君の顔では泣けない (1) (角川文庫)

  • KADOKAWA (2024年6月13日発売)
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感想 : 83
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  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041148570

作品紹介・あらすじ

高校1年生の坂平陸は、ある日突然クラスメイトの水村まなみと体が入れ替わってしまう。どうやら一緒にプールに落ちたことがきっかけのようだ。突然のことに驚き、戸惑いながらも入れ替わったことはお互いだけの秘密にしようと決めた2人。しかし意外やそつなく坂平陸として立ち振る舞うまなみに対し、陸はうまく水村まなみとして振る舞えず、落ち込む日々が続く。まなみの家族との距離感、今まで話したこともなかったまなみの友達との会話、部活の顧問からのセクハラ……15年間、男子として生きてきた自分が、他人の人生を背負い女性として生きること。いつか元に戻れる日を諦めきれないまま、それでも陸は高校を卒業し上京、そして結婚、出産と、水村まなみとしての人生を歩んでいくことになる――入れ替わった後の15年を圧倒的なリアリティで描く、第12回小説野性時代新人賞受賞作!!

感想・レビュー・書評

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  • 戻らないの!?面白そう!!と思って読んでみた。
    男女の中身が入れ替わったら当然こういうことあるよねっていう、日常生活で起きる様々な出来事をぼやかさずに描いている。
    しかも長期戦。
    恋愛だけでなく妊娠や出産もなんて!
    無理しなくていいのにと思うがそうではなく、いつ元に戻ってもいいようにそれぞれの人生を大切に、きちんと生きている。
    面白おかしく描かれることが多い男女の入れ替わりだが、コメディ要素はなく、ただこの状況で生きていくために試行錯誤する様子がリアルに描かれている。
    お父さんの葬儀の場面が良かった。特に弟と雪だるまのエピソードを話すところが泣けた。

  • 良い小説でした。
    キミジマ・ワールド全開!
     
     男女入れ替わりのお話はこれまでにもありますが、リアリティの高さは一番ではないでしょうか。リアルに描くことによって、みえてくることがいろいろありました(あくまで個人の感想です)。
     ・(当然)男女の身体性の違い
     ・15歳から30歳までの人生選択のジェンダーによる違い
     ・個々の家庭環境(両親の仲、経済状態、兄弟の有無)の違い、及び男女の違いによる育てられ方の違い
     ・友達との関係性の違い
     ・個人としての特性(趣味・趣向・特技・身体能力・生活習慣)の違い

     上記のような「違い」を一身に受け入れながら、入れ替わりの相手の生活を15年間つづけてきた主人公のふたり。その間、いつ元に戻ることができるのかという期待と失望との葛藤。想像を絶する半生がリアルな描写の奥に見えています。
     しかも、お互いに相手の身体や名誉を傷つけることのないよう気づかっている姿が痛々しいほど愛おしいです。

     15歳で入れ替わったふたりが30歳になったということは、この先は入れ替わった人生のほうが長くなることを意味します。
     そうすると、どちらが本当の自分だったか揺らいできませんか?
     例えば、地方出身者が大学進学で東京へ行って、そのまま就職して40歳を超えたら、アイデンティティはどちらが強くなるでしょう? 自分は東京の人? 故郷の人?
     例えば、子どもの頃の自分と、大人になってからの自分は、どっちが本当の自分?
     例えば、独身時代の自分と、結婚してからの自分は?
     例えば、子どもができる前の自分と、親になってからの自分は?

     この先、この小説のふたりは、どんなアイデンティティを持って生きていくことになるのでしょうか?
    稀有な人生だったね、ということになるのでしょうか?
     なんか、いろんなことを考えちゃいましたよ。

     で、あなたはどうですか?
     これまでと、これからと。。。。
     ひっくるめて全部が自分の人生だと言い切れる人生を過ごせてますか?
     過去の自分を大切にしてあげながら、これからの人生を丁寧に生きたいですね。そして、逝きたいですね。

      つまり、「君の顔では泣けない」と。

  • 先日、図書館でお借りして読み終わったというのに 文庫化されるにあたって アナザーストーリー【sideM】がボーナストラックとして収録されていると知り ついつい購入してしまった

    もしかしたら “入れ替わりその後”が読めるのかも?と期待して
    sideというんだから 元女の子の側からの視線のワンシーンでした
    ラストの相手の妊娠を知った時の状況と心情
    まあ そうなりますよね
    期待とは違いましたが、
    いつか この二人の老後とか読んでみたく思ってます

