旅人よ!―五木寛之自選文庫 エッセイシリーズ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041294260

作品紹介・あらすじ

旅する作家五木寛之があなたに送る楽しくて香り高い27通の手紙。たそがれゆくNYの魅力、葛城古道に立ちこめる霊気を語り、斑鳩の里に眠る弟を思い、故宮博物館の豪壮さに驚くと同時に文化の罪ぶかさに思いをめぐらす。様々な人と旅の風景を経て、作家は「倶会一処」の思想へとたどりついていく-。旅を思うすべての人に贈る、ユーモラスで思索にみちた、珠玉の一冊。

感想・レビュー・書評

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  •  このところ図書館で予約している本の受取タイミングはうまくいかず、また読む本が切れてしまいました。ということで、久しぶりに納戸の本棚を探ってみて、肩肘張らないで読めそうな昔の本を引っ張り出してきました。
     最近「こころの散歩」という五木さんのエッセイ集を読んだところなので、いい比較になります。世代を経て五木さんのエッセイを読んでみると、この時期に五木さんの頭に浮かんでいる考えのいくつかは、その後も、そして今になっても引き継がれていることに気づいて、なかなか面白いですね。

  • これはぼくの錯覚でしょうか。それとも時代とともに甘味がましたのでしょうか。

    人々はむしろ心から人工甘味料を少なくした味を求めているのに。
    映画もそうです。
    音楽もそうです。
    皆が本気で見たい、聴きたい、と思っているものを、創り手が無視して勝手に自分たちの好みを押し付けているのです。

    じゃあ、小説はどうか、と、反論されると降参するしかないのですか。

    しかし、いつもの思うことですが、大人のきくにたえる音楽がないのは、なぜでしょうか。

    大人がレコード屋さんに行かないからだ、という意見が昔ありました。

    しかし、いまは若者でもあんまりレコード屋に日参はしません。そして若者の集まるコンサートの何倍もの高い料金を払って、大人たちがオペラや演奏会に集まります。

    (P.71)

    「犀のごとく独りあゆめ」

    「一角獣のごとく独り往け」

    (P.156)

    自分の常日頃、考えている思想を人々に語る、それは恐ろしいことです。それと同時に、文章とちがう肉声で人々に語りかけることは大変な作業です。

    蓮如という人物は、自分の話を聞きたいという人が二人いれば、十里、二十里の山道をもいとわずに歩いて出かけたそうです。
    「わしほどワラジをはきづぶした者はおるまい」
    と、晩年、無邪気に自慢していたそうですから、本当の話でしょう。

    (P172)

    しかし、現代は人と人とが直接に接することが非常に少ないのが特徴です。
    そんなときに、空海のいう「面授」というものが、どれほど大切かを思わないわけにはいきません。

    面授とは、顔と顔を向けあい、膝をまじえて何かを伝えることです。空海は密教を文書によって会得しようとする最澄に対して、

    「面授なくして密教の伝授なし」

    という意味のメッセージを送りました。

    (P.174)

    有名店に旨い料理なし、とずばり断言されたのには、膝を叩いて共感しました。食は必ずしも文化ではない、というご意見もそうです。もっともこういうことを言うと、たぶんいまの時代には袋叩きになりかねません。食こそ文化なり、という文句が声高に叫ばれて、だれもがそう信じている時代だからです。

    しかし、ぼくはなんでもかんでも文化の仲間入りをさせてしまう最近の風潮には、どこか違和感をおぼえます。食は料理であってどこがいけないのでしょうか?そもそも、文化というものは、それほど立派で正しいものなのでしょうか?

    僕も先生と同じように、文化とは罪ぶかいしろものだ、と心ひそかに感じているひとりです。

    古今東西、経済的な貧しさが文化を産み育てたという例を残念ながらぼくは知りません。西洋文明は、強国の経済的繁栄の結果として世界を照らすこととなった、と言えば、身もフタもないことになりますが、先生の熱中されているオペラやクラシック音楽にしてもそれは言えると思います。<中略>

    文化とは罪ぶかいものです。ヨーロッパの文化は、ことにそうです。

    歴史の記述には、「進出した」という言葉がしばしば出てきます。「版図を拡大した」という表現もありますね。「手中におさめた」という書き方もあります。

    どれも、武力で制圧した、という事実を伝えているにすぎません。そして文化はその後につづくのです。

    (P.189)

  • 人間はいつも一人で風n中を歩いていくのです。しかし、いつか旅も終わる。その点終点まで、それぞれの歩き方を歩いていく。風の旅人こそ、自由の旅人です。やはり一人で風の中を歩いている感じが旅には旅にはふさわしい。明治の日本人がえらいとすれば日本人で割ることを捨てずに近代化したこと。和魂洋才。

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著者プロフィール

作家。1932年、福岡県生まれ。朝鮮半島で幼少期を送り、引き揚げ後、52年に上京して早稲田大学文学部露文科に入学。57年に中退後、編集者、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞など受賞多数。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『下山の思想』『百寺巡礼』『生きるヒント』『孤独のすすめ』など多数。

「2022年 『人生のレシピ 人生百年時代の歩き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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