或る「小倉日記」伝 (角川文庫―リバイバルコレクション)

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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041227015

作品紹介・あらすじ

森鴎外の小倉在住時代の足跡を、十年の歳月をかけてひたすら調査する田上耕作とその母。はかばかしい成果は得られず、病、貧困に一層落ち込んでいく-「或る『小倉日記』伝」。自らの美貌と才気をもてあまし日々エキセントリックになる、ぬい。夫にも俳句にも見放され、死だけが彼女をむかえてくれた-「菊枕」。人間の孤独を主題にした、巨匠の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • まだ狭い世界の、松本清張。 「或る「小倉日記」伝」
    松本清張さんの本を読む際に、プロフィール欄に必ず書いてある本。
    この作品で、芥川賞を受賞されたからですね。

    読んでみると、文章に関しては、もう松本清張さんだな、と
    思うのですが、世界観が今まで読んできた作品に比べて狭いですね。
    登場人物の数だけでなく、独善的な主人公の意識がメインになって
    短編が終わっていくからでしょうか。

    自分の信念にまっすぐに、夢中になって、でも認められない、
    報われないといった人の話が5つ6つ続くのですが、
    そんな主人公の独善に、周囲の嘲笑に同調する際に
    「はっ」とすることはありました。
    自分の言動、行動に主人公と等しいものはないか?
    独善的な振る舞いはないのか?

    こういったところに、本の素晴らしさはありますね。
    生意気な若手にさりげなく薦めてみてはいかがでしょうか。

    松本清張氏の作家人生の中でかなり初期の作品ですから、
    ここから数々の著作を経て、社会的な作品が生まれていくんですね。
    次の本も読み始め、それが20年以上後に発刊されたものですので、
    時期による違いも楽しめたらと思います。

  • 松本清張の小説とはいえ、事件や時刻表が出てくるわけではない。
    しかしこの初期の掌編にこそ、後に続く不朽の名作『点と線』の
    老刑事の捜査への執念や、『砂の器』の
    犯罪者の不遇な身の上が生む悲劇など、
    氏の推理小説の原点を垣間見ることができる。

    森鴎外の小倉滞在時の日記のゆくえを、長い歳月をかけて追いかけた、
    田上耕作という男の話である。
    彼は生まれながらにして歩行と言語に重い障害がある。
    不自由な身体で差別にあい、孤独に押しつぶされそうになりながらも
    小倉日記のゆくえを探して東奔西走する。
    「小倉日記」は現存するのだろうか?
    彼の調査は価値のあるものなのか?
    最後の一文にせつないリアルがこもる。

    再読。昭和27年芥川賞受賞作。

  • 松本清張氏初期の短編集。大衆向け、推理小説のイメージが強い著者だったのでいい意味で驚いた。

    切ないやるせない結末が多い。人は皆孤独と向き合ってその人生の歩みを進めていく。だが自分次第でいかようにもできることを自戒すべきだ。

  • 表題作は昭和27年度の芥川賞を受賞
    純文学にカテゴライズされ、芸術的な評価を受けたものだが
    今にしてみれば「天城越え」の原型的作品であり
    社会派ミステリーの嚆矢として、日本のホワイダニット…
    高村薫や天童荒太、宮部みゆきあたりまで影響を及ぼしていることは
    顧みられるべきだろう
    どんなつまらない人間にも人生の物語がある
    その点を掬い上げようとする方向性は、自然主義~プロレタリアに続く
    日本近代文学の正統とも呼べるものだ
    まあ、「市民ケーン」の焼き直しと言われればそれまでだが

    その他には
    経済事情などで進学をあきらめるしかなかった人々の
    それでもなお学問への情熱たちきれず
    必死に努力を重ねはするが
    結局はその情熱が仇となって、同学者に恐れられ嫉妬され
    疎外されて偏屈になり
    誰にも理解されぬまま孤独に朽ちてゆく姿を書いた
    そんなような短編ばかり集めている
    低学歴を補うため渡仏して、おのれに箔をつけようともくろむ
    在野研究者のありようは
    あるいは、「破戒」や「新生」に書かれた藤村の独善を
    非難するものなのかもしれない

  • 敗者の物語。
    収められている短編はそのような企画意図で集められたものと思われる。
    どれも、意欲と才能ある者が貧しさや経歴の不備ゆえに辛酸をなめる孤独な物語。
    主人公たちはみな地方から東京へ何らかのコンタクトをとる。最初は歓迎され、のちに反感を買い、疎まれ、自らの情熱に殉死するかのような最期を迎える。
    物語の序盤に主人公たちが最初は歓迎され期待されるところは、清張の作家デビュー時と同じようなシチュエーションなのだ。
    しかしながら今となっては清張は敗者ではない。この表題作のあと、超のつくベストセラーを量産して昭和の大人物となった。
    それにしても、これほど同じ構図を持つ物語をいくつもつづったということは、清張にとってこの主題はよほど重要なものだったのだろう。怨念に近いものを感じた。いいものを読んだ。
    特に表題作は美しい。「でんびんや」の悲しげな鈴の音の描写がとても効果的。

  • 森鴎外・俳句・考古学・・といった対象に魅了された人々が、そのマニアならではの視野の狭さから、皆不幸のうちに死んでいくという短編集。報われない努力、屈折、欲求不満、悪意・・不条理や人の暗部は話のコクを出すために必須だが・・嫌なことでもあったのか。

  • 表題作などいくつかはうまく主人公に感情移入でき、面白く読めた。
    しかし他の作品ーーまず「菊枕」のモデルが杉田久女であろうことは明白だが、それにしては創作が行きすぎている。例えば久女は戦後の食糧難が原因で腎臓を病み、亡くなっているが、「菊枕」のヒロイン“ぬい”は精神病院で亡くなったことになっている。病の別によって脚色しているのだとしたら拒否感を覚える。
    その他モデルのはっきり解るものについて、同様の演出が見られている。しかもその人物の経歴などについてはかなり忠実に再現されているため、これがドキュメンタリーに準ずるものだと勘違いする人も多かろう。

  • 本書に収録された或る「小倉日記」伝については、
    当時、母親が持っていた文芸春秋の増刊号に掲載されていて、
    そこでたまたま出会った作品。24ページ程度の短い小説ですが、
    その時の印象が強くて、どうしても芥川賞はこの作品を基準に考えてしまう。

    森鷗外の失われた日記を探すという素朴な題材ながら、
    病気で苦しむ息子と、それを助ける母との関係に感動を覚える。

    [1952年、日本、268P、芥川賞]

  • 芥川賞バンザイ。清張さん名前は有名なんだけど、読んだことなかったんだよなあ。おもしろかった。芥川賞芥川賞していました。

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