愛の疾走 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 119
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041212172

作品紹介・あらすじ

諏訪湖で漁業を営む純朴な青年・田所修一は、下諏訪にできた近代的なカメラ工場と、そこで働く娘たちに憧れを抱いている。素人作家の大島十之助は、小説「愛の疾走」を執筆するために、そんな田所と工場で働く正木美代に恋愛させようと企むが、夫の小説道楽に反対している大島の妻が、策略を田所に打ち明けてしまう。仕掛けられた恋愛の行方は…。劇中劇の巧みさが光る、三島渾身のエンターテインメント小説。1963年初刊作品。

感想・レビュー・書評

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  • こちらも初々しい恋愛もの。
    構成がちょっと変わっている。
    「お嬢さん」や「永すぎた春」と違うのは舞台が東京でなく、
    地方(まあ田舎)であるところ。
    だけど、これも安心して愉しく読める。

  • なんてことない若者の恋愛小説かと思ったら、最後の一文でぞっとした。
    自分もそのなんてことなさを幸せで良かったと思うのと同時に少し退屈だと思ってしまう感覚があって、そこを見事に突かれた気がした。

  • 嫌い。でも読んでしまう魅力。

  • 角川文庫と新潮文庫の何やら決定的な差異を見たような気分

  • 三島由紀夫の書く文章が好き。

  • 三島といえばノーベル文学賞候補に推されるほど高い筆力を誇る一方で、その凄絶な最期に象徴されるようにゴリゴリの主義・主張を展開していた人間でもある。代表作は『仮面の告白』や『金閣寺』で、たしかにそこには本人の人柄を偲ばせる、マッチョな世界観が拡がっているが、しかし一方で、小説家としては通俗的な恋愛作品も量産していた。現在角川文庫から再刊されている一群には後者が多く、まずはその振れ幅の大きさに驚くばかりである。もちろんたんに作風が広いだけではなく、ちゃんとクオリティも伴っていて、本作もたいへんおもしろく読むことができた。内容も意慾的で、主人公である2人のアヴェックは、同時に作中作『愛の疾走』における主人公であるという構成になっており、岡嶋二人の『クラインの壺』ではないが、結末のどこまでが現実でどこまでがフィクションか、あるいはフィクションの通りになることがはたして幸福か否か、という観点からも読むことができる。ベタな恋愛小説のように見えて、そのベタを否定しようとする小説家(=三島の分身?)を登場させ、最後を個性的に仕立てあげるあたりは、さすがに文豪の面目躍如といったところ。こういう小説であっても三島は素晴らしいということが確認できたので、新潮文庫のみならず角川文庫の作品も順次読み進めてゆこうと思う。

  • 1962年に「婦人倶楽部」に連載。三島由紀夫は円熟期の37歳。この小説では客観体の叙述を軸としながら、所々に登場人物たちの1人称体の語りが配されており、その意味では幾分実験的な試みではあるのだが、残念ながらそれは必ずしも成功しているとも言い難い。諏訪湖畔で細々と漁業に従事する青年、修一を主人公に設定した点では『潮騒』に似ていなくもないが、彼の恋の相手はモダンなカメラ工場に勤める美代である。この二人の恋の行方が、アマチュア作家大島の作中作『愛の疾走』と並行して描かれてゆく。この点でも実験的ではあるのだが…。

  • 三島由紀夫と言えば、硬派というイメージしかなかったのですが、本作はそういうイメージを払拭する作品です。小説の中に登場する素人作家が、若い男女に「愛の疾走」を仕立てているつもりが、素人作家の思惑通りに進行しない所に匠と面白さ感じます。エンターテイメントですね!

  • 修一くん、好きだなぁ

  •  三島由紀夫だということ、そしてタイトルと章立ての作りに惹かれて購入した。

     登場人物の心の機微が良く描かれていて、そして読みやすかった。三島由紀夫というと、ついついそのネームバリューに壁を作ってしまったり、かまえて望んでしまったりするものなのだが、これが意外に読みやすい。『金閣寺』の時はこうはいかなかったが、内容も人の心模様もすんなり入ってくるのである。三島由紀夫が亡くなってから既に30年以上の時を経ているのであるが、不思議と古い感じがしない。確かに時代設定は昔なのであるが、男女の恋愛の仕方やそれを小説に仕立て上げようとする大島十之助という作家を描く三島由紀夫本人という作りや、1人称や3人称の章立てで展開される本作品は、何かこう常に現代的であるような気がする。言葉の響き自体は少々古めかしく感じられるようなところもあるかもしれないが、「モダン」という表現がしっくり来るのである。

     この作品は映像化されているのであろうか、修一と美代の疾走シーンなんかは読みながらに目に浮かぶものがあり、腕の良い監督であればかなり見ごたえのあるシーンが撮れるのではなかろうか。なんともはや「モダン」な作家、三島由紀夫である。現代に生きていたとしたら、さらに面白いものを書いていたのであろうと。

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著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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