星と祭 (角川文庫 い 5-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041216323

感想・レビュー・書評

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  • 17歳の娘を不慮の事故で失った男の、彼なりの弔いの境地に至るまでの8年にも及んだ物語です。

    遺体が見つからないまま琵琶湖の底のどこかに眠り続ける娘と架空の対話を重ねて7年の時を過ごして8年目、ふとした縁から娘と共に事故にあって死んだ青年の父と2人で、土地の人々に慈しまれながら湖を守るように長い年月佇み続けてきた湖畔の十一面観音像巡りをし、ヒマラヤで月を眺めて生死を超越した永劫を感じ、春の夜の琵琶湖の上でようやく長い長い殯(もがり)に終止符を打ち、彼なりの形で娘の葬儀を終えます。

    遺族である父親2人のもがきや哀しみ、美しい十一面観音たち、厳しい環境の中で誰かのために祈り続けながら生きるヒマラヤの人々などが、静謐で淡々とした言葉で丁寧かつ濃密に描かれています。

    生者と死者の関係の築き方は人それぞれであり、私はこの主人公がしたようには死別した家族を思い弔うことはしないだろうけど、多分、模索の仕方を求めて今後10年位の周期で読みかえすようになるだろうな、と思った作品です。

  • 滋賀を舞台とした小説で一番好きな本は何かと問われれば、迷わずこの本をあげよう。17年前、琵琶湖で娘を失った架山。遺体はあがらないまま、架山にとって彼女は永遠に「生と死」のはざまにいる。いつしか架山は、十一面観音の不思議な安らぎに魅了され、琵琶湖の周りにある古寺を巡り始める・・・という内容だが、その皎々たる満月の光が、琵琶湖の面に照り渡る様や、それぞれその村の娘の面差しを映したような観音様の美しさが、文中に出てくる「永劫」「殯」といった言葉とともに、静かな情景を描き出す。

  • 仏像をめぐる小説ということで、以前購入していたもの。無性に読みたくなって読んでみると、舞台が琵琶湖だった。魂が琵琶湖を求めていたのか(?)。

    会社の休み時間に読み始めましたが、30頁もたたないうちに、目に涙がうるうるたまってしまって、、、大変でした。全編を通して特に「泣かせる演出」があるわけでもないのに、いろんなところでうるうる来たのは、井上靖の文章の巧さなのか。
    物語は淡々と進み、ヒマラヤに行ったり、観音様を見たり、琵琶湖で月見をしたり、その間にいつのまにか訪れている救いに、読後感は最高。

    難しい漢字がたくさん出てくるわけでも、描写が特別美しいわけでもないのに、悲しい場面はとても悲しく、綺麗な場面はとても綺麗に、残酷な場面はとても残酷に、切ない場面はとても切なく書き上げるのが、この井上靖という人で、不思議なことに読み出したら途中でやめることができないパワーがあって、固い内容や長い文章にもかかわらず、すぐに読めてしまう。谷崎や三島もいいけれど、井上靖は私の中では「小説家中の小説家」という位置づけで、私は好きです。

    • LUNAさん
      だいぶ前に読んだので詳細は忘れてしまいましたが、「星と祭」に祈るというようなイメージがあります。
      だいぶ前に読んだので詳細は忘れてしまいましたが、「星と祭」に祈るというようなイメージがあります。
      2010/06/10
  • 絶版になっていますが、非常に素晴らしい作品です。復刊プロジェクトもあるようなので応援したいです。

  •  今年一番に読み終えた本。
     かなり厚手の小説で、図書館で借りたはいいが、期限内に読めるかな???と思っていました。
     が、結果的にはあれよあれよというまに、3日ぐらいで読んでしまいました。

     17歳の娘を琵琶湖のボートの転覆事故で失った、中年の主人公、架山。
     彼が8年の歳月をかけ、琵琶湖の十一面観音を巡り、ヒマラヤの満月を眺める旅路の中で少しづつ娘の死を受け入れていく様子をつづります。

     琵琶湖の十一面観音は前から興味があって、去年も3体ほど見に行きました。
     井上靖は非常に端正な文体が好きでした。
     井上靖は主人公はいつも、なにかしら弱さを抱えています。それと必死に格闘する様子を、一見淡々とした、しかし、しっかり彼らの内面を見据えた淡麗な文体で綴っていきます。
     といっても、読んだのは、「敦煌」と「天平の甍」くらいですが・・・
     そんな井上靖が琵琶湖に縁のある十一面観音の話を書いていると知って、読みたくなったので借りました。
     これが書かれたのは私が生まれるより前のようですが、全然古びず名作とはこういうものか、と感動しました。

  • 琵琶湖が舞台、なので気になって読んだ。ストーリー自体はちょっと重くてあまり入り込めなかったけれど、十一面観音の魅力は私も実感してみたい。

  • 琵琶湖と十一面観音。そしてヒマラヤでの観月。僕をネパールへ誘った本。

  • 大津などを舞台とした作品です。

  • 7年前に湖での事故で娘を亡くした架山。その悲しみをいやすべくヒマラヤの月を見、同じく息子を亡くした父親と共に琵琶湖のほとりの古寺へ十一面観音巡りをする。

    それぞれ1人一人の癒し方があるんだよね。ヒマラヤに行ってみたいと思ってしまいました。十一面観音ってどういうのなんだろうか。

  • 娘を亡くした父親が、何度も事故現場である琵琶湖へ足を運び、娘と一緒に亡くなった男性の父親と湖北の観音様をお参りする。

    男性の父親の信仰心が哀しい。

    信仰は人によって習慣であり、救いにもなる。

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著者プロフィール

井上靖
一九〇七(明治四十)年、北海道生まれ。静岡県に育つ。京都帝国大学哲学科を卒業後、毎日新聞社に入社。五〇年「闘牛」で芥川賞を受賞し、五一年に退社、作家生活に入る。五八年『天平の甍』で芸術選奨文部大臣賞、六〇年『敦煌』『楼蘭』で毎日芸術賞、六四年『風濤』で読売文学賞、六九年『おろしや国酔夢譚』で日本文学大賞、八二年『本覚坊遺文』で日本文学大賞、八九年『孔子』で野間文芸賞など、受賞作多数。その他の著作に、『あすなろ物語』『しろばんば』ほか自伝的小説、『風林火山』『淀どの日記』ほか歴史小説、『氷壁』ほか現代小説など。七六年、文化勲章を受章。六九年にはノーベル文学賞の候補となった。一九九一(平成三)年死去。

「2022年 『殺意 サスペンス小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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