複雑な彼 (角川文庫)

著者 : 三島由紀夫
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年11月25日発売)
3.59
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  • 29レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041212127

複雑な彼 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 格好いい男の人が出てくる小説が読みたかったので、
    あれこれ探してこれを選びました。

    本当は金閣寺とか潮騒から読まなきゃいけないですが
    私は三島さんの、軽い感じの上品な小説が好きで
    初の小説はこれを選んで見ました。

    どこかに、皮肉と優しさ、慎ましさが香っていて
    男性がたまらなく格好良く、女性が頭が良くて。

    いいですね。

    良家の出身であるらしい謎めいた国際線パーサーの
    青年に惹かれた上流階級の娘、冴子。

    この男性は、とてもイイ男でモテるのですが
    今の職業につくまでに、いろいろ経験してるよう。
    女達も、何年経っても彼を想っている…。
    そんなひと。

    生きる世界が違うと言われそうなふたりが
    異国の空の下で燃えるような恋をします。

    男は彼女を抱きたいのに、どこかで自制して。
    女は危ういと分かっていながら彼に惹かれてゆく。

    でも、どうしても越えられない何かがあって
    彼らはほろ苦い別離を選びます。

    濃厚な場面はそんなにないのに、惹かれ合っていく
    恋人同士の心の揺らぎと、抱き合った熱さがわかる。

    舞台も背景も繊細に美しい言葉で書かれている。
    むしろ通俗性もある作品なのに、汚らしくない。

    恋の経過がどこか夢の中か舞台のような
    ひとときの幻のような気がするのですが
    いつか覚める恋だという予感があるのが
    たまりません。

    シビアな現実認識がラストに効いているのが
    三島らしいですね。

    恋の焦慮と燃え上がる陶酔感が切ないまでに
    存分に味わえて、面白かったです。

  • 三島由紀夫ってこんな作品書くんだ、というのが率直な感想。全体的に軽めで、思いっきり恋愛小説。「命売ります」等もっと深かった気がするので、若干違和感を感じた。
    国際線の後ろ姿のかっこいいスチュワードに恋する事業家のお嬢様の話。このスチュワードは安部譲二がモデルらしい。思わずWikiってみたら、本当に小説に出てくる宮城譲二と同じ経歴なのか。スチュワードの経歴が突拍子もないと思ったけど、これが事実であるならば、事実のまますぎるのでらしさを感じられず残念。
    ラストは流れは読めるが、オチに唐突感あり。全体的にもうちょっと重厚な感じがほしいのと、展開に工夫が欲しい。

  • 読んでいる間、モデルになった安部譲二の顔がちらついてしまい。
    接吻する安部譲二、若干キザなことを言う安部譲二…。
    確かに背中は広そうだけど。

    スラスラ読めて、内容はともかく、文章はやっぱり三島で上手だなぁだし、おもしろいのに、安部譲二がどうも邪魔をする。
    具体的な人を思い浮かべると、自分の想像が入り込む余地がなくて、あまり没頭できませんね。

    そうは言っても、安部譲二の解説は興味深くて、よかったです。

  • 2012.7.5 読了

  • 第15回大四次之会の課題テーマ、「苦手な恋愛小説に挑戦」の流れで検索に引っかかった一冊。

    久々の三島由紀夫作品で、今回は某女性週刊誌に連載されたという通俗小説。プライドの高い良家のお嬢さんと、精悍な背中が魅力的だが物騒な噂のある"複雑な"彼の恋物語が面白い。
    軽く読めるストーリィなのに、彼らの微妙な心情が手に取るようにわかる。つまらない言い方だが、やはり文章がとびきり上手い。どうしたって真似できない。読んでいるだけで幸せうっとりしてしまう小説にはなかなか出会えない。
    登場人物も魅力的。複雑な彼こと宮城譲二くんの、実は単純で愛嬌のあることこの上なし。自分に忠実に思うままに生きて来たら、いつの間にか謎の多い男になってしまったとさ。そのお陰で困っていると語る彼を可愛らしいとさえ思う。
    それにしても、『潮騒』が思い出されるような異質なラスト。通俗小説とは言え、三島先生はやはり三島先生だった。

  • 彼は果たして複雑なのだろうか。
    いや気質からすれば、かなりの単純、いや言い換えれば素直な男だ。


    すんなり読める物語だった。
    ミシマらしい美しい文章も散見するが基本的には大衆向けに描いたものと取れる。
    しかし背景が楯の会の資金を捻出するために女性週刊誌のために書き下ろしたって言うのだから、かなりの曰く付きとも言える。
    それを知った後に、最後の結末を見てみると、ちょっと匂い立つ部分もあるが、まぁ私の考えすぎだろうと言うことにしておく。


    元のモデルがあの安岡穣二とは恐れいった。
    いやジョージもっとハンサムな印象だったんだけど。確かにガタイはいいんだけど。
    誰でも楽しめる、読みやすいミシマだろうと思う。

  • 根幹のストーリーは変わったものではないのだけれど、
    譲二の設定が良い意味でぶっ飛んでおり、楽しく読めた。

    譲二のその後が気になる終わり方。
    途中出てくるあのお方の使いは
    著者の投影なのだろうかと勘繰ってしまうが、
    それは考え過ぎなのだろう。

  • 角川は三島由紀夫のわりとポップな恋愛小説を色々文庫化してくれててすき。純白の夜とか不道徳教育講座とか。

    なのに描写は深くて厚みがあって良い。

    私は良くも悪くも今時の日本人なので冴子のような一時代前のブルジョアお嬢さまの自尊心の強さや貞操観念についてはよくわからないのだけど、
    そこをリアルに描いてきててやっぱり凄いなと思った。
    女心理解しすぎわろた

    三島由紀夫のがちがち純文学もいいけど
    上流階級のドタバタ恋愛モノもすきだな。
    ポップなのに描写が美しいからいいのかな。

  • 三島のいわば本格的な純文学を揃えている新潮文庫に対して、中間小説風の軽い三島をラインナップさせているのが角川文庫だ。これも、そうした角川の三島コレクションの1冊。タイトルからして軽快だ。主人公の譲二の造形は初めからリアリティを半ば放棄しているし、一方の冴子の方は典型的なブルジョアのお嬢様という設定。譲二の最後の秘密は想像通りだし、結末もかなりに荒唐無稽だ。三島らしいシニカルな終わり方だともいえる。三島の絶妙な「軽み」を楽しむ小説。それにしても、ゲイの三島は女心を実によくわかっていると感心する。

  • どうしてこんな人まで三島由紀夫は繊細に描けるんだろう。文字の見せる情景がありのまま瞼に移って安っぽいドラマでは感じられないある種のロマンチックさがそこにあった。
    三島作品にしては軽く読めちゃう内容でも根深い男と女に対する倫理観がしっかり残ってて女性誌向けとなってますがやっぱりぐいぐい読めちゃいます

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