ニセコ化するニッポン

  • KADOKAWA (2025年1月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784041155127

作品紹介・あらすじ

麻布競馬場氏(作家)推薦!ーーーー生きづらい現代日本の「意外な正体」を暴いてくれる。
三宅香帆氏(文芸評論家)推薦!ーーーーこれは「テーマパーク化する日本」の予言書だ!
★各所で話題!重版決定(2025/3/21)

★Amazonベストセラー1位(カテゴリー日本論、2025/02/04)
★日経新聞「目利きが選ぶ3冊」速水健朗氏による書評掲載(2025/2/27)
★週間金曜日「選択と集中による活況 その副作用を直視する」武田砂鉄氏による書評掲載(2025/2/28号)
★週刊文春「著者は語る」にて著者インタビュー掲載(2025/3/27号)
★日刊ゲンダイにて著者インタビュー掲載(2025/3/26)
★VOICE「著者に聞く」にて著者インタビュー掲載(2025年5月号)

Z世代ジャーナリストが論じる令和の都市論・消費論
コロナ禍を経て、明らかに変わった日本
私たちは何に幸せを求めるのか?
SNS時代の分断は、都市をどう変えるのか?

はじめに ニッポンであってニッポンではない場所「ニセコ」
第1章 「ニセコ化」とはなにか それはニセコだけで起こっているものではない
第2章 「ニセコ化」する都市 「ニッポン・テーマパーク」から渋谷まで
第3章 成功の鍵は「ニセコ化」にあった スタバ、びっくりドンキー、丸亀製麺
第4章 なぜ今、「ニセコ化」が生まれたのか ディズニーとマーケティングが手を結ぶ
第5章 「ニセコ化」の波に乗れない企業とは ヨーカドー、ヴィレヴァンがマズい理由
第6章 「ニセコ化」の裏ですすむ「静かな排除」 居心地の悪さを感じる人たち
終章  誰も「ニセコ化」からは逃れられない 「推し活」と「キャラ化」で失われたもの

感想・レビュー・書評

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  • タイトル詐欺やん!
    もっとニセコの現状をつぶさに語ってほしかったよ!現地の観光客、観光産業従事者、行政、観光に関わっていない現地民の話を調査して、総括してほしかった。

    しかも、「選択と集中」ってゆうてるくせに、内容が全然違うやん!!
    あちこちのネットニュースで記事にしたような内容で、ウケたやつだけまとめて本にした感じするやん!

    読みながら、ツッコミどころ多いなーと思ってたら、巻末でちゃんと断ってあった。なんやねん。

    でも内容的には面白いところもたくさんあって、概ね楽しく読めた。書き振りがキャッチーすぎて、もう少しお堅い文章で構成もしっかりしてたら論文になってたと思う。
    タイトルに副題つけてほしい。騙される人多いと思う。

  • 理論だけでなくニセコや夕張のような馴染みのある街が題材になっていて手触り感がある。でもドンキやヴィレバンなどの話は後になればなんでも言えるこじつけにも思えた。

  • 空間作りとターゲットの選定、集中と選択。
    大量に溢れる情報から、自分に最も合うものを選ばせ、深くハマらせる。そのために消費者ニーズをマーケティングにより掴み、それに合わせてブランディングする。
    商品を選ばせるための方法戦略作りがマーケティング、消費者にブランドイメージわ、認識させ競合と差別化する戦略作りがブランディング。本来概念が異なるこの2つが近づいてる。
    選択と集中が進むことの弊害は①時代の変化により受ける影響が大きい②選択には排除が伴う。

  • ニセコをはじめ、具体的事例を挙げて選択と集中、ゆるやかな排除といった問題を語っていて興味深かった。あまり考えたことのない視点だった。

  • 外国人観光客にウケる狙いか、「和牛」「ラーメン」「寿司」「天ぷら」「抹茶」「おにぎり」の類の店が増殖する日本の観光地に住んでいるので「テーマパーク化」というワードに惹かれて読んだ。

    ただ、この本は主に意図的に「選択と集中」が行われた街について書かれていて、経済(カネもうけ)の論理の中で日常が塗りつぶされて変わって行くという視点では書かれていなかった(新大久保は近いシチュエーションだと思ったけど)。

