- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041304341
感想・レビュー・書評
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富士山の裾野に建つ『名琅荘』(迷路荘)を舞台に
巻き起こる惨劇ーーー。
折しもそこの主人に招かれた金田一耕助を中心に、登場人物もわんさと描かれる。
が、どの人物をとっても表面的な人物像に留まらない怪しさがあって、次々に起こる事件をより複雑に、おどろおどろしく際立たせている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
富士の裾野に建てられた名琅荘。屋敷内に抜け穴などが仕掛けてあることから、迷路荘と呼ばれていた。屋敷の主・篠崎に呼ばれた金田一耕助は殺人事件に巻き込まれる。20年前の惨劇に繋がる事件を解き明かせるか。
華族!過去の惨劇!密室!謎の洞窟!渦巻く情欲!いわくつき物件で巻き起こるいわくつきな血族の物語を書かせたら安定の面白さがある横溝正史。同じく洞窟を冒険する八つ墓村や、他の一族のドロドロに比べたらマイルドでオーソドックスなミステリでなんだか安心する。事件を追っていた老刑事・井川とのやり取りも小気味いい。
迷路じみた館と洞窟に、迷路のように入り組んだ人間模様。誰もが何かを隠し、己の正義、誇り、欲望の中を進んでいる。人間関係を解くというのは本当に一筋縄ではいかないものだなと思い知らされる。金田一が嫌悪する犯人の因果応報な末路も皮肉だった。
「人間の人格を形成するについて大事なことは、他からあたえられる恩恵だけではなく、他からうける信頼だ」
前半にある言葉なんだけど、読み終わってみると考えさせられる一言だと感じる。最後に見せた金田一の粋な取り計らいも好き。
あと、屋敷に抜け穴とか聞くと、今では綾辻行人先生の館シリーズを思い出すよね。迷路荘とかダリヤの間とか、館シリーズにも少し通じるキーワードもちらほらあって楽しかった。 -
確かに、洞窟探検にズルズルの和装は不向きだと思った。
推理というより、冒険譚のような印象を受けました。 -
金田一シリーズって、人間の業炸裂しすぎな有象無象がこれでもかってくらい跋扈するよな〜という思いを読むたび新たにします(褒めてる)。
旧家で権勢を欲しいままにする刀自。
地元有力者である夫と美しすぎる妻。
その周囲に群がり恩恵に預かろうとする人々。
清涼剤ポジションの、若いアベック(古)。
そんな人々を脅かす、肉体的・精神的に「何かが欠損している」人間。
本作の登場人物も、そんなシリーズ読了本のテンプレをしっかり踏襲しています。何とかの一つ覚えかっていうくらい、他作品と代わり映えなさすぎィ(褒めてる。
強いて違いを挙げるなら、いつもより刑事勢がいい味出してるってことでしょうか。その中の1人のベテラン刑事なんて、キャラ立ちすぎてて一瞬疑っちゃったくらいですよ。
かつて悲劇の起こった山奥の山荘・迷路荘に集結した関係者達。ホテルになる前の屋敷の最後の姿を偲び、かつて惨禍に散った命を弔おう…。そんな意図で集まった筈の男女は、しかしかつて結婚相手を奪い奪われ・振り振られという痴情のもつれを経てきた人ばかり。
曰くありげな人々が集い、金田一探偵が現地に到着したその日、果たして第一の惨劇が幕を開けた!!
って感じですかね。
うーん、何てテンプr(略
それにしても、いつもは真犯人に同情の余地を残す金田一シリーズにあって、今作は少ーし異色ですね。いつも少なからぬ憐憫の情を示す金田一探偵が、今回は一顧だに値しないと言わんばかりの素っ気なさで犯人の犯行を推理します。
なーんか今回はイマイチだな〜と終章まで読み進めると、どっこいその後に語られる真相がヤバかった。もうその犯行シーンの絵面の恐ろしさときたら…想像するだに背筋が凍ります。
積年の恨み・妄執の果てを描かせたら、横溝御大の右に出る推理作家はいませんね!(褒めてる -
金田一シリーズにしては普通の事件。全員が何かを隠してるので、ギリギリまで分からなかった。
最後の金田一の優しさが沁みる。 -
読んだとは思うがほぼ覚えていなかった。何とも怖いが、面白かった。
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何回目かの読了。
金田一耕助シリーズは大好きですが
こちらは良作止まりと思っています。
悪魔が来りて笛を吹くと八つ墓村のエッセンスも
感じるのですが、どちらにも及ばず。
なんていうか美しくないんですよね。
特に刑事さん達とワヤワヤしているところなど、
なんだか映像化された作品の台本を読んでいる
かのように感じます。
とはいうものの、さすがにその辺のミステリでは
足元にも及ばない風格と面白さはあるのですが。 -
金田一ジッチャンの方の事件簿。
冒頭に登場人物一覧ページがあって、非常に助かる作品。
登場人物が多い上に、血族・姻族の関係が複雑なので、中盤までは一覧を見返すことしばしば。
トリック全般はどうということはないが、タイトルに「惨劇」とある通り、一部被害者のやられ方が、まぁ酷い。
それと、金田一作品には珍しく犯人が救いようの無いワルで(※)、金田一も嫌悪感を顕わにしている。
※孫の『金田一少年の事件簿』でも共通しているが、大抵は被害者の方がどうしようもない奴で、犯人には酌むべき事情がある場合がほとんど。
加えて、全編通してのヒロインが存在しないのも珍しい。
強いて言うなら、迷路荘の主の娘、陽子だが、タマッペこと女中のタマ子と合わせても、他の作品のヒロイン一人分にも満たない程度の存在。
もちろん面白い作品ではあるのだが、若干冗長か。