悪霊島(下) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304686

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ帰りの富豪に依頼された人探しのために、金田一耕助は久しぶりに岡山県へ行く。そこで磯川警部と旧交を暖めたのも束の間、警部の話から探していた人物が怪死したらしいことを知る。

    こういった物語が、上巻にあるような恐ろしく謎めいた言葉の書き出しで始まる。
    こういう、今から恐ろしい物語が始まるよ、と自然に読者を横溝正史の世界に引きずりこむ盛り上げの上手さが横溝正史作品の魅力だと思う。

    横溝正史の作品には「平家物語」や平家の落人といったものがよくあり、岡山県と平家は深く繋がっているのだなと感じる。「平家物語」も読むと更に愉しめるのだろうが、ちょっと読めそうにない。

    この作品では、蒸発という出来事が頻発する。
    蒸発という表現に時代を感じる。今なら失踪というところだが、昭和の時代では確かに蒸発とよく表現された。
    こぼした湯が蒸発して姿を消す様と、人がある時忽然と姿を消す様が似ているために使われたのだと思うが、これも死語になるのだろうか。

    また、シャム双生児という言葉も出てくる。
    腰の部分で結合した双子。こういう気の毒な状況で生まれた子供を、恐ろしさを高めるために使うのは現代にはそぐわない気もするが、昭和の時代は障害のあるひとを差別語を用いて悪意なく呼ぶひとは普通にいた。横溝正史の作品を読むと時代の流れを感じる。

    どの作品にも共通の殺人事件がドンドン起き、大概殺されたあと金田一耕助が推理という、もっと早く解決してよとツッコミたくなるところは同じであり、洞窟を探検するところなどの冒険のあるのも横溝作品には暫しある定番の面白さだ。

    この作品の魅力は、金田一耕助シリーズにおいて金田一耕助と人気を二分するのではという磯川警部について多く描かれているところだ。わたし自身が金田一耕助よりも磯川警部がお気に入りだ。
    「悪魔の手毬唄」においても磯川警部の切なさが印象に残ったが、金田一耕助も磯川警部も年を取り、老いが感じられるときに「悪霊島」で綴られる内容は、本当に辛く哀しい。磯川警部ファンには、益々磯川警部が好きにならざるを得ない。

    若い頃の叶わぬ恋が忘れられず、富豪となって故郷へ帰ってくる男。これが金田一耕助の依頼人なのだが、まるっきりギャツビーではないか。

    犯人は誰かなと推理小説本来の愉しみは勿論あり、そこに「平家物語」が絡んだり、昭和の時代を窺ったり、磯川警部の気持ちを読んで哀しくなったりと様々に愉しめる。

    最後はまた金田一耕助が真相について沈黙するというわたしには異議ありな形であるけれど、今回は愉しめたので文句なしにしたい。

    最近だらけ気味だった『ひとり横溝正史フェア』であったけれど、これだよ、こういうのを待ってたよと嬉しくなる作品だった。
    おかげで最後まで『ひとり横溝正史フェア』を続けられそうだ。

  • 金田一耕助ファイル#19

  • 2016.8.19

  • 金田一耕助シリーズ終盤のまさに大作でしたね!刑部島を舞台にした連続殺人事件の謎を金田一耕助が見事解明する訳ですが、事件の背景に複雑な人間関係が絡んでいるところも見事でしたし、最後のオチもなかなか秀逸でした!
    ビートルズの「Let it be」を主題歌にした「鵺の鳴く夜は恐ろしい!」というCMでも話題になった映画も観てみたくなりました!
    さあ残すところ壮大だった金田一耕助シリーズも「病院坂の首縊りの家」を残すのみとなりました。心して読みたいと思います。

  • 旧版(緑304)で読了

  • クライマックスへ向けて怒涛の展開と謎解明はスッキリした!
    読み終わってみると、やっぱり金田一さんは素晴らしい。

  • 映画の宣伝では「ぬえの鳴く夜は恐ろしい」だったと思うけど小説では「ぬえの鳴く夜に気をつけろ」。ちょっと変えてたらしい。

    さて「悪霊島」。
    おもしろかったー
    猟奇的でいいよ。洞窟も出てくるし。
    ただ矛盾というか、それおかしいんじゃない?とかあそこ説明ないよね?というのがいくつか。
    例えば、懲役3年執行猶予2年、って判決はありえるのか?
    まあその辺も含め、先生のりのりって感じで良かった。

    ただしエピローグの一番最後。
    証拠はない(というか金田一も警察もまともに調べたのか?)というのもあるかもしれないけど、犯罪を見てみぬふりってのはいかがなものか。
    クライアントには弱いのか? 金持ちには弱いのか?
    金田一、しっかりせい。

    エピローグがなければ★4つなんだけどなあ。
    どうしようかなあ…

    こっちも見てみぬふりで(>_<)、★4つ。

  • なんで犯人は片帆を殺したの??最後まで説明がないのでもやもやする。
    あと、冒頭にシャム双生児なんて興味深い題材持ってきてほとんどストーリーに絡んでないというか、え、それだけ?みたいなのもなあ…
    上手くすれば大傑作になりそうなのに色々惜しい

  • とにかく読みづらくて、3週間くらいかかっちゃった......

  • ネタバレありの書評。
    これから読みたいと思っている方は要注意。

    ストーリーの中核の一つとなる手紙に細工があって、「実はこうでした」という種明かしをして話を一気にひっくり返すのは、ちょっとどうかなーという感じ。上巻でギリギリ、その辺を推測できそうな描写があったりするけど、上巻では手紙の内容をそのまま文章で書いたのみ。一方、下巻で新たに隠された便箋があると判明した時には、手紙の体裁を見せるために便箋1枚ごとに枠で囲んであったけど、このトリックを使うなら上巻からこのようにして、読者に推測の余地を残さないと卑怯かな、という印象が拭えません。
    これが、☆をだいぶ減らした理由の一つ。

    二つ目の理由は、犯人と最後の謎解きの舞台とが、横溝正史の十八番過ぎて面白くもなんともなかった、というところ。
    隠し扉、地下の迷宮、最後にすべてを暴露してくれる犯人、捕まらず(捕まえられず)に死ぬ犯人、そして犯人(たち)のキャラクターなどなど、ものの見事に「どれか別の横溝作品」でも出てくるものばかりです。目新しさがなければ面白くもないわけで、この辺、ホームズやポワロの方がよっぽど気が利いてると思います。まぁホームズもポワロも、推理の飛躍や舞台の描写の弱さなどといった点では時折アレなのですが、少なくとも犯人のキャラクターは作品ごとにしっかり違ってます。

    とにかくここまで来ると、著者は女性に対して何か特別な偏見や劣等感、恐怖心を抱くようなトラウマでもあったのかな、という下種の勘繰りまでしてします。横溝作品を読むならば、最初から「女性」を疑っておけば犯人捜しそのものは難しくない、と、僕が感じているのも、決して無茶な理論ではないと思います。

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