非色 (角川文庫 緑 262-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041262023

感想・レビュー・書評

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  • 最近の日本はちょっとおかしい。
    ネトウヨの存在やヘイトスピーチ問題。
    日韓共同開催のワールドカップや韓流ブームはまだ記憶に新しいのに、ここにきて急激に方向性が変わってきた。
    なぜだろうかと考える。
    そこにあるのは自分たちの優位性が脅かされる恐怖ではないか。
    日本経済の低迷、未来への不安。その鬱積が歪んだ形になって噴出してきている。
    他者に恐怖を感じた時に排斥しようと考えるのが人間というもの。
    これが差別だ。

    こんな時代にこそ読んでほしいこの本。
    戦争花嫁として黒人と結婚した笑子の物語だ。
    黒人への差別、プエルトリコ人への差別、白人の中での差別。
    さらに黒人同士での差別。
    テーマは人種差別だけにとどまらない。
    階級、職業、宗教。差別はいたるところに存在する。
    問題は根深い。

    ちょうど50年前に発表されたこの作品。
    時代背景こそ違えど、ここに示された問題提起は現代社会にも通じる。
    逆を返せば、半世紀もの間私達は何をしてきたんだろう。
    何を得て何を失ってきたんだろうか。
    ハーフタレントがもてはやされる一方で、何が起こっているんだろうか。
    今こそ読むべき本だと思う。

    重苦しいテーマを扱っているが、全く難しい本ではないからご安心を。
    有吉佐和子の紡ぎ出す軽快なテンポで書かれた魅力的な文章にかかると、女の一代記といったところでまるで朝ドラを見ているようだった。
    純粋に面白い。
    まだ有吉を読むのはこれで二作目だけれど、当代きっての女流作家だったのは間違いない。
    この作品を発表した時に30代前半だったとは驚くばかりだ。
    今、ここまですごい女流作家っているだろうか。
    いやはや、脱帽である。

    最後に・・・。
    ブクログ仲間さんのお勧めでこの本を読みました。
    素敵な本に出会えたことに感謝!
    ありがとう♪

    • vilureefさん
      夢で逢えたら…さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      読みましたよ〜。
      図書館で借りたものの、本の古さと印字の見づらさ...
      夢で逢えたら…さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      読みましたよ〜。
      図書館で借りたものの、本の古さと印字の見づらさにたじろぎましたが心配ご無用でしたo(^▽^)o
      読み出したら一気読みです。

      有吉さん、どう考えても大衆小説家だと思うんですよね・・・。
      もちろんいい意味で。
      今で言ったら高村薫さんとか宮部さんのようにエンタメ性も高くて社会派でもある作家じゃないかなと。
      純文学にこだわっていたらしいでが・・・。
      時代性かな。

      恍惚の人、これも分厚いんですよね(^_^;)
      読み始めるのちょっと勇気がいります。
      夢で逢えたら…さんのレビュー楽しみにしてますね(^_-)
      2014/03/08
    • 夢で逢えたら...さん
      またまたお邪魔します。
      私も有吉さんは大衆小説家だと思いますよ。

      もしおカタイ文学作品だったら、これほどハマっていなかったと思います...
      またまたお邪魔します。
      私も有吉さんは大衆小説家だと思いますよ。

      もしおカタイ文学作品だったら、これほどハマっていなかったと思いますし、
      実際文学作品というものは、ほとんど読んだ事がありません(恥)

      有吉さんがお好きでしたら、昔の篠田節子さんなんかもお好きかもしれません。
      お二人とも世間の陰の部分に光を当てるのがお上手だなと思います。
      あと、一度読み出したら止められないストーリー運びの上手さ!(特に長編)
      私は「弥勒」や「ゴサインタン」、「おんなたちのジハード」が、どストライクでした。
      また機会があれば、ご一読下さい(^^)/
      2014/03/09
    • vilureefさん
      夢で逢えたら...さん、再訪大歓迎!

      篠田さん!!
      篠田さんは何冊も読んではいませんが、外れがないですよね~。
      話も巧いし、社会派...
      夢で逢えたら...さん、再訪大歓迎!

