新選組血風録 新装版 (角川文庫 し 3-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041290071

作品紹介・あらすじ

勤皇か佐幕か、血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京都に、その治安維持を任務として組織された剣客集団、新選組。名刀の真贋を軸に近藤勇の不敗神話を描く「虎徹」、赤穂浪士討ち入り以来の屈折した心情に迫る「池田屋異聞」、悲恋に涙する剣士の素顔を綴る「沖田総司の恋」など、「誠」の旗印に参集した男たちの内面を通して、歴史小説の第一人者がその実像を浮き彫りにする。活字が大きく読みやすい新装版。

感想・レビュー・書評

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  • 有名な新選組。討幕、大政奉還辺りの時代のことはまだよく分かっていないのだが、新選組というのが気になり本を手に取った。

    新選組といっても、一人称してんから物語として書かれているのではなく、様々な視点から新選組というものの全体を描き出している。読んでいて新選組がどのような組織であるのか、また当時の時代の様相などを考えながら読むことができた。

  • 近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一などの新選組隊士たちの生き様を描いた15編の連作短編。実在した人物と、司馬遼太郎が描いた架空の人物とが絶妙に織り交ぜながら展開する本作。
    もっと早く手を伸ばせば良かった…!と後悔するほど面白かったです。

    幕末という戦乱の時代を無骨に、不器用なほどまっすぐに生きた男たち。信念を貫くために、各々の役割を実直に果たそうとする男たちの姿が映像とともに生き生きと蘇ります。人間味がある個性豊かな面々に、「もっと知りたい」と思える隊士と出会えるはずです。
    どれも甲乙付けがたいくらい好きな作品ばかりですが、新撰組初期の筆頭局長の死を描いた『芹沢鴨の暗殺』、男色を巡った隊内の騒動を描いた『前髪の惣三郎』、所帯を持ったことで士気を失った武士を描いた『胡沙笛を吹く武士』、切なく淡い恋心を描いた『沖田総司の恋』が特に印象的でした。

    司馬遼太郎から歴女になった人多いんだろうなぁ…分かる…。読めば読むほど歴史が、人物が好きになれます。血が通った本とはこうゆう本を指すのだと思います。繰り返し読みたい大切な一冊。

  • 燃えよ剣からの新選組血風録。
    面白かった!どのエピソードも好きだけど「海仙寺党異聞」が好き。

  • 【あらすじ】
    『竜馬がゆく』『燃えよ剣』の2作の長編小説が立て続けに発表された1962年(昭和37年)は、司馬遼太郎の目が「幕末」という動乱に向いていた年である。
    同年5月に連載が始まった本書は、その先駆けとなった作品だ。
    斎藤一、加納惣三郎、井上源三郎、沖田総司などの新選組隊士たちの生き様15編を、抑制の効いた筆致で描ききった連作短編集である。
    そこには、司馬が追い求めた「漢(おとこ)」の姿が息づいている。
    生きては戻れぬ死闘を前にしながら、ひょうひょうと振舞う篠原泰之進。
    好きな女のために新選組にもぐりこみ、惨殺される深町新作。
    池田屋事変で一番の活躍をしながらも、その運命にもてあそばれているような寂しさを漂わせる山崎蒸。
    武芸で身を立てることに戸惑いながらも、敵方にひとりで切り込んでいく長坂小十郎。
    時代に逆らって生きる個性豊かな隊士たちは、いずれも無骨で、真っ直ぐで、さわやかだ。
    なかでも、「沖田総司の恋」「菊一文字」で、沖田への不器用な心配りを見せる近藤勇と土方歳三の姿が印象深い。
    「総司のことになると目が曇る」近藤と土方の姿を、おかしみさえ滲ませながら人間臭く描くことで、司馬は、激しい風雲に飲み込まれざるをえなかった者たちの悲劇をいっそう際立たせている。
    新選組という「類のない異様な」集団を多角的な視座を用いてとらえた本書は、1個人の人生から、歴史の壮大なうねりを照らす司馬の持ち味が、いかんなく発揮された傑作である。


    【内容まとめ】
    1.やはり新撰組は超絶ブラック企業(但し、奥多摩からの仲間は除く)
    2.この時代最強なのは「新撰組」ではなく薩摩藩


    【感想】
    「燃えよ剣」を読んだ後は、やはりこの本を読まないといけないでしょう!!
    過去に一度読んだ時は断片的でしかなかったこの本だけど、「燃えよ剣」読了後は補足に最も適した1冊でした。
    読む順番を間違えなければ最高の別冊小説ですね。
    (昔はこの本が司馬遼太郎の「新撰組バイブル」と勘違いして先に読んだ為、何が何か分からなかった。)

    「解説」にこの本の全章の簡略があった為、読み返すのに非常に楽だった。
    普段よく読書メモを取るが、この2作品はあまりにもスラスラ読めすぎて読書メモが全く取れないからね・・・

    ただ、これほど京で猛威を奮った新撰組ですら、薩摩藩から見ればただの浪人集団だったというのが驚き。
    幕末の物語や力関係は、やっぱり面白いなぁ。

    今度は長州藩を描いた「世に棲む日日」を読もう。

    【引用】
    p428
    「友情」というのは当時そういう言葉もない。
    明治以後に輸入した道徳だし、概念であった。
    当時は「忠孝」というタテの関係のモラルが男子の絶対の道徳である。


    p519
    新撰組に、と大久保は言ったが、実のところ薩摩藩としては新撰組などを歯牙にもかけていない。
    が、いずれは敵対せねばならぬ会津藩の内情や、京都守護職の動向を知る上では、新撰組という出先機関で探るのが最も容易であるように思われた。


    p532
    薩摩人の特質は、その現実主義にある。
    その点、英国の外交感覚に似ている。
    水戸人のように理想にこだわらず、長州人のように理屈好きでもない。
    情勢が変わって必要とあれば、どういう相手とでも手を握るところがある。

