いつか深い穴に落ちるまで (角川文庫)

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  • KADOKAWA (2024年12月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784041151464

作品紹介・あらすじ

だって、近道じゃありませんか。戦後まもない日本で、ブラジルまで直通の穴を掘る前代未聞の新事業が発案された。極秘事業の「広報係」となった鈴木一夫は、計画の前史を調べ、現在まで続く工事の進捗を記録していく。地球の裏の広報係との交流や、事業存続の危機を経て、ついに「穴」が開通したとの報告を受けるが……。奇想天外な発想力で多くの本読みたちを唸らせた、唯一無二のサラリーマン小説。第55回文藝賞受賞作。

この小説は、突拍子もないのに生真面目で、奇妙なのに誠実で、愛おしいけれど残酷な、私にとって忘れ難い物語でした。 村田沙耶香氏

作り込まれたリアリティーと荒唐無稽なファンタジーの狭間を行き来する異空間的小説。 ニシダ氏(ラランド)

みんなの感想まとめ

突拍子もないアイデアを真面目に追い求める主人公の姿を描いたこの作品は、奇想天外なお仕事小説として、読者を引き込む独特の魅力を持っています。戦後の日本で、ブラジルまでの直通穴を掘るという荒唐無稽なプロジ...

感想・レビュー・書評

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  • これはSFなのか、はたまた壮大なコントなのか…

    いや、すごいわ。
    文章だけみれば、非常に真面目で熱いものがあり一見熱血サラリーマン小説を読んでいるのかと錯覚してしまいます。
    しかし根底にあるバカバカしさが常に脳裏を過ぎり、ワタシは一体何を読まされているのだろうと…。
    筆者のデビュー作とあるが、文章は非常に巧みで上手。が、その上手さがバカバカしさに一層の拍車をかけているのが余計にタチが悪いなと。
    しかし、何はともあれめちゃくちゃオモロいです。

    人を選ぶ小説だとは思いますが、普通の読書に飽きた方はぜひ一読あれ。唯一無二の読後感を味わえます。

    未曾有の読書体験をさせてくれた本書に感謝感謝。

  • 日本からブラジルまでの穴を掘るプロジェクトの広報になった男の話
    
    -------------------
    戦後から現在まで続く「秘密プロジェクト」があった。
    発案者は、運輸省の若手官僚・山本清晴。
    敗戦から数年たったある時、新橋の闇市でカストリを飲みながら彼は思いつく。「底のない穴を空けよう、そしてそれを国の新事業にしよう」。
    かくして「日本-ブラジル間・直線ルート開発計画」が「温泉を掘る」ための技術によって、始動した。
    
    その意志を引き継いだのは大手建設会社の子会社の広報係・鈴木一夫。
    彼は来たるべき事業公表の際のプレスリリースを記すために、
    この謎めいた事業の存在理由について調査を開始する。
    
    ポーランドからの諜報員、
    業員としてやってくる日系移民やアジアからの技能実習生、
    ディズニーランドで待ち合わせた海外の要人、
    ブラジルの広報係・ルイーザへの想い、
    そしてついに穴が開通したとき、鈴木は……。
    
    様々な人間・国の思惑が交差する中、日本社会のシステムを
    戦後史とともに真顔のユーモアで描きつくす、大型新人登場。
    -------------------
    
    穴を掘るというのは何かの比喩かと思ったけど、本当に地球の裏側まで穴を掘るだった
    
    科学的にありえない事ばかりで、終始その非科学的な事へのツッコミで中々物語が中に入ってこなかった
    
    マントルまで到達するようなボーリングをどうやってするのだろうな?
    堀った穴をどうやって維持しているのかが謎
    マントルという存在や中心部の鉄を無視して岩盤で構成されていたとしても、
    長年に渡るプロジェクトのようだけど、それ程の速さで掘れるわけがない
    
    そして、最後のアレ
    重力は中心に向かうにつれて弱まり、そこから先は逆にブレーキが掛かるから絶対にああはならないでしょ
    そもそも、空気抵抗もあるし、穴がそんなに狭かったらところどころで壁にぶつかるだろうし
    ってか、
    
    そもそも、テストの前に開通確認しないの?
    人の前に物体のみでテストしたりするし
    掘ってる最中に作業員はどうやって現場まで移動してたんだろうね
    
    そんな設定に関する疑問が満載
    
    
    ショートショートや短編ならこの荒唐無稽な設定も許せるけど
    この長さで科学的な考証を無視しているのは受け入れられない
    
    一発ギャグではなく、スベってるシリアスコントを長々と見せられるような気持ちになった
    
    ストーリーで言えば評価は1か0くらいに酷い
    どんなに文章力や表現力に長けていると評価されている作品であっても、個人的に気になるところが多すぎて物語に入っていけなかったのはかなりのマイナス
    
