聞かなかった場所 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041227572

作品紹介・あらすじ

役所勤めの浅井が、妻の死を知ったのは、出張先の宴会の席であった。外出中、心臓麻痺を起こし急死だったという。発作は、どこでどう起きたのか。義妹によって知らされた死に場所は、妻から一度も聞いたことがなかった地名であった-。死の真相を探るうちに、思わぬ運命に巻き込まれていった男の悲劇を描く復讐サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 小役人である浅井の妻が死ぬ。心臓麻痺で突然死ぬ。しかしその倒れた場所は、浅井が聞いた覚えもない場所であった。
    …という発端は、謎としてなんとも魅力的である。

    妻が何故そこにいたのか、を追う部分が、前半。分量的にも、全体のなかほど強あたりまで。
    そして、とある人物を追い詰めていこうとするのが後半。
    しかし、この前半と後半、トーンがまるで違うのだ。
    書いている時期に、時間的な断層があるのかと思うほど。

    結末に割かれるページは、意外と少ない。
    どんどん追い込んでいく割に、最後はあっさり。それも、無垢・善意によって切り返されるのが、ぴりりと小粒なスパイスになっていると言えるかもしれない。

    松本清張得意の断崖は出てこないけれど、列車は登場。
    なんとも小心な小ものや小役人を描く筆は闊達。

  • 読んだ後の、動悸の激しさがすごい。2-3時間は眠れなかった。心理描写がとても上手。最後50Pは、自分が犯人にでもなったような感覚にさせてくれる。
    松本清張さすが!!

  • とても高名な作家なのに、松本清張さんの作品を読むのはこれがはじめてのような気がします。ミステリードラマの筋書きみたいで、知らず知らずに避けていたようです。ズバズバと核心に迫るのではなくその辺りをうろうろしながら近づいていくようなじれったい描きかたは好き嫌いがあるでしょう。
    ちょっとしたきっかけで殺人を犯したした心弱き犯罪者の心理が、うんうんそうだろな、と思えるほど的確に描かれていました。松本清張さんの小説の終わりかたがいつもこんなかたちなのか、もう一冊、機会があればぜひ確かめてみたいです。

  • 再読。巧い・・。再読。傷ついた主人公の自尊心は妄執を生み、疑念にとり憑かれる。その執着には復讐者の憎しみ(狂気)ほどの苛烈な高まりはないが、そんなところはむしろ人物像(苦労人でもある役人)に現実味をあたえている。ゆっくり対象を追いつめる主人公の心理にひきこまれた。後半部の展開も冴え、運命の歯車のゆっくりと回転するさまが巧妙に描かれている。追われる立場に陥った犯罪者の慄き(怯え)を描いては著者の独擅場である。主人公は破局を避けようと画策するもことごとく裏目に出る。最後の犯罪が露呈する(面が割れる)滑稽な場面(顛末)は秀逸。

  • 普通の生活を送っていた人が、いとも簡単に罪人になれる、、、淡々と一定のテンションで書き綴られるからこそ、現実味を帯びて恐怖を感じました。
    これが、松本清張なんですね。
    (Kindle)

  • 女性は怖い。知らない間に。

  • 妻が突然の事故で亡くなった。
    行動範囲の狭かった妻の、亡くなった場所は
    夫の知らない場所だった。
    妻の行動に疑問を抱いた夫が捜査を始める。



    おもしろかった。ミイラ取りがミイラになるお話。
    なんとかして罪から逃れようとする様が
    息苦しいほどにリアルだった。

  • 図書館にて借りました。

    「妻が死んだ!」と聞かされたら、確かに最初は死んだという事実だけで頭がいっぱいになり「どこで?」なんて考えないだろうな。
    でも、この人=浅井は考えてしまったのが悲劇。

    「大人しく、淡白で、病気持ちの明るく幼い妻」見た目は空気のような存在になっていたとしても、それでも浅井は妻を愛していた。

    浮気相手=久保も夫持ちと付き合ってたんだから素直に謝ればよかったのに。

    小説全体に漂う、お役人特有の体質、考え方、気質感が後で思わぬ伏線となるラストにはびっくりでした!

  • 妻に死なれた男の辿る道。
    前半は妻の生前の行動を疑惑に思い追跡し探偵するのだが…

  • 主人公は農林省の役人。
    出張先の宴会中に妻の急死を知らせる電話がかかってくる。
    心臓に持病をもつ妻はとある町の化粧品店に入った所、急に倒れてそのまま亡くなったとのこと。

    その町に何故行ったのか。
    不審をもった主人公が私立探偵を雇い調べた所、妻にはその町に恋人がいたのではないかという疑惑がわいてくる。
    また、亡くなった妻は俳句をしており、その俳句の中に耳慣れない言葉が出てくることからもその疑惑は確信と変わる。
    また妻を助けてくれた化粧品店がその後、急に大きなホテルに改装された事から主人公は妻の不倫相手を突き止めるのだが・・・。

    これを読み終わって、犯行ってその人の性格、生き方が出るものだな~と思いました。
    また性格って仕事をしている人ならその職種によるところが多い。
    緻密にひとつひとつ守りを固めたつもりが、あまりに慎重にやりすぎたことが却って自分の首を絞めてしまう。
    役人のケチな性質が最後の最後にどんでん返しをくらう事になるとは・・・。
    読みやすくて中々面白いお話でした。

    また亡くなった奥さんが俳句をしていた事も「結社」「句会」などという言葉が親しみをもててよかった。
    作中の登場人物に自分と共通している所があるとぐっと興味を引かれます。
    それにしても、松本清張って俳句も作ってたのかな?
    もしそうじゃないなら、奥さんが作ったという二句の俳句が紹介されていたんですが、ちゃんと取り合わせの俳句を作ってるあたり、さすがに頭のキレる人だったんだな~と思います。

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著者プロフィール

●1909年、福岡県に生まれる。印刷工、新聞社社員を経て42歳で作家の道へ。「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。『点と線』『眼の壁』『砂の器』『ガラスの城』『黒革の手帖』など推理小説の第一人者として多くの作品を発表する一方、『日本の黒い霧』『昭和史発掘』などノンフィクション分野でも活躍。日本ジャーナリスト会議賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞、朝日賞など受賞多数。1992年死去

「2017年 『徳川家康 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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