- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041212172
感想・レビュー・書評
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1962年に「婦人倶楽部」に連載。三島由紀夫は円熟期の37歳。この小説では客観体の叙述を軸としながら、所々に登場人物たちの1人称体の語りが配されており、その意味では幾分実験的な試みではあるのだが、残念ながらそれは必ずしも成功しているとも言い難い。諏訪湖畔で細々と漁業に従事する青年、修一を主人公に設定した点では『潮騒』に似ていなくもないが、彼の恋の相手はモダンなカメラ工場に勤める美代である。この二人の恋の行方が、アマチュア作家大島の作中作『愛の疾走』と並行して描かれてゆく。この点でも実験的ではあるのだが…。
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三島由紀夫と言えば、硬派というイメージしかなかったのですが、本作はそういうイメージを払拭する作品です。小説の中に登場する素人作家が、若い男女に「愛の疾走」を仕立てているつもりが、素人作家の思惑通りに進行しない所に匠と面白さ感じます。エンターテイメントですね!
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三島由紀夫だということ、そしてタイトルと章立ての作りに惹かれて購入した。
登場人物の心の機微が良く描かれていて、そして読みやすかった。三島由紀夫というと、ついついそのネームバリューに壁を作ってしまったり、かまえて望んでしまったりするものなのだが、これが意外に読みやすい。『金閣寺』の時はこうはいかなかったが、内容も人の心模様もすんなり入ってくるのである。三島由紀夫が亡くなってから既に30年以上の時を経ているのであるが、不思議と古い感じがしない。確かに時代設定は昔なのであるが、男女の恋愛の仕方やそれを小説に仕立て上げようとする大島十之助という作家を描く三島由紀夫本人という作りや、1人称や3人称の章立てで展開される本作品は、何かこう常に現代的であるような気がする。言葉の響き自体は少々古めかしく感じられるようなところもあるかもしれないが、「モダン」という表現がしっくり来るのである。
この作品は映像化されているのであろうか、修一と美代の疾走シーンなんかは読みながらに目に浮かぶものがあり、腕の良い監督であればかなり見ごたえのあるシーンが撮れるのではなかろうか。なんともはや「モダン」な作家、三島由紀夫である。現代に生きていたとしたら、さらに面白いものを書いていたのであろうと。 -
借本。
最初戸惑いを感じたけど、なかなか面白い本でした。
重たい本を書く人だとばかり思ってたけど、違うんですね~。 -
小説の登場人物:作者=人:神様(∵作者は登場人物を好きに操れる)という図式を使って三島由紀夫が遊んでいる話。と色んなとこに書いてあるように、ほくそ笑みながら楽しく書いたんだろなみたいな文章。軽やか。
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三島作品初めて読破ですが、
もっと駆け引きのあるものなのかと
勝手に期待していたので、あてが外れて残念でした。 -
三島氏曰くの「エンターテイメント小説」だと思います。
凄く読み易いです。
でもその中にも、独特の「残酷さ」を感じます。 -
ザ恋愛小説。
金閣寺とか仮面の告白が苦手な人にはオススメかもしれない。
個人的にはレター教室みたいにポップに書くか、とことん美しい表現を追求するかどっちかにしてほしかったなあ。 -
これからは角川が復刊している三島小説はゲラゲラ小説と名付けたいくらい笑えます。うん。