小説帝銀事件 新装版 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 184
感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041227695

作品紹介・あらすじ

昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。捜査本部は旧陸軍関係者を疑うが、やがて画家・平沢の名が浮上、自白だけで死刑判決が下る。膨大な資料をもとに、占領期に起こった事件の背後に潜む謀略を考察し、清張史観の出発点となった記念碑的名作。文字が読みやすい新装版で登場。

感想・レビュー・書評

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  • たらればが頭をめぐる一冊。

    昭和史に残る謎多き「帝銀事件」。

    その事件を著者なりの考察で描いた作品。

    読み応えあり、かつ事件の経緯、詳細、時代背景を知ることができて良かった。

    もしもこの戦後の占領期の時代じゃなかったら、もしもこの犯人とされた平沢氏の性格が奇矯でなかったら…もっと決定的な証拠があれば、自白重点主義でなく証拠第一主義であれば…と、たらればがずっと頭をめぐる時間だった。

    人の記憶ほど曖昧で、怖いものはない。

    時の経過と問いかけ法でいくらでも変わり危険な証になり得ることをしみじみ感じた。

  • 戦後の米国占領下時代に起こった実際の事件。
    小説の中身の事はほぼ事実であろうし、松本清張は実際に
    平沢氏の釈放運動を行っている。

    当時の闇の部分が垣間見える事件ではあった。
    小説は平沢・検事・弁護士のすべての3方面での主観を
    記しているが、どれもが納得いくものであり、どれもが納得
    いかない部分もある。

    が、個人的な意見として、やはり平沢氏なる画家が、
    手早く薬品を、威厳持ちながら堂々と扱えるとも
    思えないというのが正直な感想。
    あくまで、松本清張氏の小説、及び他から仕入れた資料による、
    勝手な想像につきないが。

    死刑宣告されながらも、執行されずに、最後は病で亡くなった
    平沢氏が本当に無罪だとしたら、どんなに悔しいだろうか。


    国家が人を食い潰す。
    許されない事実だが、これもまた事実なのだと、思わざるえない1冊でした。

  • 昭和23年の大量毒殺事件を「小説」として発表しているのであくまでもフィクションという事か。軍部犯行説に動いていた捜査陣が平沢犯行説に傾いていく過程が描かれている。生存者がいるというところに被験者を絶滅させたとされる731部隊にしては手抜かりがある様に思える。
    平沢氏が芸術家は命より名を惜しむという考えだったにせよ金の出所がハッキリしなかったのは作中にあるように疑惑を晴らすのに障害であったといえる。
    生き残りの人が顔を見ても意見が割れた事から人間の観察力の薄弱さがよく分かった。

  • 実際にあった事件を題材にした小説。
    小説だけど、ほとんどノンフィクションのような形式。

    この事件は犯人が逮捕され死刑判決まで出ているが、松本清張は元731部隊の人が犯人と推理している。
    戦後、731部隊のノウハウが米軍に必要だったため、731部隊の隊員はGHQによって庇護された。
    そのことを公にしたくなかったため、捜査の手が731部隊に及ぶと、GHQが邪魔をした。
    と松本清張は推理を展開する。

    いずれも何の証拠もなく、あくまで想像に過ぎないと思うが、一理あると思う。
    ただし、冤罪なら誤認逮捕された人は、なぜ事件後、大金を持っていたのか。
    そして、そのお金の出どころをなぜ言わないのか。この点が理解できない。

  • 帝銀事件の被疑者として死刑判決を受けた平沢貞通の獄中から弁護士に書いた葉書を目にした事で読んでみた。平沢が犯人ならばいろいろと疑問に思うこともあれど極悪極まりないし、冤罪ならとんでもない事だとどちらにしろ怖くなった。作者は冤罪寄りで書いたようにも思うけどどうなんだろう。

  • やはり松本清張!凄いです。

  • ▼「小説帝銀事件」松本清張。初出1959年。角川文庫。2019年8月読了。

    ▼1948年に東京都豊島区の帝国銀行支店で、一般営業閉店後の時間に「東京都の防疫の者だ」と名乗る男性が「赤痢の予防薬を飲んで」と騙して銀行員たちに毒物を飲ませ12名を殺害、現金などを奪って逃走。これが「帝銀事件」。ちなみに帝国銀行というのは今の三井住友銀行の前身だそうです。

