  • 傍観者として読み始めるが後半は当事者になる
    弱肉強食、自己責任、努力、格差、
    他人を見下すことが皆無であると私は到底言えない
    ラストに僅かながら希望が見えてようやくまともに呼吸ができた気がする

  • 貫井徳郎って、こういう世の問題を投げかけるような物語が多い。嫌いじゃないし、結構いつも考えさせられる。
    問題解決にはならないんだけど、この本の読者が少しでも問題行動を認識して自身を振り返ることができればいいな。
    過去は取り戻せない、でもこういった問題提起をすることがまず必要だよね。

  • 貫井さんの悪の芽

    考えさせられる話しだった
    悪意なく発言した言葉が発端と思って読み始めたから、過去の発言に悪意が入っているとわかった時、苦しんでいる安達に同情することができなかった

    過去のいじめの加害者が安達含め2人出てくるけど、最初は自分たちが被害者みたいな心情になってるのがすごく嫌だった
    でも丁寧な描写でそれぞれの現在の背景や成長過程など細かく描かれていて良かった

    プライドは上手く扱わないと傲慢に繋がるんだなと改めて実感した

    現在の被害者家族の行動や心情もすごく丁寧に描かれていて、辛かったけどすごく良かった
    江成さんが加害者側にならなくて良かったな

  • 人は誰しも悪の芽を持っている。
    ネットが発達し、自分の意見を手軽に発信出来るようになって、悪の芽の育ちやすい環境が整えられているように感じる。
    考えさせられる内容でした。

  • 人間は誰しも悪の芽を持っていて、その成長は「理性」と「想像力」で決まるということか。
    最後、熊谷さんの言葉は今の世の中そのものですよね。あんたらのやってること動物やんってかなりくらう言葉だわ。

    本を読んでいると、『この本、義務教育の教材にしたらいいのに』と思う事が稀にあるのですが、これもそう。自分の理性と想像力を再確認するのにちょうど良いです。

    物語のラストは希望。
    (動物をやめた)善の芽を宿す人間が作る社会への期待です。すごく綺麗に終わります。そこは物語だな。

  • 解説の冒頭に『読者の中に自分はいじめとは完全に無関係だったと言い切れる人、子供の頃に誰かを傷つけた経験は無かったと断言できる人はいるだろうか?』…そんな問題提起がされる。

    主人公は41歳のサラリーマン。一応順風満帆に社会を渡ってきた。ある日、アニメの大イベントでの無差別大量殺傷事件のニュースに衝撃を受ける。その後自らに火を付け動機不明のまま死んでいった犯人…この男が、小学校時代の同級生だったという事実。そして自分は過去に犯人をいじめていたことがある…犯人の動機は過去のイジメに端を発し、社会への憎悪を膨らませたのだとしたら、この事件は自分の「罪」なのか…そんなストーリーだ。

    各章では別な人物からの視点…大量殺人をスマホ撮影したSNSがバズり人気者になった大学生、犯人が死んだため、大量殺人の原因になったと思われるいじめの加害者の主人公を尾行する、犯人に焼き殺された娘の母親。この事件をまた別の角度から語るのもちょっと面白かったな。

    犯人のこれまでの半生を辿ってみると、病弱な子供を抱えるシングルマザーを支えていたということがわかり、さらに苦悩する主人公。もちろん大量殺人の罪は消えないが、どこで絶望して行為に及んだのか…真相は闇だ。

    『悪の芽』というタイトルは、すべての人は犯罪の要因に加担してしまう可能性がある、その芽に知らず知らず水をやってしまうかもしれない…そんな恐ろしさを持っているということ。そんなことを思い、改めて姿勢を正した。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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