旅人―湯川秀樹自伝 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.61
  • (21)
  • (31)
  • (59)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 371
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041238011

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 淡々と綴られる自伝。
    詩情に満ちた静謐な空気。
    ほんのり京都の香りがする。

    ああ、物理がやりたい。

  • 科学者が語った自叙伝という形をなしているが、非常に読み応えのあるいい文章だ。自分の性格についてもうそ、偽りのない、簡素で鮮明な文章で語られている。湯川は偉大な科学者だが、一人の人間として悩みも素直に語り、生きる姿勢もありのままにつづられている。その文章に引き込まれる。
     言葉の力・・・すごい。どうしてあんなにも偉大なことを、ひけらかすことなく素直に朗々と記すことができるのだろうか。

  • 日本人初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士の回想録。2009年の角川文庫の夏の100冊に選ばれて、帯に森見登美彦氏の推薦文があったのを見て買ったものの、11年間読みきれずにいた。
    理系の学者でありながら文章力が非常に高い。就学前から漢籍の素読とはなんという英才教育だろう。
    回想は博士の生い立ちから27歳までの、博士曰く「いちずに勉強していた時代」のお話である。子どもの頃に湧いてきた興味とその興味を育てる環境。博士に物理学を修めるよう導く様々な出来事が必然のように思われた。そして専門分野を決めた後の、第一線に追い付き、さらに新たな発見を志す姿勢。世界的な偉業のはずなのに、良い意味で淡々と記されていた。森見氏が博士のことを「生まれついて孤独な雰囲気を持った人」と紹介した理由がわかった気がする。物理の内容は難しくてほとんど理解できなかったが、量子力学や相対性理論の入門書でも読んでみようかなと思うくらいには興味が湧いた。
    201127読了。

  • 科学道100冊 クラッシックス
    【所在】3F開架 
    【請求記号】289.1||YU
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/book/14475

  • 湯川秀樹の思いと孤独が少し理解でき、また共感することが出来た。

  • ノーベル賞を取った人だったような

  • (1991.08.23読了)(1991.04.15購入)
    湯川秀樹自伝
    内容紹介 amazon
    博士の業績同様、その人を知る者は少ないであろう。自ら綴る生い立ちの記。【孤独な我執の強い人間】と自身を語り、その心に去来する人生の空しさを淡々と説く行文は、深い瞑想的静謐を湛える。

  • 明治後期から昭和初期の京都・大阪の空気を追体験できる。
    当時の学生の青春に憧れてしまう一冊。

    ノーベル物理学賞受賞者である湯川博士の語り口は非常に柔らかく、常に暖かい目線で物事を捉えようとする氏の態度に、自分もそうありたいと思う。

    一般人にとって難解な量子論。
    氏が追い続けたテーマを、当時を振り返りながら、平易にかみ砕いていくので、違和感なく入り込める。

    知識の平原に立ち向かっていく湯川氏こそ、真の冒険家であろう。

    「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である。地図は探求の結果としてできるのである。目的地がどこにあるか、まだわからない。もちろん、目的地へ向かっての真直ぐな道など、できてはいない。目の前にあるのは、先人が切り開いた道だけである」

    「私もまた、孤独なる散歩者の一人であった」

    格好良すぎる…

  • 湯川秀樹が誕生する前、湯川氏の両親がどうやって知り合い結婚していったのかという経緯から湯川氏の青年期までを自身で回想しながら書いた作品。

    学問の入口が幼少期の祖父による論語のスパルタ教育で、周りの兄弟や同級生を寡黙に観察し、一番活躍できそうと判断し理論物理学にたどりついた内容が若い頃のエピソードを交えテンポよく書かれていた。


    余談だが将来の専攻する科を選ぶ際また線を引いた箇所やメモした部分を再読したいなとか思った。

  • 「ずいぶんまわり道をしたものだ」

    日本人初のノーベル物理学賞を受賞した物理学者の回想録。
    ドストエフスキーと近松を好み、
    習っていない方程式を、独学の解き方で紐解いてしまった数学の能力の高さを持つ彼が、物理学に目覚めたのはなぜなのか?
    机を、畳の目にあわせて置かなければ気のすまない几帳面さでもって
    地質学者の父親に「なにを考えているかわからんっ」と言われ続けてきた少年は、この世にその名をしっかりと刻んだ。

    母親のピンとはった背筋の良さも魅力的。
    すこし堅い文章なのでさらさらとは読めなかったが、文才は巧み。

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

理学博士。専門は理論物理学。京都大学名誉教授、大阪大学名誉教授。
1907年に地質学者小川琢治の三男として東京生まれ、その後、1歳で転居した京都市で育つ。23年に京都の第三高等学校理科甲類(16歳)、26年に京都帝国大学理学部物理学科に入学する。33年からは大阪帝国大学講師を兼任し、1934年に大阪帝国大学理学部専任講師となる(27歳)。同年に「素粒子の相互作用についてⅠ」(中間子論)を発表。日本数学物理学会の欧文誌に投稿し掲載されている。36年に同助教授となり39年までの教育と研究のなかで38年に「素粒子の相互作用についてⅠ」を主論文として大阪帝国大学より理学博士の学位を取得する(31歳)。1939年から京都帝国大学理学部教授となり、43年に文化勲章を受章。49年からコロンビア大学客員教授となりニューヨークに移る(42歳)。同1949年に、34年発表の業績「中間子論」により、日本人初のノーベル物理学賞を受賞。1953年京都大学基礎物理学研究所が設立され、所長となる(46歳)。1981年(74歳)没。『旅人―ある物理学者の回想』、『創造への飛躍』『物理講義』など著書多数。

「2021年 『湯川秀樹 量子力学序説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

湯川秀樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×