悪魔が来りて笛を吹く 金田一耕助ファイル 4 (角川文庫)

  • KADOKAWA (1972年2月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784041304044

作品紹介・あらすじ

毒殺事件の容疑者椿元子爵が失踪して以来、椿家に次々と惨劇が起こる。自殺他殺を交え七人の命が奪われた。悪魔の吹く嫋々たるフルートの音色を背景に、妖異な雰囲気とサスペンス!

みんなの感想まとめ

人間の死が連鎖する中で繰り広げられるサスペンスが魅力の作品で、特に独特な雰囲気と緊張感が際立っています。昭和の終戦後を背景に、複雑な人間関係や過去の事件が絡み合い、読者は登場人物の相関図を追いながら物...

感想・レビュー・書評

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  • ひま師匠に、横溝正史さんのおすすめを教えて頂き読んでみたの第二弾!

    この世界観。私の好きなヤツですね。
    人がバッタバッタ死ぬヤツですねo(^▽^)o

    太宰治の斜陽を当然読んでいない無知の私は、斜陽族とはなんぞや?と最初から引っかかってしまう(^◇^;)
    Wikipediaさんにお世話になりながら、ページを捲る。

    私の父親が生まれた頃の、昭和の終戦後が舞台となる。
    登場人物が多い為、自分で相関図をメモメモしながら読み進める。うん、これは読みやすい(^^)

    これは読書だから良いけど、もしここに本当にフルートの音色が聞こえて、効果音があったらめっちゃ怖いだろうなぁ。。。

    佐清の時もそうだけど、今回は死んだと思った椿英輔の影が見え隠れするところ、映像だと怖いだろうなぁと感じた。

    しかし、新宮利彦、とんでもねーヤローだ( *`ω´)
    そんなやつ、真っ先に殺されてしまえっ!



    昭和22年、金田一耕介のもとに椿美禰子(つばきみねこ)が訪ねてきた。
    世界を震撼させた「天銀堂事件」の容疑者であり、この春に失踪していた元子爵・椿英輔(つばきひですけ)の娘であった。
    椿英輔は山中で遺体として発見され、美禰子に宛てた遺書もあり、自殺として処理されていた。身内のもの三名も彼の死を確認していた。
    しかし、美禰子の母・秌子(あきこ)が父に似た人を目撃したと訴え、本当に生きているのかどうか、砂占いで占ってみることになり、金田一にも参加して欲しいとの依頼だった。
    砂占いとは、コックリさんのようなものだった。

    その日はちょうど計画停電の日であった。
    集まったのは、美禰子、美禰子の母・秌子。
    秌子の兄の新宮利彦、その妻華子、その子供の一彦。
    秌子の母の兄玉虫公丸、妾の菊江。
    主治医の目賀重亮、女中の種とばあやの信乃。
    椿英輔の友人の遺児、三島東太郎。

    砂占いが始まり、停電の暗闇の中で占いが続けられた。計画停電が終わり、電気がもどると、砂の上に火焔太鼓のような模様が残されていた。
    その時どこからか「悪魔が来たりて笛を吹く」のメロディーが流れてきた。

    その夜、玉虫公丸が何者かに密室の中で殺害される。

    • bmakiさん
      ウルトラマンさんも、土瓶さんも、ひま師匠も小中学校の頃に横溝正史読まれていたのですねー。
      読書好きな方は、やっぱり幼い頃から読書好きなので...
      ウルトラマンさんも、土瓶さんも、ひま師匠も小中学校の頃に横溝正史読まれていたのですねー。
      読書好きな方は、やっぱり幼い頃から読書好きなのですね。

      私はあんまり読書好きな方ではなかったので、江戸川乱歩でも2冊くらいしか読んでいなかったかもです(-。-;
      中学校で漸くコバルト文庫数冊、、、
      高校はシドニーシェルダンを数冊。
      働くようになって、やっと赤川次郎デビューでした(⌒-⌒; )
      基本的に読書出来ないタイプでした。

      ウルトラマンさん、土瓶さん、ひま師匠の幼少期の本をこれから少しずつ読ませていただきますo(^▽^)o
      みなさんのレベルに達するのに、あと100年かかるだろうなぁ。。。
      2024/07/24
    • shintak5555さん
      100年!
      成瀬ですね!マキさま!
      100年!
      成瀬ですね!マキさま!
      2024/07/24
    • bmakiさん
      シンタローさん