    でも、それはぼくの勝手な期待や思い込みであって、この本を責任ではない。

  • ニセコはあくまでも事例で、マーケティングの本。普通に選択と集中とはよく言われるが、本当の選択と集中がニセコ化。考察といい、ニセコ化という汎化といい、鋭いと感じました。

  • どうも内容が薄い。著者が普段書いてるネット記事を引き延ばしただけで深掘りに欠ける内容。
    「ニセコ化≒テーマパーク化」と定義した上でTDRのマーケティングを「テーマパークでもニセコ化が起きている」と括るのは流石に不味かろうと思う。

  • ・お客様を“選ぶ”
    ・泥臭くても“アナログで聞く”
    ・「体験価値」「過ごしたい時間」を“研ぎ澄まして理解する”

    学び8 実用性7 視点の新しさ5
    読みやすさ6 再読3 合計29/50

  • 「選択と集中」やアイデンティティの強調などマーケティング的な動向を「ニセコ化」と表現したに過ぎない。ほとんどが既知の内容で情報量に乏しく、ニセコ化による社会の分断や排除による影響や解決策など社会学的テーマは申し訳程度にしか書かれていない。どちらかというと、そちらにフォーカスした内容が読みたいと思った。

  • ■感想

    TOPPOINTで読了。

  • ジャーナリストが、「ニセコ化」する地域や企業について述べた本。ジャーナリスト本によくあるパターンなのだが、つかんだ情報を羅列しコメントをつける形になっている。著者には、競争戦略、ポジショニング、トレードオフ、キラーパスなど基本的なビジネスの知識がないように思われるのだが、情報収集が甘くデータが示せていないので分析もない。したがって、学術的ではないし、論理的でもなく、説得力がない。意見が述べられているが、なぜそうなのかがわからない。興味深い題名ではあるが、内容は幼稚で学ぶべきことは少なかった。残念。

    「(ニセコへの観光客数)2023年の外国人観光客の数は160万人ほど。前年度よりも約150%アップしている。ちなみに、ニセコ観光圏に属する3町の人口合計は2万人程度だというから、地元住民の数十倍の観光客がこの地に押し寄せていることになる」p3
    「ニセコで働いている若い男性にインタビューすると「使う言葉は、10割英語です」なんて発言も」p5
    「ニセコの場合、ターゲットは明確に、「富裕層の外国人観光客」である」p21
    「海外富裕層は、多くのものをすでに手に入れており、モノよりも時間により価値を置く場合も多い。観光や旅行においても、何もしない贅沢、何もしない時間を求めている場合が多いという。そもそも滞在するホテルからあちこち出歩いたりはしない。パークハイアットニセコHANAZONOなどがその典型であるが、そもそもここに滞在すると、わざわざ食事は外で、アクティビティは別の場所で、とはならなくなる。ホテル施設やサービスも当然、そうした戦略のもと設計されている(『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』p118)」p23
    「(外国人向けの高額な商品代金について)施設の担当者は「できるだけ良い素材を使って良い商品を提供するのが店側の考えで、不当に高額な価格設定にはしていない」と述べている」p46

  • 裕福な外国人により高級リゾート地となったニセコ。ニセコを例に挙げテーマパーク、物販店舗、ファミレスなどを「選択と集中」「静かなる排除」をキーワードに読み解いていく。、

  • ニセコ化とは「『選択と集中」によってその場所が「テーマパーク」のようになっていく」現象、という定義のもとにスタバやイトーヨーカドーやヴィレバンの話題も交えて進んでいく本なので、このニセコ化の定義で気になるならおすすめです。

  • ニセコ化とは、選択と集中によりテーマパーク化。
    ランチェスター戦略による弱者の戦い方なので、選択と集中を間違えると即敗退となる。
    なぜ日本や日本人がこの弱者の戦い方しか出来なくなったことにも大きな関心が湧く一冊となりました。

  • 7. ニセコで起きていることは、日本の縮図である

    18. 「選択と集中によるテーマパーク化」

    19. ニセコにおける外資の投資は、パウダースノーという絶対的なキラーコンテンツを最大限に生かし、「海外」「富裕層」「スキー」に絞った「選択と集中」を実践してきた