    ちょっとウケたのは北の国からの視察のあれこれ
    明らかに金正男がディズニーランドに来てたという事件を元ネタにしてる
    
    
    恐らく、鈴木一夫という男の仕事人生として、無為無謀なプロジェクトのに携わり、無意味に思える作業も誠実に向き合うというのが描かれているのだろうな
    その中で、ブラジル側の広報ルイーザとの数少ない接触に反した同士意識という心の交流も
    
    
    
    作中でも触れられているけど、人間魚雷を始めとする戦争における無謀なプロジェクトへのアンチテーゼを示しているように思った
    根本が間違っていても、それでもまだましな方に舵を切った方がいいというね
    
    当初の目的が何であれ「やる」事が決まると、「やりきる」が目標になってしまう事が多々ある
    そもそも、最初から目的なんてものはない場合なんてのもある
    
    荒唐無稽に思えるプロジェクトでも、上からの指示に愚直に従わざるを得ない主人公
    その中でもできることをやるという教訓だろうか
    だとしたら、もっと他に描き様があると思うんだがな
    
    広報なのに、隠されるプロジェクト情報、上に上げても公開される見込みのない報告
    情報が漏洩した際に対応する役割だが、平時はほぼ意味がない仕事
    そんな立場でも矜持を持って自分の役割を果たすための仕事をするという物語なのだろうな
    
    ただまぁ前述の通り、設定がザルすぎて私は評価しない
    
    何かに似ているなぁと思って考えてみると
    村上春樹の小説に納得いかない感覚に近い事に気づいた
    意味深な事柄が何かのメタファーかのように思わせていて、結局は作中で明確にしない感じや、設定と登場人物の行動に違和感を覚えるところ

  • これは、単にトンデモ計画に振り回される人々の話として読むか、SFとして世界観を受け入れるかでかなり印象が変わる本だと思った。
    SFであると感じた理由として、作中に登場した登場人物は皆(基礎研究者ですら)、この計画は「原理的に無理」とは言わず、「やってみないとわからない」と考えているというところにある。もし通常の世界であれば、義務教育で地球に穴を開けられないことを理解できるだろうし、こんな計画もアイデアも、初期の段階で「〜だから無理」と1人でもいえば終わっていただろう。「上がやれと言ったから」という理由ができる前(計画が走る前)ですら誰もそれを指摘しなかったのは、もしかしたら本当にやってみないとわからなかったからかもしれない。

    これがSFであると受け入れて読んでいくと、この話が自分にも返ってくるように思う。
    戦時中に登場した誉高い人間魚雷は、戦争という目的が消えた後には異常なものとして語り継がれた。
    人々の歓声を浴びながら穴に入っていった鈴木を、その計画の外の人たち(記者、読者など)や現場の末端にいた作業員が否定的に見ていた。
    この話は、こうした読者すら巻き込んだ入れ子構造になっていると思う。しかし、穴を掘っていた人たちにとって、その計画は生きがいの一つになっていたのでは?穴を掘っている間、彼らはある種幸せだったのでは?

    似たようなことは現実でもある。体育祭や会社の大きいプロジェクトまで、「やってみないとわからない」ことはありふれている。もしかしたら自分も、ただの深い穴を掘っているだけなのかもしれない。その結末は、穴に落ちてみないとわからない。

  • 戦争のメタファー

  • 独特な読後感。
    歯車であることは心地良くて、変えが効くとしても、今この瞬間に自分の存在が誰かのためになってるなら、その人にとって自分というのは唯一無二になるのかなと。

  • 奇想天外のお仕事小説。おバカ計画「日本ーブラジル間をつなぐ穴」のプロジェクトに挑む大人たち。「そんなん無理って小学生でもわかるやん!」なのだけれど、もし実現したらという世界線を極めて冷静に真摯に描き切ったのがこの作品。

    裏金とも言える予算をつけてもらい、極秘プロジェクトとして進められる計画。その広報係として、真面目に仕事に向き合う主人公・鈴木。

    極秘プロジェクトの広報係というのがポイントで、世間に発表できることが何もない。自分は果たして必要なのか。広報にすら知らされない進捗状況に頭を悩ませながら、穴まわりで起こる出来事や出会いを日記という形で文字に残し続ける。果たして勤勉だと言えるのか、仕事というものに向き合う姿勢を問う小説でもある。

