太陽を背にうけて (角川文庫)

  • KADOKAWA (2025年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784041156063

作品紹介・あらすじ

ライフ・イズ・ワンダフル! 

「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの著者による、感動の人間讃歌!


仕事一筋で家庭を顧みなかった報いなのか――。ファミレス経営会社の管理職を勤め上げ、定年退職したその日、里村乙彦を待っていたのは妻からの離婚届だった。絶望の中で酒に溺れた里村は、娘に促されて再起を決意する。場所は日本第二の高峰、南アルプス北岳にある肩の小屋。標高三千メートルの過酷な環境の中、二代で山小屋を守る管理人親子と個性的なスタッフたちに見守られ、里村は苦難の中で人生のやり直しを目指す……。

感想・レビュー・書評

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  • 樋口明雄『太陽を背にうけて』角川文庫。

    仕事一筋で家庭を顧みなかったことから、定年を機に妻に離婚され、酒に溺れた男性が再起を決意し、南アルプス北岳の山小屋で働きながら人生の再生を果たすという物語である。タイトルの『太陽を背にうけて』はジョン・デンバーの名曲から。

    読後には、昔の日本映画を観終えた時のような清々しい気持ちになる素晴らしい小説だった。主人公の65歳の里村乙彦と年齢が近いこともあり、身につまされる思いで読んだことも一因であろう。

    『南アルプス山岳救助隊K-9』シリーズの星野夏実と江草恭男隊長も登場する。

    ファミレスの経営会社の管理職を勤め上げた65歳の里村乙彦は、妻との老後の暮らしを夢見て家に帰ると妻から離婚届を突き付けられる。絶望の中、酒に溺れ、無為な日々を送る里村だったが、娘の言葉に一念発起し、酒を一切止め、南アルプス北岳の山小屋で働くことを決意する。

    様々な事情を抱えながら山小屋で働くスタッフに混じり、必死に働く里村……



    今の世は、ワーク・ライフ・バランスだとか36協定といった縛りで、家庭を顧みる時間的余裕のある会社生活が推奨されている。昔は本作の主人公のように仕事一筋、家庭で過ごす時間より会社で過ごす時間の方が多いという男性が多かった。

    自分も主人公と同じように、家庭など顧みることなく、連日の残業と休日出勤で月に100時間から200時間もの時間外労働をこなし、機会があれば仕事仲間と飲み歩いていた。結果、主人公と同じように会社で出世はしたものの、妻に愛想を尽かされ、離婚した。

    その後は酒で憂さを晴らしながらも、変わらずに馬車馬のように働いていたが、たまたま知り合った女性と再婚し、しばらくしてから酒を一切止めた。あのまま酒に溺れていたら、今の自分は無かったかも知れない。

    時代は変わり、世の中の流れで仕事時間は激減した。物足りないという気持ちはあるが、生活に余裕が出来たのは確かだ。数年前に還暦を迎えたが、運良く現役時代と変わらぬ給料とポジションで働くことが出来ている。

    本体価格940円
    ★★★★★

  • 主人公は定年退職とともに妻から離婚を切り出され、己の居場所をなくした里村乙彦。
    娘に促され、一念発起し酒浸りの生活を断ち、北岳肩の小屋で働くことになる。過酷な環境の中、やることなすこと不器用で失敗続き。
    しかし、その必死に頑張る姿を山小屋管理人親子やスタッフたちが温かく見守る。
    主人公里村の行動とともに、山小屋スタッフたちのそれぞれの内情も綴られ、人生の再生を期する人たちを清々しく描かれている。
    北岳が舞台ゆえ、「南アルプス山岳救助隊」シリーズのメンバーも顔を出し、ファンにはに逃せない作品。

  • 定年退職した彼が働くのは
    富士山に次ぐ標高の山にある山小屋
    何があって? なぜそこで?

    やや田舎に住む私には普段見ることの出来ない高さ3,000mの風景が
    天候の良いときも悪い時も美しく感じる

    多くの登山者や山小屋で働くスタッフ
    それぞれに歩いて来た道があり
    歩いて行く道がある

    私の道を楽しんで歩いて行こう

  • ----------------------------------
    「南アルプス山岳救助隊K-9」
    シリーズの著者による、感動の人間讃歌!

    ライフ・イズ・ワンダフル!