    22. ニセコにある「セイコーマート」では、13,000円を超える高級シャンパンが売っている

    26. 「観光学辞典」によれば、テーマパークとは「特定のテーマによる非日常的な空間の創造を目的として、施設・運営がそのテーマに基づいて統一的かつ排他的に行われているアミューズメント・パーク」

    29. ①観光における「量から質への転換」②「テーマパーク的開発の一般化」

    29. それまで観光の目安が「観光客の人数」だったことに対し、今後は「消費額」を重視していこうとする内容が盛り込まれているのだ

    31. 近年、ファミレスの数が微減傾向にある。その理由の一つとしてすべての層にリーチしようとする「幕の内弁当」型の戦略をとっている

    47. 2023年度、渋谷はインバウンド観光客の訪問率が1位となった

    51. ある意味、外国人からすれば、すでに渋谷は「日本的なるもの」を見ることができる「テーマパーク」なのかもしれない

    54. 街にセグメントされたマーケットだけが集まるということが必要である。価値観の違う者は排除する。みんなの街といった町内会的な概念はかなぐり捨てなければならない。似た者同士を集めることで価値観は増幅され、ちょっと違う価値観を同化する。そしてその街なりの強い価値観をもつに至るのである by1984年パルコ

    57. どうして渋谷=若い人、というイメージがついたかといえば、パルコによる「選択と集中によるテーマパーク化」の空間戦略が大きかったと思う。パルコは高感度な若者を「選択」し、彼らに刺さるようなショップを「集中」させてそこに作った。
    一方で、現在の渋谷の再開発がターゲットにしているのは、むしろ「最先端の企業に属し、収入も多く、生活にお金をかけるオフィスワーカー達」。ターゲットが変わったのである

    60. 元々新大久保辺りは、韓国人ホステスが住む街だった。すぐ裏手にある新宿歌舞伎町にコリアンクラブができはじめ、そこで働く人々が住み始めたのが新大久保だったのだ。そんな彼女たちのために生まれたのが、小さな韓国料理店。これが新大久保コリアンタウンの始まりだった

    63. 実は、「ニセコ化」において、「そこで働く人」の問題はけっこう、大きなポイントだ。そこで働く人々が空間全体の「選択と集中」を高めていく

    71. スタバはどのように「選択と集中」を行っているのか。①商品ラインラップex.)フラペチーノ②商品価格

    74. ドトールの客単価が500円前後なのに対して、スタバの客単価は1000円前後

    78. スタバの「選択と集中」は、そこにいそうなタイプの人々のイメージを私たちに植え付け、その空間の「らしさ」を作り、特別感を高めている

    80. スタバが「どのにでもある日用品」になってしまったとき、その中でもシュルツが力を入れたのが、従業員の育成、テーマパークでいうなら「キャスト」の育成である。パートナーへの研修を断行。改めてスターバックスの「価値観」を全員で確認したのである

    84. びっくりドンキーの前身は、1968年、庄司昭夫が岩手県・盛岡で開業した「ハンバーガーとサラダの店 べる」。元々ハンバーガーを提供していた。しかし、その数年後、日本にやってきた「マクドナルド」を見た庄司は「これには勝てない」と思い、ハンバーガーをバラバラにして提供する形で考案したのが、このメニューだった

    86. びくドンのハンバーグに使われる肉はすべてオーストラリア産かニュージーランド産に絞っている。また、このハンバーグは工場で冷凍したものを店で解凍するのではなく、「必要なものを必要な分だけ」供給するジャスト・イン・タイムシステムで「生」のまま、各店舗に配送される

    87. びくドンのハンバーグは、日本人に合わせて箸で食べやすいような厚さになっている

    88. びくドンは「味噌汁」のこだわりもすごい。ハンバーグに合うように、コクのある信州味噌を用いており、その具材も日替わりで厳選したものを使っている

    93. 丸亀製麺は刀の森岡が「店舗空間」にこだわった。例えば、店頭に小麦粉が入った袋をあえて無造作に積んでおく。これによって、まるでそこが本当の香川のうどん店かのようなワクワク感を与えることができるし、「粉から作っている」ということが空間的に把握できる

