罪名、一万年愛す

  • KADOKAWA (2024年10月18日発売)
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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784041150306

作品紹介・あらすじ

横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。

感想・レビュー・書評

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  • 敬愛する吉田修一先生の最新作。期待して読み始めたが、読めば読むほど雲行きが怪しくなっていく。ラストはそう来ましたか。
    緊張感もなく、ミステリーとしては中途半端だし、そうでなければ、これはなんなのだろうか。家族も外野(元警部、探偵)も、微妙な位置付けだったなと思わざるを得ない。
    個人的に吉田修一作品の中では、名作ではなく、迷作の方に振り分けた。
    推しは、(皮肉込めての)吉田修一先生。 ★2.7

  • 九州の九十九島を舞台にした有名一族の物語。

    梅田丸百貨店の創業者の梅田壮吾の米寿の祝いに集まった一族と探偵の遠刈田と警部の坂巻。
    坂巻は「一万年愛す」という名のルビーのペンダントの行方と、多摩ニュータウン主婦失踪事件で藤谷詩子という女性が連れ去られた事件の犯人を追っています。
    坂巻は壮吾が犯人だと思っています。
    米寿のパーティのさなか、お祝いをされる壮吾が島の中で遺言書を残して消えてしまいますが果たして壮吾は生きているのか…。



    小説巧者、吉田修一さんの中編小説。
    やっぱり上手いと思いました。
    最後の方はSF小説のような感じもありますが、最近読んだ小説の中では断トツに面白かったです。
    ただ、ページ数が260ページとあまりないので、駆け足で話が進んだのが少し残念でした。
    映画化された小説の『砂の器』『人間の証明』『飢餓海峡』が謎のヒントとして出てきます。

  • 新聞でいちおしミステリーとして紹介されていて、面白そうだったので吉田修一作品を初読み。

    物語の舞台は絶海の孤島。そこに集まっているのが金持ちの一族と招かれた元警部に私立探偵。こんな状況で、殺人事件が起こらないなんてことがありますか?と一族の当主が言っていた翌朝、当の本人の姿が見当たらず謎めいた遺言書が発見される…

    こんな感じで始まるが、私立探偵の遠刈田がなかなか優秀で、物語はサクサク進んでいく。冒険や恋愛小説の要素なんかも盛り込まれていたけど、全体的にはあっさりした印象。でも、ラストは意外だったかな。

    『罪名、一万年愛す』のタイトルは素敵。自分だったらどんな罪名にするかな〜

  •  個人所有の小さな孤島から、1人の老人が忽然と姿を消した。
     老人の名は梅田壮吾。九州の富豪で島の持ち主だ。壮吾氏がいなくなったのは、氏の米寿を祝う内輪のパーティーが開かれた翌朝のことだった。

     台風が間近に迫っており、本土に帰るのは不可能だ。島にはパーティー会場となった別荘が1棟あるだけで他に身を隠すところはない。ならば壮吾氏はどこに消えたのか?

     氏のベッドにあった「遺言書」に書かれていた謎めいたことば。そして氏がパーティー当日に見せた不自然な言動。
     残された手がかりをもとに、懸命の捜索が始まった。

     謎が謎を呼ぶヒューマンミステリー。
              ◇
     長崎県北西部の北松浦半島。半島の西には九十九島と呼ばれる 200を超える群島が連なっている。島の大半は岩礁や無人島だが、個人所有の別荘島も多い。
     野良島は、そんな別荘島の1つだ。

     野良島の持ち主は梅田壮吾。高度経済成長期に九州を中心にデパート事業を展開し、一代で財を成した立志伝中の人である。
     現在、事業は息子から孫へと引き継がれていて、すでに経営から退いている壮吾氏は、この野良島で隠居生活を送っていた。

     今回、米寿を迎えた壮吾氏を祝おうと、内輪で野良島に集うことになった。
     横浜で探偵事務所を営む遠刈田蘭平は、梅田豊大 ( 壮吾氏の孫です ) からある依頼を請け、豊大の招待客としてパーティーに出席したのだが……。 (「プロローグ」) ※全18話とプロローグ及びエピローグからなる。

          * * * * *

     吉田修一さんの探偵小説。しかもクローズドサークルで始まるコテコテ謎解きミステリーとは!? ということで、意外の感に駆られつつも、ワクワクしながら読み進めました。


     物語の謎は3つあります。

     1つ目は、梅田壮吾氏の行方です。
     米寿のお祝いパーティーで少々はしゃぎすぎの感があった壮吾氏。翌朝、「遺言書」を残して姿を消しました。
     けれど普段の壮吾氏を知る息子夫婦や孫たちは、壮吾氏が自殺するとは考えられないと言います。
     別荘内にはいない。狭い島内に身を隠す場所はない。台風接近で本土には帰れない。
     いったい壮吾氏はどこへ消えたのか?

