レジデン都市505 3 (角川コミックス・エース・エクストラ 24-7)
- KADOKAWA (2014年3月1日発売)


- Amazon.co.jp ・マンガ (129ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041210253
感想・レビュー・書評
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俺のラブはこれからだ――、桐先生の次回作にご期待ください、ご愛読ありがとうございましたッ!
ミカベル漫画の中ではメタ・ネタに重点を置き現実視点で軽快に描きつつ、シュールな変形芸や下ネタ、リアクション芸が比較的薄めなここ『レジデン都市505』。
しかして、「漫画」と「ヘンなマンション」をメインに据えたテーマが高次元でまとまっており、初心者、コア層問わず薦めやすい名作として仕上がっていると思います。
そんなわけで漫画の実写映画化、サイン会でのファンとの交流、ゆるキャラ満載取材旅行……、漫画を取り巻くイベント目白押しな最終巻です。
なにぶんギャグマンガなため、漫画家志望の若人にとってどれほど参考になるかまではわかりませんが、勇気はもらえるかと思います。
思い起こせば、安定のゲスっぷりを発揮しつつも漫画に関しては高いプライドと生き汚さを発揮し、ボケ役としては全くブレず軸の安定した御堂先生が大暴れした全三巻でした。
あとこの巻では顕著ですが、御堂先生のおかげで意外とビジネスとして「漫画」に向き合ってくださっているなあと思います。
固定ファンの存在から安定した収入を得つつもアーティスティックな画風、清純派のイメージからどうしても離れられず冒険できない桐先生とフリーダムな御堂先生が作中で色々対になってるのが美味しいんです。
御堂先生、迷走に迷走を重ねてよくわからない方向に己の作品を着地させつつもなんだかんだで連載は続いているようです。
恋愛フラグとは無縁で一方的に足を引っ張られる悪友のような関係に落ち着いた異性って関係っていいですね。
この漫画読んでると、自分が「書きたいもの」と「売れるもの」どっちを取るか? っていうクリエイターにとって永遠に釣り合わないはずの両天秤がぶっ壊れるほど笑えると思います。
漫画家にとって最も身近な読者にして顧客である編集がダメ人間、出会った熱烈ファンもダメ人間。
漫画ってのは童貞処女をこじらせたダメ人間が読者・作者やっててもいいんだ! っていう熱い主張を感じる気もします。
理に適ってるけど、ダメすぎる本音がここまでの話を踏まえると創作論としてちゃんと成立してるんですよ。
そして、その上で肯定感を与えてくれると思います。悩むのもいいけれど、時に笑い飛ばしてもいんじゃない? って。
性癖と妄想をこじらせた社会不適合者同士の醜くも魂の入った力強い衝突が僕たちに爆笑と感動の両方を与えてくれるのかもしれません。
つまるところまとめ。
マイナーな世界の住人として、遠い存在であるメジャー漫画と漫画家に憧れる悲哀を熱い叫びで吹っ飛ばす豪快さが最後を飾ってくれました。
早々結果は出なくって、恋の行方は前途多難、だけど洋々たる未来を感じさせる王道の終わり方なのでした。
まだまだ先を見たい気もしますが、両先生が漫画業界の荒波を泳ぎ切っていく未来もなんとなしに見えた気がしますし。
それに、この面子で描けることは描き終わりました、キャラを増やして続けることは出来るけど、あとはグダるだけだとなぜか確信できました。
本当に元気の出る漫画だと思います。どんだけアレでダメな主張だろうが、心の奥底から湧き出て叫ぶことができるなら、それは何よりも強い力になるって私は信じています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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