悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304044

作品紹介・あらすじ

毒殺事件の容疑者椿元子爵が失踪して以来、椿家に次々と惨劇が起こる。自殺他殺を交え七人の命が奪われた。悪魔の吹く嫋々たるフルートの音色を背景に、妖異な雰囲気とサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • うわぁ〜……(-∀-`; )
    これは…この結末は何ともまぁ……

    『悪魔が来りて笛を吹く』
    タイトルのセンス抜群!!としみじみ感じますな゚+.゚(´▽`人)゚+.゚




    「この話、よく映像化できたな(^▽^;)」という感想が1番に思い浮かびました。笑

    私は映画は観ていないのですが、興味ありますね( ≖ᴗ≖​)


    今回も推理バトル本として読んだのですが、スレスレの85%まで読んでも全く犯人が分からず、かなり苦戦しました…(・_・;

    結果、犯人を当てる事ができましたが、相手も当たったので、引き分け((´・_・`)不服)


    この作品は、椿子爵の自殺後に娘から金田一へ依頼。話が始まります。

    『天銀堂事件』という、窃盗殺人事件との絡みと、一族の過去とが複雑に絡み合い、もう何が何だか混乱しまくりです。笑

    そこで、家系図をノート1面にメモしながら読んだのですが……(-_-;)

    おいおいまさか…という結末に…(。-∀-)

    ミステリに、家系図と見取図は大事ですね♡


    後半に明らかになっていく謎が、また謎を呼ぶ。

    チラチラと伏線ありますが、最後にはスッキリ回収され、気持ち良いです。

    それにしても…このお話、ちょっと考えてしまいます。
    何ともやり切れない気持ち…。
    悲劇です…(´._.`)



    なんにせよ、名探偵金田一耕助シリーズ!

    面白かったです!

    おすすめ……
    おすすめ〜…は、成人済みの方に!!笑笑

  • 再読。やっぱり何度読んでも面白い。キャラといい描写力といい読み易さといい横溝正史は最高だ。
    最後、なんとも言えない哀愁が漂い、解決したけど、すっきりしたけど、なんとも言えない気持ちになる。
    運命って皮肉だよね。

  • 宝石強盗大量殺人・天銀堂事件。その容疑者の椿元子爵が失踪した。「これ以上の屈辱に耐えられない」娘・美禰子への遺書の真意とは。そして、書き残した「悪魔が来りて笛を吹く」という曲が流れる時、椿家に悲劇が襲いかかる。

    旧華族の没落、戦後という時代背景の中で巻き起こる陰惨な連続殺人事件、まさに横溝正史という世界観が楽しめる。固結びされた不可解な謎へ光を照らすほどに、その影が色濃く闇へと堕ちていく。悪魔ははたしてどちらだったのか。呪われた宿命の中でどう生きるべきか。闇に響く笛の音が耳に残る。

    ミステリとしての仕掛けはシンプルなものの、その事件背景の描き込み、業の深さに魅入られたように読み進めた。タイトルに込められた真の意味を知った時の驚きといったら!決着の鮮やかさと伏線回収の爽快感もあって、最初にさんざん脅かされたほどの後味の悪さはなく意外と読みやすかった。

  •  先日NHKスーパープレミアムで、横溝正史原作の『悪魔が来りて笛を吹く』が放送されていました。
     金田一耕助を探偵役とする小説で有名です。
     代表作は、「本陣殺人事件」「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」他
     そもそも数年前までは、推理小説を読んでいなかったのですが、ツイッターの友達にお薦め本を紹介してもらい、宮部みゆき氏の「火車」「理由」を読んでから嵌ってしまい読み始めました。
     その流れで江戸川乱歩・横溝正史もありきといった具合です。おそらく前者二人の作品は全て持っています。どちらかというとホラー小説に近いものもあり表紙の絵も時代を感じますね。

  • 読了はかなり前です。表紙もこれではなく、おどろおどろしい極彩色の怪しい絵だったのですが(笑)、変わってしまって残念です。
    金田一シリーズの名作に多い、地方で発生する耽美怪奇な殺人事件とはうって変って都会で発生する事件ですが、旧華族の登場や耽美的な雰囲気はそのままで、事件の端緒も血の因業を伴うものなので、金田一耕助が解決する事件としてはそのものぴったしですね。
    現代感覚からすれば「悪魔誕生」は理解し難いものだが(笑)、ページをめくるのももどかしくドキドキ気になったものでした。(笑)
    フルートの音色は小説だと当然わからなくて残念だったのですが、ドラマや映画で流れた音色を聴いてしっくりきました・・・。(笑)
    謎の展開過程も横溝ならではで、金田一耕助シリーズの代表作と言えるだろう。

    ※2012年5月29日追記
     あれっ?表紙が以前のものに戻っている・・・。この方が良いです!