    ▼同年、画家の平沢さんという人が容疑者として逮捕され、自白します。ただその後「拷問に近い取り調べを受けたから。ほんとうはやっていない」と。無罪を訴える中で裁判が行われ、1955年に死刑が確定。同時代から色々と辻褄の合わないことや疑惑が語られいて、死刑確定4年後の1959年に松本清張さんがこの「小説帝銀事件」を発表。ただ、再審や再捜査ということにはならず、平沢さんはずっと刑務所で暮らし、死刑も執行されないまま、1987年に95歳で病没。今の段階で公式見解はともあれ、多くの人が「平沢さんは無実だったろう」と発言しています。だとすれば、およそ40年無実で獄中にいて、死んでしまったことになります。

    ▼どうやら、実際に起こったこととして。捜査員の皆さんは、別段、全く根拠もなく平沢さんをでっちあげた訳ではなさそうで、それなりに「犯人である可能性がある人」ではあったようです。ただ、いろいろと辻褄が合わない。常識で考えて筋が通らないところが多い。そして、平沢さんを調べる一方で「これは旧軍人関係の仕業ではなかろうか」という線でも捜査が動いていた、あるいは動こうとしていたそうです。ところがどうやら「上=GHQ」に阻まれて、その線の捜査は終了させられた・・・。ということだそう。

    ▼この時代の法律が、「とにかく自白を最重要視する」という考え方だったんだそうです。今は違います。それもあって、有罪判決になった。作者の松本清張さんは、「これは平沢さんの犯罪ではなくて、旧陸軍関係者の犯罪。ただ、その犯人はGHQにとって重要な人物だったから、平沢犯人説でまとめられてしまった」という説に則って、一応小説として書いています。

    ▼ただ、あからさまなフィクションではありません。ぶっちゃけ読み応えとしては「ほぼほぼノンフィクション」な本です。そして、オモシロイ。とにかく本としてオモシロイ。清水潔さんの「桶川ストーカー殺人事件」「殺人犯はそこにいる」を読んでいる気分に似ています。やめられない止まらない。

    ▼色んな情報、色んな反証が語られますが、「確かになあ」と思ったのは、12人を遅効性の特殊な毒薬で殺害するっていうのは、これまで人を殺したことも無い、従軍経験もない、医薬系のキャリアもない、画家のオッサンが単独で冷静沈着に行えるもんぢゃないよなあ・・・ということ。

    ▼あと全然本筋と関係ないですが、平沢さんは一部の収入源を頑として語らなかったそう。松本清張さんは、「恐らく、カネを稼ぐために裏でポルノ的な画を描いていた。一応それなりの画家だった本人としては、その不名誉は言いたくなかった」という仮説を立てています。なるほど。1948年だから、「ポルノな画」というのが商売になったんだなあ。今ではネットで動画がいくらでも無料で・・・画ぢゃあ、商売にならないだろうなあ。

  • P280

  • 戦後間もなくの混乱期の事件だけに、この結果は致し方ないのかな。日本人には基本的にお上のやることは間違いないとか、黙って従うべきだという考え方が未だにあるように感じる。

    おまけに、当時は旧刑事訴訟法。平沢氏はその法律の下の犠牲者と言って良いかもしれない。清張の筆致は非常に合理的で、平沢貞通の冤罪を強く印象づけてる。結局死刑が執行されなかったのも、当局が一抹の不安を抱えてた証拠だろう。

    本来ならば、恩赦でもなんでも釈放すべきだった。

  • 松本清張作品になかでは自分的に辛口批評

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著者プロフィール

松本清張
一九〇九年、福岡県小倉(現北九州市)に生まれる。五一年、《週刊朝日》主催の〈百万人の小説〉で「西郷札」が三等に入選。五三年「或る『小倉日記』伝」で第二八回芥川賞を受賞。五五年、短篇「張込み」で推理小説に進出し、五六年に作家専業となる。五八年に刊行した初の推理長篇『点と線』は大ベストセラーになり、一大推理小説ブームを引き起こす立役者のひとりとなった。七〇年『昭和史発掘』で第一八回菊池寛賞、九〇年朝日賞受賞。九二年死去。

「2022年 『松本清張推理評論集 1957-1988』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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