テスカトリポカ (角川文庫)

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  • KADOKAWA (2024年6月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (704ページ) / ISBN・EAN: 9784041146187

作品紹介・あらすじ

心臓を鷲掴みにされ、魂ごと持っていかれる究極のクライムノベル!

メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。

みんなの感想まとめ

テーマは、メキシコの麻薬密売組織と日本の裏社会が交錯する中での人間の闇と救済です。力強い文章で描かれるこの作品は、圧倒的な情報量と緻密な描写が特徴で、アステカ文明や暴力、臓器売買といったダークな要素が...

感想・レビュー・書評

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  • 2021年第34回山本周五郎賞
    2021年第165回直木賞

    力強い文章で終始圧倒されました
    アステカ王国の文明について
    マフィアについて
    ナイフの作り方について
    そして、川崎市について
    勤勉さが感じられる知識からの情報量に圧倒されました

    麻薬カルテル、臓器売買、加えて暴力殺人描写
    それが アステカの神話「テスカトリポカ」と交差しては、現実に戻る

    日本の川崎にコシモという少年が生まれ育つ経緯から始まる
    生まれた環境、放置された生育 
    彼の 原始的とも思える暴力性と純粋性
    単純なクライムノベルに終わらせないための存在
    彼は、無自覚の中 生贄と認識した少年を助けようとする
    それでも 本人は救済されるとは思えない
    アステカ文明の神も暦もとても興味深く
    知識から小説に落とし込む力量に感銘しました

    • shintak5555さん
      何方かがポカリスエット読まなきゃ!って言ってたやつですね!
      サラダチキンだけで強靭な肉体を作り上げるやつですね!
      何方かがポカリスエット読まなきゃ!って言ってたやつですね!
      サラダチキンだけで強靭な肉体を作り上げるやつですね!
      2024/08/31
    • おびのりさん
      シン様 そうです
      茹でただけのチキンです
      ちゃんと茹ってたか心配してました
      シン様 そうです
      茹でただけのチキンです
      ちゃんと茹ってたか心配してました
      2024/08/31
    • みんみんさん
      手作りサラダチキン簡単で美味しい
      色々な味で作ってます♪︎~(・ε・。)
      手作りサラダチキン簡単で美味しい
      色々な味で作ってます♪︎~(・ε・。)
      2024/08/31
  • 第165回直木賞受賞作
    圧倒されるクライム小説
    しかし、スペイン語があちこちで使われ、正直読みにくい(笑)
    そして、あまり人にはお勧めできない。

    麻薬、暴力、子供臓器ビジネスとダークな世界観!
    加えて、アステカの神話がグロです。

    メキシコの麻薬カルテルを仕切るバルミロは、敵対する組織から攻撃され、一人ジャカルタに潜伏。
    そこで、日本人の臓器ブローカーの末永と知り合い、日本で臓器ビジネスを立ち上げます。
    さらに、殺し屋になれる者たちを集め、殺しのトレーニングも進めていきます。

    コシモは、小学生ぐらいの知識しかなく、かつ、2Mもの巨体+パワーを持つ人物。手先が器用で、ナイフの作成を学ぶ。しかしバルミロに見出されて、犯罪に巻き込まれていきます。

    読み進めていって、この物語はいったいどこに着地するのか?
    といった感じでした。

    しかし、最後、ちょっといい感じでした。

    メキシコに行きたくなりました。

  • 佐藤究『テスカトリポカ』角川文庫。

    第62回江戸川乱歩賞受賞作の『QJKJQ』が余りにもつまらなく、それ以来、佐藤究の小説は全く読んでいない。従って、佐藤究の小説を読むのは本作が2作目になる。

    第165回直木賞受賞作の圧倒的なクライムノベル。

    冒頭からの展開はドン・ウインズロウの麻薬カルテル小説を読むかのような迫力に驚いた。これは船戸与一の冒険小説のような南米の香りのする小説かと期待したのだが、次第にその勢いと熱量は失せて行き、最後には日本人特有の感傷的な描写で幕を閉じるという何とも中途半端な小説だった。

