夏子の冒険 (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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レビュー : 151
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041212110

作品紹介・あらすじ

芸術家志望の若者も、大学の助手も、社長の御曹司も、誰一人夏子を満足させるだけの情熱を持っていなかった。若者たちの退屈さに愛想をつかし、函館の修道院に入ると言い出した夏子。嘆き悲しむ家族を尻目に涼しい顔だったが、函館に向かう列車の中で見知らぬ青年・毅の目に情熱的な輝きを見つけ、一転、彼について行こうと決める。魅力的なわがまま娘が北海道に展開する、奇想天外な冒険物語!文字の読みやすい新装版で登場。

感想・レビュー・書評

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  • これまたブクログサイトで知った作品。
    三島作品としてはかなりライト。「潮騒」のような真っ直ぐな物語とはまた違うけれど、楽しめた。

    モテすぎて男にウンザリしているお嬢様の夏子は、ある日突然『あたくし修道院に入る』と宣言、家族を慌てさせる。
    モテすぎて何故修道院?と、その思考に驚くが、夏子の中では男と結婚して『美しい小さな牢屋に閉じ込められる』ことが嫌で、同じ閉じ込められるなら修道院が良いということなのかと勝手に想像した。
    しかし夏子は男たちに『情熱』を感じなかったことが物足りなかったらしい。『野心』ではなく『情熱』こそが夏子の求めるものだった。
    夏子の『情熱』に劣らぬ『情熱』を持つ男が現れないことには彼女の心は満たされない。

    ところがいざ修道院のある函館へ向かう途中、夏子は猟銃を担いだ青年・毅の『森の獣のような光を帯びて』『よく輝く』『異様に美しい瞳』に『情熱の証し』を見出だし、一気に彼に興味を持つ。
    毅はかつてアイヌの村で出会い恋した少女が熊に殺されたことで、熊を撃ち仇討ちの旅に向かっていたのだった。
    夏子は持ち前の強引さで毅の仇討ちに付いていくことにする。

    亡くなった恋人の仇討ちに行く男に付いていき惹かれる夏子の気持ちと、恋人の仇討ちに行きながら次第に夏子に惹かれる毅の気持ちについていけないまま読み進む。
    一方で夏子を取り戻すべく追いかける夏子の母、伯母、祖母の三人組がワチャワチャして面白い。女三人寄れば姦しいことこの上ない。

    途中までは夏子の強引さや周囲を振り回すところにウーンと思っていた。
    ライバルの登場でしおらしくなる彼女に、やはり夏子も恋する乙女だったかと皮肉に感じたがそうではなかった。
    お嬢様らしい聡明さと素直さを持つ、ブレない彼女にだんだん結末が知りたくなる。
    母ら三人組の追跡の行方も気になる。
    熊撃ちも気になる。行く先々で馬や家畜や人まで襲われて結構危険。

    読み終えると、やはり夏子はブレていなかった。そのことが嬉しい。
    夏子にとっては人食い熊を追いかけ撃つなんて、お嬢様人生では得られない、とんでもない経験と興奮いっぱいの『冒険』だったのだろう。

    コミカルでドタバタもあるのに、表現は安っぽくない。そこは三島作品らしい。

  • 知ってしまった一冊。

    読みやすい面白い三島作品を知ってしまった、その気持ちでいっぱい。

    修道院に入る宣言をしたお嬢様 夏子。函館に向かう列車で、瞳に情熱を、肩には猟銃を持つ熊撃ちの青年に出逢い気持ちは一転、彼についていくことに。

    この我が道を行く夏子は魅力がいっぱい。

    この行動力、夏子の情熱には感嘆の吐息しか出ない。

    北の大地へ熊撃ちへの冒険は夏子にとって煌めき以外の何者でもなかったんだろうな。

    随所で伺える夏子の聡明さも実に気持ちが良いし、振り回される母達も面白い。
    ちょっとした表現に言葉の美しさも味わえて、思わずリフレインしたくなるほど。

    最後まで夏子に、そして熊にハラハラドキドキの時間、楽しかった!

  • 三島由紀夫によるラブコメ小説。
    (なんか金閣寺とかの有名どころじゃなくてこんなんばっかり読んでいる。)

    退屈な現実に嫌気がさしたハタチの夏子は、突然「あたくし修道院へ入る」と高らかに宣言し、またもや家族たちの度胆を抜くことに成功する。
    そしていざ函館へ向かう船では、瞳に情熱的な火を宿す青年・井田毅と出会いあっというまに恋に落ちる。
    危険だから、という彼の静止も聞き入れず、目指す修道院をもほっぽり、夏子は北海道の大地で意気揚々と”熊をめぐる冒険”に乗り出す、というストーリーだ。

    自由奔放で傍若無人なエキセントリック娘に始めは辟易していたのだが、そのあまりにも突き抜けた気高さに私までまんまと心を奪われてしまった。
    夏子、毅、野口、不二子、夏子を生け捕りしようと奮闘するおばさまたち。たくさんの魅力的な人物が二転三転するドタバタ劇がとにかく面白い。
    熊に襲われた男性の話は鬼気迫るほどでゾッとさせられる。さて夏子と剛は無事に4本指の人喰い熊を仇討ちすることができたのだろうか?
    本当に面白いのでぜひ読んでほしい。
    なんてったってラスト3行がたまらないのだ。そこにこの小説の良さが凝縮されている。
    電車で読んでいて思わず声出して笑っちゃったもんね。エピローグでまさか、まさか、とは薄々思ってたけどそのまさか。あー痛快。

