オオルリ流星群 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2024年6月13日発売)
3.86
  • (52)
  • (82)
  • (54)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 1520
感想 : 75
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041148815

作品紹介・あらすじ

人生の折り返し地点を過ぎ、将来に漠然とした不安を抱える久志は、天文学者になった同級生・慧子の帰郷の知らせを聞く。手作りで天文台を建てるという彼女の計画に、高校3年の夏、ともに巨大タペストリーを作ったメンバーが集まった。ここにいるはずだったあと1人をのぞいて――。仲間が抱えていた切ない秘密を知ったとき、止まっていた青春が再び動き出す。
喪失の痛みとともに明日への一歩を踏み出す、あたたかな再生の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この作者さん、結構好きなのだが、今回は私にはちょっと合わなかった。

    45歳になる薬局の店主・久志が、チェーン店の出現で店の売上が減ってきたにもかかわらず何も手が打てず、幸せホルモンがどうたらという話から始まるが、のっけからこんなかったるい話、読みたくないなと躓いた。
    物語は、高校3年の夏に文化祭に出す巨大タペストリーづくりに励んだ仲間で東京に出て行った彗子が戻ってきたところから、彼女が計画する天文台づくりをあの時のメンバーで手伝う話に進む。
    彗子が戻ってきた謎(と言うほどのことでもなかったが)や言い出しっぺの恵介が突然タペストリー作りから抜けた訳(真相を聞いても何か納得しにくかった)や和也が引きこもりになってやっていることの謎(ほとんど出てこない彼が最後にいいところを持って行ってしまった)などを塗して進む話は、なんかよくあるTVドラマみたい。
    かつての仲間たちと日焼けするまでして天文台づくりに取り組む姿は微笑ましくはあるが、とは言え、45歳にもなって家業や司法試験や教員の仕事をほったらかして何してるのかいなという思いのほうが勝ってしまい、悪い話ではないのだが、ファンタジーにしか感じられなかった。

    最後の、流星をラジオで聴く、ってのは良かったけどね。コーン。

  • 第二の人生って何だろうね。考えちゃう。

    この本に出てくる久志と一緒。私も人生振り返ると、何となく流されて生きてきた気がする。
    真っ直ぐ迷わず自分の道を突き進んでいるように見えたスイ子。40代のみんなはそのスイ子の姿が羨ましく思えて憧れる。でもそれは表面に見えなかっただけで、実は過去に色々あったのです...。ある程度の年齢を重ねれば、そりゃ辛い歴史もありますよね。

    自分だけの贅沢な時間だった学生時代の頃。
    子育てでワタワタしていた忙しいあの頃。
    そして今、子供たちは大きくなった。
    第二じゃなくて、もう第三の人生だよ...。
    お母さん業が長くて、自分がどんな人だったか思い出すのが難しくなってる。

    それよりこの本、星や星座、自然の風景がいっぱい出てきてとても癒された。そして一緒に青春時代に戻れた。そうだ、星がいっぱい見える大自然の中で、自分のことだけ考えてみたいなー。本当の自分に戻れるかも。

    はっ!?この流れ、もしかしてこれが、ミッドエイジクライシスというものか?!
    ...でもきっと違うな、ご飯美味しいから(^^)

  • これまた表紙がかわいいー
    高校時代の仲間と再会して青春思い出しながら、みんなでまた一つのことを協働していくようなお話。
    なのですが女性2人があまり好きになれず、、、
    前半はとても楽しい! 
    ちょっとだけミステリー要素もあったり。

    高校生の頃の学祭など懐かしい思い出が蘇る、なぜあの頃はあんなに純粋だったのだろうか…。
    色々と昔の気持ちなどを思い起こさせてくれるような作品でした〜╰(*´︶`*)╯♡

  • 高3の文化祭で、巨大オオルリを作った仲間たちが、45歳で再集結して天文台を作る。内容は表紙の絵の通りですが、絵に描いたような完璧な青春物語。自分のため、愛する人のため。読んで少し若返りました。

  • かつて国立天文台に勤めていた高校時代の同級生・山際彗子との再会から、彼女の天文台作りを手伝うことになった種村久志・勢田修・伊東千佳の3人。
    引きこもりになってしまった梅野和也、すでに他界している槇恵介を含めた6人は、高校時代に同じ目的のために夏休みを共に過ごした仲。
    そんな青春時代からの縁で行動を起こす彗子・久志・修・千佳の4人だが、なんと年齢は45歳! 作中で使われている言葉を引用するなら、「青春」ならぬ「青秋」小説といったところだろうか。

    本作は久志らの同級生である彗子がなぜ東京から地元に戻ってきたのか、そして槇恵介がなぜ亡くなってしまったのかという謎を残しつつ進行していく。
    旧友の天文台制作を手伝うことになった久志たちだが、家庭を持つが故に自由に行動できない場面が多々ある。これは青春小説ではあまり見られない障害と呼ぶべきものだろう。守るもののために、何かを犠牲にしなければならない大人の歯痒さがひしひしと伝わってきた。
    また、学生時代の思い出と現在の変わり映えのない日常を比較する登場人物を見ていると、自分と重ね合わせてしまい、ついため息が漏れてしまう。
    人間という生き物の人生中盤を描く本作は、20代の私にもいずれ訪れるその鬱屈とした日々を指し示しているのかもしれない。

