- KADOKAWA (2024年7月10日発売)
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感想 : 2件
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Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ) / ISBN・EAN: 9784041150627
作品紹介・あらすじ
花に宿った記憶を詠み解くことができる、華仙術。
術の使い手である華仙術師は、その能力を持つが故に虐げられてしまう。
華仙術の能力に目覚めていた紅妍も例外ではなかった。
一族で唯一の使い手であるが故に、皆から虐げられる日々。
しかしある日、第四皇子・秀礼に忌避されてきた華仙術を見初められ、後宮に連れてこられることになったのだが…!?
これは2人が幸せになるための物語――。
花が語る記憶を詠み解き、事件を解き明かす、王道中華後宮ファンタジー開幕。
感想・レビュー・書評
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無念も、心残りも、宿る思いの寒暖も、花の形は断たれた願いに似ています。
『勇者、辞めます』のコミカライズでなじみ深い「風都ノリ」先生の作風が個人的に大好きということもあってですが、一巻時点からしてなかなかに面白い作品であるなと感じました。
私個人としては原作小説未読という事情もありますが、やつれ果て痩せそぼり貧相で不健康な(初期の)女性主人公の姿に一定の需要はあると思いました(※我ながら歪んだ見方であるということは認めます)。
その一方で窮地に追いやられた主人公の姿をしっかり見せておかないとシンデレラ・ストーリーとしての完成度が下がるのでその辺は手が抜けないポイントであるのかもしれませんけれどね。
そんなわけで表紙からもわかる通り、本作は中華(風)世界におけるシンデレラ・ストーリーのようです。
ただ、主人公が置かれた環境の難易度は現状のところではわりと高めかもしれません。
なにせ故郷で虐げられ続けていたけれど一芸を認められ、都と帝を襲う災禍を鎮めるべく宮廷に召し上げられた主人公「紅妍」の足場はさっそく不安定ですから。
便宜上のことはいえ、帝の妃のひとりとしてカウントされるって時点で嫌な予感しかしません。
それでいて、敵側はもちろん味方側にも性根の曲がった曲者たちが漫画上を乱舞します。
画からして悪意などが明け透けなので、楽はさせてくれないであろう予感がひしひしといたしました。
それでいて、意地は悪くても嫌いになりきれない愛嬌も微妙に盛り込んでるので個々人の“味”として昇華できている感じもするのですけれどね。その辺はコミカライズ担当の風都先生が独自に盛り込んだ要素であったりもするようですが、私個人として好ましく思いました。原作と読み比べる余地も生まれましたし。
それでいて風都先生が前作『勇者、辞めます』で培ってこられたミニキャラ演出、デフォルメキャラの愛らしさはさっそく健在だったりします。
全体としてはシリアスな反面、要所で和ませを挟み込むバランス感覚も見逃せないってところでしょうか。
兎にも角にも、薄幸美人な主人公は好きですよ。カラーページもなかなかに興をさかされましたし。
この場合は、主人公「紅妍」の印象的な紅い髪の鮮やかさに目を引かれたということでしょうか。
ビビッドな色遣いの中に艶やかさと品を宿し、その上で親しみやすさも残したヒロインの造形はなかなかできることではありません。そりゃあ、この髪の美しさならヒーローもほっとけないわ。
とまれ、一巻時点では主人公を見出したヒーロー役の第四皇子「秀礼」との関係に素直に萌えさせるというより、主人公の細腕奮闘記って趣でしょうか。もっとも今後の展開次第で作品のウリは変わってくるでしょうから、序盤だけ摂取できる栄養素って感じで流されるのかもしれないのですけれど。
重ねて、原作未読なので的外れなことを書いてしまうかもしれませんが、どうかご寛恕くださいませ。
いずれにせよ主人公が宮中で渦巻く死の影に飛び込み、死者の声を聴いて事件の真相を詳らかにしていくミステリ的な楽しみもあるようですし、続刊が楽しみです。
なお、ヒロインの閉ざされた心を氷解させるべく秀礼に秘策……というか突破口はありましたが、その顛末についてはなごみの極致でした。素敵でしたと申し上げておきます。これを嫌味なく描ける漫画家は強い。
あと、国のバックボーンがアレなので故郷の人々があんな非情な連中になってしまったことに原因はある。
よって、虐げられてきた生い立ちに主人公がどう落とし前を付けさせるのかも気になるポイントでしょうか。わかりやすくザマァ展開になって欲しくないのも人情なのですが、まぁスルーするのもありですね。
あと、逆境にあって心の芯は死なせなかった主人公がいかにして天性の心の美しさを手にしたのか?
などと気になるところはありましたが、その辺の作劇はさっそく二巻で行ってくれるようです。
むろん一巻で出し惜しんだ感じはないのですが、解決が早いと助かるというものです。助かりました。
そんなわけで花を介して死者の声を聞き、その無念を晴らし成仏させる(ファンタジーでなくSF・超能力的に解釈すればサイコメトリー的ななにかとも解せられますがあくまでこれは幻想の物語)。
それは言葉にすると単純なようで、けして容易な行いではありません。それこそ主人公にとっては我が身を投げ出すほどの献身が求められます。
そして花が舞い散る送りの儀式は華やかなようでいて、不吉さもぬぐい切れはしません。
死者よりも生者の悪意渦巻く伏魔殿たる宮中こそが言うまでもなくおそろしいといったところでしょうか。
以上。
わりとぽやぽやした和ませ要素も大事にされている一方で、シビアなところはきっちり描いていただけそうな予感がひしひしとしますのでひと味違うシンデレラ・ストーリーを楽しみたい方はぜひどうぞ。
喩えてみるならその辺の円熟味が、酸いも甘いも苦さも一緒くたにした果実として結果しているのなら――? きっと本作が花の美しさを愛でるその先の、なんでしたら美味しささえ備えた一流の物語として結実していることの証でしょう。もちろん、花より団子といえるほど本作は色気は乏しくないのですけどね。
著者プロフィール
松藤かるりの作品
