幽霊男 金田一耕助ファイル10 (角川文庫 よ 5-10 金田一耕助ファイル 10)
- KADOKAWA (1974年5月23日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041304143
作品紹介・あらすじ
湯を真っ赤に染めて死んでいる全裸の女。ブームに乗って大いに繁盛する、いかがわしいヌードクラブの三人の女が次々に惨殺された。それも金田一耕助や等々力警部の眼前で――!
感想・レビュー・書評
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モデルを仲介する共栄美術倶楽部へ現れた怪人、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽で殺されて発見された!猟奇マニアの巣である倶楽部に巻き起こる連続殺人に金田一耕助が挑む!
幽霊男が巻き起こす残虐な劇場型犯罪!金田一だけではなく、読者ですら二転三転と振り回されて読む手が止まらない。金田一が激昂するシーンはこちらも思わず力が入ってしまう。幽霊のように手が届かないのが歯痒い。ただ、それほど犯人は狡猾であり、状況が錯綜していた事件だった。
今回活躍するのが最初の被害者の弟・浩吉!怪人に勇気を持って立ち向かう小林少年ポジション!絡み合う愛憎の沼で、唯一の光だった。その勇気を忘れないでほしいと願う。そして、犯人。シリーズで最も卑劣で最悪なやつだった。リュークのデスノートに名前を書かれて死んでほしいレベル。
事件がどんどん展開してはひっくり返っていくので想像以上に楽しめた。でも、あまりに殺人を阻止できないのが読んでいてしんどい(☆3と迷う)。金田一よ、もうちょっと何とかしてくれ(笑) 金田一の痛烈な皮肉と、等々力警部の一刀両断は救いか。警部と同感すぎる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸川乱歩の怪奇シリーズや怪人二十面相などを彷彿とさせられる作品。一風変わった舞台設定、連続殺人事件と活動的な金田一耕助の行動展開が、他の作品と少し趣を異にする印象。
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幽霊男という名の怪しい男がモデル事務所にふらっと現れ、モデルと契約を結ぶ。契約日、そのモデルがホテルの1室の浴槽の中で美しい遺体となって発見される。
ファントムという単語にインスパイアされて日本語に直したのが幽霊男。標的とされるのは美しい若い女性。ヌード写真のモデルたち。
金田一耕助シリーズです。次のターゲットは誰か。モデルの周りには怪しい男たち。金田一に依頼をしたのは誰か。タイトルはちょっと無粋な感じもしますが、面白く読みました。 -
事件順に追う金田一シリーズ再開。表紙は杉本画伯のチープなおどろおどろしさを漂わす昭和52年版。
昭和29年の時代設定。いかがわしいヌードクラブに発生した猟奇的殺人事件。朝鮮戦争の好景気に湧く中でも、不穏な雰囲気を残した時代なのか快楽殺人をテーマにした現代的な事件。なかなかに凝ったトリックだけれどもスピード間もあって一気読み。珍しく金田一も事件を食い止める。やっぱり紙の本は雰囲気があっていいなぁ。 -
読者に謎解きのように話しかける様子がところどころにあり、少年少女向けにも感じたが、最後の方にいくにつれて、そんな雰囲気はなくなった。今回は、いろんな見方で容疑者がいて誰が犯人なのか分からなかった。この人かなと思うと違ったりして。少し子ども向けっぽい不気味さだけど、犯人がなかなか分からず、さらに金田一耕助が全然犯人捕まえられないもどかしさがあり、気になる展開で面白かった。
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いろんな人物の思惑が錯綜するため、出来事がかなり複雑になっているけど、最後には綺麗に繋がるのは流石。
ヌードモデルが次々ショッキングな遺体で発見されるという展開も横溝先生らしくて良い。
それにしても、今回は金田一史上、最低最悪の犯人ではなかろうか… -
なんか一つ一つの事件のビジュアルは凄いけど全体で見るとパッとしないなぁ…幽霊男なの?吸血鬼なの???あと男がほぼ全員キモい
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1954(昭和29)年発表の金田一耕助もの。『獄門島』(1948)と『白と黒』(1961)の中間辺りの時期だ。
この付近の東京界隈の世相がどんな感じだったのかよく知らないが、本作に出てくる様相はかなりいかがわしい。写真や絵画のためのヌードモデルを派遣する神田の「共栄美術倶楽部」なる事務所が最初の舞台となっており、どうやら当時はカメラを持ちヌード写真を撮ることが流行っていたようだ。だが、これはいかがわしい会社なので契約した客とモデルの間で性交渉もありがちだという設定。この会社に所属するモデルの一人は、のちにストリッパーに転身する。横溝正史は当時のこのような「いかがわしい界隈」をとても愛好していたのかもしれない。
本作は怪奇趣味を前面に出していて、以前の『真珠郎』(1937)などを彷彿とさせるが、何故かエモーショナルになりきれず、どこかB級映画的な安っぽさを漂わせる。
ストーリー展開は、まるで江戸川乱歩の『怪人二十面相』を思わせるような荒々しい活劇調を呈して進み、かなり現実離れした世界が繰り広げられる。後の『白と黒』『仮面舞踏会』(1974)に見られたような、昭和がなだれ込んでいった「シラケ化」の波動が、ここにすでに始まっているのだろうか。
しかも、ここでも作者は「ヘンタイ的な性」の主題に突入していく。
全体的にB級映画ふうであるが、ロバート・ロドリゲス監督の確信犯的なそれよりも面白くはない。だが、何となく昭和の東京のウェットないかがわしさをさらけ出している点に興味を覚える。 -
昔読んだはずが殆ど記憶になかった。少年探偵団シリーズ横溝版みたいなライトな内容で笑っちゃうような展開も多い。しかし人はバタバタ死ぬし死体の美術集とか猟奇なのは流石。
著者プロフィール
横溝正史の作品






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