裸の王様・流亡記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041242223

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ
    「あのころブクログが欲しかった。ステイホーム対応、記憶頼みで昔の本をクイックレビュー」

    中高時代に読了。

    はっきり言って表題作の中身はまったく憶えていない。
    が、併禄されている「流亡記」のインパクトが忘れられない。

    古代中国の戦国の世、ささやかな城壁に囲まれた街は常に軍勢の襲撃にさらされている。その悲惨な日々は始皇帝による統一で終わりを迎えた、かのように見えたが、こんどはより強大な権力による圧政、「万里の長城」建設のための動員が始まる・・・

    始皇帝、そう、マンガ「キングダム」の英雄「秦王エイ政」のネガティブ後日談的な要素あり。

    もちろんベトナム戦争さなかの開高健の作品なので一種プロレタリア文学的な要素はあるし、著者自身も「必ずしも史実には基づかない」とはしているが、だからこそ迫りくるリアリティは否定し難い。

    「裸の王様」も読み直そうかな・・・

  • 2020年4月7日読了。第38回芥川賞受賞の表題作含む4篇を収録。この人の作品を初めて読んだが、元サントリー社員、という経歴から明るく闊達な作風を想像していたが全く予想を裏切られた、汗と垢と血が何層にも塗り固められた臭いが濃厚にむせ返ってくるような、そんな風景を筆者が傍に立って冷静に観察し続けるような、圧倒的な文章力を感じた…。表題作のテーマ、子どもの教育と大人の都合、は子どもがいる身としては他人事でない。「パニック」「流亡記」は筆者がもっとスペクタクルに関心を振っていれば結構な娯楽映画になりそうな作品だが、「週末の気だるさを予感しながらの狂騒」の描き方がすごい。いやはや世の中にはすごい文学作品というものがたくさんあるものだ。

  • 物事を見抜いて言葉にするプロ。

  • 中学生の頃読んでラストで泣いた。自分と重なるところがあったので。

  • 出逢いは、高校時代に受けた模試。
    問題文に「裸の王様」が使用されていて、全文読みたくて購入。
    後に、「巨人と玩具」が読みたくて、新潮文庫の『パニック・裸の王様』も購入。

    画塾の先生「ぼく」と自我を封鎖された子ども「太郎」のお話。
    先生との交流によって少しずつ自我を解放させていく太郎。そして、太郎の解放を通して、自らの抑圧やジレンマを解消していく先生。

    読んでいくうちに、作者の純真でない善意や野心に対する怒り、表面的なステータスに対する嫌悪感や社会(組織)に対する嘲りを強く感じるが、実は、どこかでそういうものを甘受し、観念してしまう行為(個人)に対して憤っているのではないか?と勝手に思っている。

    ラストシーンでは、シニカルな部分が色濃く出てしまったため悲観的なイメージも強いが、本当は「再生する力や回復する力は、人のどこかにきちんと具わっている。だから、大丈夫。」と言ってくれているようで嬉しい。

  • 畳み掛けるような描写と高い文章力に圧倒される。

著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ほかに「日本三文オペラ」「ロビンソンの末裔」など。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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