    • おびのりさん
      この表紙 朝井リョウの少女は卒業しないと
      似てるのよね
      この表紙 朝井リョウの少女は卒業しないと
      似てるのよね
      2024/06/17
    • みんみんさん
      同じに見える(꒪⌓︎꒪)
      同じに見える(꒪⌓︎꒪)
      2024/06/17
    • 1Q84O1さん
      『少女は卒業しない』自分の本棚にありました
      確かに同じですねw
      『少女は卒業しない』自分の本棚にありました
      確かに同じですねw
      2024/06/17
  • 単行本が発売された時に設定が面白くて結構好きな作品だったので、文庫化の際にもう一度本作を購入し読みました。ボーナストラックの内容はちょっと意外でしたが、単行本の時には知り得なかった部分が見れて良かったと思います。

    本作はいわゆる男女入れ替わりもの。古典的なテーマだけに、恋愛や青春のドタバタが題材にされがちですが、本作は少し特殊で入れ替わったまま戻らないという斬新な設定。その中で主人公が葛藤しながら、入れ替わり相手の生活を送るというストーリー。

    これは後の作品にも言えることなのですが、君嶋さんの心理描写、特に葛藤するシーンが素晴らしいと思います。本作も男女が入れ替わるという一点を除いて、特に変わったことは起きません。しかし、入れ替わった相手の人生を消費するという感覚があるからこそ生まれる葛藤は秀逸で、それがこのタイトルにも表れされているのかなと思いました。

    個人的には君嶋さんの描く独特なテーマと、心理描写が好きなので、これから期待したい作家さんの1人です。

  • 名作のヒントがこんなに近くに転がっていたとは。男女入れ替わりが、「戻らなかったら…」「しかも出産、子育てまで…」この話の筋を聞いただけで、どんな葛藤を経てその境地に至ったのか気になって、居ても立っても居られなかった。

    同時に、異性がどのように振る舞い適応していくのか、共依存になるのか、心は現実を受け入れられるのか、家族への想いは断ち切れるのかなど、相当豊かな想像力と洞察力、表現力がないと、あっという間に駄作に成り下がるテーマでもある。

    その点、この作品では筆者は大成功を収めている。空白期間も挟みながら、15年経った現在まで続く年に一度の逢瀬の約束。家族や友人に対する寂寥感の中で元の人格を懐かしむ会話がもたらす安堵。胸熱シーンが随所に散りばめられている。

    誰もが気になる性事情もぼかさず、むしろあっさり描かれ、そういうものかと妙に納得した。アナザーストーリー(女性側視点のエピローグ?)に垣間見える愛憎半ばの剥き出しの感情に、想像を絶する葛藤を喉元に突きつけられた気がした。

  • “一度は経験してみたいけど、一生は耐えがたい。なんでこんな話が描けるのか!?”
    君島さん実は中身は女性なのでは?笑

    男女の入れ替わりを文字や文章にされ、妙にリアルに感じるところがこの本の最大の魅力。
    内容は入れ替わりがなければペラッペラだと思うんです…正直。
    しかし、この設定と著者の絶妙な心理描写が作品を180度反転させ、最高のストーリーになっていると思いました。
    入れ替わりを面白可笑しく描くのではなく、真剣に向き合う二人の心情が描かれていて、とても切ないんです。
    当たり前すぎて何も感じない、自分が自分として生きていられることがどれほど幸せなことか、この本を通して痛感。

    「とにかく薄氷を踏むような毎日だった」と作中で表現される彼らの生活は、まさにその通りだと思った。この本では描ききれない不便や苦労が沢山あるのだろうと胸が痛みます。
    久しぶりに心をを揺さぶられ、考える本を読むことができて良かったです。

    両親、兄妹、友人、夫婦、恋人と身の回りの色んな関係に想いを馳せる一冊だと思います。

  • 高校1年生の男子がある日突然クラスメイトの女子と体が入れ替わってしまい、元に戻れないまま女性として生きる物語。

    入れ替わりというと「秘密」や「君の名は」、ドラマ「天国と地獄」など思い浮かびます。
    よくあるジャンルだし、もういいよとスルーしそうなところでしたが、読み始めてびっくり。面白くて一気読みしてしまいました。
    これまでのものとは全く違った切り口で新鮮な感じがしました。

    今の自分の体や人生は借りものだという意識が強くて、いつか元に戻ったときに相手が困ることのないようにと誠実に考える主人公が健気で切なかったです。
    ジェンダー問題が生々しくてリアリティがありました。
    元の家族と他人になってしまうなんて辛すぎる…
    読みやすく心理描写が丁寧で構成も良くて、これがデビュー作とは驚きました。

  • ある日、突然クラスメイトと体が入れ替わってしまう物語


    まぁ、他人と体が入れ替わることなんてよくあることですよね

    みなさんも月一ぐらいで入れ替わっているでしょ?