      もう200年生きるしかないですよね!?
      生きれるところまで頑張りますっ!!!( ̄^ ̄)ゞ
      シンタローさん

      もう200年生きるしかないですよね!?
      生きれるところまで頑張りますっ!!!( ̄^ ̄)ゞ
      2024/07/24
  • ブクログと<翻訳文学試食会>の読書友達jinminさんおすすめの本。
    かっこいい題名ですよねえ。あくまがきたりてふえをふく。唱えたくなる。
    本作はTVシリーズのドラマでは二つほど見ているので、なんとなく犯人とか動機とか分かった上での読書になります。この事件ではフルートの譜面が大事なのですが、おそらくドラマでこの曲を聞いた人はすぐに犯人がわかるのかな?私は解説されても「ふーん、そうなんだ」なんですけどね(^_^;)
    そしてやっぱり横溝小説は面白いなあ。
    私は横溝正史といえば、絡みまくった血縁関係による膿んだような淀んだような一族による陰惨な事件が起きるが、金田一耕助により風が吹いて前に進む、という爽やかさが好きで読むのですが(そのため映像化でやたらにイヤミス風味にするのはあまり好きでない(-_-;)、今回もかなり酷いのに、最後はちょっと爽やかで、ところどころには作者の可愛らしさが見えるようでした。


    ===
    金田一耕助の元に元子爵家の娘、椿美禰子(つばき・みねこ)が訪ねてくる。美禰子の父、椿英輔(ひですけ)元子爵は、数ヶ月前に起きた宝石店員を毒殺して宝石を奪った「天銀堂事件」の容疑者とみなされ、アリバイが証明され釈放されたがその後失踪し自殺したいとして発見されたのだった。英輔元子爵は美禰子に遺書を残していた。
    「父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。」
    美禰子は、しかしその父らしき人影が目撃されて家族が怯えていること、そこで「砂占い」を行うことになったので同席して欲しいと頼みに来たのだ
    椿の屋敷に住んでいるのは、華族制度が廃止され、空襲の焼け残りでなんとか生活している「斜陽」元華族の三世帯、
     妻の秌子(秋の異体字で「あきこ」。色気と怠惰を漂わせる淫乱。以下アキコと表記)、娘の美禰子、
     アキコの兄新宮利彦(詐欺タカリのクズ男)、その妻華子(本来しっかりものの優しい女性だが夫に耐えている)、その息子一彦(無気力青年)、
     アキコの伯父玉蟲公丸元伯爵(政財界に力を持っていた精力爺さん)、その妾菊江(気風が良い)。
     使用人に、アキコの乳母信乃(貫禄ある不細工婆さん)、女中お種(素直な娘さん)、書生三島東太郎(この家で唯一生活能力がある)、
     そして事実上の同居人というか淫乱アキコに充てがわれた精力医師目賀重亮(蝦蟇みたいな男)。
    死んだ英輔元子爵は気弱で真面目、この家の主のはずだが妻のアキコ、義兄の新宮利彦、義理の叔父の玉蟲元伯爵から馬鹿にされコケにされ金を集られていた。
    もう序盤はこの英輔元子爵に対する他の人たちの仕打ちが酷いし、こんな家にいる美禰子の環境が酷すぎ悪すぎで辛くなる(-_-;)
    そして「砂占い」は書斎にて計画停電を利用して行われたのだが、停電が終わると砂の上にくっきり現れたのは「火焔太鼓」のような模様。そして家の中に英輔元子爵が死ぬ直前に作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」のフルート演奏が響き、死んだはずの英輔元子爵によく似た人影が現れた。
    そして翌朝、密室の書斎で死体が見つかり、側には血で書かれた火焔太鼓の文様が。

