- KADOKAWA (2024年6月13日発売)
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感想 : 9件
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784041145043
作品紹介・あらすじ
1938年、革新官僚・岸信介の秘書が急死した。秘書は元陸軍中将・小柳津義稙の孫娘の婚約者で、小柳津邸での晩餐会で毒を盛られた疑いがあった。岸に真相究明を依頼された私立探偵・月寒三四郎は調査に乗り出すが、初対面だった秘書と参加者たちの間に因縁は見つからない。さらに、義稙宛に古い銃弾と『三つの太陽を覚へてゐるか』と書かれた脅迫状が届いていたことが分かり……。次第に月寒は、満洲の闇に足を踏み入れる。昭和史と本格推理が融合した、重厚な歴史ミステリ。
感想・レビュー・書評
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二次大戦前夜の満州を舞台にした探偵小説。人種は入り乱れてるし、関東軍や憲兵などが幅を利かす剣呑な世界。現代にはない舞台設定も相まって、なかなか面白かったです。
日本人は満州という国についてあまり学ぶ機会がありませんが、この小説は満州に興味関心を持つ入口にもなるかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなか面白かった。
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時は明治
満州国で探偵業を営む月寒三四郎のもとへ婚約者の不審な死を調べて欲しいという依頼人がやってくる。
満州国で君臨する元陸軍中将小柳津義稙が孫娘千代子であった。
というはじまりのお話。
陸軍、憲兵など薄暗い背景と戦争の記憶が散りばめられた推理もの。トリックがどうこうというよりはその時代が生み出すやるせなさが味わいと思われる。
主人公たる探偵の月寒に関する描写があまりなく、切れ者であることはわかるのだけど、そのバックボーンやら人間関係やらがこの作品だけではわからなかったので、魅了されることなく読み終わる。
ドラマ化していただくとまた味わいも違うのかと思いました。他の作品も購入したのでともかくこの作家さんの作品を読んでみようと思います。 -
史実を参考にしたハードボイルドの作風で『刀と傘』『焔と雪』の歴史×本格ミステリーとは違う描写や展開を楽しめた。最初の事件から第2の事件、それらのミッシングリンクなどが昭和の時代背景や満州の土地柄と相まって「この時代だからこそ成立する不可能犯罪」という側面も著者の作品の魅力だった。
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私立探偵が依頼された事件を解決する。それだけ聞けば王道な探偵小説なんだけど満州の存在が欠かせない作品。個人的にはあまり馴染みのない時代と土地が関わってくる物語だったこともあって、歴史ものとしても、ミステリとしても普段とは違ったこの作品ならではの固有の雰囲気を楽しむことができた作品だった。興味本位で読み始めたけど心のどこかで読み切るのに時間がかかりそうだなと思っていたけど思いの外スッと読める文体だったのはちょっと意外。
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無茶苦茶展開ではなく、現実にありそうな(あったような)ミステリー。
けど、万人受けする作品では無いと思う。主人公がとか展開が……ということではなくて、舞台が満州でその頃の仮名遣いなどを用いてかかれているので、読み馴染みがなく、読みにくいと思うかもしれない。
満州、阿片、軍隊、シベリア……このあたりのワードに興味のある人にはオススメ -
フィクションとノンフィクションが交錯したミステリーは真に迫るものがあり、背景描写もとてもリアルでこの時代の満州の不安定で混沌とした様子が目に浮かぶようだった。犯人の推理もとても面白く主人公の目線で考えを巡らせながらラストのどんでん返しに岸と一緒に驚愕した!
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歴史ミステリと言うより、満州国を舞台にしたハードボイルド。巻末解説によると、作者さんはロス・マクドナルドを参考にしたそうだけれど、所謂正統ハードボイルドのお約束に従って物語が進む。まあ、警官(憲兵)に痛めつけられて、それでも怯まなかったりするのはアーチャーよりマーロウですかね。ミステリとしては少し軽めですが、それでも犯人の意表を突く動機が最後に明かされるホワイダニットとして読めば、これも愉しい。
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著者プロフィール
伊吹亜門の作品
