- 角川書店 (1994年12月2日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784041227015
作品紹介・あらすじ
史実に残らない小倉在住時代の森鴎外の足跡を、歳月をかけひたむきに調査する田上とその母の苦難。芥川賞受賞の表題作の他、「父系の指」「菊枕」「笛壺」「石の骨」「断碑」の、代表作計6編を収録。
みんなの感想まとめ
人間の孤独や信念を深く掘り下げた作品で、主人公たちがそれぞれの夢中な世界に没頭しながらも、周囲からの理解や評価を得られない様子が描かれています。特に、田上耕作という障害を抱えた男が、森鴎外の小倉滞在時...
感想・レビュー・書評
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まだ狭い世界の、松本清張。 「或る「小倉日記」伝」
松本清張さんの本を読む際に、プロフィール欄に必ず書いてある本。
この作品で、芥川賞を受賞されたからですね。
読んでみると、文章に関しては、もう松本清張さんだな、と
思うのですが、世界観が今まで読んできた作品に比べて狭いですね。
登場人物の数だけでなく、独善的な主人公の意識がメインになって
短編が終わっていくからでしょうか。
自分の信念にまっすぐに、夢中になって、でも認められない、
報われないといった人の話が5つ6つ続くのですが、
そんな主人公の独善に、周囲の嘲笑に同調する際に
「はっ」とすることはありました。
自分の言動、行動に主人公と等しいものはないか?
独善的な振る舞いはないのか?
こういったところに、本の素晴らしさはありますね。
生意気な若手にさりげなく薦めてみてはいかがでしょうか。
松本清張氏の作家人生の中でかなり初期の作品ですから、
ここから数々の著作を経て、社会的な作品が生まれていくんですね。
次の本も読み始め、それが20年以上後に発刊されたものですので、
時期による違いも楽しめたらと思います。 -
松本清張の小説とはいえ、事件や時刻表が出てくるわけではない。
しかしこの初期の掌編にこそ、後に続く不朽の名作『点と線』の
老刑事の捜査への執念や、『砂の器』の
犯罪者の不遇な身の上が生む悲劇など、
氏の推理小説の原点を垣間見ることができる。
森鴎外の小倉滞在時の日記のゆくえを、長い歳月をかけて追いかけた、
田上耕作という男の話である。
彼は生まれながらにして歩行と言語に重い障害がある。
不自由な身体で差別にあい、孤独に押しつぶされそうになりながらも
小倉日記のゆくえを探して東奔西走する。
「小倉日記」は現存するのだろうか?
彼の調査は価値のあるものなのか?
最後の一文にせつないリアルがこもる。
再読。昭和27年芥川賞受賞作。 -
表題作『或る「小倉日記」伝』、いつか読んでみたいと思っていた。障害があり、周りから疎んじられ、でも、一生を捧げられることを見つけて、満足な気持ちで最期を迎える。でもその後の数行に、せつなくなる。
他の話の主人公は、みな、似たような感じで、自分の信念というか熱中するものがあり、それに夢中になるあまり、周りが見えなくなり、やはり疎んじられ。(人間誰しもが持っているいやな部分でもあるような気がする。そして、体制に逆らえず、逆らう気もなく流される周りの人たち、たとえその主張が間違っていたとしても)
結局、はたから見たら哀れに感じるが、彼ら自身は幸せだったのかもしれない。 -
芥川賞受賞の代表作を含む短編集。彼特有の人間の嫌なところをうまく描くというスタイル、それが静かに燃えている感じ。知的で研究熱心な主人公、でも障害のある見た目では社会が簡単に受け入れない。誰もが共感できる人間関係のもつれと絶望感。さすが。
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昔の人の立身出世に向ける気概がすさまじかった。
当時の時代感とそれに向けた盲目的な努力に驚いた。 -
短編集だが、全体を通して暗い雰囲気だった。
ある小倉日記伝は障害を持ちながら鷗外の生前の足跡を探すことに希望を抱く青年と母との苦しい生活が胸を痛めた。
他の短編は主人公の性格に一癖あり、努力はするが報われないで終わるパターンが続き、読後は重い感じがする。
実在の人物をモデルにしながら、このように脚色されてはよい気はしないのではと思ってしまう。 -
全体的に、才能はあれど、境遇の不備や人間性の問題などで評価されないまたは没後に評価された人たちの話だった。
著者自身が民俗学をやっていることもあって、民俗学や俳句など日本の文化研究と芸術活動がおおく、また専門を極めた人にたまにいる人間性の登場人物が出てきて楽しかった。少し昔の文章なこともあって、読むのは大変だったが、心の機微や情景など、丁寧な描写が多くて読後感がよかった。
