悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.78
  • (154)
  • (242)
  • (290)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 1827
レビュー : 163
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304044

作品紹介・あらすじ

毒殺事件の容疑者椿元子爵が失踪して以来、椿家に次々と惨劇が起こる。自殺他殺を交え七人の命が奪われた。悪魔の吹く嫋々たるフルートの音色を背景に、妖異な雰囲気とサスペンス!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読了はかなり前です。表紙もこれではなく、おどろおどろしい極彩色の怪しい絵だったのですが(笑)、変わってしまって残念です。
    金田一シリーズの名作に多い、地方で発生する耽美怪奇な殺人事件とはうって変って都会で発生する事件ですが、旧華族の登場や耽美的な雰囲気はそのままで、事件の端緒も血の因業を伴うものなので、金田一耕助が解決する事件としてはそのものぴったしですね。
    現代感覚からすれば「悪魔誕生」は理解し難いものだが(笑)、ページをめくるのももどかしくドキドキ気になったものでした。(笑)
    フルートの音色は小説だと当然わからなくて残念だったのですが、ドラマや映画で流れた音色を聴いてしっくりきました・・・。(笑)
    謎の展開過程も横溝ならではで、金田一耕助シリーズの代表作と言えるだろう。

    ※2012年5月29日追記
     あれっ?表紙が以前のものに戻っている・・・。この方が良いです!

  • 『ひとり横溝正史フェア』の今回の作品はこちら「悪魔が来りて笛を吹く」。

    貴族制度が廃止された日本、社会を揺るがす毒殺事件の容疑者でもある椿元子爵が失踪し遺体が発見される。遺体を確認したにも関わらず、椿元子爵は生きているのではと母親が言うためひとり娘である美禰子が金田一耕助に調査を依頼する。
    金田一耕助が元子爵邸に向かい、一堂揃って元子爵について占いをすることになる。
    そんな中聴こえてきたのは、元子爵が作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」のフルートの調べ。

    今作では有名な「帝銀事件」や貴族制度が廃止された斜陽族といった社会情勢と創作の事件をうまく絡めている。
    また、現実的なことと亡くなった元子爵の亡霊がフルートを吹くといった幻想的なこととがあわさり耽美な魅力に溢れた一冊。

    以前読んだときにはわたし自身が犯罪に余り興味がなかったようで、すらっと読んでしまっていたようだが、今回読み直すと興味深く読むことが出来た。
    「帝銀事件」の犯人とされた平沢貞通は途中で自分は犯人ではないと言い、死刑判決は下っているものの真相が不確かなまま平沢貞通も亡くなってしまっている。
    真相が明かされないまま時間だけ過ぎたこの大事件は、きっと横溝正史にとっても大きな関心事だったことと思う。
    この「帝銀事件」についての物語ではなく、あくまでそれを取り入れただけではあるけれど、こういった現実の事件と絡めると否が応でも魅力は増してくる。

    また、貴族という身分であるがゆえに起きうるとも言える乱れと、家名があるがゆえの苦悩といった、いかにも横溝正史な澱んだ世界が展開されており、醜悪で不快とも言えるのに読む手が止まらない。
    今作では他に勝るとも言えるほど醜悪さが際立っていると思う。
    また内容も重く、濃厚すぎるが先を知らずにはいられない。

    確かこちらの作品も映像化されているはずだが、悪魔の紋章を見せつけるところ以外は殆ど記憶がない。
    映像化するに当たり、肝とも言えるフルート曲は本当に原作にある通りの曲だったのか、もう一度聴いてみたいと思ったりする。

    最後の犯人が名乗り、犯人による記録を美禰子が読む部分は心が痛むような重苦しさがある。
    こちらは読後感が良いとは言えない作品だったが、これはこれで横溝正史の美なのかもしれない。

  • 犯行に至る動機は、横溝が描く人間関係の中でも濃いものになっている。『本陣〜』のトリックも好きですが、本作のシンプルな密室トリックの方も良かったです。
    ミステリ的にはも少し伏線入れてくれると、と物足りなさを感じつつも、横溝小説としては多分に楽しめました。

  • 【ネタバレあり】



    「悪魔が来りて笛を吹く」タイトルが何度も口に出して言いたくなるくらい好き。どんなメロディーなのかな、映像で見たい。
    他人の空似というミステリにおいてある意味禁じ手と思われるところを、天銀堂事件の犯人のモンタージュ写真を絡めることによってうまく処理していると思った。没落華族のただれた人間関係の末に誕生した悪魔、その結末は悲しいものだった。そんな中、美禰子の強さに救いを感じました。冒頭でも後味の悪さに置いて極端と書かれているけど、後味の悪さで言うと私は獄門島の方が後味悪いと感じたな。

  • 何だこの表紙。というのはさておき、金田一シリーズではトップ5には入る代表作。

    内容的には、横溝正史のある種、場当たり的で混沌とした中での連続殺人で、金田一耕助が悩み解いているあいだに被害者が増えるというパターン。

    その中でよくあるのが、「そこまで予想しているのなら先回りしろよ」というものだが、本作は結構ギリギリのタイミングで殺人事件が起こるので、さほど気にはならない。

    ただし、結局殺人現場から推理するのは、連続殺人のうちのたった1つだし、オチも科学的に全く説明の付かないものだし、解決もスッキリ感はすくない。ストーリーも場当たり的で、結局は出てくる怪しいキャラクターたちが全て。

