複眼人 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2025年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784041146897

作品紹介・あらすじ

太平洋に浮かぶ神話的な島と、近未来の台湾。二つの島に巨大な「ゴミの島」が押し寄せる時、謎の「複眼人」が姿を現す――。世界14か国で翻訳。台湾現代文学の担い手による代表的長編、待望の本邦初訳!

感想・レビュー・書評

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  • 今まで感じたことのない不思議な物語でした

    夢の中にいるような錯覚を感じる 呉明益さんの作品です

    死生観も独特です

  • 絵本のような表紙のイラストに誘われて読み始めたが、重く沈んだ雰囲気の話が待っていた。
    現実とファンタジーが入り混じった世界を舞台に人・環境・科学・民族・風習・生と死・家族と友達、等々について語りかけてきて、それぞれについて考えさせられた。
    読了して改めて表紙のイラストを見返し、はじめて雨が降っているのに気づき、いかに自分がよく見て・よく考えることをしていないかがわかるのと同時に、作品の内容をよく表しているのに感心した。

  • 大切な人を失った悲しみは永遠に癒えることはなく、抱きしめて生きていくしかない。
    いつしか、ただ記憶に文字に思い出を留めておくだけでなく、その人の成長した姿までをも想像してしまう。
    複眼人は、そんな生と死をとても静かに見つめているような本でした。
    最後にわかる真実はハッキリそれとわかるように書かれているわけではなく、途中途中の心情から汲み取って、じわじわと気付かされていくような展開でした。
    呉明益さんの作品は、静かだけど激しく想像力を刺激するものだと思います。すごくいい。

  • 呉明益の本を読むのは「自転車泥棒」,「歩道橋の魔術師」についで3冊目だろうか.それら2冊よりも,さらに幻想色が強い.
    舞台は台湾東岸であり,太平洋を漂ってきたゴミの島の激突や海面上昇,温暖化による多雨化の影響を受けて,色々なことが崩壊に向かっている.また登場人物たちは皆,身近な人の「死」を経験している.そのような中で,夫と息子を亡くして自殺を決意した主人公のアリスが,ゴミの島と共にやってきたワヨワヨ島民のアトレとの出会いを通じて,再生に踏み出すことがテーマとなっている.
    上のストーリーだけ読むと荒唐無稽だが,これらは背景であって,哀しみと暖かさが幻想的に描かれています.

  • めちゃくちゃ読ませる文章。訳者が違ってもほんとに読みやすい。これはなぜ?

    筆者も述べてるように今回はちょっと毛色が違うなあ。なんだかかなりフィクションが強い。ワヨワヨも現実のものかそうでないのかよくわからないままに進んでいく。実際に存在するらしいと言うことは後にわかるけど。
    今作のテーマはやっぱり人間の負の遺産かな?
    ゴミの島は主題だし、アザラシ狩りや鯨狩りに対する反対運動が描かれるのもなんだか似た側面があるような気がする。サラにとってアムンセンは困った父親ではあるけど結局サラは捕鯨反対の道に進む。それは今作では人間のエゴを戒める立場にある人間として描かれている気がする。トンネル掘りの技術者もそう。かつては掘削と地質に疑いを持たないが、ダフの地元、少数民族の森を訪ねたときに、トンネルを掘られていない山の生きた声はどのようなものだったかと思いを馳せる。
    私は無尽蔵な開発については反対ではあるけれど、基本的に開発することは反対ではない、豊かな生活を享受している以上なかなか開発を否定できない。それは自分を否定することになるからだろうか。自分自身、自然が好きだと言うことを考えるとこれまでの自身の生活を否定してでも、開発に意を唱えるべきなのだろうか。考えを一変させるまで強い思いではないが、疑念を抱くきっかけにはなった。

    ストーリーは自転車泥棒、歩道橋の魔術師に比べてそこまで面白いとは思わなかった。勿論面白いんだけど。
    登場人物が多くてあんまり感情移入できない部分もあった。自転車泥棒くらいのボリュームがあればこれくらいの人数が出てきても良かったけれど。
    正直なところサラとデトレフの印象はかなり薄い。
    ワヨワヨの島はアトレがウルシュラを探しに旅に出た朝に津波に襲われる。アトレはワヨワヨの島に帰るのだろうと思っていたから驚いた。全ての島民は死に、鯨となった次男たちは海岸へ打ち上げられる。残酷な結末のように感じた。アトレを探しに出たウルシュラもアトレと再会できずに死んでしまう。アトレとの息子を遺すことができたから完全なバッドエンドではないにせよ悲しさが残る。津波に襲われるのは人間のツケではないからなんだかすっきりとしない。息子の足が癒着して鯨の尾鰭のようになっていたと言うのもよくわからない。長男だし。
    アリスとトムの息子が実は死んでいた?ことが仄めかされるのはびっくりした。お話として面白い。そこは好きだった。

  • 日本と同様、台湾も災害の多い島であり、舞台のモデルとなっている東海岸の花蓮は地震の被害が受けたところであるのは説明不要か。そこに集い、出会う人々は皆喪失を抱えて死と生の狭間を彷徨っているようでもある。しかし出会いがそれぞれに化学反応を起こし、より絶望的な展開を呼んでいってもどこかに希望が見える。ディストピアな状況にあっても暗くならないのは、自然の霊異と台湾先住民族たちの考え方が影響しているからだろうか。

  • 単行本が出た時に読みたいと思い、そのまま忘れてた本。文庫化を機に思い出した。

    現実と虚構が融合した神話のような小説。自然の壮大さや、人間の営み、生と死について濃密に描かれている。ファンタジーに分類されるのだろうけど凄くリアリティがあり読後の満足感がある。

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著者プロフィール

1971年台北生まれ、小説家、エッセイスト。輔仁大学マスメディア学部卒業、国立中央大学中国文学部で博士号取得後、現在、国立東華大学華語文学部教授。90年代初頭から創作を行い、短篇小説集『本日公休』(97年)で作家デビュー。2007年、初の長篇小説『睡眠的航線』(本書)を発表し、『亜州週刊』年間十大小説に選出された。以降、80年代の台北の中華商場を舞台とした短篇小説集『歩道橋の魔術師』(白水社)やSF長篇小説『複眼人』(KADOKAWA)、激動の台湾百年史を一台の自転車をめぐる記憶に凝縮した長篇小説『自転車泥棒』(文藝春秋)など、歴史とファンタジーを融合させたユニークな作品を次々と発表している。国内では全国学生文学賞、聯合報文学小説新人賞、梁実秋文学賞、中央日報文学賞、台北文学賞、台湾文学長篇小説賞、台北国際ブックフェア大賞などを相次いで受賞、海外では『複眼人』がフランスの島嶼文学賞を獲得、『自転車泥棒』が国際ブッカー賞の候補にノミネートされるなど、その作品は世界的に評価され、日本語、英語、フランス語、チェコ語、トルコ語など、数ヶ国語に翻訳されている。

「2021年 『眠りの航路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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