    金田一耕助は事件の根本を求めに、かつて玉蟲公爵の別荘が会った岡山県に向かう。
    すると第二の被害者が出た知らせが入り…。

    ===

    事件は、毒殺強盗、密室殺人、怪しい文様、死んだはずの人の影、どこかおどろおどろしいフルートの曲はかなり不気味だし、時代背景も戦争被害がまだ残り、戦後生き方を無くした「斜陽」華族階級の陰りを感じられました。
    事件が解明してみれば、絡み合った血縁の秘密やひどい仕打ちで一生を狂わされた人たちの真相が明らかになって「これは酷い…」と思わずにはいられない。
    それでも作者の人柄なのか、金田一耕助の存在なのか、ところどころ読書としては可愛いと言うか笑えてしまう場面も。
    事件解決のために金田一耕助が寝転んで本を読む姿を「行儀の悪い男で寝転んで読まぬと読んだことが素直に頭に入ってこないのである」だとか、終盤真相解明の場面でいきなり金田一耕助に被害者役をやらされる等々力警部が戸惑いながらアドリブで殺される演技をするあたりはちょっと笑ってしまう・笑
    そして陰惨な事件でありながら、自白する犯人の受け入れたような爽やかさ、生き残った人たちが「これから大変なこともあると思うけれど、陽の当たるところに住んで陰を洗い落としましょう」と前向きに未来を見ていることが良かった。

    ドラマでも見ているけれど、やっぱり「斜陽」華族の雰囲気や、戦後の焼け野原にぽつんと焼け残ったものの修理はできずにところどころ穴が空いたままの椿の屋敷とかは、映像では表せず、原作のほうが雰囲気バツグンです。

    • ひまわりめろんさん
      横溝作品でわいが一番好きな作品です

      曲を聞いただけで分かる人はいません
      ちょっとしたオチがあるのです(ΦωΦ)フフフ…
      ウィキペディアで調...
      横溝作品でわいが一番好きな作品です

      曲を聞いただけで分かる人はいません
      ちょっとしたオチがあるのです(ΦωΦ)フフフ…
      ウィキペディアで調べてみて下さい
      2026/05/02
    • 淳水堂さん
      私に進めた方もこれが一番好きと言っていました。やっぱり人気ありますね。

      そして、原作は指間違い、ドラマで使われた譜面では犯人の描写にあって...
      私に進めた方もこれが一番好きと言っていました。やっぱり人気ありますね。

      そして、原作は指間違い、ドラマで使われた譜面では犯人の描写にあっていないのか(^_^;)
      2026/05/04
  • うわぁ〜……(-∀-`; )
    これは…この結末は何ともまぁ……

    『悪魔が来りて笛を吹く』
    タイトルのセンス抜群!!としみじみ感じますな゚+.゚(´▽`人)゚+.゚




    「この話、よく映像化できたな(^▽^;)」という感想が1番に思い浮かびました。笑

    私は映画は観ていないのですが、興味ありますね( ≖ᴗ≖​)


    今回も推理バトル本として読んだのですが、スレスレの85%まで読んでも全く犯人が分からず、かなり苦戦しました…(・_・;

    結果、犯人を当てる事ができましたが、相手も当たったので、引き分け((´・_・`)不服)


    この作品は、椿子爵の自殺後に娘から金田一へ依頼。話が始まります。

    『天銀堂事件』という、窃盗殺人事件との絡みと、一族の過去とが複雑に絡み合い、もう何が何だか混乱しまくりです。笑

    そこで、家系図をノート1面にメモしながら読んだのですが……(-_-;)

    おいおいまさか…という結末に…(。-∀-)

    ミステリに、家系図と見取図は大事ですね♡


    後半に明らかになっていく謎が、また謎を呼ぶ。

    チラチラと伏線ありますが、最後にはスッキリ回収され、気持ち良いです。

    それにしても…このお話、ちょっと考えてしまいます。
    何ともやり切れない気持ち…。
    悲劇です…(´._.`)



    なんにせよ、名探偵金田一耕助シリーズ!

    面白かったです!

    おすすめ……
    おすすめ〜…は、成人済みの方に!!笑笑

  • 悪魔が来たりて笛を吹く…タイトルがまずインパクトがあり好きで読後に意味をしり震え上がった!