    やはり、佐藤究はドン・ウインズロウにも船戸与一にも成り切れなかったか……

    メキシコの麻薬密売組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人女性と日本のヤクザの間に生まれたコシモこと土方小霜は、公的な教育を殆ど受けないまま育ち、ヤクザの父親とヤク中になった母親とを殺害し、少年院へと送られる。

    メキシコで麻薬密売組織を牛耳るカサソラ四兄弟は組織間の抗争で三男のバルミロだけが生き残る。インドネシアのジャカルタに渡ったバルミロは、麻薬により身を持ち崩した日本人心臓外科医の末永満嗣と出会う。末永はインドネシアの闇社会でタナカと名乗り、臓器移植のコーディネーターを行っていたが、バルミロと手を組み、心臓密売ビジネスを立ち上げる。

    末永と共に日本に渡ったバルミロは川崎で不良たちを集めてビジネスを軌道に乗せようとするが、やがてコシモと邂逅する。

    本体価格1,080円
    ★★★★

  • 久々に長編を、流れに身を任せて読んだ。重いテーマだが、世界が違いすぎて、不謹慎ながら好奇心が勝る読書体験となった。

    全編にわたりメキシコの麻薬カルテルの頭目による次元の違う暴力を見せつけられる。そして、捨てるところがないと言わんばかりの解体。これらの手口に、現代人の感覚では血生臭さを感じるアステカの神話や儀式の言い伝えが見え隠れする。読み進めるうちに、残虐性に対する感覚が麻痺していく。

  • 飛行機内のお供として本作を読み始めました。クライム小説としてはなかなか面白かったように感じますが、宗教用語と登場人物だけでなくあらゆるところにスペイン語が散りばめられていて、そこが少し読みにくかったかと思います。

    本作は臓器売買に手を染める日本人医師とメキシコ人の話。前半は割と出自のお話が多くて、この人が主人公かなと思った瞬間に死んだり、少年院に行ったりするので、なかなか話がつかみにくい印象。しかし、物語中盤から臓器売買のお話が常に主軸にありながら犯罪が加速していくので、そこは読みやすかったかなと思います。

    こういう過激でちょっとマニアックな作品は、男性の方が好きな印象です。

  • アステカ・マヤ・インカの文明による生贄の文化は恐ろしく野蛮な物だと思っていましたが、本書を読んで少し変わりました。
    恐ろしい文化ではあるが理屈は通っており、人の命が建前上一番大事な現代文明からは受け入れられないかもしれないが、それも一つの文化と割り切ってしまえる感じはあります。
    →だからと言って生贄文化を支持する訳ではありません。

    それと、本書を読む迄 まったく知識として無かった無国籍児童について。勉強になりました。

    本作ではメキシコは狂犬病が存在する国ですが、現在は清浄国(2019年)になったらしいですね!
    良かった!!!


    佐藤究さんの作品を読むのは本作で2作目!
    直木賞受賞作!

    10年前の自分が本書を読んでいたら、残酷な本で麻薬と暴力に辟易としていたかもしれませんが、今の自分の本書への評価は⭐︎5ではないが⭐︎3では絶対的に無い!

    バルミロの仲間が少しずつ増えていく感じがワンピース感あり!ダークワンピース!


    川崎で生まれ育ったメキシコ人と日本人のハーフの土方コシモは親からネグレクトを受けていたがとんでもなく健全な肉体を持っていた、ある日事件は起きる!?
    一方で、メキシコの巨大カルテルに君臨していた麻薬密売人のバルミロ・カサソラハ紆余曲折の末ジャカルタでと臓器売買に手を染める日本人と出会う!!!?
    メキシコの古き神々と土方コシモ、そしてバルミロが物語を混沌とさせていく!!!

    テキーラとタコス並みに刺激的な小説です!

