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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041150184
作品紹介・あらすじ
私立探偵として活動するみどり。“人の本性を暴かずにはいられない”彼女は、いくつもの事件と対峙する――。第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞! 精緻でビターなミステリ連作短編集。
感想・レビュー・書評
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★5 人間の本性に魅了された私立探偵みどり、バランスの優れた高品質な連作短編 #五つの季節に探偵は
■きっと読みたくなるレビュー
すげー面白んだけど、いい連作短編集ですね。読み逃してたなぁ~、文庫で拝読します。
設定自体は女性の私立探偵ものなんですが、ひとつひとつの作品に気品があり、味がある。各編の素材もセンスが良いし、取材も徹底的。謎解きとしても伏線の効かされた真相に驚かされるし、変に捻り過ぎず、物語とのバランスもいい。
主人公みどりのキャラクター、人間の本性を見抜きたくなるという性格もいいんすよ。ミステリー読者であれば、誰もが思う現実的なあるあるだし、すごく身近に感じちゃう。彼女の成長物語でもあるしさー。えー、マジ褒めるところしかないんだけど。
手軽に読める高品質な探偵小説、万人に推せますが、特にミステリー読み始めの方にオススメしたいすね。
●イミテーション・ガールズ 2002年 春
探偵の娘、高校生のみどりは、友人からいじめの相談を受ける。先生の調査をしてほしいというのだが…
はじめて探偵の真似事するときのみどりのドキドキ感、めっちゃ伝わってくる~ わかるわかる、きっとこんな感じだよ!一編目から鋭角な真相にビックリ、おもろい。
●龍の残り香 2007年 夏 【おすすめ】
大学に通うみどりは、お香に入れ込む友人から相談を受ける。貴重な龍涎香を先生に盗まれたらしく…
すげー取材力、お香の世界ってこんなにも深いんすね。シンプルに勉強になりました。ストーリーとしてもうねりがある良いミステリーなんですが、特にラストが情趣と虚無感があって好き。
●解錠の音が 2009年 秋
事務所に就職した新人探偵みどり、ストーカー調査の依頼をうけるのだが…
若さと無邪気が溢れまくりのみどりが眩しすぎする、先輩の奥野さんも頼りがいのあるキャラ。このバディに感情移入しちゃうよね。物語としてのまとまりもキレイな一編。
●スケーターズ・ワルツ 2012年 冬 【超おすすめ】
軽井沢に休暇にきていたみどり、レストランでピアノを演奏していた尚子との会話。
この作品もすごい取材力ですね、音楽や芸術に対する感性も高くないと書けないじゃないのコレ。読んでるとどんどん物語に入り込んじゃう。登場人物たちが目に浮かんでくるし、もはやオーケストラが奏でる音楽すら聴こえてきそう。短編なのにこれだけ躍動感をだせるもんなんでしょうか、すげぇ。
もちろんミステリーとしても面白いし、これだけでも読む価値がある。
●ゴーストの雫 2018年 春 【おすすめ】
新人探偵の須見とみどり、リベンジポルノを流布した人探しの依頼だったが…
本編は新人の須見目線で物語が進行、ちょっと新鮮。もはやベテラン探偵のみどり、10年も経つとこうなるよねってイメージどおり。作品内では描かれないんだけど、彼女の歴史が見えてくるんよ、あえて引き算なのが魅力なんですよね。
そして須見との掛け合いも探偵の深淵を覗かせてくれました。人間だれしも得意なこともあれば、苦手なこともある。いかに自分の強みを伸ばし、仲間を信頼するかってことなんすよね。チーム力って大事です。
■ぜっさん推しポイント
主人公みどりを含め、人間の描き具合が超推せる! くどく書いてないのに深みがあるんだよなぁ~
人間の良いところばかりじゃなくて、あくどい部分を嫌味ったらしく描くのも上手なんすよね。善悪を出すことによってバランスをしっかりとり、探偵ものの物語としてもちゃんと機能させている。
これまで逸木裕先生の作品は『四重奏』しか読めてませんでしたが、これからの作品も期待しちゃいます!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公は最初おお話で探偵、というか他人の秘密を知らずにいられない性癖に目覚めます。主人公はプロの探偵になりますが、仕事の範囲を超えてでも真実に迫ろうとします。それによって友情が壊れても、相手を不幸にしても止められない。そんな主人公の成長を描く連作短編集です。
探偵は謎を解くものですが、それは必ずしも誰かを幸せにしないことがある。それでも謎を解く。まさに探偵の物語だと思います。 -
高校生から大人になって出産後に仕事を再開する、探偵人生の物語という形式の連作ミステリー。設定自体どうということもないし、成長したからこその事件解決能力が上がっていくようでもない。そういう意味では物足りないこともないではないが、主人公の根本的なところは変わらないというのが話の根幹でもあるから、じっくりとこの探偵と付き合っていくための連作というところ。
