竜殺しのブリュンヒルド (2) (角川コミックス・エース)

  • KADOKAWA (2023年9月26日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (180ページ) / ISBN・EAN: 9784041141182

作品紹介・あらすじ

実の父・シギベルト率いる帝国軍に愛する竜を殺され、自身も英雄一族の娘として帝国に連行されたブリュンヒルド。
復讐の機会を窺っているが、帝国の人々と暮らす中で、少しずつその態度に変化が生じ始める。
生き別れとなっていた兄シグルズには、心の内をさらけ出すようになり...。

人の優しさに触れた彼女が選ぶ答えとは...?

感想・レビュー・書評

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  • そして、舞台劇は始まった、まずは表側を物語ろう。

    近代帝国主義国家と神話(ないしは古の童話)の住人が同居する、歪ながらに新しい世界観をもって構成されます『竜殺しのブリュンヒルド』。そのコミカライズ第二巻のレビューをお送りします。
    起承転結に則れば「承」の巻ということになりますが、これは日本人好みの言い方でしたか。

    むしろ本作の場合は舞台劇を思わせる演出が強く出ているため、海の向こうで主流となっている「設定」、「対立」、「解決」の三段階からなる「三幕構成」で見つめ直した方がいいのかもしれません。
    三幕構成という言葉がお馴染みでない方も多くいらっしゃるとして、それなら「序破急」という言葉を持ち出しましょう。そちらもまた聞き及びでない方はこのパラグラフは読み飛ばしていただいて結構です。

    あと、それと。一巻に引き続き、ネタバレををしているのかそうでないのか自分の中でもイマイチ定かではないのでもう手遅れかもしれませんが、暫定的に本レビューはネタバレであると保険を打っておきます。
    原作小説ないし本作を読了される前に本レビューをお読みになる方は、どうかご留意ください。

    さて、第一巻をもってして「復讐」という目的を定めた主人公「ブリュンヒルド」ですが、第二巻では打って変わって激情にとどまらない数々の喜怒哀楽、さまざまな顔をもって我ら読者を出迎えてくれます。

    加えて質実剛健としながら、流麗で女性的な曲線で漫画の画面を支配するブリュンヒルドが圧倒的でした。
    一方で、一見すると復讐のために雌伏の時を過ごしているのかと思いきや、そうとも限らない?
    どうにも彼女の真意が読み切れません。それこそが先を読ませるポイントだとしても、ここに来てタイトル回収でしょうか? はてさて。

    と。彼女の思惑についてはいったん棚に上げ、まずはあらすじの補足をしておきますか。
    ブリュンヒルドの復讐対象となる遺伝上の父親「シギベルト」は舞台上からいったん退場し、代わりにシギベルトの親友の「ザックス」大佐が彼女の身柄を人道的観点から引き受けることになります。

    この際に私人として親友の娘を慮りながら、公人の立場も踏まえてザックス大佐はブリュンヒルドと接触、交流の機会を重ねていくことになります。
    このくだりではザックスの心情を読者に向け打ち出すくだりが軍への報告をまとめるかのような体裁で綴られていますね。この演出も、原作の文面を踏まえつつ軍事国家の雰囲気を出す上でとても良かったです。

    平行して、ブリュンヒルドの遺伝上の兄「シグルズ」軍曹も舞台に姿を現します。
    彼は、言葉少なく不愛想な父に認められないことへの憤懣から、あっという間に頭角を現した妹ブリュンヒルドへどこまでも等身大な確執をぶつけます。かと思いきや、嫉妬すら追いつかない速度で粉砕されます。

    けれどシグルズは飾りません。
    ひとりの人間として、はじまりは反骨心からくる八つ当たりだとしても正面からブリュンヒルドと向き合います。発展途上の未熟な若者であるシグルズは、だからこそ本音でぶつかってくれるのです。
    それらがウソやごまかしを覚えた大人であるザックス大佐との対比に見えるのが興味深い。もっとも大佐がブリュンヒルドに覚えた感情は好意と善意、それともうひとつ「○○○○」に他ならないわけですが……。

    とまれ、ブリュンヒルドはシグルズの不器用な言葉に応えるように憤ってくれます、時には笑顔を向けてくれます。その理由は……、現時点で語るは野暮ですね。けれど、神の造りし楽園で育ったブリュンヒルドの独特な価値観から言葉の端々から感じ取れ、兄の前では移りげな表情が魅力的だったことは確かでした。
    あと、兄妹なのに、絶妙な身長差があるところが地味に好きだったりします。

    そんなわけで竜に育てられるも紆余曲折を経て人間の世界に至った少女に、ふたりの一般的な人間男性が接することになりました。それぞれが異なった立場から接することで、彼女の表情を引き出していきました。
    でも彼女の心の水面下で何が渦巻いていくのかは、きっとこの段階の読者ではわかりません。ともすればすべて知った段階の読者でも完全に察することは難しいです。だとしても、ひとまずは平穏なひと時でした。

    そう、それはブリュンヒルドが人間を知るための大事な一時でした。
    一見すると、どちら側を取っても心温まるひと時でした。
    彼女を竜の娘という肩書から、竜殺しという称号に脱皮させる大事件が起こるまでは。

    ところで話は変わるようですが、劇中における帝国の世論、それをここでは「物語」と言い換えてみます。
    するとその物語の主役は、ブリュンヒルドという“ヒロイン”に他ならないわけです。ええ、蓋を開けてみれば大衆が彼女を主人公と認めた過程を劇的に描かれていたのが、ここ二巻あるいは原作二章の内容でした。

    具体的には、竜を狂信的に崇める宗教団体をなぜか説き伏せることができた一幕。
    それから一夜をまたがずして帝都を襲来した竜の群れ。
    そしてそれらすべてをブリュンヒルドが英雄として撃退するという一夜でした。

    流れとしてはほぼ原作に忠実であり、原作の脚本の完成度の高さを再確認できます。
    でも、同時に漫画ならではのアクションシーンの迫力も見逃すこともできませんでしたね。
    そして竜の群れに蹂躙される帝都住民たちの姿からは、命を奪われることの重みを感じられたのです。

    以上。
    ブリュンヒルドの安否は如何や!? というありふれたクリフハンガーな謳い文句は抜きとして。
    確執、衝突、そして融和。ブリュンヒルドの姿を何も知らない立場から見ていれば理想的な英雄譚のはじまりなのに、一方で復讐譚の興りを知っている読者としてはやはり混乱させられます。
    ここで終わるわけがないと思うのは、あなたが、わたしが、やはり人間だからでしょうか?

    ああそうだ、これは余談なので聞き流していただきたいのですが……。
    情報を入れさえしなければ万人が三巻で物語が畳まれると思うでしょう。
    四巻目があるとは思っていなかった方も皆無ではないはずです。私もそうです。そんなわたくし事情を明かすついでに、虚勢というか強がりを言っておくとある意味三巻で物語は終わったと思うのですよね。

    だって何も知らない誰かさん相手に四巻で待ち受けるのは、終わりというには生ぬるいナニカですから。
    よって、まずは終わりを語りましょう。話はそれからです。

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