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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784041216194
みんなの感想まとめ
孤独や寂しさを抱える中年男が、渡り鳥の声に心を寄せながら描かれる物語は、深い感情の機微を見事に表現しています。個人病院の院長である彼は、美しい妻と社会的地位を持ちながらも、心の奥底で疎外感を感じていま...
感想・レビュー・書評
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個人病院の院長という社会的地位と美しい妻を持ちながら、仕事も妻も疎い渡り鳥の声の録音という趣味に逃げ込む中年男の孤独。その心の寂寥さを、千葉の干潟や伊豆、そして最果ての下北半島の空を飛んでいく渡り鳥たちの鳴き声に準える描写が沁みる。そして彼に引きずられるように、彼の友人である婦人雑誌の編集長の男、その部下の若い男と女、彼の妻たちの心に、寂莫とした思いが静かに、やがて抑えがきかないほどの強さになって生まれ膨れ上がっていく。週刊誌に連載された大衆小説ながら、こういう繊細な感情の機微を表現しているのはさすが文豪と名の残る作家だけのことはあるなぁと思う。男たちが心の居たたまれなさから逃げて逃げてやってきたどん詰まり、冬の津軽海峡を望む温泉の湯船に沈み深々と嘆息する場面は、温泉に浸かるという安息の行為の究極かも。舞台となった下風呂温泉はこの一作品によって永遠に名を留めるのだろう。自分が生まれる前の昭和32年頃の東京が主な舞台だが、巻頭の編集室や喫茶店やナイター(あえてナイトゲームとは言わない)などでの彼ら彼女らの交わす会話だけで、子どもながらにかすかに記憶のある昭和のあの頃の空気が蘇ってきたのが驚きだった。それだけ描写が素晴らしいのだろうが、会話というのは人と人の距離感を如実に反映しているものであり、人と人の間のとりかたは、その時代のまさに人と人との間=人間の空気感そのものなのだろう。
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下北半島への旅行を計画するにあたり下北半島の下風呂温泉が舞台になった小説があることを知り、本書を手に取った。
会話の口調や価値観に現代との違いはあるものの、登場人物の松村や宏子、杉原らの小気味よい会話は面白く、昭和の活気を感じた。
作者の井上靖は執筆にあたり実際に下北の地を訪れたそうで、家が埋もれそうなほどの深い雪、硫黄の香り漂う温泉など冬の下北半島が目に浮かぶようだった。
旅行は夏なので作者や登場人物達が目にした冬景色を見ることはできないが、同じ地に行けることが嬉しく旅行がより楽しみになった。
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