    96. 丸亀製麺の事例で特に強調したいのは、「選択と集中」の手前にある「強み」の発見が非常に重要である

    98. 森岡は、コンサルティングに入る以前の丸亀製麺について、ブランディングが希薄で、その強みを見失っていたと語る。それ以外の「値段」や「トッピング」にフォーカスをした戦略を立てたことが業績低迷の理由だったと見抜いていたのだ

    102. ドンキ創業者の安田はその店舗づくりにおいて重要なのは「お祭り」のような空間だと書いている

    111. 「テーマパークの空間作り」+「マーケティングのさらなる強化」=「ニセコ化」

    113. 東京ディズニーランドの立地案として、最終的に残ったのは、「浦安」と「富士山麓」だった。しかし「富士山」という圧倒的に「日本」を印象つける「現実」が、ディズニーランドという空間には邪魔だったからである

    120. その土地の特長・強みがあって、そこに表れる顧客ニーズをつかみ、その強みにフォーカスを当てて「選択と集中」を推し進めているのだ。そして結果的に、テーマパーク的な空間が生まれている

    121. 元々そこは、何もなかったところに突然インバウンド向けの施設ができたのではなく、まず最初に「市場」があった

    122. 「ニセコ化」とは、ある程度、その空間で発生する「ニーズ」やそのニーズをかき立てる「強み」が発見され、そこにブーストがかけられていくプロセスだということだ

    125. 森岡は、USJの改革にあたり、「USJというブランドを、「映画の専門店」という妄想から、「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へと脱皮させること」を掲げたという

    132. ディズニーランドは度重なるチケットの値上げにも関わらず、その客数は衰えることがなく、2024年3月決算では、過去最高益を記録したからだ。「高くても来る」人を選んでいるからこそ、最高益を記録できるのだ

    139. 夕張はまず、誰向けの施設を作るのか、つまり客層の「選択」がされていない

    142. ゆるキャラブームは、地方創造における「なんでもあり」な観光地の爆発的増加を表す顕著な例

    146. 「一品特化」型のレストランが強いのだ

    147. 日本で最初のファミレスは1970年、府中に誕生した「すかいらーく国立店」である

    152. 総合スーパーは「なんでもあるが、買いたいものがない」

    156. ライフはまだ勝ち目のある食料品部門の扱いを大幅に増やすことに舵を切った

    161. ヴィレッジヴァンガードの「選択と集中のミス」
    ①ショッピングモールへの過剰出店による「ヴィレヴァンらしさ」の低下(=「集中」の低下)②ヴィレヴァンが持っていた「サブカル」自体の意味の変容(=時代の移り変わりによる「選択」自体の間違い)

    168. 適切な教育がなされなかったことで、結果的に、その世界観の「らしさ」を担保する人材が減ってしまった

    171. 「選択と集中」が失敗する事情には2つのパターンがある
    ①「選択と集中」自体をしなかったパターン
    ②「選択」をしたものの、それが時代の要求とズレてしまったパターン

    176. ニセコ化は、ある一点に観光資源・街の資源を特化させるため、、その一点が機能しなくなった場合の損害は大きなものとなる。ある意味、「賭け」のようなものだともいえるのだ

    187. ニセコ化された空間に居心地の悪さを感じる人は、たとえるなら、全く知らない演劇の舞台に突然放り出されたようなものなのだ

    193. 官民連携による空間作りでは、どこかで、なにかを「静かに排除」しているかもしれない可能性わ、常に意識する必要があるとも思うのだ

    196. 「ジェントリフィケーション」。再開発によってある地域にブランドショップなどの高級店が多く進出し、そのエリアが高級化すること

    203. MIYASHITA PARKの事例を見ていると、「誰かにとっての居心地の良さ」は、「誰かにとっての居心地の悪さ」でもある、といえる

    205. 全員が満足できる空間は作れないが、異なる人が「選択」された空間を増やしていけば、総体として、より多くの人の「居場所」を作ることができる

    211. 「自分が持っているモノひとつひとつに対して、迷いなく「大好き」と思えるモノだけに囲まれた生活。これこそが人生最大の幸せだと思うのですが、いかがでしょう」byこんまり
    あなたが「大好き」と思えるものを「選択」せよ。こんまりの片づけ術は、実はわたしたちに「選択」を迫っているのだ