  • あまり予備知識のないまま足を踏み入れた(踏み入れてしまった?)この小説は、古代アステカ文明を物語の核とした強烈なクライムノベルだった。

    二人の主人公のバルミロとコシモ。
    メキシコの麻薬カルテル一家に生まれたバルミロは、祖母からアステカの歴史や思想をたたき込まれ成長する。やがて麻薬組織を壊滅させられるが、数カ国での逃亡劇を経てジャカルタにたどり着く。そこで日本人臓器ブローカーと出会い、川崎で新たな裏社会のビジネスを立ち上げる。
    一方のコシモは、日本のヤクザの父とメキシコ人の母を持ち、川崎で生まれ育つが、貧しい生活の中、ある事件を起こしてしまい少年院へ。出院後、働いていた工房からバルミロと出会い、超人的な身体能力を買われ犯罪組織に手を染めていく。

    二人の主人公と、彼らを取り巻く登場人物達が交錯していくエピソードが面白い。一体この先どこへ向かっていくのだろう、どういう展開になるだろう、と引き込まれる。そして、血湧き肉躍るアクションシーンが凄まじい。っていうか、えげつないし、容赦ない。どこまでもダークな展開。

    作中のアステカ文明は神秘性と残虐性が表裏一体で描かれる。それにしても、人身供犠の描写は生々しい。

    重厚なエンタメ作品としてはアリだと思う。だけど…人には勧めにくい。。
    この小説読んでいる時、なぜか若い時読んでどハマりした馳星周先生の不夜城シリーズを思い出した。また久しぶりに、このノワール小説を読み返してみたいな、と思った。

  • 遥か昔の文明と宗教を絡めると、恐怖と暴力に満ち溢れた内容を寛容し、受け入れてしまうことに、驚きました。
    未知の感覚です。
    長い小説でしたが、最初から最後までずっと面白く読めました。とにかく、読みやすいです。

  • 1度目は難しくて途中離脱。2回目挑戦でハマり一気読み。
    自分まで犯罪組織の一員になったかのように錯覚した。知らない世界を知るのは読書の醍醐味だけど、こんな世界まで観れるとは思ってなかった。スリリングで、暴力的で、いつの間にか読み終わっている。待っているのは放心。

  • やはり主人公のコシモ!川崎で日系ペルー人として育ち、社会からも孤立していた姿はとても痛ましく、もし違う環境で生まれていたらと思わずにいられない。彼の人生に大きな影響を与えたのが、バルミロや末永といった悪い大人達。無垢なコシモが危険な世界に引き込まれていくのが見ていて辛かった。

    ナイフ職人のパブロは「情」を感じさせ、彼の言葉や姿勢がコシモに与えた影響は心の底に大きく、物語のクライマックスでのコシモの行動は、これまでの孤独や苦悩がすべて積み重なっているように感じました。

    読後に残ったのは、麻薬や暴力の恐ろしさ以上に、彼が置かれた環境と周囲の人々との関わりが、未来をどう形づくってしまったのかという重い現実でした。

    最初はなかなか読み進めることができずでしたが、それぞれの登場人物が交差したことろから爆発的に面白く一気に完読!

  • 麻薬戦争やら闇の臓器売買、殺し屋、世の中の怖いものよくない犯罪のぜいたく詰め合わせパック。
    メキシコの麻薬戦争真っ盛りの物騒な町で兄を無惨に殺された女の子、日本に渡ってヤクザの土方興三との間に子をもうける。(土方興三て。新選組の土方歳三に空目した)
    子のコシモはネグレクトされつつも身長2メートルの怪力少年に育ち、殺人で少年院へ。手先が器用で彫刻がとても上手い子。

    さてメキシコ。
    麻薬戦争で1つのファミリーがドローン攻撃で壊滅させられる。中心の4兄弟のうち1人バルミロだけがかろうじて生き残り、海外に流れてまた小さな麻薬売買から活動を始める。そこに現れた日本人闇医師のタナカ、もちろんこやつもヤク中で日本にいられない人。臓器売買の仲介者。この2人が組んで日本産の心臓を売買しようとする。人命についてマヒしすぎながら、彼らの外道な商売が成功していくところはワクワクする。