    65歳。退職後に残された人生には絶望しかなかった。
    しかしこの山小屋だけは、彼を優しく受け入れてくれた。
    ----------------------------------
    インスタで見つけて気になっていた一冊です。
    書店で見つけて、
    表紙が綺麗で夏にぴったりかもと思い手に取りました。

    主人公の里村は65歳で勤めていた会社を定年退職。
    仕事一筋、これからは家族の時間をと思い帰宅すると…待っていたのは離婚届。

    娘の美紀のアドバイスを受け、
    仕事を探し始め、行き着いた先は…山小屋。

    登山は全く未経験の私でも楽しめました。
    普段見ない、とても綺麗な言葉(蒼穹や錦繍や白虹など)がたくさん出てきていいな、と思いました。

    自分の居場所を見つけること。
    そこに集っている人たちも、
    みんな何かを抱えて生きてること。
    どんな人にも山は平等。

    山の厳しさや美しさが、
    読みやすい文章で表現されていて、
    読後も爽やかな一冊でした。

  • 主人公の里村乙彦は、ファミレスを営む会社で手腕を振るった管理職だったが、65歳で定年を迎える。
    帰宅した里村は、その日に妻の紀代実からいきなり離婚届を渡される。
    理由が理解できない里村は茫然自失となるのだが、考えてみると妻の言い分も渋々理解する。
    要は家庭を顧みず、仕事最優先で生きてきた40年近くの年月だった。
    妻はその間、一人娘の美紀を育て、里村に不満を言うでもなく、毎日家庭を切り盛りしてきたのだが、定年を機に離婚を考えていたのだ。
    里村は、頭の中では妻の言い分を理解しつつも、これからの生活に光明を見出せず、これまで以上にアルコールに身を任せ、悶々とした日々を送っていた。
    そんな時、一人娘の美紀から「ねえ、お父さん。新しい仕事を見つけてみたら?」と告げられる。
    このままの生活を送ることに不安を感じていた里村は、学生時代に登山部だったこともあり、山小屋でのアルバイトに絞ってネットで検索を始めた。
    結果、「北岳肩の小屋」でのアルバイト募集を見つけ、連絡すると現地に来てくれとのことだった。
    里村は保存していた一切のアルコールを処分し、北岳に向かうことになる。

  • しばらくK-9のシリーズから離れていたら、こんな作品が出ていることを偶然知った。

    仕事一筋で家庭を顧みなかった報いなのか――。ファミレス経営会社の管理職を勤め上げ、定年退職したその日、里村乙彦を待っていたのは妻からの離婚届だった。絶望の中で酒に溺れた里村は、娘に促されて再起を決意する。場所は日本第二の高峰、南アルプス北岳にある肩の小屋。標高三千メートルの過酷な環境の中、二代で山小屋を守る管理人親子と個性的なスタッフたちに見守られ、里村は苦難の中で人生のやり直しを目指す……。

    再生ものとして強くお勧め。

  • どこかでボタンをかけ違い、多くの物を失った退職後の男性が、山小屋で働き始め、自分を取り戻していく姿が描かれている。
    下界で失ったと感じたことは妄想だったのか。そもそも下界で手に入れたと思っていたことが妄想だったのか。
    厳しい大自然の中で生きる人の優しさに触れ、自然の中に溶け込むような生き方を見出していく。
    その厳しくも清々しい様子が、アルプスの稜線を彷彿とさせる素晴らしい作品だった。

  • 65歳で大手ファミレス管理部門を定年退職したさとむら。退職の日に待ち受けていたのは妻からの離婚届。アルコール依存性に陥り娘からの一言で北岳肩の小屋でスタッフとして働くことを決意する。失敗の連続だったが、懸命に働き次第にスタッフと打ち解けていく。二代目管理人の小林雅之がいう「巡り合わせ」という言葉がキーワードとなり、里村の山に託した人生の再生物語と思えた。娘が肩の小屋に尋ねて来て、これまでの人生を振り返る里村に希望が見えて良かった。白虹、ブロッケン現象など山の不思議が目に浮かぶ。

  • 表紙の山に惹かれて購入。山小屋で働く人たちが悩みを抱えながら生活しており、登場人物に共感することができた。登場人物のほとんどがいい人なので、ほっこりとした気持ちで読み進めることができました。
    山での生活や景色が想像でき、爽やかな気持ちにさせてくれる作品でした。

  • 山と人の物語。

    定年退職の日に妻から離婚届を突きつけられた里村乙彦は、絶望の中で酒に溺れるが、娘の助言で再起を決意。南アルプス北岳の山小屋で、管理人親子やスタッフと共に過酷な環境の中で新たな人生を歩み始める。

    山っていいなあと思える作品。
    山で働いてる人が素敵なのか、山で働くから素敵になるのか。

    私的には山で働こうとなる人には何かしらに思いがあるような印象で、その抱えた思いでプラスに働くかマイナスに働くのかで、その人が決まる。 山の力でプラスに変えた人(山で働く人たちの力も含め)が、素敵な人になるのでは無いか。

    何はともあれ、北岳の景色を笑う描写が素敵すぎる。山を登る。身としては登山に行きたくなった。

    いざ、山小屋へ

  • シニアの挑戦を通じて、山岳小説の面白さを
    痛感出来た。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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