    214. 「推し活」の文脈でそれ以上に重要なのは、それを「推す」ことによって、それを推す個人が何者なのか、というアイデンティティまでもが担保されることだ。「推し」というのは、その人の世界観を作り出す「テーマパーク」的な働きを生み出しているといえるのだ

    222. 個人の「ニセコ化」が促進しているのは、SNSの発達である

    224. 本来、人間とは、ある一つの「キャラ」だけで語れるような、単純なものではないはずだ

    232. 「フィルターバブル」。人はこれまで自分自身が検索した言葉や端末上の振る舞いから、その個々人に最適化された世界が構築されていく

    233. 「空間の変化は社会構造における変化の明細書として分析されなければならない」 by都市社会学者マニュエル・カステル
    社会の変化は都市の変化として表れる。

  • ・マーケティング的書籍。どうしても、いったもん勝ち、結果論に思えてしまう。SCMガイのさが。

  • 【この本のテーマ】
    北海道・ニセコは、高級リゾートとしてインバウンド需要を取り込むことで、かつての地方の一般的なスキーリゾートから大きな変貌を遂げた。本書は、その変貌の背景にある構造や価値観を「ニセコ化」として抽出し、全国各地に広がる同様の現象を読み解く。そして、その過程を通じて、現代の日本社会において私たちがいかに生き方や地域のあり方を再設計できるのか、そのヒントを提示する。

    【概要】
    著者が提示する「ニセコ化」の本質とは、ターゲットの「選択」とサービスの「集中」によって、空間や場が特定の顧客層向けに再構成され、まるで“テーマパーク”のようになることである。ニセコにおいては、そのターゲットは「富裕層外国人観光客」であり、街はそのニーズに応えるべく、外国語表記の看板、外国人スタッフの採用、ヴィーガン対応の屋台、高級シャンパンが並ぶコンビニなど、徹底したサービスの最適化を図っている。

    加えて、ニセコには「世界有数のパウダースノー」という強力な資源が存在する。外国人の間では“ジャパン・パウダー”、略して「ジャパウ」と呼ばれ、雪質それ自体がブランドとなっている。この圧倒的な強みを起点に街全体を徹底的に磨き上げた結果、「高級スキーリゾート」という一貫した体験価値へと昇華されたのである。

    著者は、こうした現象はニセコに限らず、東京の渋谷や新大久保、さらには全国チェーンの飲食店(スターバックス、びっくりドンキー、丸亀製麺など)にも見られると指摘する。いずれも、明確な顧客像を想定し、空間やメニュー、接客をその層に最適化している。「万人受け」を捨てて「誰かのため」に集中する。これが「ニセコ化」の核である。

    しかし、「選択」と「集中」は、常に何かを“排除”するという裏面を伴う。本書で最も鋭い指摘のひとつが、この“排除のメカニズム”に関するものである。ニセコは「日本人観光客お断り」を公言しているわけではないし、むしろ「多様性」を標榜している。しかし実際には、高額な宿泊費や食事代、非日常的な空気感は、結果として「普通の日本人」を遠ざける。「歓迎されていない」と感じさせるこの現象を、著者は「静かな排除」と呼ぶ。

    同様に渋谷は「若者を排除する街」へ、新大久保は「おじさんを排除する街」へと変わりつつある。そしてそれは商業施設や観光地に限らず、公共空間においても進行している。空間が誰かの居場所になるとき、同時に誰かの居場所ではなくなってしまう──この構造をどう捉えるかが、「ニセコ化」の功罪を評価するうえでの分岐点となる。

    さらに著者は、「ニセコ化」はもはや観光地や都市空間にとどまらず、私たちの日常にも深く浸透していると語る。たとえば、SNS上での「推し活」や趣味のコミュニティ化、さらには自己ブランディングまでもが、「誰に向けて」「何を届け」「誰を無視するか」という選択と集中の構図を帯びている。
    「ニセコ化からは、誰も逃れられない」という著者の指摘には、ある種の居心地の悪さすら覚える。

    こうした社会において私たちに求められるのは、自分が何を選び、何を排除しているのかを自覚的に捉える視座である。本書の最後では、「ニセコ化する社会」を前向きに生き抜くための3つのヒントが示されている。