      篠田さん!!
      篠田さんは何冊も読んではいませんが、外れがないですよね~。
      話も巧いし、社会派でもありますよね。
      「おんなたちのジハード」面白かったです。
      それ以外は未読なのでいずれ読みたいな~♪
      私が一番はまったのは「逃避行」です。
      感情移入しまくりで、涙涙でした・・・。
      2014/03/10
  • 圧倒されました。
    日本は外国に比べると暮らす人種の数が多くないので、わたしは人種差別に正直ピンとこないところがありました。
    アメリカでは、白人でなければ全て下に見る、のではなく、その中でも明確に階級差がありました。黒人、プエルトリコ、イタリア系、ユダヤ人…日本人の戦争花嫁も差別は受けていました。
    自分も辛い、でも最低なあいつらよりまし…というのはどこの世界でもあると思います。わたしの中にもあるな、というのを見せつけられました。醜い…でも笑子が竹子に言われたように、差別なんてしてない風に優越感と哀れみを隠しつつ味方のように接する、というのはとても性格が悪いです。これはガーンと殴られたようでした。
    皆逞しい。笑子とその子供たちも、アメリカで強く生きていくだろうと思いました。
    職場の先輩が貸してくださった本です。未だ日本を出たことがないので、外国での生活経験のある先輩のお話を興味深く聞いています。

  • 敗戦後、黒人アメリカ兵と結婚し出産した主人公。
    日本人からの差別から逃げるように夫の住むアメリカへと向かうのだが、そのアメリカでも『ニグロの妻』として差別される笑子。

    久々の有吉作品だったのだけれど、これはグサグサ心に刺さる。
    とても大きな問題を扱っているのに、物凄く馴染み深く読み進められるのはさすが。
    解説を読んで納得。
    有吉佐和子さん本人も子供の頃に親の仕事で各国を転々としていたのだとか。

    差別問題もさる事ながら、笑子の逞しさ、生きていくことの力強さに感服いたしました。
    身体も精神も大きく変わる妊娠、出産を、右も左もわからない国で経験する。
    想像しただけで不安に押しつぶされそうになります。
    母は強し。女は強し。

  • 時代は終戦直後の日本。
    主人公の笑子は女学校を卒業後キャバレーのクローク係として働く。
    そこで知り合った黒人の男性と特に恋愛感情もないまま関係をもち結婚。
    そして二人の間には子供が生まれる。
    子供は大きくなるにつれ周りから奇異の目で見られるようになる。
    そんな中、笑子は帰国した夫を追って渡航する決意を固める。

    やがてアメリカに着いた笑子を待ち受けていたのは過酷な現実だった。
    住居はハーレム。
    黒人である夫の給料は生活できる金額ではなく、笑子は子供を抱えながらすぐにも働かなければならない。
    やがて船で知り合った三人の戦争花嫁と再会し、同じ職場で働く笑子だったが・・・。

    このお話では分かりやすいように人種差別を取り上げてますが、世の中のほかにも存在する、ありとあらゆる差別について書かれた本です。
    学歴の差、美醜の差、育ち、出身・・・。
    人はある面では誰かに優れててもある面では劣る。
    そしてその人より優れている面を見て安心したり、または相手を差別することによって自分の価値が高まったような気になる。

    私がこの本の中で特に心に響いたのは主人公である笑子さんが、自分と同じような戦争花嫁が働くきつい労働条件の職場よりも、裕福な日本人の家庭に住み込みの家政婦として働くほうがつらいという言葉です。
    笑子さんは、その家の奥さんからブローチをプレゼントされます。
    しかし「いりません!」と拒絶します。
    そして気づくのです。
    自分も学生の頃、同じように差別されていた女の子と仲よくしようとしたことがある。
    けれど、その子は決して心を開かなかったことを。

    差別する人、人より優位に立ってると錯覚している人は、その人に何か「してあげる」という気持ちがどこか態度に出ます。
    それを差別される人は絶対に感じとります。
    なぜなら差別される側は長くそういう対応を受けてきたら人のどういう態度が「お情け」か、心からの「思いやり」か感じることが出来るからです。

    誰が上とか下とか本来は無いんです。
    ただ人より上にいると思う人間は弱い人だというだけの話。
    必ずその気持ちは相手に伝わっています。

  • 人は差別しないと生きていけないのか?

