竜殺しのブリュンヒルド (3) (角川コミックス・エース)

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  • KADOKAWA (2024年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ) / ISBN・EAN: 9784041146873

作品紹介・あらすじ

突如、竜の徒党に襲撃された、帝都・ニーベルンゲン。
ブリュンヒルドの活躍もあり、なんとか竜の撃退に成功した。
シグルズは、ブリュンヒルドの見舞いに訪れるが、そこで彼女からあの地獄の夜の真実を聞かされる。

感想・レビュー・書評

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  • さぁ、舞台劇を続けよう、脚本は彼女が書き上げた。

    この三巻を読み終えた時、衝撃と恐怖が胸中を駆け抜け、この物語を見届けたくなりました。
    使命感と言い換えられるほど駆り立てられるなにかが、当時の私の心中に生まれたと記憶しています。
    ゆえにコミカライズ版『竜殺しのブリュンヒルド』第三巻は、二巻の裏で何が起こったかを解き明かし。
    それとともに約束された「カタストロフィ(悲劇的結末)」に向け、もろびとが突き進んでいく一幕です。

    時に、帯に書かれた「ついに、全ての真相が明かされる!!」という一文からすると、あたかも三巻で完結するかのように錯覚させられますよね。
    けれど、この場合は真相が明かされること自体は終わりのはじまりに過ぎません。知ったところでどうすることもできないと考えて、王道を逆手に取った面白い試みと捉えることもできるでしょう。

    いずれにせよ、ここまで来た以上、レビューとしても絶対にネタバレを避けて通ることは叶いませんね?
    ならば生ぬるいことは申しません。警告します。
    自らの目ですべてを見届けたい方は以下の文面から離れ、書評ではなく本編に視線を走らせてください。

    いいですね?
    では始めます。

    そんなわけで、主人公――いいえ、この茶番劇にして復讐劇の主演女優「ブリュンヒルド」は心許した友である「シグルズ」相手に華やかな英雄譚の舞台の裏で自分が何をなしたかを開帳します。
    はっきり言えば恐怖しました。ブリュンヒルドが復讐者であることを踏まえると不可解な行動の真意を、自らの言葉でほどいていく過程にまこと戦慄しましたよ。でも、恐ろしいと同時に惹かれてしまいました。

    手始めに神に由来する完璧な言葉を悪用し、聴衆を魅了します。
    続き、身に付いた竜の力を扇動の意図の下で活用し尽くし、性質の違う二種類の手駒を揃えます。
    壇上での演説を皮切りとして、舞台を二度、三度変えながら彼女は演じます。帝都の住人を舞台背景の書き割りのように、自分自身すら小道具のように扱うことで名声を手にし、物語を終幕へと進めていくのです。

    お膳立てに際して「嘘」という言葉の強烈なリフレインと共に、ブリュンヒルド(とその凶行を見ていることしかできない読者)の心を抉ってくる演出がこれまた強烈でした。
    “竜の娘”ブリュンヒルドは、この場面ではどこまでも人間のようだったのが皮肉でした。

    断片的に事実を織り交ぜたいつわりを駆使する姿は確かに賢かった。
    けれど、悪しきモノです。誰よりも彼女自身がそれを自覚しているのに、止めることはしませんでした。
    あまりにも鮮やかな手口だったので、私の中では感嘆の声すら漏れてしまった部分もあるんですけどね。

    それらはつまり復讐のために、愛した楽園と愛する竜に泥を塗ったようなものだったのにも関わらず。
    計画を実行に移す前の前段階とセットになれば、完璧なものを自らの手でヒビを入れるかのようで、痛々しく、おぞましく、だけど不思議な心地よさも感じられました。さしずめ、理屈のいらない、心ときめかせるお伽話の魔法を、仮説と検証の繰り返しで再現可能な科学に貶めたかに思えましたから。

    よってその果てには、「竜の娘」という言葉にすら翳りが生まれる。親子の関係は「君と私」の二者が認めた真なるものであったはずなのに、自らの言葉で騙りに貶めてしまったかのように聞こえました。

    以上。
    表紙背景の配色が切り替わったことから気づいた方も多いでしょうが、後半戦ないしクライマックスへ突入です。鮮やかな色合いを持っているのに、二巻までは「背景≒世界」に溶け込んでいたかのようなブリュンヒルドがいよいよ矢面に立ち、我を通すようになったと私は解釈していますが、実際どうなんでしょうね?

    輪郭がはっきりと、光と影が鮮やかに。
    この三巻で心に残った場面と紐づくようですが、陰影が確かな絵にあって、闇の中で強烈なコントラストを描く白と黒の竜たちのたたずまいが印象的なことこの上なかったです。

    一方で、周囲を置き去りに筋書きを進めようとするブリュンヒルドを引き留めるために、対抗する竜殺しの力を手にしたシグルズもまた負けていないわけですが。
    漫画では原作小説より人間ドラマの色合いが強く出ていると私は分析しているのですが、以前までのレビューで触れたように俯瞰した視点から背景を見ることになる表現媒体の特色なのかもしれません。

    前言の喩えを翻すようですが、犠牲にされる帝都の住人たちは舞台に置かれた書き割りなんかじゃない、彼らは生きてる人間だ。……ってことなんでしょう。
    その結果として、普通の人の立場を代弁するシグルズの存在感が大いに増すことになったと考えられます。

    シグルズの本音が、ブリュンヒルドの本音を引き出してくれることに変わりはありません。
    大衆の前では揺れるように演技するブリュンヒルド、だけど彼女の実像は揺らがない方だとわかりました。
    揺るぎません。でもシグルズに対する情という形で傾いでブレていることもわかります。

    ブリュンヒルドの内面を織り成す、葛藤のバランスが本当に絶妙でした。
    彼女は確かに竜に育てられた、でも人という枠を越えられなかった。
    そういった、ブリュンヒルドという娘をこの段階でもう描き切っているように思えましたから。

    さて、残すは第四巻、ほぼ全四章からなる原作小説の内容もほぼ四分の三を消化です。
    二巻レビューの末尾で申し上げた「終わり」という言葉を納得いただければ幸いですが、事実としてここに至ってしまった以上は物語を悲劇で終わらせるべく全身全霊を駆りて邁進するしかないのです。
    さぁ、共感も理解も拒んで諸共に破滅の道を突き進まんとするブリュンヒルドの最後の姿を御覧じあれ。

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著者プロフィール

第28回電撃小説大賞《銀賞》を受賞し、『竜殺しのブリュンヒルド』で電撃文庫よりデビュー。

「2023年 『クリムヒルトとブリュンヒルド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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