    この辺りでおーいコシモはどこいったー?と思う。
    バルミロは祖母から昔の文明にあった土着の神々の話を聞いて育った。生贄を捧げる習慣のことも。様々な神の中で最も重要な神テスカトリポカ。丸い黒曜石の鏡が象徴。煙を出す鏡=テスカトリポカ。
    バルミロとタナカの商売上、舞台はまた日本へ。
    ヤクザの情報を入れ、ヤク中の保育士を引き入れて被虐待の子供を集めたり…。この保育士は騙されたまま、被虐待の子達を集めることを正義だと思ってる。心臓を売るために子供は集められたというのに。この辺の感覚がとてもグロテスクでいい。

    やっとコシモ、再登場。
    小学生くらいの言語感覚しかなく、善悪の区別も曖昧なまま、常人離れした屈強な体格に成長してしまった。なんとも言えなくこの子が可哀想で…。
    バルミロたちがバックにいるナイフ工房に勤めるようになる。手先が器用なコシモはナイフの細工がとても楽しそうでホッとする。ここで師匠と弟子として穏やかにずっと生きていけたら良いのにと思わずにいられなかった。でもある事故?からバルミロに目をかけられて、殺し屋の道に進んでしまう。才能はあるのだけど、わかるけどこの辺は悲しかった。
    ここからドドッと破綻が来て、初めてコシモの善性が芽生えてくる。やっと。影響を与えたのは心臓を取られる予定のこども。ここの交流はとても良かった。無垢なコシモには善の道に行ってほしいとずっと思ってたから。
    ここの交流と会話、この場面を作るために長い長い残虐な前提が必要だったのかと思うほど良い場面。

    犯罪アドベンチャーというような、血まみれの物語はようやく収束。
    何というかすごいスケールの大河小説だった。
    昔の神々の話がわかりにくくて、生贄の描写も無惨。最終的なコシモの目覚めのきっかけになる取っ付きの取っ付きが聖書の中身だったりして、んん?原始宗教の非難か?と思いつつ、小説はたいへん面白かった。
    話がゴロンゴロン色んな方向に吹っ飛んでいたので、感想が難しい。

    それにしても全編通して人の殺し方や死体の扱いがエグかった。

  • 単行本版で既読なのだけど、あまりにも面白く、読み終わった後も世界から抜け出せなくて、ずっとテスカトリポカのことを考え続けてしまった本書、待望の文庫化!!
    もちろん買って再読。話の筋はもう分かっているのにも関わらず、今回もめちゃくちゃ面白いのに驚愕。
    前回はどうなるか全く分からない展開と過激な暴力に翻弄されたが、今回は文章のかっこよさと上手さ、アステカや闇社会の文化の見事な絡み合い、暗黒の狂騒へ否応なしに読み手を引きずりこむストーリーと構成をしっかり味わって楽しめた。
    本当に唯一無二の呪力を持つ本だと思う。多分また再読するだろう。メキシコにもまた行きたくなっちゃったな。

  • 直木賞受賞の壮大な犯罪小説。かなり絶賛の声は目にしていていつか読んでやろうと思っていた作品のひとつ。そんなに話題なら、そのうち映像化しそうだし早めに読まなきゃ…なんて思っていたが、読み終わった今は思う、これは映像化無理だろ…人が次々と残酷な殺され方で葬られてゆく描写が続く。レベチのノンストップクライムノベル。

    私にはちょっとハードボイルドすぎ、暴力的すぎということで私にしては珍しく星3つ。だけど星3つにするのを躊躇するくらい、この壮大なストーリーを組み上げ、重厚な設定を作り込み、読者を飽きさせずに語りきった作者の力量には舌を巻く。心躍らなかったくせに、なんだかんだ文庫で700ページ近い物語を1週間で読み切った。

    舞台は川崎。登場人物は、南米の血を引く人が多い。メインの登場人物3人は、川崎育ちで親殺しの混血児、崩壊したメキシコの巨大麻薬密売人組織のトップ、ドラッグ使用のために日本の医療界から追放されインドネシアに潜伏していた心臓外科医。彼らがそれぞれの地の闇で生きていて、そして後半で川崎に集結し、闇のビッグビジネスを立ち上げようとする。