    夏子のように生きてみたい……と思ったけど、でもひょっとしたら私も二十歳の時はこのぐらい恐れ知らずの無鉄砲ガールだったような、気がしなくもない。
    じゃなきゃ今こんなことになってないもんなぁ。

  • 「あたくし修道院へ入る」
    世間知らずな良家のお嬢様・夏子のひと夏の情熱的冒険!

    自分が美人で周りの男達が自分を放っておかないことが分かっていて、計算高く、我が儘放題で一度言ったら後には引かない。
    そんな夏子は自分の周りに情熱を宿している男が一人もいないことに絶望し、突如修道院入りを宣言。

    しかし夏子の前に一人の情熱的な男が現れた!
    四本指の凶暴な熊を追う毅の情熱に打たれた夏子は、毅に無理矢理付いて行き、その夏子の後を追うこれまた世間ずれした夏子の母、祖母、伯母…ともうメチャクチャ。

    物語全体がテンポ良くコミカルで、最後のオチの付け方も夏子らしくて好き。
    新鮮で刺激に満ち、一度味わったら引き返せない…そんな冒険に憧れる夢見る夏子。
    夏子の冒険はきっと永遠に終わることはないだろう。
    読めば読むほど魅力的に思えてくる、本当に不思議な女性だ。
    読み手にマジックをかけてしまった三島由紀夫のテクに脱帽の一冊。

  • ゴールデンカムイを読んでたおかげで、昔は想像できなくて引っかかっていたであろうアイヌの表現がするするわかり、三島由紀夫を読みやすいと思う日が来るとは・・・という感じだった。
    全体的にラブコメなんだが、比喩が三島節というか、1番美しい表現の真ん中の的を正確に射抜くように、ひょうと書かれるので、コメディ舞台を見ているのか文学を読んでいるのか、バランス感覚を失いそうになる。
    夏子は羨ましい女の子だ。

  • やっぱり三島由紀夫の恋愛小説は面白い!読んでいる途中から、やんわりラストが読めてはいたが、「でもまさかね」と何度も反復して考えた。ラストの夏子の一言に、「ああー」と声を出さずにはいられない。ああいう高飛車な我儘娘は全く修道院へ行き独身を貫くのが良い選択だ。

  • 三島由紀夫の強面とはギャップがある、
    少女の心模様をポップに書いた一冊。

    あの夏子が真剣に男性と向き合っていく経緯が描かれているが、最後の3行で夏子の姿が強調された。
    面白い作品でした。

  • ✩.*˚
    ✩.*˚
    これは現代で言うラブコメというものでしょうか?
    かなりコミカルな作品です!

  • 恥ずかしながら、初めての三島作品。
    こんなラブコメから入って良かったのだろうか。
    とても読みやすく、頭の中に映像が浮かんでくる感じ。小説を読んでいると言うより、映画でも観ているかのよう。
    中でも松浦家の女三人が面白すぎ。
    人物描写が素晴らしく、本当に生き生きとしている。
    他の作品も読もうとおもいます。

  • 平穏無事で過保護気味な家庭で育った夏子が、刺激を求めて修道女を目指し、果ては道中出会った男の熊退治に同行するという自由奔放な冒険小説。
    なんだか既視感があると思っていたのですが、
    特別危険な事に挑戦する訳ではないけれど、例えば旅先でナビを無視して小道へ態と入って「何か面白い事があったらいいな」と刺激を求める感覚や、
    ハマった小説を一気読みする時の高揚感と勢いを思い出しました。
    ただ我儘で自己中心的なのではなく、暖かい家庭で平和に育てられた夏子だからこその好奇心に駆られた冒険なのだろうと思いました。
    三島由紀夫は女性美の描写が卓越していると常々思っていましたが、心配性で小煩い母、叔母、祖母の3人の忙しなく生き生きした描写もコミカルで面白かったです。
    くどくどしいロマンスでもなくさっぱりと一瞬で駆け抜ける夏子の冒険話は爽快で、また読みたいと思いました。

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著者プロフィール

三島由紀夫

一九二五(大正一四)年東京に生まれる。本名、平岡公威。学習院高等科を経て東京大学法学部を卒業。在学中の四四(昭和一九)年に処女創作集『花ざかりの森』を刊行。戦後四七年大蔵省に入り翌年退官。四九年に刊行した『仮面の告白』で名声を確立し、以後、文筆活動に専念する。『潮騒』にて新潮社文学賞、『白蟻の巣』にて岸田演劇賞、『金閣寺』にて読売文学賞、『絹と明察』にて毎日芸術賞、『サド侯爵夫人』にて芸術祭賞などを受賞した。六八年、「楯の会」を結成し、七〇(昭和四五)年、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。

「2020年 『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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