    とはいえ、2段3段のどんでん返しもなく、裏もないのに、ここまで読みこませられるのは、強烈なキャラクターをつくり上げる横溝作品ならではのものだろう。

  • 「ああ、悪魔が来たりて笛を吹く」 横溝氏お得意のどろどろの人間関係。フルートはそういうことだったのか……

  • 宝石強盗大量殺人・天銀堂事件。その容疑者の椿元子爵が失踪した。「これ以上の屈辱に耐えられない」娘・美禰子への遺書の真意とは。そして、書き残した「悪魔が来りて笛を吹く」という曲が流れる時、椿家に悲劇が襲いかかる。

    旧華族の没落、戦後という時代背景の中で巻き起こる陰惨な連続殺人事件、まさに横溝正史という世界観が楽しめる。固結びされた不可解な謎へ光を照らすほどに、その影が色濃く闇へと堕ちていく。悪魔ははたしてどちらだったのか。呪われた宿命の中でどう生きるべきか。闇に響く笛の音が耳に残る。

    ミステリとしての仕掛けはシンプルなものの、その事件背景の描き込み、業の深さに魅入られたように読み進めた。タイトルに込められた真の意味を知った時の驚きといったら!決着の鮮やかさと伏線回収の爽快感もあって、最初にさんざん脅かされたほどの後味の悪さはなく意外と読みやすかった。

  • 金田一耕助シリーズ、3作目。特に順番は決まってないとのことだから、当時出版された順に読み進めている。

    悪魔が来りて笛を吹く、悪魔は誰なのか。死んだと思われた人物は生きているのか。世間に出せない悪魔のような秘密とは何か。

    最後の最後までワクワクさせられる展開、特に最後の5ページぐらいはぞくっときた。
    なぜこの題名なのか、最後まで読んだ人しか分からない。ここまでピタリとくる題名もそうそうないし、なるほどと思わされた。

    令和の時代じゃなかなか書けない内容だけど、でも人間の本質は善ではなく、悪だと思う。そこに刺激を受けるし、楽しいと感じる。もちろん現実ではあり得ないけど、本の中でそれを追体験させることができる。これこそが読書の醍醐味ではないか。
    いっとき、「バトルロワイヤル」が社会現象になった時も人が求めているからこそであり、今の抑圧された世の中じゃいつか限界が来るよう気がしてならない。

    この本もいつまでも名作と言われ、邪悪を含んだありのままの言葉で後世に残ってほしいものだ。

  • 金田一耕助のもとに椿美禰子という女性が依頼に訪れる。
    彼女は世間を騒がせた天銀堂事件の容疑者であった椿英輔の娘であった。
    容疑をかけられた後に失踪し、遺書を残して自殺。
    その密告をしたらしき者は身内にあるらしい。
    そんな中、椿子爵が生きているという幻想にとりつかれている母が子爵らしき人物を実際に見かけた-本当に父は生きているのか?
    金田一は美禰子に招かれ、椿邸を訪れる。
    そこで訪れる悲劇とは。

    *****

    ドロドロ。
    旧華族の面々がずらり、どの人物も皆腹に一物ある雰囲気。
    悲劇の人物として、椿英輔子爵。
    彼の妻、年齢よりも若く見え、美しいあき(火に禾)子夫人は伯父や兄に倣うかのように子爵を見下していた。
    そのために、彼女は子爵が実は生きていて、怨みを晴らしに来るのではと恐怖にとりつかれることになる。
    身内では娘の美禰子だけが父を敬い、心配し、その死を悲しんでいたんだろう。

    起こる事件はどれも恐ろしく、金田一のキャラクタで緩和されるもひやっとするものばかり。
    それ以上に事件の発端となった出来事の裏は怖かった。
    犯行を暴かれてもなお動じず、肝が据わった犯人を生みだすことになった過去の悲劇。
    罪のない女性や、その子供が犠牲になるということは悲しかった。

    ヒロイン?美禰子の芯の強さは救い。

  • 散らばっていた謎が全て回収されて行く気持ち良さは圧巻。横溝作品は有名過ぎないものの方が真価が分かる気がする。一般に浸透しきったものは映像やそのオマージュ作品のイメージがちらついて、純粋に物語を楽しめないので……
    文章は読み易く、場面転換もテンポよく。幾筋も並行していたと思わせるストーリーが最後には絡み合って犯人と動機に結び付く。鮮やか。
    ただし現代のサイコパス殺人犯やスプラッタな描写に慣れた身には、ミステリーやホラーの衝撃度が柔らかい。使われる語句や明治の人の言葉遣いに日本らしい情感があって、その調子で語られるからしっとりした陰惨さが際立つ。そこが横溝作品で味わえる独特の怖さと魅力なんだろうと思う。

全163件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1902年、神戸市に生まれる。旧制大阪薬専卒。26年、博文館に入社。「新青年」「探偵小説」の編集長を歴任し、32年に退社後、文筆活動に入る。信州での療養、岡山での疎開生活を経て、戦後は探偵小説誌「宝石」に、『本陣殺人事件』(第1回探偵作家クラブ賞長編賞)、『獄門島』『悪魔の手毬唄』など、名作を次々に発表。76年、映画「犬神家の一族』で爆発的横溝ブームが到来。いまもなお多くの読者の支持を得ている。82年、永眠。

「2021年 『雪割草』 で使われていた紹介文から引用しています。」

横溝正史の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×