    戦後から現代へ続く壮大な物語だった。

    あらすじ。
    戦後、新橋の闇市で酒を飲んでいた山本。戦争から生き残った自分には「なさねばならぬことがあるはずだ」という使命に駆られている。焼き鳥を食べながら思いついたのは、串に貫かれた肉のように「日本からブラジルまで穴を貫通させる」ということ。理由は近道だから。ブラジル側からのOKの返事、幾度も運輸省で行われた会議を通して、極秘プロジェクトとして事業化が決定したのは山本が亡くなった二ヶ月後だった。

    主人公は、新卒すぐ極秘プロジェクトの広報係としてアサインされた鈴木一夫。本作は彼の生涯をかけた長いプロジェクトの広報係に選ばれる。それから計画の前史を調べ、現在まで続く工事の進捗を記録していく。ついに「穴」が開通したとの報告を受けるが……。

  • 近道だからという理由で掘ることが決定したブラジルと日本を繋ぐ穴。
    穴掘り計画の広報係となった主人公鈴木。

    ハチャメチャだけど凄く面白かった。
    穴を掘るだけの話でこうも膨らむものかと。
    最後の最後まで楽しかった。

  • バカすぎる笑

    このネタで168ページ書くのすごいな
    結果的に、飛び込んでも飛び込まなくても平社員だったという落とし穴

    リニアモーターカー事業に携わる人はこんな乗り物危険すぎて乗れんわ、とか思ってるのだろうか
    闇が深い


  • 積読チャンネルで紹介されており気になって手に取ってみた1冊。

    地面を掘ってブラジルまで繋ぐという、現実ではありえない設定を、その一点を除き特段違和感なく書き遂げられている点にまず感心した。

    また、本作は穴を掘る話というよりも、仕事とは何なのか、を考えさせてくれる1冊であった。
    自分は会社員であるが、何のためにその仕事をしているかわからなくなることも多々ある。従前からそうだから、で回っている仕事があり、既に担当者がいない場合が多い。

    本作ではやり遂げる方向に進んだが、1度立ち止まることも大事だと改めて感じた。

  • いやあ面白かった。ぶっ飛んだ物語のゴール設定と、それ以外は平凡で淡々とした語り口調とのコントラストで、脳が溶けそうになった。会社、国、親子関係、そして命。様々な普遍のテーマに代入できる物語で、ワクワクしながら、そして肝を冷やしながら読み進めた。最後は水泳の飛び込み、人間魚雷というこれまでに出てきたエピソードが合流していく。正しいとか合理性とかそういうものではなく、始まったからには止まることができずに流れていく、そんな恐ろしさと高揚感を感じた。

  • 戦争での被害を避けられなかった、個が無視される組織的な動き方、、突拍子もないプロジェクトだけがどんどん膨れ上がって、1人の個人が何も制御できなくなっていく。どことなく『タタール人の砂漠』で感じた虚無感を思い出す。最後の場面での鈴木の心情がどのようなものだったのかを想像するのは難しい。虚無というのが耐えられないものであるのは、たしかにそうなのかもしれないなと思わされる。

    「島村君のやったことは間違っていた。だが、島村君が間違っていた、とは言いたくない。命令が下ったんだ」
    「けっきょく、ストは回避となりました。みんな、怖じ気づいたんですよ。働いても働かなくても同じだけ賃金がもらえるんだったら、我々の労働ってのはいったいなんだ?無意味だってことになりはしないか、と。そんなこと、ストに突入してからいくらだって考える時間はあったはずなんです。でも、その虚無に正対することに耐えられなかった」

  • 不思議なお話。これは、戦争の話なのだろうか、それとも国家の陰謀の話?それとも、一人の男の淡い恋物語?どれも当てはまるだろう。
    戦争のエピソード、『俺は、間違いだったかどうかと訊いてるんだ』…あの時、あの、特攻に行かなければならなかった人々。もう二度とその様なことが起きてはならないとおもった。

  •  ギャグなのかシリアスなのか、不思議な読後感だった。
     自分の意思を持たずに流れに身を任せていると、いつの間にか決断を迫られ、気づいたらどん底に落ちているってことなのか。はたまた無謀な作戦を任され冥土の土産のように昇進を言い渡されるなんて、歴史は繰り返されるってことなのかな、とも。