    この作品で街のなかに金田一耕助先生がいるんだと感じた。いつもや田舎や島とかなんでね。

    そして事件と同じく帝銀事件を知り調べたな〜

    金田一耕助シリーズのなかでも切ない事件のひとつ。


    ぜひ〜

  • 京極堂シリーズから、時代の近いこちらに移ってきました。

    こちらも映画やドラマで何度も映像化されていますが、私はそのどれも観たことがありません。だからこそ、”「悪魔が来りて笛を吹く」に隠された仕掛け”に驚愕。犯人はこの曲を聴くたびに、どんな思いに駆られていたのでしょうね……。

    印象的な人物は、ドロドロとした椿家の中で、「コケティッシュ」と評される菊江さん。
    かつての”いいひと”に小指を捧げる情熱もありつつ、あの異様な家族の中での彼女の存在は、たしかにホッとするものがありました。

    昭和を舞台にした小説ばかり読んでいるせいか、追い詰められた”不義の子”が罪を犯す話が続いているので、そろそろまったく違う動機のミステリーが読みたい……と、これは個人的な感想です( ˊᵕˋ ;)


    2025.09.28再読
    『迷路荘の惨劇』きっかけで貴族ものが読みたくなり、再読。
    初見時は人の多さに混乱したり、あまりのドロドロさに辟易したものの、横溝作品に慣れた今となってはしみじみ読めた。
    薄幸の人・椿もと子爵。
    その繊細さと、潔癖さゆえに生み出した告発の『悪魔が来りて笛を吹く』がなんとも切ない。
    美禰子、一彦をはじめ、生き残った人々はどうか前向きに力強く生きてほしいと応援したくなる人ばかり。

  • 横溝正史シリーズを読みたくなり購読。
    全体的に暗くおどろおどろしい感じが良かった。
    ただ、登場人物が多く、家系図がないと誰が誰かわからなくなりそうである。

  • 再読。やっぱり何度読んでも面白い。キャラといい描写力といい読み易さといい横溝正史は最高だ。
    最後、なんとも言えない哀愁が漂い、解決したけど、すっきりしたけど、なんとも言えない気持ちになる。
    運命って皮肉だよね。

  • よく出来た話だ…緻密というか、設定が凄い。
    現代では考えられないほど、身内で入り乱れててそこも衝撃的でした。横溝正史は性の乱れをかなりしっかり書く人なので、倫理観バグります笑
    全く関係ないようで繋がっていく、最後の告白部分はただただ切ない気持ちにさせられた。
    トリックと言うよりかは、動機や人間関係に焦点が当たっていて個人的にはかなり好きな作品に入りました。

  • 宝石強盗大量殺人・天銀堂事件。その容疑者の椿元子爵が失踪した。「これ以上の屈辱に耐えられない」娘・美禰子への遺書の真意とは。そして、書き残した「悪魔が来りて笛を吹く」という曲が流れる時、椿家に悲劇が襲いかかる。

    旧華族の没落、戦後という時代背景の中で巻き起こる陰惨な連続殺人事件、まさに横溝正史という世界観が楽しめる。固結びされた不可解な謎へ光を照らすほどに、その影が色濃く闇へと堕ちていく。悪魔ははたしてどちらだったのか。呪われた宿命の中でどう生きるべきか。闇に響く笛の音が耳に残る。

    ミステリとしての仕掛けはシンプルなものの、その事件背景の描き込み、業の深さに魅入られたように読み進めた。タイトルに込められた真の意味を知った時の驚きといったら!決着の鮮やかさと伏線回収の爽快感もあって、最初にさんざん脅かされたほどの後味の悪さはなく意外と読みやすかった。

  • 悪魔がこりて笛を吹く
     金田一耕助シリーズ。耕助が登場する作品はとある屋敷内とか、村とか閉鎖されたエリアでの事件が多いと思っていたが、今回は舞台である東京のとある邸宅を中心に、神戸や淡路島にまで舞台が広がり、椿家で起きた陰惨な事件が描かれる。

     物語は、とある陰惨な銀行強盗事件と椿子爵の失踪、自殺が土台になり、椿子爵の娘である美禰子が耕助の元に依頼に来た事から始まる。
     冒頭、椿子爵家族と、同居する新宮家、玉虫元伯爵、医者の目賀博士などの紹介、並びに椿子爵が彼等に馬鹿にされ虐められていた事などが明かされる
    その復讐の為にこの様な事件が起きている・・・だと、なんだか動機として物足りなさを感じていた。
     しかし中盤からどうも裏に何か大きな秘密が隠されている様で、神戸、淡路島ではそれらのミッシングリンクを求める冒険が描かれる。
     全てが後半の解決編に集約していく様はとても面白いが、過去作でもそうであった様に一部重要な要素の打ち明けが遅く読者としては少しモヤモヤする事があるのと、耕助達が神戸に向かう電車のシーンにて、「重要な人物」の匂わせが、確かにそうではあるが、この時点にて「とある重要な事」が伏せられているせいで読者に不親切なミスリードになってしまっている。真相により、無理なく閉められてはいるが、伏線回収とは言い難く、少しご都合主義にも見えてしまった。

