悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304044

感想・レビュー・書評

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  • 『ひとり横溝正史フェア』の今回の作品はこちら「悪魔が来りて笛を吹く」。

    貴族制度が廃止された日本、社会を揺るがす毒殺事件の容疑者でもある椿元子爵が失踪し遺体が発見される。遺体を確認したにも関わらず、椿元子爵は生きているのではと母親が言うためひとり娘である美禰子が金田一耕助に調査を依頼する。
    金田一耕助が元子爵邸に向かい、一堂揃って元子爵について占いをすることになる。
    そんな中聴こえてきたのは、元子爵が作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」のフルートの調べ。

    今作では有名な「帝銀事件」や貴族制度が廃止された斜陽族といった社会情勢と創作の事件をうまく絡めている。
    また、現実的なことと亡くなった元子爵の亡霊がフルートを吹くといった幻想的なこととがあわさり耽美な魅力に溢れた一冊。

    以前読んだときにはわたし自身が犯罪に余り興味がなかったようで、すらっと読んでしまっていたようだが、今回読み直すと興味深く読むことが出来た。
    「帝銀事件」の犯人とされた平沢貞通は途中で自分は犯人ではないと言い、死刑判決は下っているものの真相が不確かなまま平沢貞通も亡くなってしまっている。
    真相が明かされないまま時間だけ過ぎたこの大事件は、きっと横溝正史にとっても大きな関心事だったことと思う。
    この「帝銀事件」についての物語ではなく、あくまでそれを取り入れただけではあるけれど、こういった現実の事件と絡めると否が応でも魅力は増してくる。

    また、貴族という身分であるがゆえに起きうるとも言える乱れと、家名があるがゆえの苦悩といった、いかにも横溝正史な澱んだ世界が展開されており、醜悪で不快とも言えるのに読む手が止まらない。
    今作では他に勝るとも言えるほど醜悪さが際立っていると思う。
    また内容も重く、濃厚すぎるが先を知らずにはいられない。

    確かこちらの作品も映像化されているはずだが、悪魔の紋章を見せつけるところ以外は殆ど記憶がない。
    映像化するに当たり、肝とも言えるフルート曲は本当に原作にある通りの曲だったのか、もう一度聴いてみたいと思ったりする。

    最後の犯人が名乗り、犯人による記録を美禰子が読む部分は心が痛むような重苦しさがある。
    こちらは読後感が良いとは言えない作品だったが、これはこれで横溝正史の美なのかもしれない。

  • 読了はかなり前です。表紙もこれではなく、おどろおどろしい極彩色の怪しい絵だったのですが(笑)、変わってしまって残念です。
    金田一シリーズの名作に多い、地方で発生する耽美怪奇な殺人事件とはうって変って都会で発生する事件ですが、旧華族の登場や耽美的な雰囲気はそのままで、事件の端緒も血の因業を伴うものなので、金田一耕助が解決する事件としてはそのものぴったしですね。
    現代感覚からすれば「悪魔誕生」は理解し難いものだが(笑)、ページをめくるのももどかしくドキドキ気になったものでした。(笑)
    フルートの音色は小説だと当然わからなくて残念だったのですが、ドラマや映画で流れた音色を聴いてしっくりきました・・・。(笑)
    謎の展開過程も横溝ならではで、金田一耕助シリーズの代表作と言えるだろう。

    ※2012年5月29日追記
     あれっ?表紙が以前のものに戻っている・・・。この方が良いです!