     2つ目は、壮吾氏が別荘内で紛失した時価35億円の宝石の行方です。
     この宝石は、かつて壮吾氏がオークションで落札した25カラットはあるルビーで、「一万年愛す」という名がつけられています。
     遠刈田が別荘を訪れたのは、宝石を探してほしいという豊大の依頼を請けてのことでした。

     そして3つ目は、45年前に東京で起きた主婦失踪事件の真相です。
     状況から見て自発的に失踪したのではないと判断した警察は捜査を開始。その途上で、容疑者として浮上したのが壮吾氏でした。
     ただ確証がなかったことと壮吾氏が九州の名士だったことで、壮吾氏の身柄が拘束されることはなく事件は迷宮入りとなりました。
     捜査を担当したのが坂巻丈一郎という警部だったのですが、捜査打ち切り後も坂巻と壮吾氏はときおり連絡を取り合うようになり、その関係は互いに高齢となってからも続くことになります。
     坂巻は今回も壮吾氏から招待されて、野良島を訪れていたのでした。

     ということで、壮吾氏の身内以外でパーティーに招待されたゲスト2人、探偵・遠刈田蘭平と元刑事・坂巻丈一郎の主導によって真相が明らかになっていくプロセスが描かれます。


     謎解き中心に展開する前半は古典的なミステリーのようなテイストで、過去の回想中心に展開する終盤は歴史問題や社会問題に目を向けさせられるような内容で、非常に奥行きが感じられる作品に仕上がっていたと思います。

     新聞小説らしくメリハリを効かせた書き方がされていましたが、ただのエンタメ要素の強いミステリーで終わらせないのは、さすが吉田さんだと感心しました。

  • 横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込む。
    それは、九州を中心にデパートで財をなした梅田壮吾の孫である豊大が、「一万年愛す」と名のつく宝石を探してほしいというもの。

    長崎の孤島で梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになったのは、遠刈田と元警部の坂巻であった。
    坂巻は、とある事件で梅田壮吾とは45年以来の不思議な関係だった。
    そして彼らや家族がその孤島で見たものとは…。

    これは、上野駅で過ごした幸次とケロとみっちゃんの『地底人の逆襲』だと思った。

    この時代を知ることは、誰かの話や本の中でのことで、当時の生きるか死ぬかの思い出を共有できる友がいないわけだが、「一万年愛す」という名の宝石を愛する人のために捧げるのならそれは罪とは呼びたくないなと…。



  • 中盤の場面、嵐の海へ皆で乗り出すところまでは、どうなるんだろう?とドキドキ。新聞連載小説ということで仕方ないとは思うのですが、予定調和の展開で物足りなさも少し残りましたね。実際新聞で読んでいたら、明日が待ちきれない!と思っていたでしょう。

  • 新聞連載で読んだので一応登録。
    初読みの作家さんということで他の作品はわからないけど心の盛り上がりはなかったな〜。
    ミステリーというより登場人物それぞれがあれこれ想像して物語を作っていく印象が強く、謎を解いていくという感覚はない。
    クライマックスがかなり唐突というか強引で悪い意味で予想を裏切られてしまったかな。

  • 悲しいけど最後は救われた気がします。

  • サラッと読めるミステリー。
    孤島と言えばクローズドミステリーかと思いきや、展開が全く違った。
    伏線から導かれていく社長の過去は、壮絶で、悲しい。
    いまの外国人の観光客で賑わう上野駅からは、戦後の有り様は想像もつかない。
    だがこうやって歴史を小説から知ることで、自分の視点も変わるのかもしれない。

  • 吉田修一が、遊び心満載で書いたライトノベル。
    吉田修一の凄さを知っているだけに、肩の力が抜け切ってこれもまた面白いなと思って読んだ。
    新人の小説なら、なんだ、こりゃと思っただろうけど笑

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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