当時の男女観や金銭感覚など、文化的方面でも興味深い描写が多かった。小中高の教員でも、研究できたのはとてもいいと思った。 -
これとは違うのだけどバーコードの上から図書館のシールが貼られていて読み込めないから仕方なく。
父系の指
菊枕
笛壺
石の骨
断碑
が収録されている。
学問(あるいは趣味)に打ち込み過ぎて周囲を顧みない人たち。
断碑の途中で飽きた。 -
初期の作品。
女性が虐げられていた時代という印象。
良くも悪くも男はとにかく勝手気ままだ。
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4
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松本清張氏初期の短編集。大衆向け、推理小説のイメージが強い著者だったのでいい意味で驚いた。
切ないやるせない結末が多い。人は皆孤独と向き合ってその人生の歩みを進めていく。だが自分次第でいかようにもできることを自戒すべきだ。 -
表題作は昭和27年度の芥川賞を受賞
純文学にカテゴライズされ、芸術的な評価を受けたものだが
今にしてみれば「天城越え」の原型的作品であり
社会派ミステリーの嚆矢として、日本のホワイダニット…
高村薫や天童荒太、宮部みゆきあたりまで影響を及ぼしていることは
顧みられるべきだろう
どんなつまらない人間にも人生の物語がある
その点を掬い上げようとする方向性は、自然主義~プロレタリアに続く
日本近代文学の正統とも呼べるものだ
まあ、「市民ケーン」の焼き直しと言われればそれまでだが
その他には
経済事情などで進学をあきらめるしかなかった人々の
それでもなお学問への情熱たちきれず
必死に努力を重ねはするが
結局はその情熱が仇となって、同学者に恐れられ嫉妬され
疎外されて偏屈になり
誰にも理解されぬまま孤独に朽ちてゆく姿を書いた
そんなような短編ばかり集めている
低学歴を補うため渡仏して、おのれに箔をつけようともくろむ
在野研究者のありようは
あるいは、「破戒」や「新生」に書かれた藤村の独善を
非難するものなのかもしれない -
敗者の物語。
収められている短編はそのような企画意図で集められたものと思われる。
どれも、意欲と才能ある者が貧しさや経歴の不備ゆえに辛酸をなめる孤独な物語。
主人公たちはみな地方から東京へ何らかのコンタクトをとる。最初は歓迎され、のちに反感を買い、疎まれ、自らの情熱に殉死するかのような最期を迎える。
物語の序盤に主人公たちが最初は歓迎され期待されるところは、清張の作家デビュー時と同じようなシチュエーションなのだ。
しかしながら今となっては清張は敗者ではない。この表題作のあと、超のつくベストセラーを量産して昭和の大人物となった。
それにしても、これほど同じ構図を持つ物語をいくつもつづったということは、清張にとってこの主題はよほど重要なものだったのだろう。怨念に近いものを感じた。いいものを読んだ。
特に表題作は美しい。「でんびんや」の悲しげな鈴の音の描写がとても効果的。 -
森鴎外・俳句・考古学・・といった対象に魅了された人々が、そのマニアならではの視野の狭さから、皆不幸のうちに死んでいくという短編集。報われない努力、屈折、欲求不満、悪意・・不条理や人の暗部は話のコクを出すために必須だが・・嫌なことでもあったのか。
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表題作などいくつかはうまく主人公に感情移入でき、面白く読めた。
しかし他の作品ーーまず「菊枕」のモデルが杉田久女であろうことは明白だが、それにしては創作が行きすぎている。例えば久女は戦後の食糧難が原因で腎臓を病み、亡くなっているが、「菊枕」のヒロイン“ぬい”は精神病院で亡くなったことになっている。病の別によって脚色しているのだとしたら拒否感を覚える。
その他モデルのはっきり解るものについて、同様の演出が見られている。しかもその人物の経歴などについてはかなり忠実に再現されているため、これがドキュメンタリーに準ずるものだと勘違いする人も多かろう。 -
芥川賞バンザイ。清張さん名前は有名なんだけど、読んだことなかったんだよなあ。おもしろかった。芥川賞芥川賞していました。
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「さん」と「君」、
なんたるシンプル且つ強烈なでっち上げ。底意地が悪い
(私の知る2人の顔と悪行を度々思い出さずにおれない短編集) -
芽がでても、花がひらかない。
強い思いがあれども、命は儚い。
著者プロフィール
松本清張の作品