    ①知る:誰が何によって選択・排除されているのか、その分断の構造に気づくこと
    ②深める:その分断の背景や影響を理解し、解像度を上げること
    ③(行動する):ときには政治や社会に声を上げることも一つの手段となる。カッコ付きなのは、「行動しないこと」も選択肢の一つとなりうるため。

    【感想】
    本書を読みながら感じたのは、「これは単なる観光地の話にとどまらないな」ということでした。

    正直に言えば、最初は“ニセコ”という一部の特徴的な観光地を、ちょっと風変わりな事例として紹介する本なのかなと思っていました。でもページをめくるうちに、ニセコ化という言葉が、いまの日本社会やビジネスのあり方を読み解くための、非常に示唆に富んだ内容となっていることに気づきました。

    特に印象に残ったのは、「静かな排除」という視点です。
    誰かを明確に拒絶しているわけではないのに、価格や雰囲気、使われている言語や文化的なムードによって、「ここは自分の居場所じゃない」と感じさせてしまう空間って、確かにあちこちにあるなと思います。観光地に限らず、カフェや職場、ネット空間など、どこにでもそうした“静かなフィルター”は存在しています。

    一方でXやThreadsなんかは、そのようなフィルタ機能がぶっ壊れてあらゆる価値観・思想の人がごちゃまぜになって地獄絵図と化している面もあると思いますが。。。

    閑話休題。

    もうひとつ強く共感したのが、「選択と集中」だけではニセコ化は成立しないという指摘です。
    本当に大事なのは、自分たちやその土地の“強み”を見出し、それをとことん磨き上げること。そしてその強みが生きるような体験や空間を、街全体やお店全体で一貫してつくっていくこと。これは、企業のブランディングや個人のキャリア形成にも通じる考え方だなと感じました。

    ニセコという小さな町の変化を入り口に、日々の仕事や生活の中に潜む“選択と排除”の構造まで考えさせてくれる。そんな奥行きのある一冊でした。

  • 複数の身近な事例から共通性を見出した論述で楽しく読めた。

  • はじめに ニッポンであってニッポンではない場所「ニセコ」
    第1章 「ニセコ化」とはなにか それはニセコだけで起こっているものではない
    第2章 「ニセコ化」する都市 「ニッポン・テーマパーク」から渋谷まで
    第3章 成功の鍵は「ニセコ化」にあった スタバ、びっくりドンキー、丸亀製麺
    第4章 なぜ今、「ニセコ化」が生まれたのか ディズニーとマーケティングが手を結ぶ
    第5章 「ニセコ化」の波に乗れない企業とは ヨーカドー、ヴィレヴァンがマズい理由
    第6章 「ニセコ化」の裏ですすむ「静かな排除」 居心地の悪さを感じる人たち
    終章  誰も「ニセコ化」からは逃れられない 「推し活」と「キャラ化」で失われたもの

  • ・ニセコ化とは、「選択と集中によるテーマパーク化」
    ・ニセコ化は日本中に広がっている
    ・ニセコ化に成功するとそこは賑わう場所になる
    ・ニセコ化は選ばれなかった人たちを静かに排除する

    ということを、ニセコ、千客万来、ディズニーリゾート、渋谷、新大久保、スタバ、びっくりドンキー、ヴィレバンなどの例を挙げて述べる。

    ニセコ化は狙ってやれば必ずうまくいくもんじゃない。時代の変化で失敗するケースもある。

    公共性と企業経営方針は相反する場合がほとんどだろうから排除はやむなしでは、が私見。マーケティングの結果だからこの問題は昔からあったんじゃないだろうか。今の方が露骨になったとか情報化社会だから拡散されやすくなったとかはあるかもしれない。俺はニセコもディズニーも渋谷もスタバも興味ないし代わりになる場所はいくらでもあるんだから自分にとっての「推し」を推していけばいいんじゃないでしょうか。人のいかないところを探して行くのもいい。情報に踊らされるな。

    この本を読んで内容と直接関係ないけど、新卒の初任給が上昇傾向の一方で中年世代は上がらないとのニュースが少し前にあったのを思い出し、あれも選択と集中であり氷河期世代は静かに排除されている…と当該世代の1人として思った。

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著者プロフィール

谷頭和希
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。著作に『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)など。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など多数。

「2025年 『実はおもしろい古典のはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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