    戦後の日本とアメリカでの人種差別問題に
    取り組んだ作品だが、人種のみならず、
    階級、学歴、出身など、あらゆる部分で
    「差別」が起こる現代にも共通する、
    人間が持つ偏見をみごとに描いています。

    差別に加え、お金の苦労、帰る故郷のない孤独感、
    過酷な労働、どんなに努力しても報われない日々・・・
    しかしその中でやがて、主人公は”色”が差別の原因では
    ないと気付きます。

    そして最後に主人公が選ぶ道に清々しさと力強さを覚えます。

  • 話が進むごとに主人公が強くなっていく姿に感銘を受けた。面白くて、一気に読んだ。自分が彼女の立場だったら、どのようにその立場を受け入れていくだろう。自分自身を重ねて、いろんなことを考えた作品だった。

  • 人は差別しないと生きていけないのか?

    戦後の日本とアメリカでの人種差別問題に
    取り組んだ作品だが、人種のみならず、
    階級、学歴、出身など、あらゆる部分で
    「差別」が起こる現代にも共通する、
    人間が持つ偏見をみごとに描いています。

    差別に加え、お金の苦労、帰る故郷のない孤独感、
    過酷な労働、どんなに努力しても報われない日々・・・
    しかしその中でやがて、主人公は”色”が差別の原因では
    ないと気付きます。

    そして最後に主人公が選ぶ道に清々しさと力強さを覚えます。

  • 「非色」は差別を正面から扱った本です。戦後の占領軍がいたときに知り合ったニグロと結婚した女性が主人公です。子どもを産んだ後、自分の親からも周りからも冷たい扱いを受け、ついに渡米します。
    そして、様々な出来事を経た後、主人公は気づくのです。色が差別の原因ではないと!
    ここまでの流れは圧巻です。同時にどうしてこんなことが起きるのか、起きたのかを悩まずにはいられません。

  • 初版が昭和45年、となっているのでかなり古い小説で、時代背景もかなり昔ではあるのだけれど、いろいろと考えさせられた作品です。

    戦争花嫁(ウォー・ブライド)として、黒人の夫を頼り、娘を連れてニューヨークに渡った笑子ではあるが、そこは貧しく、そして様々な差別が渦巻いていた……というストーリー。
    まぁかなり昔の作品なのでニグロという言葉が頻繁に出てきたり、バース・コントロールもあまり方法がなかったのでしょうか、結構頻繁に子供が出来てしまったり…という時代背景はあります。(今なら子供の数も多少はコントロールできるでしょうから)

    この狭い日本でさえも、差別がひっそりと存在しているのですから、人種の坩堝であるニューヨークならそれはもう様々な差別や階級分けがあるものだなぁと思ってしまいました。
    人が二人(自分含む)いれば、その個体識別のために既に小さな差別めいたものは生まれてくるのは自明の理なのかもしれません。

    そう思うと、差別、というのは
    「自分はあの人達とは上の階級だ」
    と思い、多少の優越感を得ることももちろんですが、
    「私はあの階級には属していない、こちら側だ」
    と自分の立ち位置を確認する作業でもあるのかもしれません。
    人が自分の存在とその位置を確認するために、哀しいかなときどき差別という行動が起きてしまうのかもしれません。

    もちろん差別はほめられた行為ではありませんが、人間が何人かいたら、多少なりとも差別めいたクラス分けというのは起きてしまうのではないでしょうか。
    差別をタブーとすることは出来ますが、全くなくすこと、というのはかなり難しいことだと思います。
    人間が誰でも持っている下品さ野卑さを全く無くすことができないように。
    (こう書くと、誤解されてしまうかもしれませんが、差別を肯定しているわけではありません。)

    差別に立ち向かうには、自分が確固としたものであること、地に足をしっかりとつけていること、ではないかと思います。
    笑子がラストで「私もニグロなのだから」と黒人社会で生きていく決意をし、明日はエンパイア・ステート・ビルに登ってみようと思うところは、まさにそれだと思いました。
    彼女は強いです。ラストを読みながら、笑子の家族に幸多からんことを祈ってしまいました。彼女なら、きっと幸せをつかむ、そんな終わり方なのも良かったと思います。

  • 何回も何回も読んだ本。戦後、黒人と結婚してニューヨークに行き、さまざまな困難を乗り越える主人公。 すごく強くなれます。国際結婚のつらさや、アメリカにおける日本人の置かれた立場。 何十年たっても、あまり変わっていないのだなあと思います。

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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