  • 何だこの表紙。というのはさておき、金田一シリーズではトップ5には入る代表作。

    内容的には、横溝正史のある種、場当たり的で混沌とした中での連続殺人で、金田一耕助が悩み解いているあいだに被害者が増えるというパターン。

    その中でよくあるのが、「そこまで予想しているのなら先回りしろよ」というものだが、本作は結構ギリギリのタイミングで殺人事件が起こるので、さほど気にはならない。

    ただし、結局殺人現場から推理するのは、連続殺人のうちのたった1つだし、オチも科学的に全く説明の付かないものだし、解決もスッキリ感はすくない。ストーリーも場当たり的で、結局は出てくる怪しいキャラクターたちが全て。

    とはいえ、2段3段のどんでん返しもなく、裏もないのに、ここまで読みこませられるのは、強烈なキャラクターをつくり上げる横溝作品ならではのものだろう。

  • 「ああ、悪魔が来たりて笛を吹く」 横溝氏お得意のどろどろの人間関係。フルートはそういうことだったのか……

  • 【ネタバレあり】



    「悪魔が来りて笛を吹く」タイトルが何度も口に出して言いたくなるくらい好き。どんなメロディーなのかな、映像で見たい。
    他人の空似というミステリにおいてある意味禁じ手と思われるところを、天銀堂事件の犯人のモンタージュ写真を絡めることによってうまく処理していると思った。没落華族のただれた人間関係の末に誕生した悪魔、その結末は悲しいものだった。そんな中、美禰子の強さに救いを感じました。冒頭でも後味の悪さに置いて極端と書かれているけど、後味の悪さで言うと私は獄門島の方が後味悪いと感じたな。

  • 冒頭部分で“この事件はあまりにも後味の悪さにおいて、極端であろう・・・”と書いてあったので、少々心配な気持ちで読み始めましたが、呪わしい人間関係に戦慄しつつも、ミステリーとしての面白さでページを繰る手が止まらず、一気読みしてしまいました。
    現代物のイヤミスが苦手な私でも、金田一シリーズはOKなんですよね。
    時代背景もあると思いますが、横溝さんの文章が合っているのかな。と思います。

  • 横溝正史さんの読者も登場人物と同じように鳥肌が立つようなゾクゾク感を持たせる構成がとても好きです。

    この作品でキーワードとなるのが「笛」と「悪魔」です。
    誰が悪魔なのか?というよりも、どうしてその人は悪魔になってしまったのか知ると謎が解け、背中に冷たいものが走る感じがします。
    金田一と一緒にどうして?と考えても、金田一がいつも読者の私たちより一歩前を歩いているため、ページをめくる速さもだんだんと早くなっていきます。そのくらい、怒涛の展開で読むのを止めるのが惜しい気持ちになります。

  • これもまたおどろおどろしい血のはなしでした。

  • むかーし、昔に読んだよなぁ。これ、映像も観た気がする。
    それほど昔のことだな。
    図書館で夏のホラー、サスペンスもの的な企画で並んでいたので借りてきたのだけれど。
    あぁ、この時代はこういう設定が多かったわ、確かに。

  • TVドラマ化されたので読んでみました。
    ドラマとは異なる結末でしたが、僕としては原作のほうがいいな、と思いました。

    近親相姦とその結果できた子供をめぐる話しで、テーマとしては重く、かつ終戦直後という退廃的な雰囲気の中で進んでいくため、陰鬱感のある作品になっています。

    種明かしの場面も、人間の性や強欲のようなものが滲み出ていて、読み応えがありました。

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プロフィール

横溝 正史(よこみぞ せいし)
1902年5月24日 - 1981年12月28日
兵庫県生まれの小説家、推理作家。本名は同名で「よこみぞ まさし」。筆名を誤読した作家仲間にヨコセイと渾名され、セイシをそのまま筆名にするようになった。
1921年『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』が雑誌『新青年』の入選作になり、これが処女作とみなされる。 1926年に江戸川乱歩の招きに応じて上京、博文館入社。1927年『新青年』の編集長に就任、その後『文芸倶楽部』『探偵小説』等の編集長を務めながら創作活動を続けたが、1932年に同誌が廃刊となり、会社を退社。専業作家に。
金田一耕助を生む。第1回探偵作家クラブ賞(後の日本推理作家協会賞)長編賞を受賞した『本陣殺人事件』をシリーズ第一作として、以降多くの「金田一耕助」シリーズ作を残す。代表的な作品に、1947年『獄門島』、1949年『八つ墓村』、1950年『犬神家の一族』、1957年『悪魔の手毬唄』など。

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