夜歩く (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304075

作品紹介・あらすじ

古神家の令嬢八千代に舞い込んだ「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と佝僂の写真は陰惨な殺人事件の発端であった。卓抜なトリックで推理小説の限界に挑んだ力作。

感想・レビュー・書評

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  • ゆったり横溝正史を読み直そう!まだまだ寿命が残っていると信じて!(嫌な言い方すな)の回です

    というわけでこれまた名作中の名作『夜歩く』を読み直しです!もう一緒に歩いちゃいますよ!(そんな話しでない)

    恐らく2、3回読んでるはずなんですが、狂おしいくらい覚えてないw
    でもそのおかげでしっかり堪能できたので、むしろそんな自分が愛おしい
    まぁさすがに終盤で思い出しましたけどね

    もう、業界で言うところの「全部のせ」です(なに業界よ)
    チリンチリン♪「オーダー!全部のせ〜」です

    実は金田一耕助シリーズ3作目なんですが、3作目にしてめちゃくちゃ乗せてきやがってるのよ!初期だからできた暴挙とも言える
    正史思い切ったなっていうね

    設定にしろトリックにしろこれでもかって詰め込んできてます
    元華族の古神家に洋風の館、事件を予告する手紙、佝僂、夢遊病、兄妹ではないと思われている兄妹、兄妹と思われている男女、日本刀、岡山県鬼首村、顔のない死体、謎の女、アリバイトリック、そして…まぁこれ以上並べるとがっつりネタバレになるのでやめときますが、とにかくまだまだ乗せてきますからね

    それでいてこのボリュームでうまくまとめてるのがほんと凄い!
    ただまぁあまりに詰め込みすぎて金田一耕助はただの説明係になってますけどね

    いやでもほんと今の子たちにも読んでほしいわ〜正史読んでほしいわ〜

    次はなに読もうかな〜♪

    • ひまわりめろんさん
      おびー

      遊園地のような夢のあるレビューってことやな!さすがおびー分かってるわー、なんか照れるわー
      おびー

      遊園地のような夢のあるレビューってことやな!さすがおびー分かってるわー、なんか照れるわー
      2024/02/22
    • ひまわりめろんさん
      あ!リスペクトしてるのに名前間違えたまぁいいか
      あ!リスペクトしてるのに名前間違えたまぁいいか
      2024/02/22
    • おびのりさん
      寂れてはいる。
      寂れてはいる。
      2024/02/22
  • 物語の面白さと結晶のような完成度に圧倒されつつ、頁を閉じた。
    冒頭の技がすごい。のっけから事情のわからない長い台詞。会話が続き、なんだなんだと読んでいくうち、おどろおどろしい殺人事件にあれよあれよと巻き込まれてしまう。視点の工夫から読み手は目撃者になる。金田一の登場にほっとした。

    「イヤミス」に代表される現代ミステリーをプラスチックとするなら、横溝正史の推理小説は樹木。忌むべき内容なのに、どこか潤う。日本の原風景がみえるからか。
    この作品は横溝が自信喪失の中で書いたものらしい。それを念頭に読むと心に迫るものがある。
    読んでよかった。

  • 金田一耕助=石坂浩二さんの私でしたので、完全に初読でした。ただ、いろいろとフェアではないとか、某海外作品の手法とか、うっすらと警戒しながら読みました。
    最後まで動機が解らず、ミスリードされたまま独白で、え!そっち側でしたか・・・。
    トリックや病気よりも、関係者の救いようのない嫉妬心や底無しのドロドロ感に引き込まれました。

    本当に作中の男の嫉妬は醜いな。
    金田一耕助の爽やかさに救われました。

  • 横溝正史初読
    文体が古くて最初は読みにくいかなと思ったけど、ストーリーが進んでいくとあまり気にならなくなった

    ■金田一耕助
    登場が後半で、最後だけ出てきて解決した感じ
    半分安楽椅子探偵だったなぁ(笑)
    あまりに出ないので最初金田一出ない作品なんだと思ってた
    個人的には金田一がいる状態で最初の事件が起きて推理しながら解決するのが見たかった…

    ■叙述トリック
    『アクロイド殺し』的な、『悲しみのイレーヌ』的な見たことのあるトリックではあるが書かれてるのが古いからなぁ(クリスティよりは遅いけど(^^;)
    こちらの方が先だろう
    後発の作品を先に色々読んでしまってるから新鮮味は少ないけど、この時代に書いていたのはやっぱりすごいと思う
    後に書く人たちは二番煎じにならないようにアイディア出さないといけないから大変だ

    夜歩くというタイトルが好き
    夢遊病のことだったのね
    次回はがっつり金田一作品も読んでみたい

  • 古神家の令嬢・八千代のもとへ届いた奇妙な手紙。そこに端を発した古神家の連続殺人事件。キャバレーで起きた銃撃事件の謎、首なしで発見される被害者たち。狂気が蔓延る旧家の因縁を金田一耕助が解き明かす。