  • 横溝正史とはこんなに時代の先を見ていた作家だったのか。

    正直なところ横溝正史の作品をじっくりと読んだのは初めてだった。
    映像化された作品は観てきたけれど、よくありがちな原作にはあたらないというムーブばかりしていたのである。
    今回読むきっかけになったのは9月4日にNHKで『シリーズ深読み読書会/悪魔が来りて笛を吹く』が再放送されたからである。

    横溝正史は『八つ墓村』『犬神家の一族』『本陣殺人事件』など田舎の因習ものという作品を立て続けに発表し、その後で都会の貴族ものである『悪魔が来りて笛を吹く』を書いたのだと番組内で言っていた。
    そういうわけで私はこの番組を見て、いわゆるネタバレを受けた状態で読むことにした。それぐらい引力が強い作品だった。

    これは結末を言ってしまえば愛した女性と自分が異母兄妹だったことが発覚し、女性が自殺したことがきっかけでその原因となった自分たちの父親を含む一族を殺害した青年が最終的に自殺をする。
    近親相姦故によって生まれた子どもたちが、そのことを知らず惹かれ合った自分たちも近親相姦をしてしまったというやるせない悲劇の話だ
    番組ではこの作品を深読みし、横溝正史はこの時代にこの作品によって何を言いたかったのか、隠されたメッセージは?という深読みをしていく内容だった。

    近親相姦はめずらしいことではない。日本でも繰り返されてきた歴史もある。天皇家でも行われてきたことだ。じゃあ近親相姦が生まれる土壌とは何か?というと家父長制だと言う。家という形、共同体を何がなんでも守るため、そこに外部の血を入れないという排他的な思想が近親相姦の土壌だと有識者たちは語っていた。

    それを考えると確かに横溝正史の作品はいわゆる『家』というものにフォーカスした話が多い。
    『悪魔が来りて笛を吹く』は舞台は都会で貴族の話だけれど、『八つ墓村』『犬神家の一族』なんかは田舎ものだけど確かに一族や〇〇家の話だ。
    そしていずれも悲劇の発端はその家の家長である人間の身勝手な振る舞いである。
    そもそもこいつらが何もやらなければ、何も起こらなかった。
    そういう話が本当に多いなと気づかされた。

    有識者の島田雅彦氏は「日本の小説は家庭小説が多い。家庭とは、家とは暖かく優しい場所ではなく逃れようのない地獄であり、そこで苦しむ人達がいるからこそ家庭小説が多く生まれている」ということを言っていた。
    そう考えるとずっと横溝正史は家(家族、家父長制)と戦う小説を書いてきたのかもしれないと思った。

    令和の今でも残念ながら家父長制から解放されたとは言いづらい状況だと思う。少なくとも私はそう感じている。
    家父長制を倒さねば、戦わねばという志を持った男性作家があの時代にすでにいたのだとすればこれほど心強いことはない。

    今回の『悪魔が来りて笛を吹く』で一番好きな台詞を引用してみる。
    金田一耕助に調査を依頼したストーリーの起点、この作品のヒロインである椿美禰子(みねこ)のこの台詞だ。

    『この家はできるだけはやく処分しましょう。そして、あたしたち、どんなにせまい家でもよいから、明るい、よく陽の当たる場所に住んで、身にしみこんだこの暗いかげを洗いおとしましょうねえ』

    戦後没落していく貴族。殺人事件なんてものが起こったあとに残されたその家の当主が若い女性で、その女性にこんな台詞を言わせるのは横溝正史が家と戦ってきたということを踏まえると非常に示唆に富むものだと思う。

    まさか横溝正史を家父長制批判をした作家だという視点を得ることになるとは思わなかったけれど彼や彼の作品に対する見方がガラリと変わった。
    もっと横溝正史に触れたいと思う。

