川のほとりで羽化するぼくら (角川文庫)

  • KADOKAWA (2024年10月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784041148563

作品紹介・あらすじ

「おっぱいがほしい」仕事を辞め我が子の育児に奮闘している暁彦が、妻の咲喜にぽつりとこぼす。男の自分ができること、やるとおかしいことの狭間で悩みながら日々を過ごす中、とある子育てブログに出会い光を見出す。ふとしたきっかけで、川の向こうに住むブログの著者と会うことになり……。男性目線で描かれる性差と役割を問う「わたれない」をはじめ、七夕伝説の織女と牛飼いが天の国を離反する「ながれゆく」など、4編を収録した連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 彩瀬まるに嵌っちゃったな。私にとっての初めて彩瀬まる作品「なんどでも生まれる」が新刊で発売されるのを機に、駅前の書店を巡りに巡ったところ、一店だけ単行本・文庫本含めて7冊置いており、この機を逃すものかと大人買いをしたのが懐かしい。今回の文庫新刊「川のほとりで羽化するぼくら」も10月の出版と同時に速攻で購入した。

    おおまかに彩瀬まるの作風を経験しているので、読み進めるのは速い。2日でじっくり読んだ。本書は2021年8月に単行本で出版されたものを文庫化したとのこと。4作品からなる短編集で、解説はSF界の池澤春菜ということで、ジャンルは辛うじてSF、いや?ファンタジーに区分されるか?一応、池澤春菜が解説であらすじを書いてはいるが、各作品がそれぞれ独自のテーマで書かれているので、今回は各作品について個別に私なりの感想を特に川に拘らず述べたい。
    〇「わたれない」
    今、政治が揺れている。子育て支援の財源はどうする。防衛、物価高対策、景気対策、103万円の壁、その他もろもろ一体どうするの?育休の現状については最近では話題にも上がってこない。現状維持なのか、少々は良くなっているのか。それと、自分はどれだけ子育てに関与していただろうかと振り返るきっかけを与えてくれた。まだまだ日本は遅れている。北欧を見習うべきだと教育評論家は言う。そんな中、この作品を読むと、何か主人公の考え方が自然なんだよね。極めて自然。自分自身、そして周りの人達との関係性が緩やかに変化していくのも、そのスピードが実に心地良い。人生におけるアクセントは少しであるに越したことはない。
    〇「ながれゆく」
    実在しない世界なのでファンタジー。七夕の世界も毎年毎年同じではない。時の流れ、ではなく世代交代によって登場人物の考え方が少しずつ変わっていくのは、人間社会も同じ。伝統がいくら頑丈な物であっても、生活も決まり事も当初とは徐々に変わっていくのは仕方が無い。機械だって伝統工芸だって全く同じものは作れない。やはり、この様な多様性を有する物語の先には、これまでの常識を覆すような素晴らしい世界が広がっているし、その世界を手に入れるためには勇気が必要、ん?これってやはり人間社会の話?
    〇「ゆれながら」
    これ本当に嫌な話。でも実際にこの様な世界が実在していたのだから人間って本当に罪深い生き物。また、子供を作ると補助金が出るって、これからの日本が行おうとしている社会だ。でも、途中でいきなりSFワールドに入ってしまう。しかし、どこかで読んだようなアイディアに懐かしさを感じる。結局はこの作品も極めて人間的、いや人間臭い話で終わるのは一種のどんでん返しなのかもしれない。個人的には、辛うじて日常を取り戻させてくれて作者に感謝したい。救われた。
    〇「ひかるほし」
    要は田舎のお婆さんとそれを取り巻く田舎ではどこにでもいる人達の話。このありふれた話の中にも作者のメッセージが織り込まれている。呆け老人を除けば、半世紀で老人の考え方は大幅に変化した。そして、今後の医療の革新により、確実に老人社会は変容する。ボケ老人も減るだろう。50年後の日本社会はどうなるのか、100年後はその様な老人にとってワクワクするような社会が成立しているだろうか。たぶん男女格差はなくなっているかもしれないが、果たして小説から「男女差別」と言う文字は消えているだろうか。そうであれば平和な社会になっているだろう。しかし、アフリカやイスラム社会では、そうなるには時間がかなりかかりそうだ。

    この作品の一部では、「川」は「格差」、もっと酷く言えば「差別」なのだろうか?考えすぎか?この「川」を乗り越えることが「羽化」ということなのか?もうちょっと彩瀬まるからいろいろな事を教えて貰いたい。

  • 20250216読了

  • 最後の話はちょっと前ならよくありそう。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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