    その変幻さ、薩摩人というのは、あるいは日本人の中で最も政治能力のある種族であろう。


    p633
    「油小路の決闘」
    新撰組の批判派である伊藤甲子太郎らの、悲劇的な結末に至るまでを「耳を洗う癖のある」新撰組取締役 篠原泰之進を主役に描いている。

    「芹沢鴨の暗殺」
    水戸天狗党の生き残りで、狂人的天才剣士 芹沢鴨が、近藤・土方らの黙契によって暗殺される有名な話だが、それに菱屋太兵衛なる大阪商人を絡ませて味わい深くしている。

    「長州の間者」
    京都浪人 深町新作が、その腕を買われて新撰組に入るが、深町は女との腐れ縁から長州の間者となり、沖田総司に見破られ、「人斬り主膳」こと松永主膳に斬殺される話。

    「池田屋異聞」
    有名な池田屋騒動を、「いざ勝負となると、相手を食い殺したいほどの異常な闘争心を沸かせる」山崎烝(すすむ)を主役に描いたもの。

    「鴨川銭取橋」
    隊の兵学師範であった武田観柳斎が、薩摩屋敷に出入りするようになったことから、銭取橋で、剣術指南役 斎藤一に斬殺されるまでの話。

    「虎徹」
    近藤勇の愛刀・虎徹にまつわる由来話を、やや皮肉をまじえて描いた「日蔭町虎徹」物語。

    「前髪の惣三郎」
    加納惣三郎という女と見間違えるような美貌の剣士が、「おかま」騒動を起こし、土方歳三に斬られるまでの話

    「胡沙笛を吹く武士」
    胡沙笛という尺八に似た音色の笛を吹く隊士・鹿内薫の悲劇を描いたもの

    「三条磧乱刃」
    新撰組で最長老の井上源三郎と、芸州浪人 国枝大二郎の奇妙な絡み合いを綴ったもの

    「沖田総司の恋」「菊一文字」
    若き天才剣士、沖田総司を主役にした異色の物語

    「槍は宝蔵院流」
    宝蔵院流の槍の使い手 谷三十郎の話

    「弥兵衛奮迅」
    薩摩藩脱藩浪士 富山弥兵衛の物語

    「四斤山砲」
    出羽浪人 大林兵庫という不可解な人物の新撰組撹乱物語

  • 高校時代に読んだにも関わらず、大人になって読むとこうも味わい方が変わるのか、と。
    日本史嫌いの学生時代とは180度変わり、歴史を知る面白さを分かるようになってから読む歴史小説の味わい深さよ。名作が沢山あって嬉しい。

    昔はミーハー丸出しの如き沖田好きでしたが、大人になると土方さん素敵と思うようになりました。
    回りを固める剣士たちのエピソードも、人物関係も、手繰り寄せるごとに面白い。

    源さんのエピソード良かったなぁ。
    近藤さんの虎徹へのこだわり、憎めないなぁ。
    「総司の恋」「菊一文字」は今読んでもいいなぁ。

    歴史小説はどうも長くて…と思って遠ざけていたけれど、亡き父が特に気に入っていた司馬遼太郎作品は少なからず馴染みがあるので、少しずつ開拓していきたい。
    新選組血風録の思い付き再読、良いタイミングで読んだようだ。

  • 新撰組のメンバー幾人かにスポットをあてた短編集。有名どころ数人の名前しか知らずに読んだけど、私の頭の中でふわっと「青い羽織を着た集団」だったのが、一編一編読むごとにひとりひとりの顔に目鼻が付き、表情がついていった。燃えよ剣も良かったけど、読みやすさでいえばこちら。面白かった!

  • 新選組ってやっぱり面白い。
    各章で個人にスポットをあてて、切る側も切られる側もそれぞれがそこに至るまでの物語がせつなくて。
    じつはあんまり司馬遼太郎作品は読まないんだけど。コレを書いてる時って楽しいんだろうなーって思いながら読んだ。
    キャラ的には沖田総司が好きだな。

  • 何回読んでも飽きない。

  • 燃えよ剣、を読み終えたことで生まれた新撰組への興味が赴くままに手に取った一冊。全15編からなる小話と、様々な隊士の生き様を通して、新撰組の雰囲気を楽しむことができた。個人的に好きなのは「前髪の惣三郎」かな。山崎と廊下ですれ違う際に頬を染める加納と、それを受けて困惑する山崎、という構図にはニヤニヤしてしまった。これは現代における「萌え」として立派に成り立つものだし、というか言ってしまえば燃えよ剣でも土方と沖田のやり取りに何度も萌えを感じることがあって、「ああ、これが腐女子の気持ちか……」なんて感心したりしていたわけで。いやだなあ、本の感想からだいぶ脱線してますよ、土方さん。

  • 司馬文学の傑作にして、新選組小説の代表作。

    勤王佐幕の血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京洛に、その治安維持を任務として組織された新選組。
    騒乱の世を、それぞれの夢と野心を抱いて白刃とともに生きた男たちを鮮烈に描く。

    何度も読み直している作品です。大好きです。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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