- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041212103
作品紹介・あらすじ
村松恒彦は勤務先の銀行の創立者の娘である13歳年下の妻・郁子と不自由なく暮らしている。恒彦の友人・楠は一目で郁子の美しさに心を奪われ、郁子もまた楠に惹かれていく。二人の恋は思いも寄らぬ方向へ。
感想・レビュー・書評
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小池真理子の解説がよかった
三島由紀夫を「思想的な死」から理解するのは間違っていると言い切る清々しさ
「あの死をもって、彼が演出した自身の悲劇の幕が下ろされた」とする理解も、本書のような表現豊かな文章を若干25歳にして書き上げてしまう才能に触れた直後には、すとんと腹に落ちる思いだ
確かにこの小難しい文章を書く作家は自分の命の終焉も自身の作品の一部に捉えていたのかなあと小池真理子の解説を読みながら不思議と納得してしまった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
25歳の時の作品かぁ〜。狂気を文学に昇華させた印象の「金閣寺」もそうだけど、クライマックスが唐突にやってきて衝撃。それにしても、沢田のセリフで終わるラストは秀逸と思う
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これが三島25歳の時の作品とはつくづく才能とは恐ろしい。
「楠は悩める男としての別様の形姿をあらわした。どんな女にも、苦悩に対する共感の趣味があるものだが、それは苦悩というものが本来男性的な能力だからである。」妙に心に残る一節だった。 -
この小説は、「婦人公論」に連載(1950年1月~10月)されていたもの。時に三島由紀夫25歳。物語の主要な舞台は、戦後復興がまだ十分になされてはいない東京。主な登場人物は36歳の男が2人(恒彦と楠)と女が1人(恒彦の妻・郁子)。3人の心理(恒彦のそれはあまり詳らかに書かれてはいないが)の綾が物語を織りなしていくのだが、郁子のそれはまことにわかりにくい。おそらくは郁子自身にさえわからなかっただろう。エンディングは、半ばは予想がつくものの極めて劇的だ。なお小池真理子の解説は、この小説と三島の本質を衝いて見事。
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想い合ってるのに、互いに張り合うプライドが素直になることを許さない。沢田との過ちを機に、より一層強い愛憎に歪んだ二人だったが、皮肉にもプラトニックな関係のままピリオドが打たれる。
自分の矜持を守りたいが故に″どちらがより多く相手を苦しめることができるか″などという苦しめ合いは、悲劇的結末を前にしては愚かで無意味な行為でしかない。
良人へかけた最期の電話に、郁子という女の本音を垣間見た気がして、なんだか哀れだった。 -
三島由紀夫は初めてでしたが、文章が美しくて痺れました。
現代では出せない美しさでしょうね。
装丁も素敵です。 -
20230720再読
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沢田ァ!!という気持ち 楠もしっかりしてくれ 13も年下の女の子だぞ
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俗に言う『ダブル不倫』のお話です。
楠は、大学時代の同級生・村松恒彦の、13歳年下の妻・郁子に一目惚れしてしまいます。楠から手紙を渡された郁子も、次第に楠に惹かれていくが……。
自尊心が邪魔をして素直になれない男女の機微が上手に描かれていました。
一度でも2人が過ちを犯していれば、最悪の状態にはならなかったのかなあと思ってしまいます。
恒彦には年齢の割には老けているというか余裕・落ち着いた印象を感じ、逆に郁子は実年齢より幼く感じました。いずれにしても、三島由紀夫が25歳のときに書いた作品だというから驚きでした。 -
小池真理子さんの紹介や解説がとても良い。細かな心理描写はなるほど巧いと思い納得した。25歳のときの作品として持ち上げられるようだが、やはり若さゆえか後の作品に比べると読みづらいところが多くある。気張った感じというか。「不倫」と言われればそれまでだが、その表現がまったくしっくりこないほど、三島流に織り上げられた男女関係だ。ぎこちなさはありながらも、やはり挑戦的な態度や美しさと醜さ、強さと弱さの巧みな表現は読み終わって満足感を与える。題名もさることながら、美しさが脳内に共鳴する(錯覚がおこる)。悪くない作品。
著者プロフィール
三島由紀夫の作品





