日本以外全部沈没 パニック短篇集 (角川文庫 つ 2-16)
- KADOKAWA (2006年6月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041305225
感想・レビュー・書評
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⚫︎あらすじ(本概要より転載)
小松左京『日本沈没』のパロディで、日本列島以外の文明を持った人類が住む陸地ほぼすべてが沈没してしまった世界を舞台に、唯一残った日本へ殺到する、世界の著名人の悲惨な境遇と世界で一番偉い人種となる日本人と三等市民である外国人の軋轢を描いた小説。第5回(1974年度)星雲賞短篇賞受賞作品(ちなみに長編賞は『日本沈没』)。
2011年、原因不明の天変地異でアメリカ大陸が1週間で海に沈む。大統領はじめ国外脱出しようとする人々で大混乱に。をの後、中国大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸が沈没。田所博士は日本列島だけが無事だった理由を解明していた。避難民で人口の増えた日本社会はどうなるのか。食料問題、移民問題、独裁者によるテロ行為……。そして田所博士は日本も沈むと予言する。作品の完成度の高さに小松左京を嫉妬させた、世界が舞台の未曽有のパニック小説。2006年、映画化。
⚫︎感想
日本沈没は重いテーマですが、こちらはとっても軽い短編です。人口密度めっちゃ高くなったり、ハリウッドスターが居酒屋にいたり、いろいろ笑えます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「日本以外全部沈没」★★
タイトル通り。
登場人物紹介はあるものの、やはりわからないから面白みに欠ける。
「あるいは酒でいっぱいの海」★★★★
短いがかなり面白い。
「ヒノマル酒場」★★
テレビで放映されている宇宙人は本物!?
大阪人とマスコミに対する皮肉か。
「パチンコ必勝原理」★★★★
これまた短い。そしてオチが読みやすい。
それでいて様々な手法が面白い。
「日本列島七曲り」★★
時代を感じる。わからない。
「新宿祭」★★
これまた時代を感じる。
「農協月へ行く」★★
きっと農協の評判が悪い時代だったんだろうなということぐらい。
「人類の大不調和」★★★
万博の話。痛烈な皮肉。
「アフリカの爆弾」★★
すごい旅路。オチは・・・?
「黄金の家」★★★★
タイムパラドックス的な。とても面白い。
「ワイド仇討」 ★★★
何を言いたかったのかわからなかった。
読み物としては面白かった。 -
筒井氏の発想はいったいどこから来るんだろう……そんな、陳腐で考えても仕方ない疑問をずっと持っていますが、こういう短編集こそ、その発想力のすごさを感じます。
本作品集は、そんな筒井氏の、比較的初期の作品を集めています。ちょうど「日本沈没」を読んだので、表題作を読んでみたかったわけですが、意外にあっさりした流れで驚きました。まぁ「日本沈没」のカウンター作品としては、これでも良いものなのかも知れません。ただ、これ単体だと、あまり面白みはないな、と。
それ以外も、作品の善し悪しには結構差があるように感じます。まぁ、正確には善し悪しというか、ワシの好みの好悪に過ぎませんが。結構、オチの尻切れ感というか、まるでお笑い的な「オチ」を付けようとして失敗しているかのような、そんな作品もあります。
ただ、やはりこの全体的な馬鹿馬鹿しさ、スラップスティックコメディとしての質の高さはすごいです。そして、各作品の風刺感。時代劇、SF、日本でないところでの物語、でもそれぞれに差し込まれた当時の社会に対する風刺が面白い。
「ヒノマル酒場」での記者の描かれ方、「農協月へ行く」で描かれる醜悪なエコノミックアニマル、「アフリカの爆弾」のナンセンスな空気、このあたりが、特に気になった作品とポイントでした。「ワイド仇討」のシュールさも良いですね。 -
「対話の時代とか何とかいって、やたらに他人の問題を知りたがる人間がふえたが、みんな他人の問題を軽く見て、それらすべてが自分の問題より小さいと感じて納得しているのだろう。それはかかわりあいではなく、逆に、かかわりあいを避けることだ。」
お借りしました。
さすが、というか、なんというか。。。
非常に歴史は感じさせられるんだけれど、ブラックさは、今の世の中に十分通じるものがあるのだ、、、怖い・・・
そして、元ネタが、凄いなぁ。。古いけれど、新しい。
今じゃ、こういうことって誰もしようとしないと思う。
いや、今も昔もこの人だけなんじゃないかって思えるぐらいの遊びっぷり。
お見事としか言いようがないのです。
まぁ、もちろん、物語のほうがすきなんだけれど、
たまにはこういうのもいいかな、って気にちゃんとさせてくれるので、さすがなのでした。
【10/11読了・初読・友人蔵書】 -
パニック短編集。
パニック短編集と言いつつ、どれもシニカルな視点が効いており、中でもヒノマル酒場が共感出来た。
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シュールだなぁってのご正直なところ。
短編集でサクサク読めるんだけどこれでいいのか?って不思議になるSF(少し不思議)作品集。
時代的に当時だからこそ書けたってのもあるけど。
あと、本当にマスコミ嫌いがわかりやすくて、好き。
農協の悪名高さとか、世相を皮肉ってるのか嘆いてるのか、宇宙人は緑じゃないといけないのかとか。
当時からなにも変わってないんだなぁって乾いた笑いが出てくる本だった。 -
2019/07/31-08/06
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ゴタゴタ多くて笑えたけどいかんせんネタが古い
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ドタバタというか、狂った世界の
リズムが合わない作品(表題作も)は、
滑稽とは思えても趣味が合わない、
場合によっては嫌悪感をも感じてしまう。
その向こうに、(当時の)時代をどれだけ
見透かして茶化す、天才の視点があっても。
ちょっと、大衆に対する優越感を感じてしまうのかな。
法螺話というが、
隅に追いやられている人を笑いものにして
隅に追いやっている人を滑稽に描きつつ
実は両者とも笑いものにしている
高みに立った風味が漂うよう
感じているのかもしれない。
鋭さに耐えられない、普通の感覚が
壁・溝を作っているのかもしれない。 -
筒井先生お得意のスラップスティックがたくさん詰まった短編集。「ワイド仇討」のみ既読だった。
パニックに陥った人間たちのドタバタ劇はどこか滑稽で面白く、クスリと笑わされることしばしば。だけどどの作品の裏にも世相への皮肉や切迫感、切なさや哀しさが潜んでいるので、ただのドタバタコメディで終わっていない、むしろ怖さすらうっすら感じる上質コメディだ。
しかしなぜ自分がクリスマスイブにこの本を選んだのかはよく分からない…(笑)