化石 (角川文庫クラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (759ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041216293

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  •  がんで余命一年の宣告を受け、死を覚悟し、心の中に生じた”死の同伴者”との語らいを続けてきた一鬼太治平。しかし、思いもかげず、手術によって、目の前にあった死が遠のいていった。

     -私に、一年の健康な寿命が許されるとしたら。
    そう前置きして、須波耕太は言ったのである。いつも身辺が清潔である生き方をしたいですね。他人のことを、もっと考える生き方をしたいですね。ひとを押しのけて、自分がのしあがろうとするのは厭ですね。金、金、金と、金を追いかけるのも厭ですね。少しでも、えらくなろうと、あくせくするのも厭ですね。鳥の声を聞いて、ああ、鳥が鳴いていると思い、花が咲いているのを見て、ああ、花が咲いていると思う、そんな生き方がいいですね。
     自分には、それができると一鬼は思った。確かに、自分にはそれができる。須波耕太が死の床で語った夢を、自分は生きた人間としてすることができるのである。

     「化石」を読み終え、さすが、井上靖だと思った。主人公・一鬼太治平の死から生へ、絶望から希望への転換劇は、作者自身の体験であり、井上靖自身の深い心的動機があって書かれた作品であることを知った。

  • <再読>先日のMr.サンデーでの竹田圭吾氏の追悼VTRを見ていたときに、竹田氏本人が「癌になったから終わり、ではなくて、いつもとちょっと違う日常が始まるだけ。向かい合い、なだめすかしながら付き合っていく感じ」みたいなことを言っていた映像が流れているのを見て、思いっきり『化石』の世界観だなあと感じて久しぶりに読み返してみた。竹田氏もこんな風に対話を繰り返しながら、毎日を過ごしていたのだろうか。竹田氏の考え方が好きだった自分からすると、できることなら主人公の一鬼と同じように癌から生還してほしかったとつくづく思う。

  • 旅先で十二指腸ガンのために余命1年と宣告された中年実業家の一鬼。死という同伴者とともに残りの命を歩いていく。

    こんなにも達観できるものなのかしら。悩んで悩んで諦めてそれでも生きていく。

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著者プロフィール

井上靖
一九〇七(明治四十)年、北海道生まれ。静岡県に育つ。京都帝国大学哲学科を卒業後、毎日新聞社に入社。五〇年「闘牛」で芥川賞を受賞し、五一年に退社、作家生活に入る。五八年『天平の甍』で芸術選奨文部大臣賞、六〇年『敦煌』『楼蘭』で毎日芸術賞、六四年『風濤』で読売文学賞、六九年『おろしや国酔夢譚』で日本文学大賞、八二年『本覚坊遺文』で日本文学大賞、八九年『孔子』で野間文芸賞など、受賞作多数。その他の著作に、『あすなろ物語』『しろばんば』ほか自伝的小説、『風林火山』『淀どの日記』ほか歴史小説、『氷壁』ほか現代小説など。七六年、文化勲章を受章。六九年にはノーベル文学賞の候補となった。一九九一(平成三)年死去。

「2022年 『殺意 サスペンス小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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