  • リアルな描写と非リアルな描写がごちゃ混ぜで落ち着かず、どう受け止めればいいのかわからないまま読み終えてしまった一冊。
    「地球を貫く穴を掘る」という発想自体はすごく面白いのに、地球中心部の高圧・高温への対応、穴の直径、通過時間、重力の変化など、気になるポイントにはほとんど触れられない。主人公が「機密性の高い事業ゆえ現場を見せてもらえない広報」という設定でそのへんをごっそりスキップしているんだろうけど、割り切って完全なSFとして読もうにも、山本の戦時中の回想や、国交省のヒアリング、震災復興ボランティアの描写など、妙にリアルで解像度の高いエピソードが唐突に挟まれ、トーンの統一がとれない。

    解説にあった「科学的根拠なんて脇に置いて」というスタンスで読むべきなのかと思うと、逆に科学っぽい描写がちょこちょこ現れる。結果、SFとしても寓話としても割り切れないどっちつかずな読後感が残った。

    また、多くの国や要人が登場する割に、役職名や人物像が抽象的すぎてキャラクターの印象がつかめず覚えにくかった点も読みづらさにつながった。

    海水パンツで穴に飛び込むシーンも、主人公が元水泳部だったことを忘れていたので、大森が後で説明してくれなかったら意味不明のままだったと思う。伏線としては弱く、構成的にもモヤっとした。

    ラストも、海水パンツ姿で穴に飛び込み、ブラジル側で虫取り網を構えて待つという強烈に非現実的な描写のわりに、それに至るまでの物語全体がぶっ飛んだ世界観として組み上がっていない。だから、最後に「轟音とともにすさまじい勢いの風が穴から吹き出て、網を一瞬持ち上げ、過ぎ去っていった。網の底が焼き切れて、焦げ臭いにおいが漂いだしていた。」という描写を見ても「そりゃそうでしょ、網で人を受け止めるのは無理だよ」としか思えなかった。
    そして「満天の星がまたたいていた。どこへ行ったのだろう。」という終わり方は、急にバイキンマンみたいな消え方で、トーンのギャップに置いていかれた感じ。

    お仕事小説という体裁をとっていながら北朝鮮の要人を思わせる人物と仕事のはずが突然デートになるシーンは、お互いが一目惚れだったとしても社会人として考えたらありえなすぎて怖い。会ったこともない女性の写真を見ただけで生涯の想い人にしてしまう描写も理解しづらかった。

    それに、当初は穴にリニアを通す計画なのに、いつの間にか人が身ひとつで通る話になっている理由もよくわからない。鈴木が飛び込む段階になって初めて明かされた穴の小ささも、読みながら想像していたスケールと全然違ってモヤモヤ。
    地球を貫くリニアを通すという壮大なプロジェクトなのに、最後に大森自身が「あそこに将来、乗り物を走らせるとなると、穴のサイズはあんなもので足りるのだろうか。[...]まさか、設計ミスではないのだろうか…。」と言ってしまうのも拍子抜けした。
    そもそも、普通そんな道のものが完成したら人を通す前にまずは物体で実験するでしょ。

    序盤で山本が別世界線で人間魚雷として死んだ世界線があった可能性を示唆しておき、最後に鈴木がある意味それをなぞる形で終わる構成は面白かったけれど、全体としてはどうにも消化不良な一冊だった。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10297398

  • 会社員女性のあるあるエピソードを大小ふんだんに盛り込んだ不条理ユーモアなんちゃって科学小説があれば読みたい、という気持ちになった。

  • 叔母の勧め
    ナニコレ、おもろい

  • こんな小説読んだことないです。
    あらすじからしてインパクトがすごい。
    読み始めてからずっと「私は何を読んでいるのだろう。鈴木はどこへ向かっているのだろう」という薄っすらとした不安がつきまとっていました。淡々と心情描写を抑えながら日常が綴られていくからこそ、穴掘り事業の異質さや謎が際立つように感じました。
    読み終わってもなお、落ち着かない気持ちを持て余しています。あまり気持ちのいい読後感とは言えないのですが、嫌な印象は残らない不思議な作品です。

    いわゆるオフィスワークを経験したことがないので、サラリーマン小説としてというよりは、SF要素を楽しんで読みました。もしそういう経験があれば、より鈴木の仕事やサラリーマンとしての在り方に何か感じることも増えるのかも。

  • 無垢な心でファンタジーとして読めれば楽しいのかも。私にはちょっとついて行けませんでした。

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著者プロフィール

1975年、福島県生まれ。宮城県育ち。東京大学文学部独文科卒業、同大学院修士課程修了。2018年、「いつか深い穴に落ちるまで」で第55回文藝賞を受賞。著書に『孤島の飛来人』(中央公論新社)、『こんとんの居場所』(国書刊行会)などがある。

「2024年 『恐竜時代が終わらない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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