    偏執狂な趣味をドロドロにして固めたような古神家の人々。その家の倅・直記の友人であり小説家・屋代寅太の視点で綴られていく。ヒリヒリした空気に包まれた館の恐ろしさ。金田一の出番は中盤から。その軽やかな仕草や言動がこれほど癒しになるとは!今まで読んだ作品でも一番ほっとしたかもしれない。

    銃撃事件、首なし死体、血塗られた刀、夢遊病、せむし男など暗黒趣味たっぷり。謎と狂気に満ちた暗夜を頼りなく歩くような読み心地。悪夢の世界が意外な一点から崩れていくところが見事だった。終盤の展開も見せ方が面白い。ちょっと滑稽に感じられて笑ってしまう。読み終わった後に冒頭から読み直してみると、これまた皮肉が効いてて味わい深いね。

  • 戦後間もない頃の、旧家の殺人事件。登場人物がどいつもこいつもどこかしら病んでいて、これだよ~~とわくわくしながら読み進める。金田一は中盤からしか登場しないけど、相変わらずの好人物で和む。
    まったく予想してなかった終章の展開には興奮した。久しぶりに好みにドストライクぶっささる本を読んで、満足です。
    この本、近所のダイエーの本の交換所コーナー(読み終わった本3冊→1冊に交換できる)で手に入れた本です。こういうのに出会えるからやっぱ読書は最高だな。

  • もう、タイトルからしてなんか怖いもの。
    雰囲気抜群だ。

    半分過ぎにやっと探偵登場。
    なるほどなるほど。そっちだったか。

  • 題名の「夜歩く」、事件の被害者である夢遊病を持つ一族を指しているのだろうが、決定的な絶望と苦悩、憎悪と嫌悪を抱き、計画を進めてきた真犯人の、最後までの暗い道のりをも暗示しているように思えた。

  • 現代だとあらゆる面で書けない種類のミステリー。首を切っただけで遺体を別人に偽装できる鑑識の不備、障害を指す差別用語の頻出、しかも障害自体がトリックに関わる。時代小説の一種のつもりで読むと、時代背景そのものが興味深い。
    このシリーズは歴史的な因縁に縛られたドロドロの人間関係が持ち味。本作でも旧主と家老、領民と旧主といった江戸時代に遡る因縁が物語の背景に横たわっている。昔からの迷信や呪いといった話題に、現代よりずっとリアリティがある。
    日本刀による殺人という行為自体への距離感も、現代とは違う。作中人物の発言にも読み取れる。
    「われわれの年頃の人間は、文化というやつに去勢されているから、とても刀を振りまわすような度胸はない。(略)おやじは今年六十五だが、おやじの生まれた明治二十年前後の日本は、まだまだ殺伐な時代だったろう。それにおやじのおやじというやつがいる。こいつは文字どおり維新の白刃の下をくぐって来ている。人を斬るぐらい屁とも思ってやアしねえ。(p95)」
    「おれも戦争で、ずいぶんたくさん首を斬ったから、首斬りにゃ慣れているんだ(p317)」
    前者は作中世界においても異常とされる振る舞いに関する言及だが、後者は「普通の人」に見えていた犯人の述懐。

  • 小谷野敦氏の読後レビューを発見!

    小谷野敦2015年8月22日
    『ひどミス』のレビューで勧められた(?)ので読んでみたが、なるほど一種の叙述トリックではあろう。
    しかしまあ色々ごてごてと猟奇趣味で飾り立てて人物も例によってどたどた出てくるからげんなりしてしまう。
    妖刀村正(なお「伊勢音頭」が出てくるところは、知らない読者のために注をつけたほうがよくはないか)だのくるの男二人だの、ちまちました時間トリックだの首のない死体だの体の傷痕だのまあごちゃごちゃした小説だ。
    まあ『ロートレック荘事件』にヒントを与えたようなところだけが功とみて二点にしておこう。
    しかし金田一耕助って全員死んでからしか解決できないのかい。

    まず、上記の小谷野氏の言葉「しかし金田一耕助って全員死んでからしか解決できないのかい」というのは、直記が殺される前にきちんと解決しているので少なくとも今作品では当たっていません。

    そして、ごちゃごちゃした猟奇趣味に辟易しているようですが、むしろ犯人目線で綴られた事実関係のミスリードこそ非難されるべき筋でしょう。

    実際に小説後半近くまで、本当の犯人なのに直記を犯人だと疑い怖がる場面(P257,P269,P287)などはあざとすぎます。

    とはいえ、こうした遺体交換トリックは島田荘司氏の名作「占星術殺人事件」への布石になっていると思われる点からも、もしこの作品において当該アイディアが初出だとすれば古典トリック発明者としてもっと評価されるべき作品なのかもしれませんね。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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