それぞれの話は面白くできているし、どんでん返しもあったりするので十分楽しめた。どうということのない高校生、自分を常温水に例えるくらいの無味無臭かもしれないが、どうしてどうして色々なところでいい味を出している。最初の話が高校生時代の探偵業に入っていくところである意味一番驚かされたが、そこからはもう少し紆余曲折が起きないかなとは思った。
推理作家協会賞受賞作はクラシック音楽にまつわる話だったが、音楽ファンの自分にしてもちょっと音楽に寄りすぎかなと思った。作者は結構研究したのかあるいは元々音楽マニアだったのか。 -
2022年1月に刊行された単行本に加筆修正のうえ文庫化されたそうだ。単行本は未読のため違いはわからない。
サカキ・エージェンシーという探偵事務所を経営する父を持つ榊原みどりが主人公の5篇で構成された連作短篇集だ。2002年の春に始まり2018年の春で終わる。
初登場時のみどりは高校生で探偵ではない。その後、年月の進行と共に彼女の立ち位置が変化していくが、性格は揺らがないのがおもしろい。
ミステリーとしては派手なものではないけれど、日本における探偵小説はこのくらいがちょうどいい。 -
主人公の探偵としての初めての仕事から、16年後までの仕事についての短編集。
"誰を傷つけることになっても謎を解かずにはいられない探偵"(裏表紙あらすじより)という記載の通り、その辺りでやめた方が、というところから突っ走る主人公の姿に、やりすぎだよーと思いつつ、読まずにはいられない。
知らない文化について(香道やクラシックや建設)の話もあり、楽しめる要素たくさん。 続編もでているので、読むのが楽しみ。 -
人が死なない日常の謎系のミステリ作品。
連作短編集で全5話ですが、話ごとに年代が違います。
また、主人公みどりの視点以外で語られる話もあり、話のパターンが各話で異なっているのが、本作の特徴であり、かつ面白いところです。
最初は高校生だった主人公はやがて探偵になるのですが、ここでいう探偵は刑事事件の犯人を推理する探偵ではなく、浮気調査や素行調査を行う現実にも存在する探偵なのです。
香道とかクラシック音楽の話など、題材も吟味されて練られたものになってます。最初の話は、期待していたものとは違うかもと思いましたが、2話目からは続きが気になる話ばかりでした。
個人的には、最後の話「ゴーストの雫」がとても良かったです。 -
謎を解くたびに、わたしは誰かに迷惑をかける。隠されているものを暴きたいーわたしの<熱中>は、多くの人を幸せにする音楽などとは違い、常に誰かを傷つける危険性を孕んでいる。
(p.225)
探偵の父をもつ高校2年生の榊原みどりは、あるとき同級生から、生徒に人気の男性教師の秘密を探るよう依頼される。教師を独自に尾行するうち、真相に気付いたみどりは自身の探偵としての才能とある"性質"に気づかされる。
面白かった!
ミステリーではたいてい、"探偵"は謎を解いたことで周囲からヒーローのように扱われて称賛される。でも、"探偵"が辿り着いた真相は、登場人物のある一部にとっては知りたくなかった事実、隠れたままでいてほしかった事実かもしれない。
この小説は、そうした感謝されない探偵を描いた点でとても面白かった。 -
久しぶりに読むことができた逸木裕さんの本。今回は探偵もの。単なる謎解きとしても予想外に良くできていたけれど、僕が期待していた通りに、ちょっと変わった人間の性(さが)のようなものを背負った主人公の設定がいつもながらにとても面白かった。コンプレックスを抱えつつも、それを否定的にとらえるばかりではなく、自分の根底にあるものとして認め、つきあっていく主人公像はいつも興味深く読ませてもらっている。
5つの短編がつまった連作集となっており、途中がちょっと中途半端になってしまっているきらいはあるものの、最初と最後がうまくまとめられているので読後感は極めて良く、感動すら覚えた。最終話がまさか別視点になるとは思いもしなかった。
否定とか自虐とか諦念とか劣等感とか、そんなちょっと陰を感じる人間の特徴が、見方によっては評価され、羨望され、肯定されるのはよくあることで、この作品もそういった過程を経て、ラストの感動に辿り着いているのだと思う。逸木さんの作品、もっともっと世間で評価されてほしい。
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父親が所長の探偵事務所に勤めるみどりは真相を突き止めずにはいられない性質を持つ。
その為に仕事の依頼を踏みこえた事をしてしまうのもしばしば。
そんなみどりの高校生から結婚して母親になるまでの間に起きた様々な事件を描いている。
時にはクールに、時には執拗に事件の調査をするみどり。
日常の謎を解くタイプのミステリー。
結果はハッピーエンドにならないことも多いからモヤっとするラストもある。
著者プロフィール
逸木裕の作品