     そうは言っても数日楽しみに読み進めたので面白い作品ではある。耕助のデリカシーのない、なんとも素っ頓狂な部分はかれのキャラクターを更に魅力的にしているし、だらしない彼を受け入れてくれている「2号」の女将さんも好印象だ。また、被害者達はもっと残忍に殺して良かったと思う。たの作品だともっとおどろおどろしい殺人が発生するため物足りなさも感じてしまう。
    また、話がややこしいので人物の相関図を考えるのが大変だった。ここが理解できるとさらに面白くなる。

  • 横溝正史とはこんなに時代の先を見ていた作家だったのか。

    正直なところ横溝正史の作品をじっくりと読んだのは初めてだった。
    映像化された作品は観てきたけれど、よくありがちな原作にはあたらないというムーブばかりしていたのである。
    今回読むきっかけになったのは9月4日にNHKで『シリーズ深読み読書会/悪魔が来りて笛を吹く』が再放送されたからである。

    横溝正史は『八つ墓村』『犬神家の一族』『本陣殺人事件』など田舎の因習ものという作品を立て続けに発表し、その後で都会の貴族ものである『悪魔が来りて笛を吹く』を書いたのだと番組内で言っていた。
    そういうわけで私はこの番組を見て、いわゆるネタバレを受けた状態で読むことにした。それぐらい引力が強い作品だった。

    これは結末を言ってしまえば愛した女性と自分が異母兄妹だったことが発覚し、女性が自殺したことがきっかけでその原因となった自分たちの父親を含む一族を殺害した青年が最終的に自殺をする。
    近親相姦故によって生まれた子どもたちが、そのことを知らず惹かれ合った自分たちも近親相姦をしてしまったというやるせない悲劇の話だ
    番組ではこの作品を深読みし、横溝正史はこの時代にこの作品によって何を言いたかったのか、隠されたメッセージは?という深読みをしていく内容だった。

    近親相姦はめずらしいことではない。日本でも繰り返されてきた歴史もある。天皇家でも行われてきたことだ。じゃあ近親相姦が生まれる土壌とは何か?というと家父長制だと言う。家という形、共同体を何がなんでも守るため、そこに外部の血を入れないという排他的な思想が近親相姦の土壌だと有識者たちは語っていた。

    それを考えると確かに横溝正史の作品はいわゆる『家』というものにフォーカスした話が多い。
    『悪魔が来りて笛を吹く』は舞台は都会で貴族の話だけれど、『八つ墓村』『犬神家の一族』なんかは田舎ものだけど確かに一族や〇〇家の話だ。
    そしていずれも悲劇の発端はその家の家長である人間の身勝手な振る舞いである。
    そもそもこいつらが何もやらなければ、何も起こらなかった。
    そういう話が本当に多いなと気づかされた。

    有識者の島田雅彦氏は「日本の小説は家庭小説が多い。家庭とは、家とは暖かく優しい場所ではなく逃れようのない地獄であり、そこで苦しむ人達がいるからこそ家庭小説が多く生まれている」ということを言っていた。
    そう考えるとずっと横溝正史は家(家族、家父長制)と戦う小説を書いてきたのかもしれないと思った。

    令和の今でも残念ながら家父長制から解放されたとは言いづらい状況だと思う。少なくとも私はそう感じている。
    家父長制を倒さねば、戦わねばという志を持った男性作家があの時代にすでにいたのだとすればこれほど心強いことはない。

    今回の『悪魔が来りて笛を吹く』で一番好きな台詞を引用してみる。
    金田一耕助に調査を依頼したストーリーの起点、この作品のヒロインである椿美禰子(みねこ)のこの台詞だ。

    『この家はできるだけはやく処分しましょう。そして、あたしたち、どんなにせまい家でもよいから、明るい、よく陽の当たる場所に住んで、身にしみこんだこの暗いかげを洗いおとしましょうねえ』