  • まず、雰囲気がとても良い。
    文章も、『本陣殺人事件』を読んだ時は読みにくいと感じだが、今ではとても読みやすく感じる。

    密室トリックはあまり驚きはしないが、仏像の入れ替え、秋子が見た悪魔の正体、「a=x,b=xならばa=b」を用いた入れ替わり、などの小さなトリックは面白かった。

    そして最終章で今度は別の方向から驚かされた。
    あの曲に込められたメッセージ、そしてタイトルの意味...切なさをも感じさせるラストもとても良かった。

    一点だけ文句を言うのならば、痣はおそらく遺伝はしないので、偶然だとしてもなぜ"偽"東太郎に父の利彦と同じ痣があったのかは一言説明が欲しいところではあるが、全体として見ればそんな些細なことは気にならない読者を引き込むプロットは素晴らしく、横溝作品の良さを感じられた。

  • 悪魔が来たりて笛を吹く 読了
    金田一耕助シリーズ。
    横溝正史作品は一族の人物がたくさん出てきて相関図がないと混乱してしまう。次から次に起こるおぞましい事件の数々を最後の最後にしっかり伏線回収してくれて腑に落ちる。
    ドラマ化や映画化を何度もされてるだけの人気作。
    伏線回収時にネットにある相関図を見るのをオススメ。

  • 【ネタバレあり】



    「悪魔が来りて笛を吹く」タイトルが何度も口に出して言いたくなるくらい好き。どんなメロディーなのかな、映像で見たい。
    他人の空似というミステリにおいてある意味禁じ手と思われるところを、天銀堂事件の犯人のモンタージュ写真を絡めることによってうまく処理していると思った。没落華族のただれた人間関係の末に誕生した悪魔、その結末は悲しいものだった。そんな中、美禰子の強さに救いを感じました。冒頭でも後味の悪さに置いて極端と書かれているけど、後味の悪さで言うと私は獄門島の方が後味悪いと感じたな。

  • 『ひとり横溝正史フェア』の今回の作品はこちら「悪魔が来りて笛を吹く」。

    貴族制度が廃止された日本、社会を揺るがす毒殺事件の容疑者でもある椿元子爵が失踪し遺体が発見される。遺体を確認したにも関わらず、椿元子爵は生きているのではと母親が言うためひとり娘である美禰子が金田一耕助に調査を依頼する。
    金田一耕助が元子爵邸に向かい、一堂揃って元子爵について占いをすることになる。
    そんな中聴こえてきたのは、元子爵が作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」のフルートの調べ。

    今作では有名な「帝銀事件」や貴族制度が廃止された斜陽族といった社会情勢と創作の事件をうまく絡めている。
    また、現実的なことと亡くなった元子爵の亡霊がフルートを吹くといった幻想的なこととがあわさり耽美な魅力に溢れた一冊。

    以前読んだときにはわたし自身が犯罪に余り興味がなかったようで、すらっと読んでしまっていたようだが、今回読み直すと興味深く読むことが出来た。
    「帝銀事件」の犯人とされた平沢貞通は途中で自分は犯人ではないと言い、死刑判決は下っているものの真相が不確かなまま平沢貞通も亡くなってしまっている。
    真相が明かされないまま時間だけ過ぎたこの大事件は、きっと横溝正史にとっても大きな関心事だったことと思う。
    この「帝銀事件」についての物語ではなく、あくまでそれを取り入れただけではあるけれど、こういった現実の事件と絡めると否が応でも魅力は増してくる。

    また、貴族という身分であるがゆえに起きうるとも言える乱れと、家名があるがゆえの苦悩といった、いかにも横溝正史な澱んだ世界が展開されており、醜悪で不快とも言えるのに読む手が止まらない。
    今作では他に勝るとも言えるほど醜悪さが際立っていると思う。
    また内容も重く、濃厚すぎるが先を知らずにはいられない。

    確かこちらの作品も映像化されているはずだが、悪魔の紋章を見せつけるところ以外は殆ど記憶がない。
    映像化するに当たり、肝とも言えるフルート曲は本当に原作にある通りの曲だったのか、もう一度聴いてみたいと思ったりする。

    最後の犯人が名乗り、犯人による記録を美禰子が読む部分は心が痛むような重苦しさがある。
    こちらは読後感が良いとは言えない作品だったが、これはこれで横溝正史の美なのかもしれない。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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