白昼堂々 (角川文庫 緑 267-3)

  • KADOKAWA (1971年2月1日発売)
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感想 : 2
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  • 本 ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041267035

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂幸太郎のエッセー集『3652』。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4101250294

    そこで紹介されていた小説を何冊か読んだところ、どれも面白かったので、「これは金脈を掘り当てた」とばかりに、読みあさっています。
    この小説もその一冊。

    物語は昭和40年頃と思われる、九州北部のシーンから始まります。

    ある事情で故郷を訪れた、中年の男。
    記憶を頼りに帰った彼は、炭鉱の町だった故郷がすっかり、寂れてしまっていることに愕然とします。

    何か手がかりがないものかと、別の集落に住む、旧友の元を訪れた主人公。
    ひと気のない炭鉱の町の中でなぜか、人並みに近い暮らしをしているその集落。
    旧友の話から、その集落が「スリ」を生業にしている人々の集まりだと知って・・・という始まり。

    炭鉱が廃れ、生きる術を失った人たちが、苦しい生活を行く抜くために選んだのが、「他人からモノを盗む」という道。
    スリ、そして万引きの技術だけでなく、故郷がばれないように、標準語の教育までして、住人の「生活力」を鍛える、集落のリーダー。

    その活動は、集落の団結の力を活かして、さらに組織的な、大掛かりなものへと発展していきます。
    「奇想天外な話だなあ」と思いながら読んだのですが、この時代に、同じような事件が実際にあったと知って、驚きました。

    Amazon古書店で取り寄せた文庫版の奥付には、「初版昭和46年」と記されていました。
    使われている言葉や表現には古めかさを感じますが、逆に現在からの振り返りではない分、当時の空気というものがリアルに伝わってくる描写だなと、感じました。

    最近の小説に食傷気味な読者にとっては、逆に新鮮に感じる作品かもしれません。

    このような時代の作品も網羅しているとは、さすが伊坂幸太郎ですね。
    他のオススメ作品も、読んでいくことにします。
     
    『夏の稲妻』キース・ピータースン
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4488267033
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著者プロフィール

結城昌治

一九二七(昭和二)年、東京に生まれる。四九年、早稲田専門学校を卒業し、東京地検に勤務したが、結核が発病し三年間の療養生活を送った。五九年、短篇「寒中水泳」によって認められ、『ひげのある男たち』『ゴメスの名はゴメス』等を執筆し、ユニークな推理作家として注目された。七〇年、「中央公論」に連載した『軍旗はためく下に』で第六十三回直木賞を受賞。ほか『夜の終る時』『志ん生一代』など著作多数、「結城昌治作品集」(全八冊)がある。九六(平成八)年一月没。

「2020年 『軍旗はためく下に 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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