    戦後没落していく貴族。殺人事件なんてものが起こったあとに残されたその家の当主が若い女性で、その女性にこんな台詞を言わせるのは横溝正史が家と戦ってきたということを踏まえると非常に示唆に富むものだと思う。

    まさか横溝正史を家父長制批判をした作家だという視点を得ることになるとは思わなかったけれど彼や彼の作品に対する見方がガラリと変わった。
    もっと横溝正史に触れたいと思う。

  • 読了はかなり前です。表紙もこれではなく、おどろおどろしい極彩色の怪しい絵だったのですが(笑)、変わってしまって残念です。
    金田一シリーズの名作に多い、地方で発生する耽美怪奇な殺人事件とはうって変って都会で発生する事件ですが、旧華族の登場や耽美的な雰囲気はそのままで、事件の端緒も血の因業を伴うものなので、金田一耕助が解決する事件としてはそのものぴったしですね。
    現代感覚からすれば「悪魔誕生」は理解し難いものだが(笑)、ページをめくるのももどかしくドキドキ気になったものでした。(笑)
    フルートの音色は小説だと当然わからなくて残念だったのですが、ドラマや映画で流れた音色を聴いてしっくりきました・・・。(笑)
    謎の展開過程も横溝ならではで、金田一耕助シリーズの代表作と言えるだろう。

    ※2012年5月29日追記
     あれっ?表紙が以前のものに戻っている・・・。この方が良いです!

  •  先日NHKスーパープレミアムで、横溝正史原作の『悪魔が来りて笛を吹く』が放送されていました。
     金田一耕助を探偵役とする小説で有名です。
     代表作は、「本陣殺人事件」「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」他
     そもそも数年前までは、推理小説を読んでいなかったのですが、ツイッターの友達にお薦め本を紹介してもらい、宮部みゆき氏の「火車」「理由」を読んでから嵌ってしまい読み始めました。
     その流れで江戸川乱歩・横溝正史もありきといった具合です。おそらく前者二人の作品は全て持っています。どちらかというとホラー小説に近いものもあり表紙の絵も時代を感じますね。

  • まず、雰囲気がとても良い。
    文章も、『本陣殺人事件』を読んだ時は読みにくいと感じだが、今ではとても読みやすく感じる。

    密室トリックはあまり驚きはしないが、仏像の入れ替え、秋子が見た悪魔の正体、「a=x,b=xならばa=b」を用いた入れ替わり、などの小さなトリックは面白かった。

    そして最終章で今度は別の方向から驚かされた。
    あの曲に込められたメッセージ、そしてタイトルの意味...切なさをも感じさせるラストもとても良かった。

    一点だけ文句を言うのならば、痣はおそらく遺伝はしないので、偶然だとしてもなぜ"偽"東太郎に父の利彦と同じ痣があったのかは一言説明が欲しいところではあるが、全体として見ればそんな些細なことは気にならない読者を引き込むプロットは素晴らしく、横溝作品の良さを感じられた。

  • 悪魔が来たりて笛を吹く 読了
    金田一耕助シリーズ。
    横溝正史作品は一族の人物がたくさん出てきて相関図がないと混乱してしまう。次から次に起こるおぞましい事件の数々を最後の最後にしっかり伏線回収してくれて腑に落ちる。
    ドラマ化や映画化を何度もされてるだけの人気作。
    伏線回収時にネットにある相関図を見るのをオススメ。

  • 横溝正史でも特に有名な作品のひとつだが、個人的には陰鬱さや得体の知れない恐ろしさではトップクラスではないかと思う。人物達の関係性は時代を考慮すればありそうな話ではあるし、実際にあったことでもある。それをフィクションとして練り上げまるで実際に起きた事件のように錯覚してしまうほど現実的だが、ある意味「小説のような終幕」によってこれはやはりフィクションなのだと再認識する、これが作家の力なのかと思い知った。
    作中の密室殺人やその他のトリックは捻りがあり難解という訳ではなく、あくまでこの作品の最大の魅力は人物同士の複雑な関係性や人の心の奥底にある恐ろしさや浅ましさといった負の側面の塊が要所要所で垣間見えるところではないかと思う。