    そこに、アステカの神の信仰の話も絡み、濃度がすごい。前半のメキシコパートだけでも読み応えがありすぎた。そして登場人物のほとんどは悪人だけど、魅力的だ。物語の行く末よりも、彼らがどう考え動いていくのかを追いたくて、それだけでこのダークな物語のページを捲り続けた。

    まあしかし。ドラッグをやりたくなる気持ちも、人の命を平然と奪える気持ちも、残忍さに躊躇がないことも、法に背いて大金を稼いだりプライドをかけたりすることも、ひとつも、かけらも、共感できないので、600ページ読みながらずっと、なんでこんなことになんねん、と今一つ物語にはのめりこめず。

    結局、信仰だ手術の技術だと崇高な高みを目指しているようで、実は自分の私欲のために大人たちは犯罪を重ねていた、ということを最後のほうで読者も混血児も気づく。そして600ページかけて築かれて行った鉄壁そうな悪の組織は、一気に崩壊。あぁ、むなし…

  • 『テスカトリポカ』を読み終えてまず感じたのは、これは単なるクライム小説ではないということだった。メキシコの麻薬カルテル、日本の臓器売買、少年兵、宗教、移民問題といった現代的なテーマを扱いながら、その奥ではずっと「神話」が流れている。

    タイトルにもなっている“テスカトリポカ”は、アステカ神話における破壊と運命の神だ。つまり本作は、現代犯罪を描きながら、同時に“生贄の歴史”を描いている。

    この視点が非常に異様だった。

    カルテルの暴力も、臓器売買も、人間を消費するシステムも、単なる現代社会の歪みとして描かれているわけではない。むしろ、「人類が昔から繰り返してきた構造」として描かれている。

    昔は神のために生贄を捧げていた。現代では金、権力、欲望、市場のために人が消費される。

    形が変わっただけで、本質は変わっていない。

    この感覚が、本作全体をかなり不気味なものにしている。

    また、本作は暴力を感情的に描かない。普通のクライム小説なら、残酷さを強調したり、怒りや悲しみを強く演出したりする。しかし『テスカトリポカ』は違う。どれだけ凄惨な出来事が起きても、文章はどこか乾いている。

    この“淡々とした語り”が特徴的だった。

    最初は距離を感じるが、読み進めるうちに、それが作品のテーマと直結していることに気づく。つまりこの世界では、暴力は特別な事件ではなく、「日常の構造」になってしまっているのだ。

    だから登場人物たちも、暴力にいちいち大きなリアクションをしない。恐ろしいのは、残虐さそのものより、「慣れてしまっていること」だ。

    特に印象的だったのは、メキシコの歴史や文化の使い方だった。アステカ文明や神話を単なる装飾にせず、現代犯罪と地続きで結びつけている。その結果、この小説は単なる社会派クライムではなく、「人間文明そのものの暗部」を描く作品になっている。

    一方で、かなり読む人を選ぶ作品でもあると思う。

    感情移入しやすい主人公がいるわけではないし、カタルシスも少ない。説明も最低限で、読者を気持ちよく没入させるタイプではない。

    むしろ、「世界の構造そのものの不気味さ」を静かに見せ続ける小説に近い。

    だから本作の魅力は、「ストーリーが面白い」というより、「ここまで巨大なテーマを犯罪小説に落とし込めるのか」という部分にあると思う。

    『テスカトリポカ』は、暴力、宗教、歴史、資本主義を全部つなげて描いた作品だ。読後に残るのは爽快感ではない。むしろ、「人間社会は昔から何も変わっていないのではないか」という重たい感覚だ。

    エンタメとして読むと好みは分かれる。しかし、“世界観そのものの異様さ”という意味では、かなり強烈な作品だったと思う。

    #2026年17冊目

  • 約700ページに及ぶ長編。
    途中で飽きることなく、終始緊張感のある展開が続く。
    麻薬や臓器売買ビジネスに関わる人々が描かれ、多くの命が奪われていく。