    中盤から徐々にアクセルがかかり始め、終盤に差し掛かる辺りで作中における2つの謎が解き明かされると、登場人物の心境は次第に揺れ動いていき、順風満帆だった天文台作りも雲行きが怪しくなっていく。
    明かされた衝撃の事実を噛み締めながらも、色を失った夏を乗り越えるため、かつての恩人に恩を返すため、自らの道しるべをもう一度見つけるため、4人はそれぞれの目的のために天文台制作に打ち込んでいく。
    過去に自身らが体験した最高の夏を、それを超える夏で上書きするべく天文台作りに勤しむ45歳たちは、20代の私から見ても若々しく、輝いて見えた。何歳になり一度輝きを失っても、輝き直すことができると教えてくれた小説だった。

    読了後に表紙を眺めて見ると、読み終えたからこそ心が熱くなる仕掛けがある。そして左下には巣箱でひっそりと羽を休めるオオルリが。 読後の余韻に追随するように不思議な懐かしさと切なさに駆られ、喉がグッと締めつけられた。
    私が45歳になったとき、変わり映えのない日常の中で、この小説のことを思い出すことができたらいいなと思う。

  • ミドルエイジクライシス、中年の危機。人生折り返して残りの寿命と幸せについて考える。
    幸せホルモン出てない、変わらない毎日など共感ポイントが多過ぎて逆に気分も落ち込んでくる。
    久志のスイ子が何かに熱中して取り組んでいる姿に羨ましく妬む気持ちになるのがわかってしまう。充実してないんだな。
    それでもまた集まれる仲間がいる。約30年経っても思い出が共有できているのは恵まれている。自分も高校時代の部活仲間を思い出さずにはいられなかった。そんなん簡単にはあつまれんよなあーと僻む気持ちもなくはないけどね。
    ラスト2ページで涙が出た。もういなくなったり、出てこれなくなった面々がいても確かに6人集まったんだ。
    これからもしょうもない1年を繰り返しても、残りの時間のなかで脳内物質のメーターを振り切れる一日でもあればやっていけるんだと、背を押してもらった。自分にとってはなんなんだろう。

  • 幸せの総量には上限があるから始まりの幸せホルモンの数値化、数値化した言葉が文章になるって、凄いことだと激しく思う。今までいなかったんじゃないかこんな凄い作家さん、しかも本業ではなくて、だから。読みやすいし広瀬の奥さん、久志の家族、千佳の旦那と両親が嫌な雰囲気だなと思いきやなんてことないから。高校生の仲間ってやっぱ特別なんだね、それが息づいてて繋がっている 正直羨ましい。ラストでの4人以外の集まり方も素敵だな ってすいこの登場から全てが始まったんだなあ。オオルリ天文台も想像するだけでワクワクする物語。あともっと伊与原新さん読まないとダメってこと

  • 過去を振り返ると、たくさんの後悔があって、その時に戻れるなら、やり直したいと思うことが多々あります
    言わば、生きていくのは辛いことの積み重ね
    辛さをうまくやり過ごして、折り合いをつけて、みんな何とか今を生きている

    物語では、青春とも呼べる一瞬の輝きを共有した仲間たちが、もう一度集結して、仲間の夢を叶えるために手を貸す
    しかしそれは自分への救済の行為でもある
    夢を実現するために、みんなが力を合わせていく工程は楽しいしワクワクする

    どんな夢だっていい
    夢に向かう前と後では何かが変わってる
    そう信じて生きていけたらいいよね

  • 良かった。
    最後に解説を読んで、
    もう一度最初の数ページを読み返す時、一番こころが温かくなった。

  • 以前、「月まで3キロ」を読んでいましたが、
    幅広い作品を刊行されているのに驚き。
    書店で見つけた本作の帯に、
    -------------------------
    #40代編集部員が選ぶ、
    誰かと語りたい本 No.1
    -------------------------
    とあって、思わず手に取りました(もうすぐ40代)

    同じ高校時代を過ごした仲間が40を過ぎて集まる。
    本作は久志と千佳という二人の目線で物語が進みます。

    高校時代にオオルリのタペストリーを空き缶で作成した。
    その思い出は今も大切な記憶。
    同じ場所にいたはずなのに
    年月を経て、それぞれ違う場所に。

    当時の記憶と、今に対する不満や不安、葛藤が描かれ、
    そこに彗子という同級生が帰郷しているという知らせが。

    彼女もタペストリー作りに関わっていたけれど、
    明らかに他とは違う能力を携えていて、
    天文学者の道を進んでいたはず。

    その彼女が。
    なぜ。

    嫉妬や羨望、不安や戸惑いを抱えた40代。
    優秀だったはずの彼女だって、普通に人間で。
    みんな迷いながら戦ってるんだなあと。

    物語終盤は通勤中に読んでましたが、
    不覚にもうるうるしてしまいました。苦笑

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊与原新の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×