  • 横溝正史らしい血縁関係の乱れに起因する動機でした。
    大体そうですがこういった話が出てくるとホント好きですね……という感情になります。金田一シリーズってこの味を求めて読んでるとこあるな〜

  • 東京のお屋敷が舞台だから、おどろおどろしい雰囲気は無いなぁと思っていたら、とんでもなくおぞましく悲しい結末が待っていた。後味の悪さでは他を凌駕しているかも……。
    すべて終わった後に、椿元子爵の遺したメッセージの意味が分かったのが切ない。特定の指を使わずに演奏できる曲というのはまったく想像していなかった。正にタイトルの通り、最後にこの曲の謎を解いて死んでいく治雄が哀れだ。

  •  1951(昭和26)年から1953(昭和28)年にかけて雑誌連載された作品。『本陣殺人事件』(1946)『獄門島』(1948)『八つ墓村』(1951)『犬神家の一族』(1951)に続く、戦後すぐの初期の金田一耕助ものの名作群に連なるもの。
     こないだ比較的後年の『白と黒』(1961)を読んだばかりなので、作風・書法の違いを比較しながら読んだ。『白と黒』では文体がユーモアも含んだちょっと軽い感じのものであった。これは戦後間もない頃の作風とかなり趣が異なっている。
     比較的初期の横溝正史の作品世界は怪奇趣味、陰惨さへの好みに彩られているのが魅力的なのだが、60年代以降は薄まったのだろうか?
     この『悪魔が来りて笛を吹く』は生首のようなものは出ないが、死んだはずの人間がちらちらと姿を現す点で、やはり怪異への傾斜をもつ。
     この頃の金田一耕助ものの語り手がよくそうするように、冒頭で作品世界の陰惨さを規定されている。
     
    「ほんとうをいうち、私はこの物語を書きたくないのだ。・・・これはあまりにも陰惨な事件であり、あまりにも呪いと憎しみにみちみちていて、・・・」(P.8)

     この主調の気分を維持するために、描写は一定のベクトルを向いて連発される。

    「・・・椿英輔氏の邸内で、あの血腥い最初の惨劇が発見されたのは、夏から秋へうつりかわる季節にありがちな、妙にうっとうしい、そうでなくても気が重くなるような、鉛色にくもった朝だった。」(P.103)

     主調に従ってつらなっていく情景描写は、このように、ディテールに渡って自己組織化されていくのが分かる。この後も「無気味な」「異様な」などといった形容が続き、少々おおげさな描写も多く出てくるし、登場人物も鬱屈して何やらしきりに怒りを見せる。珍しく金田一耕助も何度か「憤り」に駆られている。
     横溝正史は日頃絶えず推理小説のトリックのことばかり考えていたようだが、私はそんなに「トリック」には興味を持たない。物語を書き込む操作にあたって、小説素がどのように組織化されていくかに関心があり、その生成プロセスの明確さゆえに、横溝正史作品に惹き付けられている。ホラー的なものへの好みにおいても、この作品世界はエドガー・ポーを想起させるものがある。
     本作は最後に解明される謎の内容が陰惨さの主調にぴったりとはまっており、全体が分かりやすい調性構造によってよくまとまっている。

  • 金田一耕助シリーズ、3作目。特に順番は決まってないとのことだから、当時出版された順に読み進めている。

    悪魔が来りて笛を吹く、悪魔は誰なのか。死んだと思われた人物は生きているのか。世間に出せない悪魔のような秘密とは何か。

    最後の最後までワクワクさせられる展開、特に最後の5ページぐらいはぞくっときた。
    なぜこの題名なのか、最後まで読んだ人しか分からない。ここまでピタリとくる題名もそうそうないし、なるほどと思わされた。

    令和の時代じゃなかなか書けない内容だけど、でも人間の本質は善ではなく、悪だと思う。そこに刺激を受けるし、楽しいと感じる。もちろん現実ではあり得ないけど、本の中でそれを追体験させることができる。これこそが読書の醍醐味ではないか。
    いっとき、「バトルロワイヤル」が社会現象になった時も人が求めているからこそであり、今の抑圧された世の中じゃいつか限界が来るよう気がしてならない。

    この本もいつまでも名作と言われ、邪悪を含んだありのままの言葉で後世に残ってほしいものだ。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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