- 本 ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041267035
感想・レビュー・書評
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伊坂幸太郎のエッセー集『3652』。
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4101250294
そこで紹介されていた小説を何冊か読んだところ、どれも面白かったので、「これは金脈を掘り当てた」とばかりに、読みあさっています。
この小説もその一冊。
物語は昭和40年頃と思われる、九州北部のシーンから始まります。
ある事情で故郷を訪れた、中年の男。
記憶を頼りに帰った彼は、炭鉱の町だった故郷がすっかり、寂れてしまっていることに愕然とします。
何か手がかりがないものかと、別の集落に住む、旧友の元を訪れた主人公。
ひと気のない炭鉱の町の中でなぜか、人並みに近い暮らしをしているその集落。
旧友の話から、その集落が「スリ」を生業にしている人々の集まりだと知って・・・という始まり。
炭鉱が廃れ、生きる術を失った人たちが、苦しい生活を行く抜くために選んだのが、「他人からモノを盗む」という道。
スリ、そして万引きの技術だけでなく、故郷がばれないように、標準語の教育までして、住人の「生活力」を鍛える、集落のリーダー。
その活動は、集落の団結の力を活かして、さらに組織的な、大掛かりなものへと発展していきます。
「奇想天外な話だなあ」と思いながら読んだのですが、この時代に、同じような事件が実際にあったと知って、驚きました。
Amazon古書店で取り寄せた文庫版の奥付には、「初版昭和46年」と記されていました。
使われている言葉や表現には古めかさを感じますが、逆に現在からの振り返りではない分、当時の空気というものがリアルに伝わってくる描写だなと、感じました。
最近の小説に食傷気味な読者にとっては、逆に新鮮に感じる作品かもしれません。
このような時代の作品も網羅しているとは、さすが伊坂幸太郎ですね。
他のオススメ作品も、読んでいくことにします。
『夏の稲妻』キース・ピータースン
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4488267033
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著者プロフィール
結城昌治の作品





