失われた岬 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2024年10月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (656ページ) / ISBN・EAN: 9784041150092

作品紹介・あらすじ

ノーベル文学賞を受賞した作家・一ノ瀬が、授賞式前日に失踪した。彼の足取りを追った担当編集の相沢は、北海道のある岬の存在に辿り着く。その岬では30年ほど前から何人も消息不明になっており、得体のしれない薬草の噂まで流れていた。相沢は過酷な道のりの果てにようやく一ノ瀬を見つけ出すが、すでに彼は変わり果てた姿になっており……。人を人たらしめるものとは何か。生きる意味を問う、戦慄のサスペンス・ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 2024/12/27読了
    「人の欲望というものは、常に制御されない限り、歯止めがきかないものです。個人の財産も寿命も、一国の勢力も領土も」

    裏表紙のあらすじに、「ノーベル文学賞を受賞した作家・一ノ瀬が、授賞式前日に失踪」云々とあるが、読み始めてもそんな話は出て来ない。まずは2007年、度を超した断捨離から北海道に転居、更に“失踪”した夫婦の話。次に2020年代末と思しき近未来、かつてのカリスマ経営者がAI心理療法士に語る話。ともに、ある“岬”が関係しているらしい。そして、第四章、2029年のストックホルムから、漸く本題が始まった。―――読み終わって、色々“怖かった”。エラいものを読んでしまったという感じであった。
    “岬”に立ち入った者たちが到達した境地は、欲望から解放された理想的な姿なのか、人たることを止めた姿なのか? そんな問いかけよりも前に、描かれる'29年は気候変動が進んで異常気象・災害が日常化し、世界中で政情不安が広がり、分断と対立が激化している。日本は他国からの脅威に晒され、長引く経済停滞からインフラの整備もままならないという有様。この未来像が、かなりリアル。歯止めの効かない欲望のままにお互いを喰い合っても、はたまた、あらゆる欲望から解放されて“無”の境地に至っても、行き着く先は破滅であろう(そう、“丁度良い”はとても難しい)。この物語の中に於いては、それでも精神的平穏の中で破滅をそうとも思わずに終焉を迎えられる分、後者の方がまだマシとすら思えてくるのだが……こう思えるのも“岬”に毒されているのだろうか?

  • カリスマ主婦、ノーベル文学賞作家、由緒ある名家の令嬢…北海道の片隅にある岬に引きよさせらた、彼らの謎を追うミステリー。
    経済も国力も停滞し衰え、インフラ整備や外国の侵犯にも手をこまねく近未来の日本を舞台に、不老不死や若返りの妙薬の謎を追いかける話になっていく。

    ミニマムとか断捨離とかにあこがれ、少しずつでも実践しているのだが、その極地である欲望を制御しきった先にある生き様を考えさせられた作品。不老不死の謎を解明したシーンには共感と同時にちょっと背筋が寒くなる気がした。

    ギラギラした欲望を排除して灰汁の抜けきった生き方は平穏ではあるけれど、外から見れば不幸で無力に見えるのかもしれない。それは人間個人個人の話だけではなく、集団や国家もそうなのかもしれない。

  • あまりの読み応えに驚く
    と言っても篠田節子さんの作品に浅く薄いものなどないと思うけれど
    岬を、否定するか
    岬に入るか
    自分はどちらだろう

  • 途中までの面白さと終わり方のガッカリ感…途中まではほんとに面白くてハラハラドキドキワクワクだったからその分残念な気持ちになっちゃった

  • 新興宗教への解像度がもはや恐ろしい。特に第一章の少しずつおかしくなっていく違和感がリアル。
    だんだんと話が壮大になるので、『仮想儀礼』と比べると身に迫る感じは薄い。ああいうゾッとするような結末が欲しかった。

  • 北海道の果てにある「岬」の先へ行く選ばれし者たちと、残された者たち。スピった隣人、恋人、小説家の行く末やいかに…というノリで進むかと思いきや、物語後半はスピりの原因になるお薬発明話一色で、一気に失速した感が否めない。
    だからどうだ?というのを読み取れない時点で、自分がいかに貧相な感性を持った現代人であるかを突きつけられる。
    北の国からミサイルが飛んでこようと、新宿の外国人居住区で爆発事故が起きようと、人がまず見るのはスマホのニュースである。目の前が真っ暗になっても、最初に求めるのは太陽でなくスマホの電源だ。かくいう自分もそうかもしれない。そんなことをしている限り、岬には決して呼ばれないだろう。

  • ーベル文学賞を受賞した作家・一ノ瀬が、授賞式前日に失踪した。彼の足取りを追った担当編集の相沢は、北海道のある岬の存在に辿り着く。その岬では30年ほど前から何人も消息不明になっており、得体のしれない薬草の噂まで流れていた。相沢は過酷な道のりの果てにようやく一ノ瀬を見つけ出すが、すでに彼は変わり果てた姿になっており…。(e-honより)

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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