    アステカの神が物語のテーマとなっており、生け贄として心臓が捧げられる描写が強烈。
    本作で描かれる神は、キリストのように慈悲深い存在ではなく、凶悪で容赦のない存在である点が非常に興味深い。

    好みは分かれるかもしれないが、読み応えは抜群で、個人的には楽しめる作品だった。

  • バルミロがメキシコの麻薬売人組織に復讐を誓い、
    組織を立て直すため、メキシコを離れジャマイカ
    そして、日本にたどり着く。
    メキシコ人の母と暴●団の父の一人息子のコシモ
    は、両親殺しの罪で施設に数年入りシャバに出て
    くる。
    この二人が出会い、物語がラストに続いていく

    暴力の描写がエグい。
    バルミロの拷問が凄すぎる!
    コシモといい、途中から組織の家族になる馬鹿力
    の男、闇医者、コカイン常用者の身から目をつけ
    られた保育士の女性、ナイフ造り職人とクセのあ
    るキャラが、それぞれの生い立ちを丁寧に描かれ
    ていて、そこも物語を魅力的にしている。

    アステカ時代の神々の信仰の話が、物語の核に
    なっている。
    バルミロの子供時代の話も良かった。

    ツッコミどころは、コシモの身体能力!
    どこでそんな力をつけた?刃牙の花山かお前は
    という感想はあったけど
    700ページと超大作だったが、読み終わるのが
    もったいないと思わせる傑作^_^

  • 「圧倒された」という言葉がふさわしい。感想はそれに尽きるという感じ。
    衝撃的な展開が終始途切れることなく続き、700ページという長編にもかかわらず、息をつく暇もなかった。
    物語は暴力と権力、生と死が交錯する壮絶な世界を描き出し、容赦なく引きずり込んでいく。

    クライムサスペンスは重いな…

  • 想像のはるか斜め上をいく悪が集い、日本で臓器売買の新たなビジネスを始める。社会問題・犯罪・暴力、そして南米の神話。そのどれも馴染みのない世界のはずなのに、現実との境界が揺らぐような緊迫感をもって一気に読まされた。

    元メキシコの麻薬カルテル幹部・バルミロは、祖母の影響でアステカの精神文化を深く信仰するようになり、「生贄なくして神々は活動できない」という教えに心酔していく。彼の父親はその思想を気味悪がって否定していたが、父の死をきっかけにバルミロの信仰は決定的なものになる。南米の古代文明に触れたことがなかった私にとって、彼の幼少期を通して描かれる神話や、未知の価値観の形成過程はとても興味深かった。

    彼にとっての生贄は、私たちが豊穣を祈るときに米や酒を供えるのと同じような感覚なのだろうか。だとすると善悪の感覚がかけ離れすぎていて恐ろしい。敵対勢力の心臓をくりぬくといったカルテルの暴力行為が単なる脅しではなく、儀式的意味を持っていたと知り、もっと得体の知れない恐怖感が増した。

    一方、コカイン中毒の保育士・宇野矢鈴の最後の選択には、小さな希望もある。誰かのためなら、人は変われるのかもしれない。そう思わせてくれた彼女の姿に、日本社会へのささやかな信頼も感じた。

    フィクションとは思えない重苦しいリアルさと、最後にわずかに差し込む光。強烈な読後感が残る一冊だった。

  • 文庫化するのを待ち望んでいました。
    犯罪小説なので終始暗い雰囲気が漂いますが、ストーリーの壮大さ、面白さでぐいぐい引き込まれます。
    登場人物が魅力的で、慎重さと大胆な行動力を持ち合わせるバルミロと、純粋なコシモがとても良かったです。
    切なくも美しいラストシーンも必見です。

  • アステカの神々の話だとかは全く知らなかったので興味深く読んだ。

    調べるのはすごく大変だったろうなぁ。

    それにしても大変な話であった。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

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