    私も一週間入れ替わって、昨日元の体に戻ってきましたよ


    ん!?
    そんなことできないって…
    入れ替われないって…
    うっそーーー!?


    あの子とちょっと入れ替わってみたいなと念じればスーッと入れ替われるじゃないですか!


    えぇーーーっ!?
    私だけ…
    入れ替わりの能力が使えるのは…
    知らなかった…
    みんなできると思ってた!


    私の場合は元の体にもどることができるけど、これが戻れなかったらどーなんだろう?
    女性としてずーっと生きていくってどーなんだろう?

    容姿は女だけど中身は男
    男と恋愛をして、結婚をして、妊娠をして、出産!?なんてできるんだろうか…

    うーん…、考えてみるだけでそれはちょっと無理かもしれない
    だけど、元に戻ることができないかもと思ってしまうと女性として生きていく決心がつくのかな…

    まぁ、私の場合は入れ替わっても元の体に戻れるから心配ないけど(*´σー`)エヘヘ

    • 1Q84O1さん
      ultramanさん

      それ、聞きます…(;一_一)
      答えは、ノー!
      オジサンとは入れ替わりません!
      ultramanさん

      それ、聞きます…(;一_一)
      答えは、ノー!
      オジサンとは入れ替わりません!
      2024/10/30
    • mihiroさん
      一休さ〜ん\(*ˊᗜˋ*)/
      これ、好きでした!
      一休さんみたいにすぐ戻れたらいいけど(笑)、なかなかシリアスでしたよね〜(~_~;)
      これ...
      一休さ〜ん\(*ˊᗜˋ*)/
      これ、好きでした!
      一休さんみたいにすぐ戻れたらいいけど(笑)、なかなかシリアスでしたよね〜(~_~;)
      これ、私なら私と結婚するのにな〜( `・ω・) ウーム…
      2024/10/31
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん

      確か、ユーキャンにすぐ元に戻る方法の講座があったはずです!
      申し込んでみては?

      もしくは自分と結婚する道を選んでみま...
      mihiroさーん

      確か、ユーキャンにすぐ元に戻る方法の講座があったはずです!
      申し込んでみては?

      もしくは自分と結婚する道を選んでみますか
      これは新しい展開ですねヮ(゚д゚)ォ!
      2024/10/31
  • もしかして私たち、、、入れかわってる?
    君の名は。かっ!つん?
    今更ながら男女入れかわりの物語
    まぁそれぞれ生活して最後まで戻らないのは新しいけどさぁーもう入れ替わりはいいぜ!

  • デビュー作とは思えないほど、斬新なストーリーでしたね。身体の入れ替わり作品は多々ありますが、この話の特色は入れ替わったまま月日が流れ、15歳と言う多感な時に突然入れ替わってしまったまなみと陸の、リアリティ溢れるお話でした。映画化も決定してるので15〜30歳までの2人を、誰がどのように演じてくれるのか楽しみです。この本の始まりの1行目がすごく意味深で、引き込まれました。

    • きたごやたろうさん
      はい。
      でもなんか気になりました。
      (1)ということは、続巻も出てるんですかねぇ?
      はい。
      でもなんか気になりました。
      (1)ということは、続巻も出てるんですかねぇ?
      2025/01/16
    • mamikoさん
      続編は出てないですねー。なんで1がついてるんだろ…。
      続編は出てないですねー。なんで1がついてるんだろ…。
      2025/01/16
    • きたごやたろうさん
      だよねー。
      オイラも検索かけたんだけど⁇
      だよねー。
      オイラも検索かけたんだけど⁇
      2025/01/16
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著者プロフィール

1989年生まれ。東京都出身。「水平線は回転する」で2021年、第12回小説野性時代新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。

「2022年 『夜がうたた寝してる間に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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